多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第24話 決着

 新西暦179年、LP2、プラント周辺宙域

 

 

 「おおおお!!」

 『ヤック、ヤック、デカルチャー!?』

 

 その数を当初の半数未満にまで減らしたゼントラーディ分艦隊だったが、しかし、その兵器の多くの性能が地球側よりも優越している事は変わらない。

 ザフト軍の消滅間近になっても変わらぬ奮戦によって消耗こそ免れていないが、彼らの戦意は変わらず旺盛だった。

 では、ア・バオア・クー宙域よりも遥かに少ないサイド3占領艦隊とサイド3防衛艦隊からなるプラント救援連合艦隊は、如何にして彼らの戦意を挫き、掃討作戦へと移行したのか?

 それはこの艦隊がまともな戦闘行動をせず、消耗していない事もある。

 しかし、配備されていた戦力は二線級の初期型ジムやザクⅡF型である。

 数的有利があったとは言え、敵機動兵器やゼントラーディ艦隊を相手に戦えるとは思えない。

 

 「サイコザク隊続け!敵艦隊の陣形内部に入り込むぞ!」

 『『『『『了解!』』』』』

 

 その差を埋め、決定的な隙を作った者達こそリビングデッド師団所属リユース・サイコ・デバイス装備高機動型ザクⅡにより構成された一個中隊である。

 一個中隊、即ち僅か9機しかないこのMS部隊は搭乗者の脳が発する電気系信号を、MSの駆動系に伝達させる事によって乗機を己が手足のように操作する事が出来る。

 後の多くの思考伝達型MMI(マンマシンインーターフェイス)の走りとなったシステムである。

 一号機のパイロットにしてサイコザク隊の隊長はリユース・サイコ・デバイス開発の主任パイロットでもあるダリル・ローレンツ少尉(戦後、中尉に昇進)であり、同隊は彼の同僚や部下達から成る。

 が、四肢の切断した者にしか使用できないため、戦後は本来の開発目的通りに義肢へと利用され、廃れる事となる。

 このシステムによる恩恵は大きく、機体とパイロット側の伝達によるロスをほぼゼロに出来ていた。

 一年戦争当時でこれは破格であり、その反応速度から唯でさえ近接戦闘では自分達よりも一回りは大きいMS相手に押され気味(その前の高機動格闘戦では機動力で勝るが)だったゼントラーディ製パワードスーツ群を相手に局所的ではあるがワンサイドゲームに近い様相を見せた。

 これらサイコザクによる敵艦隊直援機動兵器の排除の成功並びに陣形内部への侵入によりゼントラーディ側は混乱、更に砲塔部分を破壊され、残っていた艦隊戦力は果敢に抵抗するも撃破されるのだった。

 

 が、この時の彼らの奮戦が元となり、対異星人兵器研究の建前で各勢力による非人道的な人体実験が行われるようになってしまったのは、皮肉としか言い様がなかった。

 

 

 ……………

 

 

 ア・バオア・クー内部 司令室(機能喪失状態)にて

 

 

 「ふふ、見事なものだ。」

 

 そこでギレンは辛うじて生き残ったモニターで状況を把握していた。

 

 「キシリアもドズルもデラーズも…役目を果たしてくれたか…。」

 

 キシリアの行動によりジオンは遺憾なくとは行かないが、何れ地球連邦政府へと帰属する事となるだろう。

 プラント救援と対異星人を目的とした共同作戦の実行。

 少なくとも、連邦市民の対ジオン感情の多くは軟化するだろう。

 民衆とは喉元過ぎれば忘れ、喫緊の危険を見つければそちらに目が向くものだから。

 また、本来の予定よりもかなり早いが異星人の存在に気付き、貴重な戦訓を得る事も出来た。

 更に言えば戦闘後は鹵獲や回収からの研究も進む事だろう。

 軍縮は難しいのに復興せねばならず、更に言えば強大な敵の存在に、地球連邦は変革を迫られる。

 そんな時、消耗しながらも多数の有用な兵器を開発・配備できるだけの力を持ったジオンはどう映るだろうか?

 必然的に利用しよう、と考える。

 そこからはもう互いに交渉や策謀、諜報の領域であり、キシリアやマ・クベのまぁまぁ得意とする分野だ。

 悪い事にはなるまい。

 戦後、裁判こそ免れないが、ジオン側を利用しようとする以上、多少の配慮は必要だろう。

 ドズルに関してはあの通りなので、連邦側将兵から助命嘆願すらあり得る。

 父上、デギンに関しては余命幾ばくもないとなれば監禁・監視・保護が妥当だし、未だ北米を抑えているガルマに関しては占領地の返還で将兵の帰国共々大丈夫だろう。

 面倒な事や戦犯不可避の作戦に関しては全て自分が責任を持っている事となっている。

 本来なら完全にジオンを使い潰す予定だったのだが……これはこれで悪くない。

 ギレンとて人の子であり、尊敬する父親や家族にはそれなりに幸せになってほしかった。

 史実の彼ならば鼻で笑うような思考も、この世界で理解者に出会えたギレンにとっては当たり前の事だった。

 

 「おや、漸く来たか。」

 

 不意に瓦礫で埋まっていた入口が抉じ開けられた。

 大量の残骸や岩石は不自然に浮かび上がり、横へと追い遣られると、一人の女性が通路から現れた。

 白と黒の古式なデザインながらも所々にパイロットスーツめいた意匠を持つメイド服を着て、ブラウンの髪を頭頂部で纏めた女性の名はセシリア・アイリーンと言う。

 ギレンの秘書を務めるA.I.M.グループからの出向社員であり、ナノマシン式侍女型高級自動人形である。

 

 「ギレン様、お迎えに上がりました。」

 「うむ。」

 

 そんな異常事態を見ても、ギレンは特に何か言う事もなく立ち上がった。

 

 「残念です。驚いてくれるかと思ったのですが。」

 「私を騙すつもりなら、もう少し経験を積むべきだったな。彼女程情緒豊かでもないと誤魔化されんよ。」

 「なんと。惚気られてしまいました。」

 

 セシリアがつい、と瓦礫に視線を向ける。

 

 「そちらの方は如何に?」

 「ぅ……。」

 

 そこには辛うじて生きていたプラント側の工作員の姿があった。

 とは言っても既に彼女一人しか生きておらず、他は全員先程の異星人艦隊からの艦砲射撃によって潰れていた。

 

 「君、良ければ来るかね?」

 「なにを……。」

 「壊滅したプラントの跡地に行きたいと言うのなら止めんがね。ここに入ってこれたのなら、それなりに優秀だろう。」

 

 事実、その設立年月の浅さから見ると、プラント諜報部は驚くべき成果を出してきた。

 それは偏に遺伝子調整による人材の優秀さから来るものだったが、それでも成果は成果だ。

 ギレンはこの場で生き残った運を含めて、彼女を優秀な人材だと判断した。

 

 「直にここもエアは無くなる。生き残りたければ、来たまえ。」

 

 ギレンは彼にしては珍しくその手を差し出した。

 その高い知性相応に警戒心も強い彼が殆ど初対面の人物に手を差し出すのは、本当に珍事としか言い様がなかった。

 

 「あ……。」

 

 そして、彼女はそれを知らず、しかし生きたいという願いから手を取った。

 ここにいても窒息し、ジオン兵に保護されてもスパイかテロリストとして処分される。

 ならば、彼の手を取って何処かへ行こうと、そう決意した。

 こうして、彼女はギレンの手を取った。

 

 「見事な思考誘導でしたと判断します。」

 「人聞きの悪い。私は事実を告げただけだよ。」

 「貴方なら幾らでも助けられたのによく言います。」

 

 こうして、二人と一機は今度こそ無人となった司令室を後にした。

 この12分後、ア・バオア・クーは各所から出火、連鎖爆発を開始して総員脱出の後に壊滅する事となる。

 

 

 「ではお二方、ようこそA.I.M.グループへ。お二方には今後、人類の繁栄と存続のための活動に参加して頂く事となります。」

 

 

 ……………

 

 

 同時刻 ア・バオア・クー宙域 4000m級中型艦隊指揮用戦艦周辺にて

 

 「60mmバルカン弾切れです!」

 「ガトリング砲、作動不能!」

 「ジェネレーター出力30%まで低下します!」

 「すいません、もう腕振るだけしか出来ません!」

 「えぇい、シャア達はまだか!」

 

 突入部隊の退路を確保すべく奮戦していたグレートジオングだが、遂に限界が訪れようとしていた。

 周囲に展開していた護衛のオッゴ部隊は全滅し、異星人相手には役に立たないIフィールドは電源をカットして余剰出力を他に回し、ビームと実弾にサーベルと有線疑似サイコミュで暴れに暴れたが、弾切れにEN切れともう成す術が無かった。

 

 「……ジェネレーター出力を臨界まで上げろ。」

 「で、ですがそれは…。」

 「突入は失敗したと判断する。本機を可能な限り突入させた上で自爆させ、敵旗艦を道連れとする。」

 「…了解です。では閣下、脱出の用意を。」

 「いや、オレは最後まで踏み止まる。」

 「閣下!?」

 

 ドズルの言葉に、他の搭乗員らがギョッとした。

 

 「誰かが残ってやった方が成功率が上がる。なら責任を持ってオレが残る。」

 「し、しかし…。」

 「キシリア姉もガルマもいる。ならジオンは大丈夫だ。お前達だけでも脱出しろ。」

 「ドズル閣下…。」

 「っ、レーダーに反応!敵人型来ます!」

 

 こちらの戦闘能力喪失を察知したのか、一機のバトルスーツが背負い式のプラズマキャノンを構えて向かってくる。

 あれが発射されれば終わりだ。

 

 「総員、緊急脱出急げぇ!」

 

 鋭く発せられたドズルの声に、しかし誰もが間に合わない事を悟っていた。

 しかし、彼らの諦めとは裏腹に、差し込んだ一筋のビームがバトルスーツのプラズマキャノンを吹き飛ばし、次いで有線サイコミュによって操作された単装メガ粒子砲を内蔵したクローアームがバトルスーツを囲むように動き、前後から放たれたビームによって抵抗する間もなく撃墜された。

 

 『ドズル閣下、ご無事ですか!?』

 「スン少尉か!助かったぞ!」

 

 危機と見て救援に来たジオングからの通信に、ドズルが応える。

 

 「すまん、こちらは見ての通りだ。これから部下達を脱出させるから支援を頼む。一機では難しいだろうが…。」

 『いえ、私だけじゃありませんわ。』

 「何…っ!?」

 

 ララァの喜色に溢れた声に不思議に思うが、彼女の背後から現れた戦闘ポッドに驚くドズル。

 しかし、ララァもドズルらも撃たれる事となく、ドズル達の背後から発射された二条のビームによって戦闘ポッドは一撃で爆発した。

 

 『迂闊だぞララァ!』

 『おかえりなさい少佐!皆さんも!』

 『おや、お嬢ちゃんの出迎えとは少佐も隅に置けませんな。』

 

 続々と確保されていた退路から両軍のエース達が脱出してくる。

 同時、4000m級中型艦隊指揮用戦艦の後部から爆発が発生、次々と誘爆していく。

 

 『任務完了!これより脱出します!』

 「おおおおおおおおおおお!お前達、よくやってくれたぁぁッ!!」

 

 こうして、4000m級中型艦隊指揮用戦艦は轟沈し、内部からの破壊作戦に参加したパイロットらは全員が帰還という前代未聞の戦果を上げたのだった。

 

 

 しかし、彼らの戦いはまだ終わっていなかった。

 

 

 




アイリーンさんメイド化の巻

そしてジオングの腕は見たノイエ・ジールで、武装はビーム砲兼サーベルじゃなく単なるビーム砲です。
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