多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
第1話 戦後処理
新西暦180年、それは混乱と共に始まった。
人類史上最大級の人類間戦争の最中に現れた異星人の艦隊。
そして無警告・無通信のまま始められた地球人類初の対外勢力に対する絶滅戦争。
それは地球連邦並びジオン両軍が連携する事でギリギリ掴んだ、薄氷の勝利だった。
とは言え、両者の戦争はジオンの降伏という形で一応の幕を下ろした。
が、問題はここからだった。
戦後処理は、揉めに揉めた。
当たり前である。
先程も言ったが、人類史上最大級の人類間戦争であり、この一年戦争と呼ばれる戦争を通して一億人以上の人命が失われたのだ。
人類全体から見れば、30人に一人程度の割合で死亡した事になるわけだ。
ジオン公国そのものに関しては共和国へと回帰、ダルシア首相を臨時首長として連邦政府へと正式に謝罪し、ジオン軍は実質解体され、多くの制限をかけられる事となる。
また、多額の賠償金支払いを課せられたが、こちらは物納も可であり、格安で連邦へと工業生産品並びに軍事兵器類や特許の売却、更には元軍人や技術者等の人材の派遣等を行う事で合意となった。
加えて、最新の空気・水の生産・循環プラントを備えたコロニーを購入する事も義務付けられた。
とまぁ、字面だけを言えば結構な痛手なのだが、その実態は連邦側にとってはとてもとても辛いものだった。
何せジオンを再度連邦に編入しても復興費用ばかりで暫くは碌に稼げないし、コロニー内でゲリラ戦すら想定されるため、損ばかりだからだ。
加えて、異星人という未知の外敵の存在が明らかになった以上、そちらばかりにかまけてもいられないし、使えるものは使わねば生きられなかった。
そのために最新の空気・水の生産・循環プラントを備えたコロニーでの水・空気税の廃止であり、軍事兵器・特許類の売却であり、元軍人・技術者らの派遣である。
コロニーは高額で、売却と派遣は相場よりも安価だが、それでも少なくない利益がジオン共和国側にも齎される。
これを使って復興・戦没者の遺族への恩給にせよ、という事だった。
その分、戦後の軍事裁判に関しては苛烈だった。
これだけ大きな戦争であったためか、連邦・ジオン双方から大勢の戦争犯罪者が見つかり、各所で開かれた軍事裁判所(両軍の規模が大きいため、一か所では消化しきれなかったために臨時増設)は略式だというのに出るわ出るわ南極条約締結前後を問わず大量の戦争犯罪が。
ジオン側は緒戦のコロニーへの攻撃が、次にコロニー救援中の艦艇への攻撃が特に問題とされた。
NBC兵器の使用自体は今後の対異星人を考え、然程問題とはされなかったが。
この件に関してはデギン公王とギレン総帥、そしてアサクラ大佐等多くの将帥や佐官のみならず、実際にコロニーを攻撃したMSパイロットらにも及び、大勢が戦争犯罪者として逮捕される事となる。
但し、デギンに関しては既に高齢で余命宣告を受け、更には長男に毒を盛られて一時危篤状態となった事もあり、監視付きの地球の病院で余生を過ごす事となる。
ギレンに関しては本人不在(ア・バオア・クーでMIA)な事を良い事に、ジオン側のあらゆる戦争犯罪を被せられ(中にはキシリアの指揮した地上軍のものもあった)、死刑を求刑された。
ドズルに関しては非道を良しとしない人格であり、ギレンに対しても緒戦のコロニー攻撃に関して最後まで抗議していた事もあり、更には対異星人艦隊戦にて連邦との共闘並びに自身でも大きな役割を果たした事から情状酌量の余地ありとされ、10年の禁固刑となった。
が、戦後に減刑され、その手腕を買われ、後に設立される太陽系防衛軍団土星方面軍の司令官として獅子奮迅の活躍を見せる事となる。
キシリアに関してはギレンの指示の下で多くの情報戦や謀略を行った事やフラナガン機関によるNT研究に関して大いに揉めたが、前者はその辺を突かれると痛い人間が中立の筈の月の自治都市群を中心に多く、また後者の研究もフラナガン機関の人間の多くが戦災孤児の保護の名目通り、十分な教育や配慮をしていた事もあって、その多くは罪に問われなかった。
また、ジオン側の秘密研究の多く、特にサイコザクに搭載されたリユース・サイコ・デバイスにも関与していた事から、先の謀略や情報戦の内容にこれらの研究データで司法取引を行い、ドズルよりも厳しいものの禁固20年とされた。
後に減刑されて釈放、サイド3首相となったマ・クベ元大佐と結婚、二児の母となり、表舞台からは退場するも、公私ともに夫を補佐していく。
ガルマに関してはジオンのみならず、北米において理想的な統治を行っていたために北米在住の連邦市民からすら減刑の声が無数寄せられ、傍聴席から溢れた観客10万人が裁判所周辺を埋め尽くすというハプニングが発生した。
なお、結果に関してはほぼ無罪と言って良いものだった。
これはガルマのカリスマを利用してのジオン軍の残党化を防ぐためのものであり、後に彼の呼びかけで地球上やアステロイドベルト、アクシズに逃れていた者達は残らず降伏し、多くは裁判を受けた後に連邦軍へと派遣されている。
翻って、被害を受けたコロニー並びに地球はと言うと、キシリアに関しては若干甘いとする見方もあるものの、概ね裁判の結果には納得しており、そしてそれ以上に早期の復興を望んでいた。
これには対異星人を主眼として宇宙戦力を整備したい連邦軍とは全く反対のもので、連邦政府内でも意見が割れて大揉めしていたのだが……
「復興用のエネルギーや資材が足りない?宇宙艦隊の再建がしたい?よろしい、うちで承りましょう。」
太陽系最大の金持ちことA.I.M.グループが本気を出した。
今揉めてる場合じゃねーんだよオラぁ!!とばかりに今の今まで蓄えていた貯蓄を吐き出す勢いで、太陽系全土への支援を開始しやがったのである。
宵越しの銭というか、死んだら金は持っていけないというか、そんな感じだったと人は言う。
既存の核融合炉では出力が足りないという経済界の意見を実用化に成功した縮退炉を宇宙でくみ上げてから地上に着陸させて発電施設を建設するという荒業で以て僅か一か月で稼働させた。
足りない資材に関しては両軍が地球圏でまき散らしたデブリ類や小惑星等を戦争特需が終わって仕事が無いと言うスペースノイドを片っ端から雇って(多くは軍を抜けた元ジオン兵)巨大なデブリ回収部門を設立、鉱山や資源採掘用衛星掘るよりも遥かに精錬のしやすいデブリ類を縮退炉の出力任せに一気に溶かし、精錬する事で資源を捻出した。
また、今までは高額なアーハンか作業用ポッドだけだった重機類に対し、素人でも扱えるようにした廉価版のレイバーを多数販売、人手の少なさをこれらによって補った。
こうした極めて強引な手法は多方面から驚きや疑念、非難を向けられたが、A.I.M.グループは「一日でも早い復興と対策を」をスローガンとしてそれらを跳ね除け、復興地域やコロニーを中心に改めて絶大な支持を獲得するのだった。
なお、プラントに関してだが、各種技術を連邦政府や各企業群に売却した後、生き残った住民は太陽系各地に分散する形で消滅した。
後に彼らはその能力を生かして各地で活躍し、復興と対異星人対策双方で役立つ事となる。
……………
さて、A.I.M.グループがこんなに復興作業に従事していて大丈夫なのだろうかと疑問に思う方もいるだろう。
その辺はばっちりだったりする。
今回地球圏に襲来した巨人族ゼントラーディだが、今現在の彼らは突如来襲してきた宇宙怪獣並びにインベーダーの大群への対処で忙殺されており、とてもではないが辺境の地球へと目を向ける余裕が無かった。
その数たるや文字通り天文学的なもので、幾つかの基幹艦隊が全滅の憂き目に遭い、生き残った兵の殆ども近場の基幹艦隊に合流する間も無く皆殺しにされる程だった。
この中の全滅した艦隊の中には太陽系に戦力を派遣していた基幹艦隊もいたため、巨人族が太陽系へ再度手を伸ばすのは随分と後の事となる。
とは言え、流石は戦闘用にプロトカルチャーによって生み出された巨人族と言うべきか、幾つかの基幹艦隊が全滅した事を察知するや否や態勢を立て直し、僅かな生き残りを吸収した上で兵器・兵員の生産を増強し、戦力を強化した上で果敢に立ち向かった。
なお、参考までに記すが、この世界の銀河系には巨人族の基幹艦隊(機動要塞一つに数十万~500万隻の艦隊)が1000~2000も存在する訳で、その彼らが一時押される程度には多いと言えば実感が湧くだろうか?
これは以前、情報収集用に配置し、もしもの時のためとインベーダー・宇宙怪獣誘因用の装備を載せた無人艦がその役目を果たしたからだ。
無論、位相空間にいてもバレる時はバレるので、宇宙怪獣にその存在がバレたと分かった瞬間に盛大に自爆してもらったが。
兎にも角にも、地球圏は僅かな猶予を得た事で次なる戦乱の時代、即ち銀河大戦国時代へと参加するための準備期間を得られたのだった。