多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
「素晴らしい。此処は正にあらゆる叡智の殿堂だ。」
後年、トニー・スタークはTF達の母星を訪れた際、思わずこう漏らしたと彼の自伝によって伝えられている。
なお、
「ぼくここにすむ!」
「トニー、ハルクに殴られるのと素直に帰るのどっちが良い?」
その直後に交わされた会話が記録されているのはユニクロン内部のライブラリのみである。
……………
グリニッジ標準時 午前7時半
使節団+αは先日の説明があったホールにて朝食を摂っていた。
その壁の一部は船外の光景、即ち深淵なる宇宙と青い地球と砂の月、そして巨大な宇宙要塞という実にSFな光景を映し出していた。
「うーん、私の知る地球の最高級ホテル並みのサービスとは恐れ入った。」
「料理ももの凄く美味しかったよ。ほぼ全部見た事ない食材だったけど。」
わいわいがやがや
中型双胴輸送艦改装の外交艦アラナのサービスを一晩受けた事で、使節団の緊張は大いに緩和されていた。
また、昨夜に受けた授業によりTF側の大まかな文化に関しても教えられたため、これからの交渉内容に関しても大体の目途が付いた事もあり、外交官らは綿密な調整を行っているものの、護衛の軍人達とトニーら特別顧問らは気楽なものだった。
(今更何か話し合ったとしても、どーせ全面的に受け入れるしかないのになぁ。)
朝食を食べつつ、深刻な顔で話し合いを続ける外交官らに対し、トニーは気楽なものだった。
少なくとも、彼は以前のニューヨークの一件からずっと警告し、そのための準備を彼なりに続けてきた(実を結んだかは別として)。
だと言うのに、今更深刻な顔をして話し合った所で、焼石に水以下だと何故分からないのだろうか。
「あ、トニー。この紫色のポタージュっぽいの美味しいよ。」
「お、確かに美味いな。ポッツとモーガンも連れてくるべきだったな。」
なお、昨夜のトニーの言動は、言い含められたフライデーにより現在生まれたばかりの娘の子育て中のポッツさんに筒抜けである事を明記しておく。
「にしても、アラナさんが沢山いた事には驚いたよ。」
「元々この艦の管制担当のTFだったんだ。小型のボディを動かす位は余裕なんだろう。」
「ウルトロンみたく?」
「そうだねウルトロンだね。」
サクッと過去の所業を刺されても繊細な癖に厚顔無恥ぶりならアベンジャーズの誰にも負けないトニーは、ブルースの言葉をテキトーに流した。
「皆様、お食事中の所ですが、改めて本日の予定を説明させて頂きます。」
そこにアラナの声で艦内放送がかかった。
「本日午前10時より、外交艦アラナはスター級機動要塞17番艦スター・オブ・カノープスにてユニクロン様との謁見のご予定です。その後は午後2時まで昼食となります。終わり次第要塞内の非機密エリアにて観光。夕食は午後7時から8時半までを予定しております。」
こうして朝食を終え、身支度を終えた使節団+αが乗る外交艦アラナは、一路窓に映っていた宇宙要塞へと向かうのだった。
……………
「皆様、本艦へのご搭乗ありがとうございました。只今本艦は第27宇宙港へと到着致しました。これよりユニクロン様との謁見のため、担当者が皆様を要塞最奥部へとご案内致します。」
そんな艦内放送と共に手荷物を持った使節団+αがアラナから降りてくる。
今回は逆トラクタービームではなく、普通の出入り口に繋げられたタラップでだったが。
「凄いな。外から見たら全然港だなんて分からなかった。」
「普段は立体映像を被せてあるんだろう。攻撃個所を誤認させるためだな。」
無論、その一員にトニーとブルースもいた。
内部との通路の空いた港湾部など、外敵から見れば攻撃してくれと言っているもの。
故に通常は立体映像を被せ、場所を隠蔽する。
勿論、非使用時はハッチを閉じる事もあるが、常にそう出来る訳でもないし、民間人の出入りが激しい場合も多い。
また、同じやり方で弱点を対空砲台のキルゾーンへと呼び込む事も可能としているので、相手が有視界戦闘を重視していればする程に厄介となる。
なお、レーダーやセンサー類を頼りにしてると、密集陣形であっても平然とジャミングを仕掛けてくる。
これは彼らトランスフォーマーが主な通信技術として量子波や光子波を用いているから通常のジャミングが殆ど意味を成さないためだ。
一応、ミノフスキー粒子やゲッター線といった自然界にはほぼ存在しない特殊な粒子やエネルギー波なら彼らにも十分通用するのだが、それはさておき。
「にしても、このバッジも凄いね。」
「あぁ。本当に驚異的だ。」
使節団のメンバーに渡されたバッジ。
それは彼らのゲストIDを示すものであり、同時に発信機にして彼らの生命を守るためのものでもある。
この要塞は基本的に彼らTFのためであり、勿論密閉されて空気のあるエリアもあるが、地球の大気が毒となる種族も滞在している場合があるため、こうして個人用の宇宙用装備も存在する。
このバッジ一つ付けているだけで、推力こそないものの有害な放射線やエネルギー、粒子等を防御フィールドで遮断した上、フィールド内部にはその人物の健康上最適な空気で満たされているのだ。
勿論、種族ごとに設定の変更や貯蓄する大気の成分は変更せねばならないが、バッジサイズのこれ一つで20時間は快適に過ごす事が出来る。
「皆様、担当の者が到着致しました。後は彼らに搭乗して頂きます。」
アラナの声に全員がやってきた10m級の人型TFの姿に目を見張る。
え、あれに乗るの?と戸惑いを多くの者がその顔に浮かべるが、それは直ぐに驚愕に取って代わった。
「「「トランスフォーム。」」」
ギ、ゴ、ガガガン!
独特な金属同士の衝突と僅かに擦れ合う音と共に、三体のTFは三台の大型バス(但しデザインはSF的)へとものの数秒で変形してみせた。
「では皆様、またのご利用をお待ちしております。」
そして外交艦アラナもまた、使節団のお世話をしていた人型端末が艦内に引っ込むと同時、独特な音と共に全長200mを超す巨大な人型に変形していく。
変形が終わる頃にはスラスターも使わずに手足のAMBACのみで港の外に出ると、器用に敬礼しながら今度こそ全身のスラスターから派手に噴射炎を吹かしながら彼らの視界から飛び去って行った。
「そ……」
「「「「「「「「「「「「「そんなのありかぁ!?」」」」」」」」」」」」」
使節団+αの渾身の突っ込みは、空しく宇宙へと溶けるのだった。
……………
TF達の半ば物理法則に喧嘩売ってる変形へと全力突っ込みした使節団+αはそのまま三台のバスに乗って、要塞の最奥部、即ち中枢へ向かって行った。
道中こそ調整された重力下であったものの、横道等は無・低重力環境であるらしく、天井や壁にコンテナが括り付けられていたり、空中遊泳で移動する住民達の姿を多く見る事が出来た。
また、住民であるTF達も本当に多種多様であり、小さい者は30㎝未満から大きい者では10m近い者までおり、完全な異星起源の文明の社会を初めて見る使節団らは興味津々にそれを眺め続けた。
「皆様、謁見後に観光のお時間を取りますのでどうぞご安心を。」
「皆様、右側に見えるのは要塞内専用の空間跳躍装置です。出口として設定された他の跳躍装置内部に飛ぶ事が可能で、要塞内の移動時間の短縮に使用されています。但し、ゲストIDでは許可されておりませんのでご了承ください。」
「皆様、眼下に見えるのが第一宇宙港、この要塞内で最も大きな港湾施設です。只今中型宇宙作業艇が入港した所です。」
見るもの全てが初めてで、良い年をした使節団+αがまるでトランペットを見る少年の様な有様である。
トニーやブルースも今や純粋に楽しんでいる始末で、最初の警戒や緊張、苦悩ぶりは見る影もない。
「皆様、間もなく要塞中枢部です。停車後は徒歩で3分程の移動となりますので、お荷物などございましたら車内にそのままお預けして頂いて結構です。」
「質問良いかな?君達の大始祖様は、何故この先にいるんだ?」
そろそろ停車という時、不意にトニーが手を挙げて質問する。
まぁ相手側の最高権力者らしい存在がこんな腰軽く謁見するとか普通では考えられないため、他の面々も気になっていた。
「大始祖様は我々の母星の他、ご自身で他のスター級機動要塞の統括担当をしております。そのため、一定以上の文明レベルの方々との外交の際にはこうしてスター級にて謁見なさるのです。」
「成程、分かった。所で謁見の際、何かやっちゃいけない事とかあるかい?」
「地球人類の皆様のマナーは学習済みですので、皆様の基準での大変失礼な行動を取らない限りは失礼に当たりません。また、大始祖様は大変温厚かつ大らかな方なので、多少の事は笑って許してくださるでしょう。」
その言葉に使節団一行は内心でほっと胸を撫で下ろす。
誰だって自分達を滅亡させ得る相手の逆鱗に触れたくはなかったので、やはりこうした情報は欲しかったのだ。
「到着致しました。皆様、ご利用ありがとうございました。」
「私達はこの場にてお待ちしますので、降車したらそのまま道なりに進んでください。」
「謁見終了まで、私達はここで待機しております。」
こうして、使節団+αはこの要塞どころかTF達の最高権力者の御前へ向かって進んでいく。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか…。」
「鬼でも蛇でも温厚で平和主義なら大歓迎だよ。」
改めて気を引き締め直す護衛と特別顧問達と共に、一行は何の飾り気もない通路を歩いていく。
そして数分後、程無くして巨大なシャッターの前へと到着する。
そのシャッターはガコン!と大きな作動音と共に徐々に天井へと格納されていき、その奥に鎮座するモノが一同の視界へと入ってきた。
「これは…。」
「美しい…。」
ソレは巨大な球体だった。
ソレは翡翠と碧、紅玉に似た色彩に絶えず変化し、輝いていた。
ソレは巨大な存在感を持ちながら、しかし何処か古木や穏やかな海の様な大きくとも静かで暖かな気配をさせていた。
『はじめまして、地球人類の皆さん。』
唖然とする一同の頭へと、直接声が響く。
その声色は暖かく穏やかで、敵意の様なものは欠片も感じ取る事は出来なかった。
『私の名前はユニクロン。今皆さんの目の前にある球体は、私の一部です。』
『本当なら私の本体へとご案内するべきなのですが、皆さんとの付き合い方をちゃんと決めてからではないとダメだとうちの子達に言われてしまったので、一部だけで失礼しますね。』
使節団の誰もが、それこそトニーとブルースも圧倒されていた。
今まで彼らの見てきたあらゆる存在と全く異なるその大きくも暖かな気配。
サノスの持つ暴力的で威圧的なプレッシャーとは真逆の、それこそ全てを委ねたくなる母の懐にいる様な雰囲気に、誰もが警戒心を拭い去られてしまった。
(あ。こりゃダメだな。敵対しちゃダメ以上に
この存在を前にしたら、どんな捻くれ者であろうとも敵対するだけの敵意を保てない。
それこそサノスの様な己の故郷も家族も何もかもを犠牲にする覚悟を決めた者、或いは自分さえ良ければ全てを犠牲にする様な圧倒的なエゴを持った者か、何の感情も持たない者のどれらかだろう。
『私達の目的の方は既にアラナから説明があったでしょうが、あらゆる情報の収集です。』
『皆さんから情報を頂いても、それを悪用して貴方方に害を成す事は決してありません。また、私達には皆さんが必要とするあらゆる資源と技術を提供する用意がこちらにあります。』
『それを考慮し、かつ慎重に協議した上で、色よい返事をお待ちしています。』
『挨拶はこれで終わりです。今日は昼食の後に要塞内の観光が予定されていますので、どうかお楽しみくださいね。』
気付けば、使節団は行きと同様の大型バスに乗って、昼食の会場へと向かっていた。
誰もが少々所ではなく呆然としながら、先程の圧倒的上位存在との邂逅を消化するのに必死だった。
今まで彼らは直接地球外生命体と出会った事も、交渉した事も無かった。
辛うじて一部の護衛の兵士(チタウリとの交戦経験有り)がいる位で、平和的な接触の経験は絶無だった。
そんな経験不足の彼らに、あれ程の存在との邂逅は余りに衝撃的だった。
「トニー、どう思う?」
「敵対はしない、と言うより出来ない。」
「やっぱり?」
「地球にはそんな余裕がない。そして相手が平和主義者なら、それを信じて交渉していくしかない。」
「僕は彼女達の言葉、嘘だとは思えなかった。」
「僕もだ。けど、全てのTFがそうじゃないかも知れない。」
辛うじて非常識な事態に慣れているアベンジャーズの二人だけが、深刻な顔で今後の事を話し合うのだった。
なお、この二人も午後の観光で要塞内の非機密情報のライブラリーへのアクセスを許可されると、子供の様にはしゃいだ事を此処に明記しておく。
ユニクロン主おばあちゃんにとって、人類は小銭どころか饅頭やお煎餅一つで喜んでくれるちっちゃい子認識です。
また、人類が頑張って作った文明(特に娯楽面)にも凄いねぇ頑張ったねぇ偉いねぇと無条件で褒めちぎってくれます。
ぶっちゃけ偶に会う孫程度には可愛く思ってる。
その内各国政府は大概の注文は叶えてくれると直ぐに分かるので、外交の実務担当TFさん達は胃がキリキリ
しかし、そもそもの資本や国力が圧倒的な開きどころか桁が100以上違うので、特に問題にはなってないという
なお、将来トニーが治療されるのは、彼が個人の範囲において地球上で最も多くの情報の生産者であるから+ユニクロン主おばあちゃんのお気に入り=前世からのファンだから