多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
新西暦180年、時の地球連邦政府を始め、政財界は大いなる混乱と共にあった。
軍縮の失敗と戦後復興の費用捻出の多くを一企業に頼った事?
敵性異星人の艦隊による侵略行為を受けた事?
プラント壊滅によって纏まった比較的安価な超精密電子部品の生産元の一つが消えた事?
どれもがそうであり、否と言えた。
彼らが最も悩んだ事、それは連邦・ジオン両軍が圧倒される程の戦力を持った敵性異星人の艦隊を更に蹂躙する程の戦力を持った不明勢力が既に太陽系内に存在し、今の今まで地球連邦政府にその存在を一切知られぬままでいて、今も見つける事が出来ていない事だった。
また、一年戦争の間中、太陽系開拓の最前線とも言える土星方面から、太陽系外縁部にて幾度も大規模な戦闘光が確認され、調査用に送られた無人探査船からばっちりしっかり連邦・ジオン両軍の全軍艦を足してもまるで比較にならない数の大艦隊が襲来しては超巨大な戦艦と無数の小型人型兵器の軍勢に撃滅されていく様子が撮影されていた。
当初は真実みがないとして取り沙汰されていなかったのだが、襲来する大艦隊の中には今回確認された巨人族の艦隊も存在しており、改めて政財界に認知される事となったのだ。
「どないせっちゅうんじゃ!!」
連邦政府首脳部の苦悩は深まるばかりだった。
幸い、海底から発見された都市型移民船やメテオ3群解析により、太陽系内を一瞬で行き来でき、端から端までリアルタイムで通信する事が可能となるワープ=フォールド技術の実用化が来年には可能になる予定だ。
更に巨人族の艦隊の残骸の解析や都市型移民船からの情報提供により文化、特に音楽を前面に押し出せば巨人族に限ってだが講和や休戦、無力化の可能性すら出てきたため、決してお先真っ暗ではない。
また、件の勢力が太陽系防衛用無人機動部隊なるプロトカルチャーの遺産らしいと知らされて一旦血圧も下がったが、そんな大昔の奴らが作った自分らの管理下にない超大戦力とか安心できんわ!と再度叫ぶ事となった。
人類が巨人族同様にプロトカルチャーによって生み出された存在であるという放送も、太陽系全土に不安や恐怖、混乱を広げていた。
和平だ、講和だ、話し合いだ、いや戦争だ、そんな訳あるか、あーだこーだ。
幸いにも復興は事前にある程度は用意していた上に、いつものA.I.M.グループがあっという間にやってくれましたので安心だが、今後の対太陽系外勢力に対する方針をどうしていくかでは揉めに揉めていた。
この混乱が終わるのは新西暦181年、サイド3駐留任務を終えて帰還した艦隊総司令レビルが退役し、一年戦争を辛くも勝利に導いた戦争英雄として地球連邦政府大統領選挙に出馬し、2位と圧倒的票差を付けて勝利、戦後初の軍人大統領として就任してからの事となる。
……………
そんなお上の悩みなんていざ知らず、後のイージス計画の現場となる北米の地球連邦軍ラングレー基地では今日も各種新型機の合同開発が進んでいた。
「新型機動兵器には基本、テスラ・ドライブとマグネット・コーティング、ディストーションフィールドを標準搭載しましょう。」
あーだこーだやってる内に、現場の面々はそう決断した。
だって搭載機と非搭載機じゃ機動性も射撃時の反動吸収も被弾時の衝撃吸収も反応速度も出力伝達のロスも防御力も空力特性も何もかにも違うんだもん!!(全ギレ)
実際、同じ機種で同じ条件で搭載機と非搭載機で模擬戦をやれば、30戦中28戦は搭載機側が勝つのである。
今まで地道に開発していた各企業群の技術者や責任者らは一様に満面の笑みを浮かべるビアン博士やモスク・ハン博士、そしてネルガル重工を称えると同時、もっと早く開発してくれよ!と怒鳴りつけた。
だって、これらの装置があれば色々な面倒、具体的には空力特性への配慮とかパイロットにかかるGとか機体重量とか射撃時の反動とか白兵戦時の衝撃とか防御力とかが既存機をスクラップ扱いにする位には改善されるんだもん。
MSとしての機能を維持しながら大気圏内超音速飛行とか、戦艦なら単独での大気圏離脱及び再突入とかが割と普通に出来るようになると言えば分かるだろうか。
「これがあの時あればなぁ…!」
「あの時諦めた機能とか武装とかさぁ…!」
が、こんな面白いもの渡されてしまっては、誰もが奮起せざるを得なかった。
そして新西暦180年末、各企業群の新型機開発は新たなステップへと移った。
「こちらがマオ社から発表させて頂く新型MSゲシュペンストになります。」
「こちらがA.I.M.グループにて開発された新型MSバタラとなります。」
両社の新型MSは、各企業群に驚愕を以て迎えられた。
そのどちらもが既存MSのモノコック構造とは異なり、マオ社に至っては内部骨格であるムーバブルフレームを全身に採用したために重量こそ僅かに増大したものの、テスラドライブ並び小型縮退炉の搭載によりそんなもの塵程に意味のない程の高性能化を実現している上に大気圏内飛行を可能としている。
勿論、関節部等の駆動系や出力伝達系にはマグネットコーティングが施され、光学・実弾双方に効果があるDFが標準搭載となっている。
更にゲシュペンストはマオ社の今後の基礎となるべく冗長性・機体内容量が多く取られており、その分機体構造の余裕にも繋がって結果的に信頼性の高さへと繋がっている。
また、DFだけでなく装甲そのものも追加装甲付きMSに匹敵、或いは凌駕する耐久力を誇り、表面には試験的に対ビームコーティングを施している。
対して、A.I.M.グループのバタラは火星支部長でありながら兵器開発においても優れた才覚を持つパプテマス・シロッコ氏が手掛けたもので、性能面に関しては率直に言ってしまうとクラウドブレイカーをより人型に近づけた機体と言える。
クラウドブレイカーⅡはあくまで性能向上版であり、原型機程ではないが宇宙での運用の方が向いている。
このバタラは重力下での運用と飛行を可能にしたA.I.M.グループ初(表向き)の完全人型兵器なのだ。
史実の同名の機体とは異なり、そのデザインには直線の割合が増え、ロームフェラ財団製MSのリーオーやその原型機のトールギスに近いラインとなっている。
が、全体のレイアウトは史実の機体とほぼ同じである。
ムーバブルフレームではなく、敢えて大量生産できるように各部位がそれぞれの機能ごとにユニット・ブロック化されており、戦闘中に切り離す事も可能となっている。
具体的には頭部はセンサーやレーダー等の観測機器、腕部は戦闘のための汎用マニュピレーター、脚部は推進器といった具合に各機能ごとに特化させたのだ。
それ以外の機能は割り切って搭載しない事で内部容量に余裕を持たせて信頼性・生産性・整備性等の向上へと向けている。
これにより既存の軽量かつ実践証明済みのモノコック構造を採用したまま、MSの高性能化に必須なムーバブルフレームに匹敵する高性能化を果たしている。
安直だが、そのままユニット・ブロック構造と呼称しよう。
両肩の小型シールドには内側に三連装ミサイルまたはグレネードランチャーを搭載し、シールド表面には対ビームコーティングが施されている。
脚部においてはは大腿部にメインスラスターを配置、クラウドブレイカー同様に膝下を収納して高機動形態へと簡易変形する。
この簡易変形故に重力下での歩行機能に関しては同時発表されたゲシュペンストに対して低いものの、そもそも自在に飛べるので余り重要視されなかった。
また、大型のプロペラントブースターを収納状態の脚部に連結する事で更なる機動並び推進剤容量の増加による活動時間の増加を実現している。
胴体部は史実の特徴的な肋骨の様な動力パイプではなく、バイタルエリア保護のための頑丈な装甲が設置されている。
両腕は手首にビームサーベルが収納されている他はシンプルなものだが、ハードポイントが設けられ、そこにビームシールドを標準搭載している。
DFが不得手な実弾兵装等に対しても十分な防御力を発揮するだけでなく、白兵戦闘時にも大いに役立つ。
頭部はクラウドブレイカーの系譜なだけあって頭部そのものが一つのセンサーブロックとなっており、後頭部のみ装甲化がされている。
機体性能そのものはクラウドブレイカーⅡとそう大差はないものの、生産性の高さとコストの低さ、完全人型による白兵戦能力の高さを持っている。
また、クラウドブレイカーが準人型故に操縦にはMSと航宙機双方の知識が必要になったのと異なり、一般的なMS操縦の知識と経験があれば十全に動かす事が出来る。
武装面に関しては地球連邦軍共通規格であるユニバーサル規格を採用し、連邦とA.I.M.グループ製の汎用装備は問題なく使用できる。
この一年戦争直後とは思えない高性能かつ量産可能なコストを持った新型機に対し、他企業群並び連邦軍内の開発チーム(テムさん含む)は燃え上がり、我も我もと続くのだった。
その中でトップバッターとなったのがストンウェル・ベルコム、新中州重工、センチネンタルの三社からなる全領域対応人型可変戦闘機開発チームだった。
「変形機構にマグネットコーティング使ってみたら時間短縮だけじゃなく機体剛性も上がりました。」
「縮退炉載せたらエネルギー転換装甲が常時発動できるようになりました。」
「DFのお陰で変形機構故の防御力の問題も解決しました。」
「「「そしてテスラドライブのお陰で全形態で超音速飛行が可能になりました。」」」
お前らいい加減にしろよ、と史実マクロス世界の技術者が怒るようなトンデモ進化を最初期の試作機で達成してしまっていた。
特にマグネットコーティングの存在が大きく、関節構造の塊と言ってもよい可変機にとっては実に有り難いものであり、変形の完了時間短縮のみならず、変形後は電磁吸着を行う事で機体の剛性を高める作用があったのだ。
テスラドライブ?もう説明しなくても良いでしょっ(半ギレ)。
そんなこんな騒ぎながら、新西暦180年は過ぎていったのだった。
なお、参加してたヤザンはアムロを弄りながら全機種に乗っては集ったエースパイロット達と心行くまで模擬戦闘(実機・シミュレーター問わず)を堪能していた。
……………
地球某所 とある街
「すまないな、カマリア。こんな所に呼び出して。」
「いえ…それで、今更何の御用ですか?」
「私達の息子、アムロの事だ。そして、私達の今後の事もだ。」
「それは……。」
「いい加減、ケリを付けるべきだと思ってね。」
二人の話し合いは静かに、護衛の連邦兵士に監視されながら始まった。
次回、テムさん男を見せる