多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
「では、この条件で。」
「はい……。」
カマリアは項垂れたまま返答した。
浮気をしていたのは彼女で、テムは被害者だ。
故に本来なら訴えて慰謝料すら浮気相手込みで求められるのだが、テムはそれを敢えてしなかった。
そうすると返済までは弁護士を挟んでとは言え関係が続く事となり、その内に相手側が逆恨みするとも限らないし、感受性の高いアムロに両親の争う姿を見せたくなかったのだ。
また、そんな事よりも一刻も早くカマリアとの関係を断つ必要があったからだ。
「親権に関してだが、分かっているね?」
「アムロの事は、よろしくお願いします。でも…最後に少しだけ話させて頂けませんか?」
「それは……。」
これに関しては、テムも悩んでいた。
浮気されて別れる相手とは言え、宇宙に出るまではテムもカマリアとの関係の再構築を望んでいた。
自分のためと言うよりも息子のためだが、それでも情はあった。
だが、カマリアは浮気相手と別れる事も、自分と離婚する事も拒んでどっちつかずの立場を取り続けた。
そんな母親の態度にアムロが失望し、嫌悪していた事も、彼女は知らなかっただろう。
それでも母親であり、アムロにとっては心の支えの一つだった。
だが、事態はもうそんな事が出来ない状態にまでなっていた。
「悪いが、出来ない。」
テムは、カマリアのためにも断固とした態度で断った。
それだけ言うと、テムはテーブルを立ち、去っていった。
残されたカマリアは暫くの間その場に項垂れていたが、やがて立ち上がり、去っていった。
これが二人の最後の邂逅であり、以降は生涯出会う事はなかった。
……………
現在、アナハイム・エレクトロニクス社は危機にあった。
一年戦争においては連邦・ジオンにそうと知られながらも商売して利益を上げていたし、それ以前からも地球圏でも常に三指に入る大企業だった。
だが、その立場は脅かされた。
他ならぬA.I.M.グループの存在によって。
本社は北米にあるものの、月を中心に活動し、月に存在する資本の殆どを差配する事が可能な、超巨大な軍産複合企業体。
地球連邦政府すらアナハイムの購入する多くの国債並び多大なリベートにおいそれと無視できない存在だった。
だからこそ、その無法を同じ土俵で正面から押し潰せる相手には弱かった。
弱みらしい弱みすら一切見せない不気味な存在。
しかも火星・木星を中心にアナハイムの倍以上と見られる圧倒的資本力を前にしては、今までアナハイムを支えていたあらゆるものが通じなかった。
一年戦争時の軍需においては辛うじてジムの生産に一枚噛む事が出来たし、ジオンの科学者・技術者並び本国に記録されていた多くの技術情報を入手する事にも成功した。
ここまでなら成功していたし、多少の失敗も許容範囲内だった。
しかし、ここからが問題だった。
異星人の侵略、それで全てが変わった。
太陽系の地球人類は圧倒的外敵の存在を認識、その対策へと動き出した。
これにアナハイムは焦った。
今までやりたい放題やって秩序を乱していた上に、月都市群が中立である事を良い事にジオン・連邦双方へ支援して戦争を長引かせてきたアナハイムは、太陽系全体の連携を乱す存在として既に連邦内の一部に疎まれ、その認識が広がり始めていた。
加えて、戦後の復興という最大の稼ぎ時をA.I.M.に奪われたのが止めだった。
発注元である連邦政府が異星人艦隊の存在に混乱していた事もあって復興開始が遅れた事もあり、終戦速報後間もなく起きた一般市民からの暴動同然の突き上げを受けて焦った多くの地方自治体がA.I.M.からの格安の売り込みに乗ったのだ。
これには地球連邦政府の担当者らに事前にリベートを送って事前契約していたアナハイムは大損した挙句、アナハイムの役割を代替可能な割と全うな企業が存在するという事態に気付いてしまった。
今までのA.I.M.グループは大身ながらも性急な事業展開は行わず、高い技術力と人材の層の厚さを生かした堅実な仕事が売りだった。
しかし、要所要所で大胆な手を打ってきた。
特に火星・木星とその航路の開拓並びエーテル・エンジンの開発等がそれに当たる。
だが、火星・木星に重きを置いていたA.I.M.はこれまでアナハイムと直接対峙する事はなく、今日まで来た。
その均衡が崩れ、軍・民双方の需要を奪われつつあるアナハイムはその規模故に倒産こそ無いものの、太陽系のパワーゲームの盤面から転がり落ちかけていた。
下手すれば最悪、アナハイム重役メンバー全員が逮捕される事態すら有り得た。
故に、あらゆる手段を以て挽回する必要があった。
既に仕掛けていた直接的なA.I.M.への妨害は悉くが失敗し、非正規部門は壊滅してしまったが、今まで構築してきた連邦政府・軍部の一部とのパイプは生きている。
これとジオンからの技術を生かし、起死回生の一手を打つのがアナハイムの目論見だった。
NT関連技術、ジオンが連邦に完全に勝っていた数少ない分野。
その有用性は既に一年戦争において証明された。
NTは対人類だけでなく、異星人艦隊相手でも有効である、と。
ア・バオア・クー戦におけるジオンのNT部隊の活躍、赤い彗星と白い悪魔ら両軍のエース達の異星人旗艦への突入。
最終的には突入部隊による動力炉の破壊(FAガンダムの追加装甲内臓ミサイルが決まり手)に成功、その後の増援艦隊に関してはプロトカルチャーなる存在が残した太陽系防衛無人機部隊の活躍で全滅した。
しかし、個々で言えば通常のパイロットらよりもNTの素養を持ったエースパイロットらの活躍が大きかったのは誰が見ても明らかだった。
また、ドズル中将らの搭乗した巨大MAの存在も見逃せない。
これらを参考にし、アナハイムは次期主力機動兵器採用に関して「ガンダム開発計画」を開始した。
ジオンと連邦双方のMS技術の融合を目指した0号機の開発から、この計画は始まった。
伝説的活躍をしたガンダムの純粋な性能向上型の1号機。
異星人勢力への戦略級火力の確実な投射を目的とした重MSの2号機。
異星人勢力との大規模戦闘を目的とした拠点防衛用MAである3号機。
そして、ジオン系NT技術と連邦系MSの融合を目指した4号機。
だが、この計画を進めるに当たって、4号機には問題があった。
肝心の高いNT能力を持ったパイロットがいないのだ。
当初はソーラーシステム輸送艦隊を壊滅させたサイコザクの様にリユース・サイコ・デバイスの採用による思考直結式にする事も検討されたが、「どう考えても連邦には売れないし、他に売ったら大問題になる」として見送られた。
となると、ジオング等の有線式サイコミュ兵器並び機体の操作、そして反応速度の向上こそが目標となったのだが、これはパイロット込みなら売れるかもしれないが、肝心のパイロットがいないのでは話にならない。
旧ジオン関係者や戦災孤児をサンプルに研究を進めているが、早々高いNT適性を持った者など見つからない。
かといって旧フラナガン機関に所属していた人員や子供達、既にして軍人・軍属として名の知られている者はがっつり監視されているので手は出せない。
では、どうするべきか?
ならば、身内から持って来ればよい。
既にしてガンダムを始め連邦のMS開発計画を成功させたテム・レイはアナハイムの部長であり、その息子は異星人艦隊旗艦に止めを刺した英雄的活躍をしたNTなのだ。
年若く実戦証明済みのアムロ・レイという少年は、今のアナハイムにとって正に打ってつけの人材であり、モルモットであり、広告塔に成り得る存在だった。
この事態をアナハイム内の元部下や同期から知ったテム・レイの行動は早かった。
アナハイムという巨大企業において社内の政治闘争を生き残り、ミノフスキー博士の直弟子である事もあるとは言え、その若さでMS開発部長となり、連邦軍に出向して数多くの功績を上げたテム・レイ。
そんな若き天才が一切の躊躇なく、それまでの努力の果てに掴んだ立場を全て捨てる決断を下し、連邦軍へと身を寄せたのだ。
この余りの動きの早さに、アナハイムは後手に回り、取り逃がすという大失態を晒した。
テム・レイは大戦からこっち、V作戦・RX計画を通して連邦首脳部内の右派、つまりはレビル将軍一派との繋がりがあり、それを通して自身とアムロの身の保護を願い出たのだ。
全ては愛する息子アムロのため。
自らの築いてきた全てを犠牲にしてでも、テムは息子を守る決意を固めていたのだ。
……………
が、こんなシリアスな背景は兎も角として、今日も後のイージス計画と題される開発計画の現場では技術者らがダイス10を出してブレイクスルーを連発、新型機へと反映する日々を送っていた。
その中には勿論、アナハイムから出向中のチームも存在しているのだが…。
「えぇいジムカスタムじゃ話にならん!」
「でも、現行機の改良じゃこれが限界ですよ!」
「マグネットコーティングだけで、テスラ・ドライブもDFもない機体が次期主力機になれるか!」
「一から再設計だ。ジオン組の連中を呼んでくれ。MSならアイツらが詳しい。」
「マオ社とA.I.M.の連中もだ。ムーバブルフレームにユニット・ブロック構想。どちらも量産を前提にするなら必要なものだ。」
「え?マジですか?」
「本社や月の連中なんて気にするな!現場判断だ!」
こうして、新西暦180年末に最初に出来上がったのがジムとその派生系の設計を統合しつつジオン系の技術を一部取り入れ、ムーバブルフレームとマグネットコーティングを搭載したのがネモだった。
しかし、この機体には欠点があった。
「装甲に最新のガンダリウム合金使ったら値段が高騰した…。」
「当たり前でしょうが!何でそれで安くなると思ったんです!?」
「しかも排熱追い付かなくて縮退炉が積めない!」
通常の核融合炉なら兎も角、余りに高出力の縮退炉に適合できなかった上、装甲材の問題でコストが量産機としては問題外となる程に高騰してしまったのだ。
「どうやらお困りのようだね。」
「テム部長!何か案があるんですか!?」
「元部長だよ。今は一技術少佐さ。」
「で、どうしましょう。」
「簡単だ。機体を大型化する。」
「よろしいのですか?」
「あの巨人族を仮想敵とした場合、連中相手に白兵戦で確実に有利になるには大きさも重要だ。それにネモの時点で18mだ。今更2m程度大きくなっても問題はない。」
「その話、私も混ぜてもらおうか。」
「博士!よろしいのですか!?」
「え、ミノフスキー博士!?」
「何、まだまだ若い者には負けられんよ。」
こうして、テム・レイとミノフスキー博士という二人の天才師弟+αを加えたアナハイム出向チームが開発して生まれたのが傑作機と名高いジェガンである。
ユニット・ブロック構想は未だ技術的に未熟であり、耐久性の問題があるため(A.I.M.では解決済み)に敢えてネモ同様ムーバブル・フレームを採用している。
縮退炉を主機関とし、更にマグネットコーティングを間接のみならず全身の駆動系に施した上、DFとテスラ・ドライブを搭載した本機は、正に連邦製MSらしい素直な操縦性と生産性にコスト、信頼性を維持しつつも、既にガンダム以上の高性能なMSとして完成していた。
しかも、その装甲材はチタン合金セラミック複合材を採用しているため、コストもネモよりも低く抑えられている。
そも防御力はDFがあるため、ガンダリウム合金でなくとも十分とされたのも大きい。
武装面に関してもビームライフル・ビームサーベル・シールド・バルカン砲(オプション化済み)と平凡なものだが、ビーム兵器に関しては縮退炉の溢れ出る出力のおかげでその威力たるや、一年戦争期のMAに搭載されたジェネレーター直結式メガ粒子砲に匹敵する威力になっている。
しかも操縦系統もジム系列の改良型となっており、機種転換訓練も簡単に済むという利点もあった。
「まぁ、後はこの機体の売り込み方次第だな。そちらの方は頑張ってくれ。」
「良い仕事が出来た。後は君達の頑張り次第だよ。」
「「「アリアトアッシター!」」」
こうして、イージス計画きっての傑作機が生まれたのだった。
なお、この直後に発表されたガンダム開発計画によって出向チームは面子を潰される事となる。
……………
「あの、海底調査続けてたら、旧日本海溝から休眠状態のエクセリオン級を発見したのですが…。」
「中には多数のエーテル宇宙の技術関連情報があり、更に冷凍睡眠状態のユング・フロイト女史がいました。銀河連邦初代大統領とかデカデカと名札貼ってあります。」
「完品のシズラーシリーズが1個中隊分格納庫にありました。」
「「「どうしましょう?」」」
「」←絶句して固まってる
A.I.M.は今日も大変です。
アナハイムだからね、サンダーボルト版も加味するとこれ位はやりそう。
なお、頑張ってガンダム作っても既により高性能なジェガンがいる模様。