多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
新西暦181年、前年までの混乱を思えば不気味なまでに静かに始まった。
しかし、この静けさが薄氷の上であり、事態が静かに進行しているのは誰から見ても明らかだった。
後世、この時期の事を振り返った人々は「そうするべきであるとは分かる。しかし、本当に出来るとは思ってなかった」と語る事となる。
地球連邦政府は戦時政権であった現政権は解散、連邦政府総選挙が開始された。
これには一年戦争を勝利に導き、サイド3での駐留任務を終えて地球に帰還したレビル元元帥が立候補し、破竹の勢いで勝利、右派勢力を纏め上げて新しい時代の地球連邦政府大統領へと就任するのだった。
元々サイド3での駐留任務は未だ鼻息荒い連中やジオンへの怨恨を抱えた兵士らへと睨みをきかせるためのものであり、情勢が直ぐにでも動くべき状態となった事から急遽帰還する形となった。
本来ならゴップ大将と共に大鉈を振るって軍縮に努める筈が、異星人艦隊の存在によりそれが出来ず、どうあっても軍拡せねば各サイドや各惑星の居住者らは安心できない状態になっていた。
無論、異星人が攻め込んでくるのは今日明日ではない。
だが、10年以内には確実に以前の比ではない戦力で押し寄せてくる。
それを悟っているが故にレビルは軍人から政治家となり、後の事をゴップや自派閥の後継者らへと託したのだ。
……………
地球連邦政府広報特別番組 レビル首相就任演説中継映像にて
『先ず、一年戦争における全ての犠牲者の冥福を祈るため、一分間の黙祷をさせていただきます。皆さんもどうかご一緒にお願いします。………ありがとうございました。』
『この非常時において地球人類が再び一つになれた事を喜びたいと思います。しかし同時に人類を守るために、再び私は若者達を戦いに駆り立てねばならない事を悲しみたいと思います。』
『私を英雄と持て囃す人々もいますが、私は自身をこの場にいる事すら烏滸がましい無能者であると自覚しています。それでもこの地位に就いた以上、この仕事を全うするために全てを投げ打つ覚悟で臨んでおります。』
『あの悲しく空しい戦争が終わって1年。戦争なんてもうしたくない、忘れたいという方も多いでしょう。しかし、我々は生き残るために再び立たねばなりません。』
『こちらの映像をご覧ください。これは全て現実の光景であり、一切の虚飾を排したものだと専門家からの保証付きです。』
そう言って放送されたのは、今まで殆ど民衆には公開されてこなかった異星人艦隊との戦闘の映像。
それだけでなく、土星の長距離無人偵察機により撮影された、太陽系外縁部における地球外勢力と太陽系防衛用無人兵器部隊との戦闘の映像だった。
なお、後者は土星開発公社のものだけでなく、トレミィ側から提供された映像も含まれている。
その内容は極めて多様であり、軍人らですら今まで知らなかった情報も多く表示されていた。
ア・バオア・クーで巨人族の艦隊の圧倒的火力と装甲により圧倒される連邦・ジオン両軍の艦隊。
無数の高機動ミサイルを回避し切れずに爆散するジムやゲルググ。
巨人族旗艦内部に突入するエース達と退路を守るグレートジオング。
太陽系外縁部にて、無数のインベーダー・宇宙怪獣に対してデストロイヤーガンを最大火力で斉射し続ける量産型ヴァルチャー部隊。
全長50kmを超える巨大なインベーダーによって撃滅される無人のトンボ改の艦隊。
ズール銀河帝国所属の艦隊、ゼバルマリィ帝国所属の艦隊、宇宙を埋め尽くす無数の宇宙怪獣とインベーダーの姿。
それらが互いに殺し合い、或いは他の文明へと軍民の区別なく攻撃している。
余りにも衝撃的な映像が、全世界に同時に放映されていた。
『これらの映像は、全て真実です。今もこの宇宙の何処かで地球人類を簡単に殲滅できる勢力が争い合い、鎬を削っているのです。そして、先に地球圏に襲来した巨人族の艦隊は、彼らの総数からすれば1%にも満たない戦力なのです。』
撃ち漏らしたインベーダーに寄生されたヴァルチャーが、カメラアイを三回点滅させると自爆していく。
ザフト所属MSが圧倒的物量によって蹂躙され、プラントが砕かれていく。
全長10kmに迫る超巨大な戦艦プトレマイオスが宇宙怪獣の攻撃により、その艦首を破損してしまう。
レビルの演説は、ショッキングな映像と共に聴く者全ての脳髄へと刻み込まれていた。
『現在の太陽系の状況をこの演説を聞く全ての皆様に一切隠さず話しましょう。今までの私達地球人類はプロトカルチャーという先史文明の残した遺産によって、太陽系の外からやってくる外敵から守られていました。』
『しかし、稼働していた太陽系防衛の無人兵器群の多くは昨年に壊滅、その際に巨人族の艦隊が太陽系内部に侵入し、あの異星人艦隊の襲来が起こったのです。このまま手を拱いていては、我々は絶滅します。どんなに幸運でも植民地化、奴隷化は免れません。』
『私達の住む太陽系、それが含まれる銀河系には、斯様に無数の敵が犇めいているのです。無論、人類とよく似た知的生命体も多くいます。ですが、彼らは国力においては圧倒的に上であり、入手した情報を分析した限り、例え平和的に接触した所で我々を自分達の勢力に加えることはあっても対等な友人として扱ってくれる事は無い、との結論に達しました。』
『巨人族はその性質上戦いこそが望みであり、他の非人型の巨大生命体に関しては他種族を捕食・絶滅させるべく行動しているため、論外であります。』
『現状の地球連邦軍ではこれらに対抗する術はございません。ただ時間を無為にして過ごせば、結末は一つです。』
『私の友人の言葉を借りて、この状況を端的に申し上げましょう。』
『人類に逃げ場無し!』
『我々地球人類は一致団結し、生存の権利を勝ち取らねば、絶滅する他ないのです!』
『無論、未だ復興の終わらぬ地域があり、戦争の傷跡に苦しむ方がおられるのも承知であります。そういった方々への支援や復興を疎かにする事はありません。』
『ですが、我々が生き残るために、後の人々に幸福な未来を残すために!我々は一致団結し、戦いに臨まねばなりません!』
『地球連邦政府は今日この時より、太陽系絶対防衛プロジェクト、「イージス計画」を始動します!』
『以上となります。皆様、ご清聴ありがとうございました。』
この歴史的就任演説後、北米にて進められていた新型機動兵器開発計画は正式に「イージス計画」に組み込まれ、他にも多くの新兵器開発や宇宙艦隊の増強等へと繋がっていく事となった。
……………
新西暦181年 レビル首相就任の一か月前
地球 A.I.M.秘匿ドックにて
「悪いわねー。こんな歓迎してもらっちゃって。」
「いえいえー。他ならぬユングさんですし。」
そこでは現在、解凍したばかりのエクセリオン級並びシズラーシリーズが運び込まれており、その動力をエーテル式縮退炉からTF式縮退炉に換装、更にあちこちガタが来始めていたエクセリオン級の各部のアップデートや修復作業に追われていた。
「で、ユング大統領はどうします?お身体の具合は良いにしても、ここは貴方の生まれた地球じゃありませんけど。」
「勿論戦うわよ。ここは私の生まれ故郷じゃないけれど、確かに地球なんだし。」
それに、この世界のノリコやカズミもいるしね、と小声で零すユング。
その服装はフォーマルなスーツ姿だが、トップ部隊のやたらピッチリしたパイロットスーツでなくても着こなしている辺り、やはり大統領として活動していた経験が活きているのだろう。
「ま、政治はもう勘弁だけどね。流石に疲れたわー。」
「今現在のユングさんの肉体は医療用ナノマシンによって20代初期程度にまで若返り、大抵の毒物や病原菌、ウイルスの類は受け付けません。勿論宇宙放射線病に関しても完治しています。」
「あー失ってから健康は大事と気付くなんて、私も若かったわねー。」
ごきごきと体のあちこちを鳴らして、ユングは苦笑した。
今現在ここにいる彼女は、原作時空の銀河連邦時代から過去へと技術情報を送るべく、各種情報や物資を満載したエクセリオン級と共に時間移動を試みたユング・フロイトだった。
トップをねらえ!ネクストジェネレーションにおいて、不甲斐ない当時の地球帝国に対してタシロ司令らと共にクーデターを起こし、銀河連邦初代大統領に就任した。
その後、宇宙超獣やシリウス同盟との戦乱を戦い抜き、遂には病に倒れ、親友であるカズミとノリコと再会する事は叶わなかったという。
なお、スパロボαでは数少ない特殊技能「天才」を持ち、充実した精神コマンドや高い技量を持ち、乗機と合わせておすすめパイロットの一人であるが、同時にジャイアン級の音痴であり、そのせいでエクセリオンの施設の一部を破壊した事がある。
人格面に関しては戦闘や軍事に関しては人一倍厳しくプライドも能力相応に高いが、普段の人格はフレンドリーであり、二重人格並みに落差がある。
ついでに原作随一の巨乳と設定されている。
「で、起こした上に治したからには私に何をしてもらいたいのかしら?」
「特機技術試験部隊の教官兼テストパイロットをやってほしいんですよ。」
不意に真剣な顔になったユング(妙齢の美人)に対し、トレミィはそう答えた。
「特機?」
「この世界の人型機動兵器は機動性と操縦性・生産性に優れたものとガンバスターの様な大型かつコストが半ば度外視、乗り手を選ぶが超高性能な機体に分かれています。」
「ハイローミックスな訳ね。で、経験豊富な私にお願いって事かしら?」
「現在、特機と分類される機体はまだまだ試作段階であり、初期型が一部形になっただけです。私共は性能をある程度落として大気圏内でも万全に戦えるようにしたプロト・シズラーを出します。」
「あー、他の軟弱な連中は蹴落とせって事?」
「コスト度外視を認めるなら、その程度の性能は必要ですからね。まぁ殆ど選定済みですが。」
言外に「自分の乗るシズラーに勝てる相手はいない」と言っている辺り、本当にプライドの高い女傑である。
メルトランディと出会ったら、速攻で意気投合しそうである。
「ま、良いわ。楽しそうだし、受けてあげる。」
「ありがとうございます。あ、お給金は弾んでおきますね。」
ユング・フロイトは、このA.I.M.グループというのを未だに掴み切れていなかった。
自分の知らない歴史を辿った平行世界からの旅人、否、それよりもっと古くから彼女らは旅人だった。
偶然に偶然が、奇跡に奇跡が重なってこの場にいるが、本来なら自分よりも更にこの世界の地球に関係ない彼女達。
しかし、地球人類に向ける暖かな視線や気遣いは本物で、人類存続のために力を尽くしている事は確かだった。
(見極めるのはまだまだこれからね。はぁ~面倒ねー。)
これがノリコだったら最初から全幅の信頼を置いて突き進むのだろうし、カズミだったら相手の思惑を知っても飲み込んで利用しつつテーブルの下で足蹴にしたりもするのだろう(本人が聞いたら激怒必至)が、自分の様な素直じゃない人間ではこうした隠さず信頼を向けてくる手合いというのは…ちょっと苦手だ。
並行世界の自分と友好関係にあったとは言え、こうも真っすぐに信頼を向けて来られるとちょっと押されそうになってしまう。
下手に政治家なんてやってたものだから、どうにも不純なものがない信頼には弱い。
「あ、戸籍は新しいもの作りますね。名前はユン・グローリアスとかどうでしょう?」
「愛称はユングのままなのね…まぁそれで良いわ。」
にこにこと機嫌の良いトレミィと仕方ないわねぇというか、年下の子の面倒を見るお姉さん的雰囲気を醸しているユングの姿は、似ていない年の離れた姉妹か、或いはやたら若い母と娘か。
「この、泥棒猫…!」
「何してるのSf。」
「いえ、テンプレ系嫉妬プログラムを実行してみただけです。」
「貴女達って本当に個性豊かよね…。」
こうして、銀河連邦元大統領なユングは新しい世界でA.I.M.グループにて交流を深めるのだった。
ユング参戦
スーパーロボット軍団の女教官として辣腕を振るってくれます。
再開の時まで、もう少し。