多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
新西暦181年初頭、この頃の地球連邦宇宙軍は艦隊戦力の再編を始めていた。
が、その内実は揉めに揉め、具体的にどの様な仕様にするべきか迷走した挙句、新型艦艇を採用するまでの繋ぎとして複数の改装案を採用、その内訳で各派閥へ配慮する形になった。
但し、共通の改装部分として宇宙で運用前提の艦艇(サラミス・マゼラン・コロンブス級等)は一律に主機関を相転移エンジンに交換、オプションでエーテル機関搭載の大型ブースターを装備する事で一致している。
これは一年戦争当時、火星・木星駐留艦隊が一時遊兵となった事態を重く見てのものであり、足回りに配慮しながらの早急な装甲の増強が難しいが故の改装だった。
で、改装の内訳は以下の通りとなる。
1、火力特化改装
これは大戦初期から対空砲塔の増設程度でほぼ無改装のサラミス級・マゼラン級を対象に行われた。
真空中の相転移エンジンという既存の熱核融合炉よりも遥かに大きな出力を生かして主砲の威力・射程向上、それに伴う放熱系とレーダー・センサー系の更新という無難なもので纏まっている。
また、機動兵器の接近対策に砲塔の配置も見直し、死角を減らした上で更に対空機銃の増設を行っている。
大戦初期のマゼラン級と比較した場合、出力の差で火力特化サラミス改の砲撃能力はほぼ互角になる。
加えて、DFを搭載して艦体全部を覆っているので、メガ粒子砲での撃ち合いならば一方的な展開となる。
2、MS運用特化改装
既存のサラミス改(上甲板の武装を撤去してMS運用プラットホームを設置)では火力も搭載数も貧弱であり、中途半端であるとして火力特化改装に比べ、より大胆な改装が行われる事となった。
上甲板は元のサラミスの仕様に戻した上で、艦体両舷の武装を撤去、MS運用プラットフォームと短いながらも電磁カタパルトを備えたブロックを接し、その部位にMS運用能力を担当させている。
このブロック自体は元々空母に改装したコロンブス級(145m、サラミスは228m)のコンテナ部分を流用したもので、対空機銃はあるものの、重量が増加した分だけ機動性は低下している。
左右それぞれのブロックがMSを3機ずつ、合計6機をオプション含めて長期間運用できるため、軽空母化に近い改装と言える。
これはペガサス級を参考にした改装であり、特に短いながらも艦体左右にカタパルト付きMS向け格納庫が設けられている点が似ている。
このレイアウトは後のアーガマ級やラーカイラム等にも受け継がれた構造で、信頼性も高かった。
また、もしもの時はブロックを切り離して軽量化・ダメコンをする事も可能な上、ブロック自体の構造は簡単かつ既存品の流用なのでコストも大胆な見た目の変化に比べれば安い。
多量の物資も積めるので長期間の任務を可能な上、前述した追加ブースターを装備すれば、十分に高速で移動できる。
反面、艦体の横幅が倍近く大きくなった事で密集陣形を取るのが苦手になっているだけでなく、既存ドッグだと少し手狭になっているのでマゼラン級向けの大型ドッグを使用する必要があった。
こうした改装ラッシュは各LPで続くコロニー建造と並んで各大企業群は大喜びで着手した。
が、残った艦艇群の数は未だ多いものの、とてもではないが太陽系全体を守るには数が足りない。
そのため、新たにこれらの改装を加えた状態での建造も少数ながら行われた他、比較的損傷の少なかったジオン共和国所属のムサイも近代化改修を受けた上でパトロール任務等に駆り出される事態となった。
こうした事情から、二種のサラミス改の建造・改装にあたってはドックの拡張・増設も各地で行われた。
これが後の大型艦の建造ラッシュに役立つ事となるとは知らずに。
が、今はそんな事は一部を除いて誰も知らず、今後何年もずっと続くデスマーチ体制の始まりに大忙しとなるのだった。
………………
最初こそ揉めたものの何とか軌道に乗った艦隊再編計画に対して、艦載機たる次期主力機に関しては大問題が起きていた。
『調達コストが高過ぎるので縮退炉搭載機の量産は無理だ。』
開発担当者一同が集まる会議室にて、ゴップ大将が告げた。
「やはりダメでしたか。」
『仕方ないよ、こればかりはね。』
「既存のジムはジェガンを参考にアップデートするとして。」
「問題は縮退炉のコストですか。」
縮退炉。
ブラックホールエンジンの発展系であり、内部にブラックホールを要するこの機関は極めて膨大なエネルギー生成能力を持つ。
未だA.I.M.グループしか生産できないこのエンジン。
エーテル宇宙にて採用されていたものと比較してサイズ当たりの出力比は低いものの、それは生産性・信頼性、何よりも内部のブラックホールの安定性を念頭に再設計したものだからだ。
そのため、現在の地球人類の技術でもギリギリ生産できるのだが……
『流石にあれ一個でジム3機分ではなぁ。』
搭載してるプロトジェガンやバタラ、ゲシュペンストにクラウドブレイカーⅡの機体本体の値段よりも高いのである。
現在、宇宙軍艦隊の再編計画も実行に移され、戦略兵器の開発も始まっている。
加えて、連邦政府は本来今後の数年は復興に費用を投じる予定だったのだ。
なのに異星人の登場によって軍拡を余儀なくされている。
来年度以降なら兎も角、今年度は既に限界が見えていた。
そして、A.I.M.も資金なら兎も角、その生産能力はフル稼働状態で、早期の新型機生産は難しかった。
『現状、先ずは数が欲しい。そのためにはMSのまま高性能化をしていく必要がある。』
「となると、それに近しいコストならば大量生産も良し、と。」
ゴップ大将の言葉に食いついたのはイスルギ重工の担当者だ。
クリムゾングループと新たにロームフェラ財団から来た担当者らもその言葉に期待を寄せる。
性能面で水を開けられていた機体を開発していたが、コスト・生産性という面では彼らの持ってきたリオンやステルンクーゲル、リーオーは高いものがあったからだ。
反面、縮退炉の搭載には機体剛性が足りなさ過ぎるため、下手すると空中分解や暴走の危険すらあった。
しかしジェネレーターを通常の核融合炉とするならば、その差はかなり縮まり、問題も消える。
「仕方ありませんね。予備として開発していたプラズマジェネレーターを搭載しましょう。」
「性能は落ちますが、それでも既存のミノフスキー式核融合炉よりも高出力ですからね。」
が、彼らの期待はあっさり裏切られた。
『その場合のコストはどうかね?』
「機体含め、ジムの1.3倍といった所かと。オプションや予備パーツ含めた初期費用となると2倍になります。」
「この開発で得られたデータをフィードバックしたジムの改修計画も進んでいます。」
マオ社とA.I.M.の担当者に追随するように、アナハイムの現場責任者からの声も上がる。
現段階ではジムⅡと命名予定のそれは、史実のジムⅢに近い外観や武装構成をしているが、搭載予定のプラズマジェネレーター並びDFとテスラドライブにより、スペックデータは第一次ネオジオン戦争当時のザクⅢやドーベンウルフ等の高級量産機とほぼ同格となっている。
ビームライフルも当時の戦艦クラスとされたガンダムのものを超える威力であり、ゲルググと正面から戦っても容易に撃破可能だ。
が、仮想敵である異星人勢力に対してはやや非力な面が否めなかった。
『今後、対異星人に向けた次期主力機を採用するにしても、数を揃えるための機体は必要だ。』
「であれば、先ずはリオン系の発展型を先行生産すべきかと。」
リオン系の発展型、即ちガーリオンである。
イスルギ重工とクリムゾングループの共同開発のこの機体はテスラ・ドライブとDFの搭載を前提とした機体であり、操縦系統も機体搭載のオートマトンによる補佐で殆ど航空機と同じ要領で操縦可能となっている。
但し、火力面においてはやや貧弱で、ビーム兵器を搭載できていない。
これは大量生産前提でジェネレーターを既存のものに限定したためにDFとテスラ・ドライブに出力を食われた結果であり、主力兵装はレールガンとミサイルとなっている。
このレールガンは解散した旧プラント技術者を招いて開発されたものであり、小口径から大口径と取り揃えているが、ビーム兵器に匹敵する火力を発揮するには大口径化が必須であり、そうすると実質的な戦闘継続時間は減っていく事となる。
が、その徹底的なまでに洗練された単純な構造は製造コストが安く、費用対効果も大きく、数を揃えるには最適と言える。
これにはバタラに採用されたユニット・ブロック構造を参考にした事も大きく、町工場レベルでの生産すら可能だった。
『ふむ、それだと君の所が不利益になるが?』
「この程度で潰れる程の体力ではありません。というか、今も稼ぎ過ぎてる状態ですし。」
事実である。
火星・木星における最大勢力にして実質的な統治者とも言えるA.I.M.グループ。
現代の中東とも言える最大の資源地帯を押さえる彼女らにとって、この程度の損失など幾らでもリターン可能なのだ。
生産能力の多くを未だヴァルチャー部隊へと割り振っている事もあり、今暫くの時間が欲しいのが本音だった。
まぁ中小企業や各コロニー向けに生産性の高いバタラの生産ラインを設置し、不安に苛まれているコロニー向けの防衛戦力として販売する事も出来るのだが、今はまだ余裕があるためにしないでいる。
「ですので、特機構想に関しては…。」
『分かっているとも。まぁ採用されたとしても少数だ。その辺は納得してくれたまえよ?』
「承知しています。」
こうして、最初のイージス計画の結果が世に出る事となった。
次回、特機構想開始