多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第10話 新型主力艦艇

 新西暦181年 秋

 

 「いい加減、次期主力艦艇を決めようか。」

 

 当然だが、揉めた。

 今後十数年は採用されるだろう連邦宇宙軍主力艦艇の採用である。

 現在、各大企業群は復興特需で大きく利益を上げているが、それに匹敵する利益がこの案件にはある。

 そして、復興は10年もせずに終わるが、建艦とその後の整備や改修は長く続くのだから採用を勝ち取った企業を潤してくれるだろう。

 それ故に、大企業は本気でこの案件に出すべく案を以前より纏めていた。

 これに加え、連邦宇宙軍内部の各派閥もまた鎬を削っていた。

 以前にも言った通り、艦隊決戦志向の派閥と、艦載機運用志向の派閥だ。

 これに加え、今年の冬には都市型移民船や異星人艦隊の残骸、そして南アタリア島とアイドネウス島に落着したメテオ3の二号と三号の解析結果から初歩的だがフォールド技術を実用化する事に成功する。

 今までにない距離を一瞬で移動できる空間転移並び長距離通信を可能とするフォールド技術。

 これは人類が辺境の星間国家からこの銀河に自らの生存領域を主張できる勢力となる第一歩であった。

 

 「次期主力艦艇については、フォールド機能並びフォールド通信の採用を予定している。」

 

 故に、こんな言葉が出るのは当然だった。

 しかし、フォールド技術はまだまだ未解明な所も多いし、試験運用して改めて洗練しなければ、という慎重論も多い。

 

 「但し、後の改修でフォールド技術が搭載可能ならば、現状今直ぐには問わない。」

 

 これには各企業群の担当者も胸を撫で下ろした(A.I.M.除く)。

 そして、肝心のフォールド技術だが、各種先進技術EOTの艦艇向け試験運用が決定した。

 本来ならばサラミス級の改装待ちの艦をベースに行うのだが、余りにも搭載する予定の先進技術(艦艇用の大型テスラドライブや大型縮退炉、フォールド技術等)、これに加えてISA戦術の試験も行うべきとあっては、最早新造した方が早いという結論が出た。

 これには以前、連邦内部でもミノフスキークラフト搭載の万能母艦として候補にあがっていたスペースノア級の設計案が採用される事となる。

 これは一年戦争当時、V作戦においてMS運用母艦にホワイトベースが採用された事への反対派閥への対価とも言える事情があった。

 が、艦載機運用能力に関してはMS並び特機の運用のためにはやや低く、後に一部を設計を改めた後期スペースノア級が正式に採用、生産される事となる。

 それでもその設計案は拡張性・信頼性・内部容量全てが高い事から、初期設計をほぼそのままに非地球人由来の各種EOT(Extra Over Technology)の試験運用艦として一番艦スペースノアの建造が開始された。

 この艦には前述のフォールド技術並び艦艇用大型縮退炉(サブに大型核融合炉)にテスラドライブ、DF等が搭載されており、後のスペースノア級と同じくブロック構造をしている。

 この構造のために生産性も高く、艦首モジュールを用途に応じて換装できる他、ブロックの交換により改装も比較的容易に可能となっている。

 更に有り余るエネルギーを利用するためにディストーション・ブロック(ブロック毎にDFを展開、被弾時の損傷を最小限に留める)を採用し、これまでのサラミス・マゼラン級と比較して異常に打たれ強くなっている。

 更に加えて、あくまで万能戦闘母艦であるスペースノアに対して、後の太陽系外開発に必要となるノウハウやデータを積むべくスペースノア級の設計と搭載した各種EOTを一部流用した外宇宙探査用超長距離航行艦としてヒリュウの建造も決定された。

 この二隻の設計を元に特機やMSといった人型兵器の艦載機運用能力を付与して完成したのが後期スペースノア級万能母艦群である。

 これらは艦首をそれぞれ用途別に変更する事で差別化を図りつつ、後の戦乱でISA戦術を敵司令部へと敢行、幾度も戦略を覆す程の英雄的戦果を上げる事となる。

 が、これだけ高性能だとどうしてもコストが高くなり、あくまで特務部隊向けの少数建造になるのだった。

 これらスペースノアとヒリュウから得られたデータをフィードバックする母体としてどの様な艦艇が妥当か。

 更に追加で要求仕様が連邦宇宙軍から提出された。

 

 1、サラミス・マゼランに勝る航行能力

 2、異星人の戦艦に有効な火力と防御力

 3、大気圏内部での運用可能

 

 これもまた大揉めした。

 特に3、これが鬼門だった。

 別に高性能な艦艇、それ自体は難しくない。

 昨今のEOTによりサラミス・マゼランを超える性能はコストを無視すれば割と簡単に確保可能だ。

 だが、大気圏内での運用となると話は異なる。

 最低でもテスラドライブ搭載は必須で、空力に配慮した船体構造にするか巨大なDFを常時展開する必要があり、それらを十全に動かす動力源の確保も必要となる。

 が、これらを満たすとコストが途端に跳ね上がる。

 それを宇宙と地上両方揃える?

 地上で戦う=本土決戦になる程に押し込まれるという事なのに?

 この三つめの要求に対しては「宇宙を優先的に戦力整備し、地上は既存の水上艦艇にすべき」という意見が噴出した。

 しかし、一年戦争において通常の水上艦艇はジオン水泳部(大体ズゴックとアッガイ)によって大分数を減らされており、頼りないという印象が地球在住の人々の間では根強かった。

 また、そんな人々からすれば地上に配備される軍、その象徴ともなる軍艦は自分達を守る最後の盾なのだ。

 それを疎かにする事は市民が軍と政権を見放す事に繋がりかねない。

 だからこその三つめであるのだが…

 

 「別にこれ、地上と宇宙別々の艦艇を採用しても大丈夫だよな?」

 「だな。」

 

 無理して同じものに揃える必要はない。

 取り敢えず最新技術を投入していると分かりやすく市民に納得させる事が出来る艦艇ならば良いのだ。

 幸いと言うべきか、これに関してはガルダ級とストーク級にテスラドライブ並び完全ジェットエンジンを搭載した改装を施した上でハイローミックスで採用され、地球内全土を常に空から監視する防空即応態勢を築く事となる。

 地上においては旧型となった大艦巨砲主義の権化であるビッグトレー級を解体、そのホバー機能を継承して水上艦艇としても活動可能なライノセラス級(衝角ではなく大型DFジェネレーターを装備、腕型5連ビーム砲も通常の連装砲塔へ交換)が採用され、高い砲撃能力と艦載機運用能力を併せ持つ移動基地とでも言うべき存在として運用されていく事となる。

 が、これは全て合わせても50に届かず、あくまでも既存技術を土台にEOTを多少取り入れたに過ぎないため、そこまで価格が跳ね上がる事もなかった。

 その分の地上軍の費用は既に正式採用が決定されたVFへと割り振られる事となる。

 そして、宇宙軍の次期主力艦艇のコンペが本格的に開始され、以下の案が提出された。

 

 1、ネルガル・クリムゾングループの「ナデシコ級戦艦」

 GB・DFの使用を主眼としており、ブリッジと乗員の生活スペース兼脱出艇を兼ねたブロック、艦載機運用設備とGBの搭載された中央胴体ブロック、左右両舷のディストーションブレードと相転移エンジンが繋がったブロックから構成される。

 艦隊戦において確実に敵異星人の戦艦を撃破するべく、強力なDFを全体に展開可能なDブレードと防御の難しい空間を歪曲するGBを使用するに最適な艦体形状を模索した結果、このような構成になった。

 装甲自体も決して薄くはなく、DF並びDブロック構造によって見た目以上に堅牢である。

 が、その性質上戦艦や巡洋艦と言うよりも砲艦に近く、艦載機運用能力も艦の直掩分しかない。

 またGBを正面にしか向けられない、大気圏内での運用も可能だが主機関が縮退炉・サブが相転移エンジンなので宇宙での運用とで差がある事がネックとなっている。

 全長約300m。 

 

 2、ジャブロー工廠の「クラップ級」

 サラミス級を始めとした、既存の連邦宇宙軍所属艦艇の発展形である。

 改良に改良を重ねて未だ第一線にあるサラミス級の優れた設計に昨今重要な艦載機運用能力と高い航行性能を付与する形で再設計した上で、船体を延長する事で容量を確保している。

 長い電磁カタパルトを備えた艦首と格納庫を中に持つ胴体、戦闘時と通常時で二つあるブリッジ、艦体後部で左右に広がる特徴的なエンジンブロックからなる構成は、どことなくジオンのムサイ改を彷彿とさせるシルエットを持つ。

 主砲の数は減ってこそいるものの、左右のエンジンブロックにある最新の艦艇用核融合炉二基分の出力により威力と連射力が上がり、射程や射撃精度もレーダー・センサー系が最新のものを使用しているために強化され、総合的な火力は寧ろ向上している。

 また、船体から突き出ているエンジンブロックの換装で今後も長く使用可能なように設計されている。

 艦載機運用能力に関しては既存の前期サラミス改を上回り、後期サラミス改(艦載機運用特化型)にも匹敵する。

 全長300m

 

 3、アナハイム・エレクトロニクスの「アーガマ級」

 MSを始めとした艦載機運用能力を重視しており、ホワイトベース等のペガサス級強襲揚陸艦を参考に設計されている。

 左右両舷の電磁カタパルト、船体中央にアームで繋がり回転して疑似重力を発生させる居住ブロック、戦闘時は船体に格納されるブリッジ等、他には余り見られない特徴を多く持つ。

 武装は単装メガ粒子砲×4、連装メガ粒子砲×2、多連装ミサイルランチャー×1、他対空レーザー機銃多数。

 一見すると重武装だが、他の巡洋艦と比べて必要最低限の武装しか持たず、攻撃能力の多くは搭載する艦載機に頼っている。

 そのため、良好な航行能力と合わせてどちらかというと軽空母に近い性質を持つ。

 全長320m

 

 4、A.I.M.の「るくしおん級」

 安心と驚愕のA.I.M.が贈る人類初の亜光速巡洋艦である。

 同社が持つEOTをふんだんに取り入れて設計されたこの艦は曲線で構成され、古い時代のロケットにも似たデザインを持つ。

 基本装備は多数のレーザー砲と大型ミサイル、多数の対空レーザーバルカンから成る。

 この内、大型ミサイルは新開発の光子魚雷、即ち縮退炉開発によって得られたブラックホール生成・操作技術から生まれたブラックホール爆弾であり、数発で地球型惑星を崩壊させる事も可能な戦略兵器である。

 設計段階で既にしてフォールド技術が取り入れられ、通常航行ですら最大加速は亜光速に到達する程の速力を誇る。

 テスラドライブを始めとした重力・慣性制御能力も他の艦艇よりも高出力かつ高精度であり、太陽系内なら文字通り何処へでも行けるし、何処でも運用できる。

 反面、艦載機運用能力に関しては特別尖ったものはなく、20m半ばまでの機体を4機まで運用可能となっている。

 

 

 「「「「「ちょっと待て最後!!!」」」」」

 

 余りの事態に関係者一同が集まる重役会議で突っ込みが入った。

 

 「どうしましたか皆様?」

 「いや、突っ込み所しかないでしょう!?」

 「何だよ亜光速って!」

 「それよりもブラックホール爆弾だよ!何時の間にそんなもん実用化してたの!?」

 「っつーかブラックホール爆弾だけ他でも使用できません???」

 

 ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー騒ぐ各企業の担当者らを尻目に、連邦宇宙軍側の関係者がこそこそと話し合う。

 

 「この際ですし、一度全部作ってみては如何です?」

 「確かに、どれも少々捨てがたいですし…。」

 「………仕方ない。上の指示を仰ごう。」

 

 こうして、連邦宇宙軍の次期主力艦艇建造は順調に遅延するのだった。

 

 

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