多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
「操縦系統、統一した方がよろしい気がしますね。」
ぼそりと呟かれたこの一言に、各企業群の担当者の間でカーンとゴングが鳴った気がした。
現在、主力機であるMSジムの系統は一貫してMS操縦のための独自のものとなっている。
が、これは戦時故の突貫工事だったが、可能な限り操縦自体は簡易化した上で機体側のOSで補佐する形を取っている。
だからこそガンダムの学習CPUの様なデータの蓄積から直に動作の最適化までやってくれる代物は半ばオーパーツ染みている訳だが。
それはさておき、現行のMSは全て通常のコクピットに操縦棹や計器にボタン類、正面や左右を映した大画面ディスプレイ、その脇に後方や下方を映した小さいディスプレイが配置されている。
これは史実の全天周モニター並びリニアシートでは機体の内部容量と電力を無駄に使用する、正面以外を見るためには一々その方向に顔を向けねばならない(機動時にGが発生していると難しい)、背後しか固定する場所がないリニアシートでは安定性に欠ける事等が指摘されており、アナハイムから提案はあったものの没となった。
そのため、ジェガンやバタラ、ゲシュペンスト等の操縦系統は多少のボタンや計器類が増えたものの、一年戦争時のジムとその改修型から大きな変化はない。
問題なのはVFとガーリオンである。
この二機種は元々航空機から発展しており、その操縦系統も航空機から発展したものである。
VFは変形機構の関係で航空機からレバーが動いてMSのものへと変更され、ガーリオンは航空機のものとほぼ共通だがオートマトンによって補佐されている。
つまり、航空機パイロットからの転向が容易なのだ。
しかも、VFはその展開力や既存空母や基地施設での運用も容易で、VTOLや低空をホバー飛行する事も可能な事から既に先行生産が始まっている。
それぞれに良さがあり、それを活かすための操縦系統。
それを変えるのは機体の特性を殺す事に繋がりかねない。
どちらに寄せるかで、一瞬にして二つの派閥が出来てしまった。
「で、解決方法は?」
「どれに乗ってもある程度は動かせるように思考操縦機能を補助的に導入してみましょう。」
「「「「「そんなのあるの!?」」」」」
いつもの突っ込みがA.I.M.担当者へと入った。
が、無視されて説明に入られた。
「こちら、リユース・サイコ・デバイスから発展させた思考操縦補助システム、名付けるとしたら…サイコセンサーでしょうか。」
「これは……ノーマルスーツも含めるのか?」
「その通りです。」
仕組みとしては簡単だ。
ノーマルスーツ全体でパイロットの脳や脊髄をリアルタイムで監視、搭乗したパイロットの思考をある程度まで読み取り、機体の動作へと反映させる。
が、通常の操縦方法がその内容と異なっていた場合には通常の操縦の方を優先させる。
ある程度までなのは、余計な情報(くしゃみしたい・何処かがかゆい・トイレしたい等)を遮断する必要があるためであり、この遮断無しで反映すると余計な行動まで実行してしまう。
なお、これの開発に成功した際、派遣されていたカーラ博士とダリル中尉他サイコ・ザクパイロットら(失った手足は部分クローンで治療済み)は「大戦中にこれが欲しかった…!」とサイコ・ザクに乗るために失った手足を思って涙したという。
直後、治療した手足を傷つけるような真似は止めてくださいとA.I.M.医療担当のナイチンゲール女史(生体式自動人形)に捕まって説教されていたが。
「これにはスーツだけでなく機体のCPUの方を当社のものに乗せ換える必要がありますが、どの機体にも搭載可能です。」
「「「「「採用で。」」」」」
こうしてまた一つ、A.I.M.の技術が世界へ広まるのだった。
なお、アナハイムはこれを盗用し、後日バイオセンサーを完成させるも、余りの不安定さと搭乗者への負担の大きさから本格的な採用は見送った。
……………
さて、ちょっと忘れてたVFの話をしよう。
VF-01バルキリー
この機体はYF-0フェニックスの問題点を洗い出し、DF・テスラドライブ・マグネットコーティングを採用し、排熱の問題がとうとう解決できず、高価な縮退炉ではなく二基のプラズマジェネレーターを搭載していた。
それでも本家よりも高出力かつ高性能であったが、巨人族との近接格闘戦に入った場合を考慮して、ガンポッドには折り畳み式銃剣、手首にはビームガン兼ビームサーベルを追加する形で完成した。
航空機のファイター、中間のガウォーク、ヒト型のバトロイドと三形態へと可変可能な上、テスラ・ドライブ停止時であっても極めて高い機動性と展開速度(オプション無しの大気圏内最大巡行速度マッハ4)、大気圏内外に水上母艦や陸上基地でも無改造で運用可能である事から早々に正式採用・配備が決定した。
開発計画から実質的に一抜けした事に、担当者は他の計画参加者から罵声を浴びせられたが、その後も参加して他企業の仕事を助けつつ、更なるデータ収集を行うのだった。
また、イージス計画ではVFに関してはその後、追加武装の開発が始まった。
そうして出来上がったのが、ガンダムやジェガンのFAプランを参考にして開発されたスーパーパックとアーマードパックである。
前者は機動性優先の増加装甲兼武装兼追加ブースター群であり、後者は火力と防御優先となっている。
これらは主に宇宙での運用が前提だが、大気圏内でもDF発生中なら問題なく運用できる。
前者のスーパーパックの外観は史実のものだが、後者のアーマードパックの外見はVF-2SSのスーパーアームドパックに近い。
どちらも変形には干渉しない構造を取っており、重量増加分も追加されるスラスター群で補う事で寧ろ強化されている。
整備の手間こそ増えるものの、強力なオプションとして以降のVFシリーズの共通装備となるのだった。
このVF、今は何処で主に運用されているのかと言うと、現在は未来のマクロスであるメテオ3の二号が落下した南アタリア島に建設された基地にてロイ・フォッカー中佐らによって一個中隊が機種転換訓練を行っており、今後も増える見込みだ。
「よし、粗方解析終わった事だし、この艦も本格的に改造して使えるようにしてみるか。」
そして、彼らのすぐ側で拾い物を使い物にするとんでもない計画が進んでいた。
後に設立される地球連邦軍特別宇宙軍SDFにて代表的な艦となるマクロスの完成まで、もう間もなくだった。
……………
?????
それは何処かの時代、何時かの場所、誰かの夢見る世界の出来事。
あらゆる時間と空間から集まった機械の民草とその始祖は、たった一つの目的のために巨大な一つの存在へと自らを昇華させるべく融合を開始していた。
一にして全、全にして一、個にして群、群にして個。
矛盾を体現するその存在は星々すら砂粒に感じられる程に途方もなく巨大で。
しかし、それでも今なお成長し続ける機械の大地母神だった。
『La lalalalala…』
かつて共に暮らした同胞達とも一人残らず吸収し、巨大な銀河系すらその腕の中に収められる程に肥大化しながら、それでも彼女の目的には未だ至らない。
大陸より大きくなった。
星より大きくなった。
太陽系より大きくなった。
ガス星雲より大きくなった。
そして、ブラックホールすら操り、銀河すら超えた。
それでもなお、彼女の願いを叶えるための領域には未だ至らない。
無限の平行世界から無限の自分達を呼び集め、一つとなりつつある彼女は、未だに成長期なのだ。
何れ至るまで、彼女は暇潰しのために世界を癒し、宇宙を震わせる唄を何ともなしに口ずさむ。
『よぅ、起きてっか?』
そこにひょっこりと現れた珍客は、古い馴染みだった。
多次元世界において全てを滅ぼそうとする者へと永劫に挑み、戦い続ける進化する機械の化け物。
その名を、ゲッターエンペラーと言った。
『…久しぶりねぇ。』
『何だ、起きてたのかよババぁ。』
『否定しないけど、余り口が悪いのは感心しないなぁ。』
間延びした口調での叱りに、ゲッターはわりぃわりぃと反省した様子もなく近付く。
『それで、どうしたの?』
『あぁ、そろそろだって話だ。』
『そっかぁ…。』
その言葉に、彼女は余り驚く事なく受け止めた。
『驚かねぇのか?』
『貴方が通信じゃなく態々来るのだから予想はつくもの。』
前回は辛うじて撃退した。
しかし、今回は分からない。
向こうも成長してるかもしれないし、或いは配下を増やしているのかもしれない。
分かるのは相手が途方もなく強力で、自分達が力を合わせてもなお届かないかもしれないという事だけ。
『あの野郎、今度こそぶっ潰してやらぁ!!』
『はいはい。あんまり先走っちゃダメよ~。』
ゲッターと彼女は永劫に近い時間の果てに、もう幾度目かも分からない絶望的な戦いへと赴くのだった。