多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第12話 試験艦艇群と女王様

 新西暦182年、春

 

 昨年から続く連邦宇宙軍艦隊再編計画のための試験艦艇群の第一号艦が建造を完了した。

 同時期に建造完了したEOT試験艦であるスペースノア並びヒリュウ、そしてビアン博士率いるメテオ3郡調査委員会もとい看板を変えたEOTI機関によってメテオ3の二号を改装して建造されたマクロスを連れ、太陽系外縁部の探索へと向かう予定だ。

 とは言え、未だ艤装が不完全であり、出発は夏を予定している。

 

 「その前に、積んでいく艦載機はどうしましょうか?」

 「VFはMSよりもファイター形態なら多く積めるので確定として…。」

 「るくしおんには試作特機二機を搭載する予定です。」

 「ナデシコは4機、クラップとアーガマは6機。一緒に行くマクロスとヒリュウ、スペースノアは大型艦だからかなりの搭載能力がありますけど…。」

 「出来るなら艦隊防衛のための戦力も欲しい所ですね。」

 

 ヒリュウは艦底部に揚陸艦の格納庫があり、ここに準特機なら2機、大型特機なら1機分の容量がある。

 また、二つの電磁カタパルト付き格納庫には8機分の艦載機運用能力が確保されている。

 これに対し、マクロスは全長1200mを超え、その艦載機運用能力も極めて高く、内部に都市すら存在している。

 具体的な艦載機運用可能数に関しては未だ数値は出ていないが、それでも100は下らないのは確定している。

 左右両舷に接続された旧型を改装した宇宙空母により、30m級特機ならば10体は運用可能となっている。

 

 「マクロスには主に艦載機としてVF、対空砲台兼直掩として空間戦闘仕様のアサルトドラグーン並びヴァルキュリアシリーズを配置する予定です。」

 「艦隊防衛用のジガンスクードをもっと配置したかったんですけどね…。」

 「試作機だけとは…。」

 「サイド駐留艦隊からの発注が殺到しましたからね…。」

 

 ジガンスクード。

 その性能は艦隊ならび拠点防衛用として最適なものだった。

 広域に展開可能なDF、広域を薙ぎ払えるGB、そして最後の盾となれる過剰なまでの防御力。

 更に要重力波を発信する事で受信アンテナを備えた味方機へのエネルギー供給すら可能とくれば、現状においては異星人に対する碌な対抗戦力の無い各サイドの駐留艦隊から「艦隊や最新機作ってるの分かるけど、それは兎も角今使える戦力をくれ!」という悲痛な現場からの叫びを無下にする事は出来なかった。

 一年戦争にて多くのコロニーが危機に晒されてから、まだ2年しか経っていない。

 当時の事をトラウマとして刻まれた市民は多く、ジオンが実質的に敗戦した現在、仮想敵である異星人の戦力に対して非力な連邦軍の戦力増強を望む声は後を絶たず、暴動に近い事態に発展する恐れがあった。

 そこに現れたのが、5機もいればコロニー全体をDFで覆う事の出来る「最強の盾」ジガンスクードだった。

 コロニーを守るため、市民を安心させるため、ジガンスクードの早期配備並び先行生産が決定、完成した機体は順次サイド駐留艦隊から配備される事となった。

 

 「限られたリソースには、是非我々のトールギスⅡをどうぞ!」

 「はいはい、嬉しいのは分かったから落ち着いてねー。」

 

 今まで碌に良い所の無かったロームフェラ財団の担当者らが喜色満面に提案する。

 彼らの上司が今まで他企業の技術(特にA.I.M.由来)を取り入れる事に難色を示していた事から、殆どEOTを取り入れる事が出来なかった。

 その結果、他企業群がドンドン高性能かつコストや生産性も良好な最新鋭量産機をロールアウトしていく傍らで置いて行かれるだけだった。

 この事態に対し、トレーズら若手が中心となってロームフェラ財団上層部を説得、遂にEOTの導入に許可が下りた。

 加えて、今までロームフェラ財団の恥部(5博士に逃げられて未だ捕捉できず)として秘匿されていたプロトタイプ・リーオーの再開発許可が下りた事も大きい。

 ジオンがMSを開発するよりも前に開発されたプロトタイプ・リーオーことトールギス。

 テスラ・ドライブ無しではパイロットをGで圧死させる程の機動性を誇るこの機体は、ビームと物理的衝撃双方に対して極めて頑強ながら軽量なルナチタニウム系合金の発展形であるガンダニュウム合金が使用されていた。

 OSやアビオニクス、ジェネレーターこそ最新のものへと換装する必要があったが、恐竜的進化を続ける人型機動兵器開発において旧式に分類されるも、その設計は極めて先進的であり、未だ高性能を維持していた。

 この機体を徹底的に解析しつつ、常人にも操縦可能としたのがリーオーとなる。

 しかし、現状のEOT搭載機と比較して余りにも非力なリーオーでは話にならなかった。

 EOT搭載にあたり、機体がより大型かつ頑強である事から以前より開発班から目を付けられていたプロトタイプ・リーオーが試験用機体として選ばれた。

 最新のプラズマジェネレーターとDF、そしてテスラ・ドライブ。

 これらを搭載したトールギスⅡ(顔だけⅢ)の性能たるや、プロトタイプ・ジェガン(縮退炉搭載につき戦闘可能時間が短い)を超え、模擬戦でもパイロット次第な所もあるが4:1の戦績を残している。

 が、余りに高い機動性にパイロットの腕が追い付かない事例が多く、一般的なパイロットには過ぎた機体だったため、そのままでの量産は見送られた。

 現在、このトールギスⅡのデータはリーオーの設計と統合され、更にジオン系技術者も加えたチームによって後にサーペントに結実、欧州方面軍を中心に配備される事となる。

 サーペントの性能は量産型汎用MSとしては高く、ほぼ同時期に配備されたジェガンに対して、装甲と火力において上回り、汎用性を維持しながらもジオンの重MSに近い性質を持って活躍する事となる。

 

 「トールギスは何機出せるんです?」

 「ゼクス・マーキス大尉とその部下の方二人が乗りこなしているとの事です。」

 

 なお、部下二人の名前はルクレツィア・ノインとオズワルド・ワーカーである。

 

 「後は正式量産仕様のジェガン6機をクラップとアーガマに…」

 「はいはい!GP03の試験やりたいです!」

 「アーガマで牽引可能です!MS搭載数一機減りますが!」

 「……上に問い合わせてみましょうか。」

 

 こうして、太陽系外縁部調査試験艦隊の準備は着々と進んでいくのだった。

 

 

 ……………

 

 

 地球 位相空間内 A.I.M.グループ所属エクセリオン級ノーチラス号内貴賓室にて

 

 

 「こちら、粗茶ですが。」

 「どうもご丁寧に。」

 

 態とらしくも一切の嫌味のない和風の貴賓室にて、傍らでメイド本来の役目をこなすSfと共にトレミィはとある人物と向き合っていた。

 

 「はじめまして、ムー帝国王女レムリア殿下。」

 「ひびき玲子で結構ですわ。A.I.M.グループの会長さん。いえ…」

 

 この美しい女性、一見して優しい奥様といった風情だが、先程からトレミィの内心は緊張でバクバクだった。

 彼女から観測される念動力と思われるエネルギー。

 それは通常の人間が発する事の出来るエネルギーを易々と超え、巨大戦艦級の炉心に匹敵するかそれ以上なのだ。

 本来のエーテル宇宙のエクセリオン級のアイスセカンド式縮退炉を超えていると言えば、その出鱈目ぶりが分かるだろか。

 

 「他の世界からのお客様。」

 「やはり分かりますか?」

 「えぇ。私の様な者達からすれば、貴方方の存在は少々独特ですから。」

 「易々と見破られる偽装じゃない筈なんですが…。」

 「私、これでも王女で母親ですから。」

 

 にっこり、と微笑む姿からは言い知れぬプレッシャーが感じられ、トレミィは引きつりそうになる顔を微笑みの形に固定する。

 

 「それで、私共と話したい事とは何ですか?」

 「謝罪しようと思っていました。」

 

 そう言うや否や、トレミィは正座していた座布団から降り、これ以上なく綺麗な土下座を披露した。

 

 「貴方方の先祖の遺産を騙り、好きに動いていたのは私の決定です。大変申し訳ありませんでした。」

 

 生き残りなんぞいやしまい。

 そう考えてプロトカルチャーの遺産を勝手に名乗り、レビル首相らにそう発表するよう動いた。

 だというのにプロトカルチャーの正統後継国家であるムー帝国の末裔たる王族がこの時代まで冷凍睡眠して生きていて、更に現代の地球人と夫婦となり、子供まで作っていた。

 気付いた時にはひびき玲子は夫と息子の元から去り、復活しつつある帝王バラオ率いる妖魔帝国への対策としてムートロン開放装置「ラ・ムーの星」を探す旅に出ていたのだ。

 今回彼女を見つける事が出来たのは、彼女の方から位相空間に潜行中だったノーチラスへと通信を行い、接触してきたからだ。

 

 (サイコドライバー舐めてましたご免なさい(滝汗))

 

 乗っていたのは一見ただの帆船だった。

 しかし、その内実はムー帝国の王室御用達のステルス高速艇であり、最盛期に劣るとは言えこれまでトレミィらの索敵を逃れ続けるという驚異のスペックを持っていた。

 更に位相空間に潜行していたノーチラスを見つけたのは、純粋に本人の念動力だと言うのだから、こんな人達がいたムー帝国を滅ぼした妖魔帝国が当時どれだけヤバかったのかがよく分かる。

 

 「あらまぁ。別にそんな事気にしなくて良いのよ。」

 「いえ、それでは筋が通りません。」

 

 ちょっとおばt…(ギラリ)ヒェ!ご夫人っぽい動作で手を振って構わないとおっしゃる玲子夫人に対し、トレミィは土下座の体勢を崩さない。

 

 「そーれ。」

 「おわわ!?」

 

 指先を向け、くるりと回す。

 たったそれだけで土下座体勢だったトレミィは座布団の上に正座させられていた。

 

 「お見事です。」

 「ふふ、ありがとう。」

 

 Sfの賛辞を、玲子は笑顔で受ける。

 通常なら重力・慣性制御で常に身を守っているトレミィのナノマシン製人型端末。

 か弱い幼女の姿に反して、その身体能力はヒグマを素手で解体可能な筋力と戦車砲に耐える強度を持つ。

 常時展開されている重力障壁によって大抵の攻撃は受け付けない筈が、玲子夫人はそれを易々と貫通してみせたのだ。

 Sfの賛辞も当然と言える。

 

 「サイコドライバー舐めてましたご免なさい…。」

 「次からは気を付けて、ね?怒ってないけどびっくりしましたから。」

 「肝に命じます…。」

 

 こうして始まった会談は、終始和やかに進んだ。

 結果として、トレミィ率いるA.I.M.グループは彼女への全面協力を約束した。

 代価として、玲子夫人は太陽系内のプロトカルチャー関連の遺産や遺跡等の調査並び念動力研究への協力を約束してくれた。

 ムー帝国で使用されていたムートロン(強大な意思エネルギーの集積体)を研究しているムトロポリスへの支援の充実化とひびき父子の護衛に関しては元々行っていたため、今後も継続する事となった。

 

 『おお…おおおおお!!』

 『おかえりなさいませ。この日をお待ちしておりました。』

 「ふふ、ただいま。」

 

 そして、早速玲子夫人にはプロトカルチャー産人工知能二体と面談してもらった。

 なお、古代ムー帝国の国土も超大型の都市型移民船だったらしく、この手の人工知能は慣れているし、懐かしいのだとか。

 だから大災害で跡形もなく沈んで、その割にプレートの形状には大陸の痕跡が無い訳である。

 これによりこの二体の人工知能は地球防衛戦力へと正式に組み込む事が可能となり、進んでいなかった鳥の人の解析ならび戦力化が進む事となる。

 

 

 

 

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