多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第14話 太陽系外縁部調査試験艦隊

 新西暦182年 9月

 

 未だ極東では夏の暑さに陰りも見えないこの季節、テレビやラジオ、ネットの各ニュースサイトでは一斉中継が成されていた。

 

 『ご覧ください!遂に太陽系外縁部調査試験艦隊がここ月面にて集合いたしました!この威容、この巨体!正しく人類の叡智の結晶と言えましょう!』

 「異星人や古代人の技術から学んでおきながら、何を言っているのやら…。」

 

 それをサイド3の高級住宅街の中でも他の住宅と離れた立地にある邸宅の中で、キシリア・クベは呆れていた。

 一年戦争終結から2年、キシリアは夫となったマ・クベ首相による連邦政府との政治取引であっさりと釈放された。

 とは言え、かつてのように謀略を張り巡らせる事はせずに今は普通の夫を支える妻であり一児の母である。

 嘗ての彼女を知るものがその穏やかな表情を見れば、きっと自分の目を疑う事だろう。

 

 「そうは言うがねキシリア。彼らもあれで必死なのだよ。」

 「あら、仕事はもうよろしいので?」

 「あぁ。連邦はてんやわんやだが、こちらはあまりね。」

 

 彼には珍しい柔和な笑みを浮かべるマから紅茶の入ったマグカップを受け取る。

 夫であるマは何とか取れた休暇を使って、こうして妻と共にいる時間を捻出している。

 敗戦後、ジオンは共和国となり、連邦の全面的な監視下に入った。

 サイド3本国にはレビルが直々に率いる艦隊が駐留し、連邦・ジオン双方の兵や市民らを監視した。

 そう、双方である。

 あの戦争で家族や戦友、故郷を滅茶苦茶にされた連邦の人間は多く、未だジオンを恨んでいる者は多い。

 まだあの戦争から、たった二年しか経過していないのだから当然だ。

 それだけの期間で風化する程、人間の激情とは安いものではないのだから。

 

 「連邦はやはり、異星人からの介入があると?」

 「あぁ。先ず間違いないと考えているよ。」

 

 地球連邦政府はあのア・バオア・クー攻防戦で受けた異星人からの奇襲を忘れていなかった。

 空間転移を始めとした極めて優れた技術で作られた兵器を持った軍勢が、自分達よりも圧倒的多数で襲い掛かって来る。

 そんな連中がこの銀河には大勢いて鎬を削り合い、この太陽系すら虎視眈々と狙っている。

 キシリアとシャアがギレンから知らされた情報は、余りにも荒唐無稽だった。

 しかし、実際に襲われてしまったのだから信じざるを得ない。

 そんな地獄の様な事態に対して連邦の動きは、否、恐らく兄のいるであろうA.I.M.グループの対応は早かった。

 技術力を示し、それを広げ、互いに切磋琢磨する。

 後数年もあれば、地球連邦の軍事力は一年戦争当時の連邦・ジオン両軍を相手にしてなお勝利できる程に増強されるだろう。

 その数年をあの無人兵器達とその主たる女王陛下は確実に稼ぎ出す算段を整えている。

 その算段を整える中に、あの兄は絶対にいる。

 異星人の旗艦の砲撃で要塞司令部は蒸発した?

 絶対生きてるわアイツなら(確信)

 

 「まぁ私達に出来る事なんてもう無いけれど。」

 「そうでもないさ。うちのエース達を派遣したしね。」

 

 事実、シャアを始め幾人かのエースパイロットらが今回の太陽系外縁部調査試験艦隊に参加している。

 彼らは皆、最新鋭の人型機動兵器を駆り、その腕前を存分に振るってくれる事だろう。

 

 「本当、ギレン兄上の手腕は恐ろしいわ。」

 「全くだ。戦後に向けての手筈すら整えられていたのだから、相変わらず底の見えない御人だよ。」

 

 事実、ギレンは勝敗問わずどちらであっても良い様に算段を整えていた。

 彼から見ても双方ギリギリの綱渡りだった故の采配だったが、復興のための隠し財産を始めに手足を失った傷病兵の軍務ではなく民間への復帰の準備等、余りにも用意周到だった。

 

 「シャアの奴も随分落ち込んでいたよ。自分は一体何をしていたのだと。」

 「らしくない事を。さぞララァに慰められた事でしょうね。」

 

 現在、シャアは正式にララァと籍を入れ、結婚している。

 なお、結婚式に出席した妹からは「私より年下の妻とか…」と大いに呆れ、虫を見る様な視線を向けられたが、婚約者であるアムロにまぁまぁと宥められていた。

 

 「これから事態は大きく動く。こうして穏やかにしていられるのも何時までか…。」

 「でも、そうした日々を続けていくために頑張るのでしょう?」

 「あぁ、そうだな…。」

 

 現在、ジオン共和国の状態は良いとは言えないが、決して悪い状況ではない。

 水・空気税は撤廃され、賠償金代わりに格安で輸出される工業製品で収入が途切れる事はない。

 食料品も地球や農業コロニーから輸入される格安の品に、戦前・戦中よりも食料事情は大いに改善されている状態だ。

 無論、決して余裕がある訳ではない。

 だが、日々の生活に困窮するという事はない。

 何せコロニーや民間船の建造だけでなく、保有していたMSの売却まであるのだ。

 本来ならゲルググのみの生産に絞っている予定が、コロニー自治体は自警団の組織まで考えている事もあり、連邦へのMS売却と共に旧式機の在庫一斉セールでドム系やザクⅡF2の再生産すらしていた。

 連邦の開発計画へのパイロットや技術者の参加やMS操縦の教官派遣も加えると、割と商売のタネはいくらでも転がっていた。

 それを形にし、今日まで円満に動かしているのは誰あろうこのマ・クベの手腕によるものだった。

 

 「ほぎゃぁほぎゃぁ!」

 「あらいけない。」

 

 テレビの音に驚いてか、突然リビングに置かれた乳幼児向けの揺り籠の中にいた赤ん坊が泣き始める。

 それを聞き付けたキシリアは極普通の母親と同じく、赤子の元へと向かう。

 

 (キシリア様。その御姿、戦前・戦中の貴女様よりも遥かにお美しい…。)

 

 ぐずる我が子を穏やかにあやす最愛の妻という光景に、マ・クベは改めてこの幸福を噛み締めた。

 そして、少しでも長くこの幸せが続くよう、改めて粉骨砕身の努力を続けようと決心した。

 

 

 ……………

 

 

 地球圏 月付近の宙域

 

 

 「ここまでは順調か…。」

 「フォールド準備、後15分で所定の手順全てを完了します。」

 「終わり次第再確認せよ。ここで失敗したら艦隊全てが危険に晒される。今後の艦隊再編計画に悪影響を及ぼす訳にはいかん。」

 

 先輩格にあたるダイテツ中佐やタカヤ大佐を差し置いて准将となり、艦隊司令官に任命されたグローバルにとって、この任務は絶対に失敗できなかった。

 今回の太陽系外縁部調査試験艦隊で有用なデータ、特にこれまで地球人類は到達した事のない太陽系外縁部の航路データは今後の太陽系防衛計画並び開拓において極めて貴重だ。

 また、各艦のフォールド技術との親和性と運用情報もまた、それと同様に極めて貴重なものとなる。

 そのデータとコストから太陽系防衛計画を策定し、更にそれを充実させるべく戦力の拡充に努める。

 異星人の、外宇宙の脅威から地球人類を守るための第一歩が、この艦隊なのだ。

 なお、フォールド技術に関しては独占状態のA.I.M.がガチ本気出した上にレムリア女王の命令で鳥の人と都市型移民船の操作する遠隔式自動人形によるチェックも行われているため、どんな事故が起きても精々誤差数km程度で済む模様。

 

 「全手順完了。再チェック開始します。完了まで10分です。」

 「よし、全艦隊に通達。艦隊各員は所定の位置に。チェック完了後、本艦隊は土星圏に向けてフォールドを開始する。」

 「了解。艦隊各員に通達します。全艦隊、チェック完了後に土星圏へのフォールドを開始します。各員は所定の位置につき、DF出力をフォールド基準値まで上昇させてください。」

 

 地球人類とその隣人、更には異星人達すらその様子を見守る艦隊全てが遂にDFを展開し、フォールドの準備に入る。

 これが成功するという事は人類の宇宙への進出が次のステップへ進むという事に他ならない。

 誰もが固唾を飲んで見守る中、遂にそれは始まった。

 

 「よし!全艦隊に通達、長距離フォールド開始!」

 

 こうして、人類は次のステージへと飛び立った。

 

 

 ………………

 

 

 銀河の何処かにて

 

 「…どうする?」

 「時期尚早と見ていたが、これは…。」

 「他に出し抜かれる訳にはいかん。」

 「では、こちらから接触を?」

 「うむ…。」

 「事ここに至ってはそれしかあるまい。」

 「だが、誰を行かせる?」

 「過激な者は駄目だぞ。あの女王は現地人との融和をめざしている様だしな。」

 「現地人共は辺境ながらも中々の軍事力を持つと聞く。」

 「では、それなりに腕の立つ者にすべきだな。」

 「デルファルテ家の倅はどうだ?」

 「あれは傭兵になったろうが。まぁ優秀なんで将官待遇になったが…。」

 「候補として覚えておこう。他には?」

 「…ボルクェーデのはどうだ?」

 「正気か?あの小僧は過激に過ぎるぞ。」

 「そっちじゃない。兄の方だ。」

 「あぁ、確かに条件には合致するか。」

 「ふむ。では兄の方を我々の特使として、ゾヴォークの三将軍を付ける。」

 「うむ、異議は無い。」

 「ゾヴォークとウォルガ双方から人を出しておるから煩い連中も口を出し辛かろう。」

 「最悪、プロトカルチャーの遺産を相手に立ち回る必要もある。戦力は多めに出すべきだろうな。」

 「では、誰か意見は?………よろしい、この方向で進めるという事で。」

 

 

 

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