多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
新西暦182年9月 土星圏にて
「フォールドアウト確認しました。」
「全艦隊は状況報告並び周辺を索敵。少しでも異変あれば知らせろ。」
「了解。」
何も無い筈の宇宙空間に突如出現した太陽系外縁部調査試験艦隊は、その場から動かず状況の把握に努める。
下手をすれば少し動いただけで爆散するかもしれない。
未だ人類にとっては未知であるフォールド技術。
それを過信する事無く、情報の収集並び異星人側のアクションに備えていた。
「全艦隊より報告、現在異常は見られないとの事です。」
「観測班より報告、周辺に敵影無し。ただ、現在地は予定宙域から3km程ずれているとの事です。」
「どうやら最初にしては上手くフォールドアウトできた様だな…。全艦隊に通達、これより土星基地へと移動する。」
こうして、地球人類初の公式な長距離フォールドは成功に終わったのだった。
『くそ、3kmもずれただと!?』
『再精査……どうやら部品に初期不良が混ざっていた様です。』
『女王陛下からのご命令だと言うのに…!』
『部品の交換と再度の調整で対応可能。次は誤差1km未満を目指しましょう。』
『ぬぬぬ…まだまだ工作精度が足りないか…。』
そんな会話をした自動人形がいたそうな。
……………
さて、土星基地である。
ここは元々太陽系でも木星と並んで屈指の資源惑星である土星を開拓するために建設された基地で、本来は民間での開拓のためにあった。
が、戦中からの太陽系外敵性勢力と太陽系防衛無人機部隊の衝突を観測した情報が公になってからは急ピッチで拡張、太陽系を守るための最前線基地として運用されていた。
防衛戦力は最新改装済みのマゼラン級と二種類のサラミス級、そしてMS空母として改装されたコロンブス級。
更にア・バオア・クー攻防戦で無事だったドロス級空母2隻(もう一隻は大破判定でパーツ取りに使用)、そしてグワジン級戦艦4隻である。
合計二個艦隊、MSの数に至ってはドロス級2隻と基地に格納された分も含めると三個艦隊分にもなろう数があった。
これらは全て主機関を縮退炉に改装した上で、エーテル機関内蔵ブースターユニットを接続して土星圏へと送られた。
MSこそゲルググとその派生型にジムⅡ(外見はⅢ)しかいないが、現在の地球人類では最も戦力の整っている艦隊がここだった。
ザビ家の、ジオンの旗印でもあるこれらの戦力は全て(MSも含めて)戦後の賠償金として連邦に譲渡されたものであるが、パイロットに関してはジオンからの人材派遣であり、その殆どが一年戦争を戦い抜いた熟練兵から構成されている。
彼らの雇用費は全て連邦政府から出ており、本人らへの給料を引いてもジオンにとって大きなリターンを齎してくれていた。
それは嘗て地球圏を戦乱に巻き込んだ者達としての贖罪でもあり、この事業によってジオンに対する市民感情の殆どは沈静化した。
これは当時の戦争経済から脱却し切れていなかったジオンにとっては大きな取引であり、太陽系の商業ルートへの復帰のための第一歩であり、戦場以外知らないという血の気の多い兵達の送り先でもあった。
とは言え、現在までのこの基地は以前通りの資源採掘と太陽系外で時折起きる大規模戦闘(人類主観)を観測、そのデータを戦術・戦略にフィードバックすべく研究をする場所となっていた。
だが、それも今日までのことだった。
『おお、よく来てくれた!』
そして、それを指揮するのはドズル・ザビ中将である。
ザビ家ではキシリアは公職を辞し、ガルマは地球で改めて政治を学んでいる最中であり、ギレンはMIAとなる中で唯一公職を辞さずに戦争の責任を取ると裁判に自ら出たのが彼だった。
結果、連邦・ジオン双方の将兵から無数の助命嘆願が届けられ、恩赦も出て実質無罪となった彼だが、「オレがこのままジオンに戻っては血気盛んな者が間違いを犯しかねん。故に何処か良い戦場は無いか?」と連邦政府に打診した。
様々な政治的な妥協や交渉、未だ揃わぬ対異星人戦力という状況を加味した結果、そうした将兵とジオン側に残った優良装備の多くと共に、彼はここにいた。
「唯一の問題は妻子がいない事だな!」と答えたのは戦後のインタビューでの事である。
「これはドズル中将閣下、遅れてしまいましたかな?」
『何の!予想範囲内だ!これでフォールド技術の配備に弾みが出る!よくやってくれた!』
「技術者達の頑張りと女王陛下の御慈悲の賜物ですよ。では、入港の許可を。」
『応、許可する!足りんものがあったら何でも言ってくれ!』
「では、先ずは予定通り艦の総チェックと人員の健康診断から…。」
こうして、太陽系外縁部調査試験艦隊は出発して早々に全艦隊が土星基地にて検査を受けるのだった。
全ての検査が終了するのは五日後、フォールドシステムの調整に更に三日かかる事となる。
その後は
……………
一か月後 冥王星宙域にて
「ここまでは予定通りか…。」
この一か月は実に平和な旅路だった。
出港当初こそバタバタしていたものの天王星、海王星と続いて、今の所は順調だった。
艦載機のパイロットらの仕事は腕を落とさないための訓練と哨戒、事故時の救助くらいのもので、殆どは同行している科学者や技術者らの調査だった。
とは言え、退屈という訳ではない。
フォールド通信のおかげで太陽系内ならどこでもほぼタイムラグ無しで通信できるため、地球圏との通信も可能だ。
無論、気軽に電話するという訳にはいかないが、それでも故郷との繋がりが途絶えていない事に変わりはない。
だが、ここから先は人類にとって本当に未知の領域となる。
「ん?艦長、レーダーに反応!これは、機動兵器!?」
「何!?全艦隊に緊急通信!所属不明機を探知!至急第一級戦闘配備!」
予想していたが恐れていた事態に、太陽系外縁部調査試験艦隊は一気に慌ただしく動いた。
当直だったパイロット達は即応し、出撃していく。
整備班はパイロットがいる機体から簡易チェックの上にスクランブル発進、慌ててやってきたパイロットらも直ぐに自分の機体へと乗り込んでは出撃、配置についていく。
機動兵器の多くはVF、或いは高機動追加装備を纏ったジェガンとゲシュペンストだ。
それにソルデファーとスヴァンヒルド、そしてジガンスクードが艦隊直掩、或いは甲板上で対空火力の一翼を担う。
そして、るくしおんからはプロトゲッター1、プロトシズラー0の二機が出撃し、艦隊の戦闘態勢が整う。
これが現在の地球圏の最新鋭艦隊の本気の姿だった。
「全艦隊、いつでもいけます。」
「その前に所属不明機の様子は?」
「え?…先程の位置から動いていません。」
「IFFは無し…だが…。」
『失礼。グローバル司令、少々よろしいですかな?』
「タカヤ大佐、どうしたのですかな?」
『ここは一度、通信と偵察で相手の出方を見てはどうでしょうか?もしかしたら話し合いに応じてくれるやもしれません。』
「…分かりました。では誰に行かせるかですが…。」
『失礼します、グローバル司令。』
『む、グローリアス大尉か。』
『その任務、是非自分に任せて頂きたく!』
『大尉、危険だぞ。』
「いや、グローリアス大尉と特機ならば突発的事態でも対処できるだろう。君に任せる。くれぐれも気を付けてくれ。」
こうして、太陽系外縁部調査試験艦隊は彼ら単独では初となる地球外勢力とのコンタクトを取ったのだが……
『で、あんたら何やってんのよ?』
『こんにちは、ユング大統領。』
その対象は巡航形態に変形していた量産型ヴァルチャーだった。
搭載された人工知能は自動人形のそれと同等であり、柔軟な受け答えと思考を可能としている。
『現宙域は私達の冥王星基地の哨戒区域であるため、こうして警告にやってまいりました。』
『マジで?ここに基地なんて…。』
『先月、レムリア女王陛下の許可により、ここにステルス状態で休眠していた巨大兵器工廠の正式な稼働再開ならび生産ラインの変更を行っております。ご存じありませんでしたか?』
『何も聞かされてないわね…。』
『そうでしたか。それではマクロス艦内部にいるあのお二人に後で苦情を届けておきます。』
『よろしくお願い…。』
『かしこまりました。』
『じゃ、ジャミング停止して初対面って事でお願いね。』
『了解。これより正式に地球人類の皆様とコンタクトを取らせて頂きます。』
そんなちょっと台無しな会話を挟まれていた事は関係者しか知らず、真実は歴史の闇へと消えるのだった。
なお、フォールドシステムの調整に熱中し過ぎて色々忘れていた二人は女王陛下からお叱りを頂きました。
……………
『はじめまして、地球人類の皆様。』
プロトシズラー0と接触通信した瞬間、極短時間だが発生したジャミングに動揺が広がるものの、両者がそのままに不明機から通信が入った事で動揺は別方向へと移った。
それは人工的に作られた、美しい女性の音声だった。
その声を聞いた全員が内容を理解できる。
それの意味する所は、アンノウンから発せられたその言語は地球のものであるという事に他ならない。
『本機は太陽系防衛用無人機動部隊所属機です。現宙域は我々の冥王星基地哨戒区域ですので、こうしてご挨拶に参りました。』
「こちらは地球連邦宇宙軍所属太陽系外縁部調査試験艦隊司令官のグローバルだ。艦隊を代表して話をさせてもらおう。この宙域においては他に留意する事はあるかね?」
『現在、太陽系内部の安全は保たれています。外部からの襲撃に関しては小康状態であり予断は許されませんが、航路の安全は確保されています。』
「了解した。所で、そちらの基地にお邪魔する事は可能かね?」
それはかなり踏み込んだ問いだった。
プロトカルチャーの系譜にない者が、何万年も前から生きている遺産たる無人兵器の管理する基地へと入る。
一歩間違えば、即座に戦闘状態へと入る事になりかねない。
『本機にその権限は無いため問い合わせます。…………正規アクセス所有者「レムリア女王陛下」からの承認を確認。皆様が利用可能な港湾設備までご案内致します。』
この返答にはこれを聞いていた艦隊全員が驚きに包まれた。
まだまだ多くが未知のプロトカルチャー文明によって築かれた軍事施設への入港なんて、極めてロマン溢れるシチュエーションだった。
『但し、本基地は最近になって命令の更新により地球人類の皆様がご利用できるように改装中ですので、くれぐれも案内役の指示に従って行動してください。』
「了解した。これより入港する。ガイドをよろしく頼む。」
『了解です。これより当基地までご案内します。』
こうして、人類は初めて「地球外で生きた状態のプロトカルチャーの遺跡」を目撃する事となる。
『で、大丈夫なの?』
『ご安心を。巨人族向けの兵器工廠がメインで、今後は人類が長期間滞在可能なように改装中ですので。』
『じゃなくて、あんたらの姿!またいつものメイド服じゃないでしょうね!』
『あ。』
この後、滅茶苦茶急いで誤魔化しました(ナノマシン式自動人形は表面をロボットっぽく整えて、生体式は見えない位置に移動しました。)