多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
新西暦182年秋 冥王星巨大工廠にて
『ようこそお出でくださいました。本機が冥王星方面軍代表指揮官機です。これより皆様に当基地内をご案内いたします。』
マクロスすら易々と格納できる程の巨大な港湾施設に太陽系外縁部調査試験艦隊が入港していく。
その後、直ぐに現れた一体の5mにも満たない人型機動兵器が艦の傍に浮遊して通信を送って来る。
それは先程現れた機体と同系統と思われるが、今は人型に近い姿へと変わっている。
これは既に太陽系外縁部での戦闘で確認された機体であり、これ一機でこの艦隊を撃滅可能なだけの火力を内包していると分かると油断は出来ない。
「丁寧な対応に感謝する。これよりこちらの人員を下すので、彼らを案内してもらっても構わないかね?」
『了解しました。不足している物資がございましたらお申しつけ下さい。娯楽品等はまだございませんが、水や栄養食他資源でしたら取り揃えがございますので補給が可能です。』
「分かった。後でリストを送るので、補給の用意を頼む。」
『畏まりました。では、人員の皆様が降りてきたご様子ですので、これより案内を開始します。』
「よろしく頼む。」
そう告げて、一旦通信が切れた。
「どう見る?」
『問題はない、と思います。』
『同じく。』
通信の繋がったままだった各艦の艦長達へと、グローバル司令が意見を求めた。
『敵対するならばこちらに気付かれる事なく撃沈できた筈だ。』
『ですな。やるならもっと手っ取り早く始めるかと。』
『自分も同じ意見です。この状態でやり合うとなれば拿捕が目的の可能性は高いですが、基地施設に大きな被害が出る可能性が高過ぎます。』
『自分も同じ意見です。が、警戒は怠るべきではないかと。』
スペースノア艦長のダイテツ中佐。
ヒリュウ艦長のクルト・ビットナー少佐。
るくしおん艦長のタカヤ・ユウゾウ大佐。
アーガマ艦長のブライト・ノア少佐。
クラップ艦長のヘンケン・ベッケナー少佐。
ナデシコ艦長のミスマル・コウイチロウ大佐。
彼らの言葉は皆一様に戦闘には発展しない、しかし警戒は解くべきではないとする答えだった。
「分かった。一応パイロット達は機体にて待機。他の人員は第二級警戒態勢のまま待機とする。それと各艦は補給物資の状況を報告せよ。特に水と食料に関しては直ぐに出すように。」
『『『『『『了解。』』』』』』
こうして、太陽系外縁部調査試験艦隊は腹を括った。
が、この一時間後には地球からのフォールド通信で女王と会見、正式にこの基地を太陽系外縁部調査のための拠点として使用する事となり、彼らの覚悟は肩透かしに終わるのだった。
……………
一方、基地内部を案内された人員らは余りに広大な基地施設に驚いていた。
彼らは皆、艦隊の陸戦隊員でもあり、全員がパワードスーツかアーハンⅡの戦闘仕様を纏っている。
小さいながらも下手なMS部隊よりも戦力として頼りになる装備だったが、MSサイズでも易々と通行可能な程の施設の規模に「機動兵器部隊の方が良かったんじゃないか?」と思っていた。
『その、すまないがこの基地はどうしてこんなに通路が大きいんだ?』
『説明させて頂きます。当基地は元々巨人族向けの全自動兵器生産工廠の一つでした。戦艦からパワードスーツ、食料に医薬品まで。彼らの使用するあらゆるものがこの基地を始め、銀河に存在する多くの工廠で作られていました。』
『何とまぁ…。』
『待ってくれ。じゃあ連中はここの場所が分かってるんじゃないのか?』
『いいえ。彼らはこの場所を知らないでしょう。』
その質問に、案内役の量産型ヴァルチャーが返答する。
『当基地は当時、銀河中心領域から逃れたプロトカルチャーの生き残りの方々を守るため、巨人族の使用可能な施設から除外、完全に情報を削除してあります。以来、我々は古代地球の他勢力と協同、太陽系外からやってくる勢力をほぼ撃滅、安全の確保に成功しております。』
『その割に巨人族が襲来してきたのは…。』
『その一件については申し訳ございません。当時、皆様が一年戦争と呼ばれる戦争は太陽系外からも観測可能な規模であり、それに惹かれて大量の敵性存在が太陽系を目指しました。我々はそれを撃滅すべく奮戦しましたが、度重なる消耗に戦力の補充が追い付かず、あのア・バオア・クー攻防戦において敵勢力の侵入を許してしまいました。』
淡々と語られる内容に、しかし誰もが納得していた。
彼らは皆レビル首相の「人類に逃げ場無し」演説を聞いており、その際の映像も視聴し、軍内部でも対策を構築すべく研究が進んでいる。
その資料で見られるのは、地球人類では到底敵わない絶望的な戦力で襲い来る侵略者の津浪を、無数の無人兵器達が必死になって守っている様子だ。
故に、それ以上は誰も彼女ら無人兵器を責める者はいなかった。
『所で、古代地球の他勢力とは何ですか?古代の地球には、他にも人類側の勢力がいたのですか?』
『はい。古代地球には他にも幾つかの勢力がいました。』
ピ、と空中に投影される映像。
それには現在の地球人類と変わらぬ姿ながら、異なる文明を築き、生活している人々の姿。
そして、彼らと戦う人ならざる異種族の姿があった。
『当時の地球はプロトカルチャーが来る以前から先史文明が存在し、多数の種族と争っていました。中には高度な文明を築いていた者達もおりました。』
表示されるのは、人類よりも強靭な肉体と劣らぬ知性を持った鬼や爬虫人類等の異種族の姿。
彼らは当時の人類と地球上で覇権争いを繰り返していた。
『その当時の原始生命達に手を加え、進化したのが後の人類の祖先の一つとなります。彼らと先史文明の人々、戦乱を逃れたプロトカルチャー達は協力し合い、他の異種族並び宇宙や異次元からの敵性存在に対処する形で繁栄していきました。』
『やがて、先史文明の殆どが滅び、プロトカルチャーも現地人との混血が進み、正統継承国家たるムー帝国を興す頃に他惑星の開拓に向かっていた先史文明の遺産が帰還してきました。』
表示されたのは、巨大な女神像にも似た機械の姿。
それは宇宙から地球を眺めていた。
『彼女、ガンエデンは先史文明が実質滅んでいる事に驚きつつ、その生き残りが興した超機人文明を傘下に入れる形で再び地球の守護神として君臨。我々とも協力関係を結びました。』
『しかし、この後が問題でした。』
表示されるのは宇宙にて、あらゆる種族が相争い、滅ぼし合い、戦乱に明け暮れる姿だった。
『全銀河規模での戦争が発生し、我々も巻き込まれました。地球においても妖魔帝国バラオという精神生命体の興した国家が当時の人類へと攻撃を開始、また異次元や太陽系外からも多数の敵性存在が侵略を開始しました。』
『我々は戦い続けましたが、力及ばず衰退しました。巨大都市型移民船団たるムーは滅び、ガンエデン並び超機人文明の兵器達は眠りに就き、国家としては滅亡しました。他の異種族達は休眠状態に入るか、地下へと逃れました。』
無数の、本当に無数の敵と味方が入り乱れる大乱戦。
誰もが消耗し、傷つき、滅んでいった。
『しかし、我々は辛うじて活動状態の維持に成功。以降は太陽系絶対防衛線を構築しつつ、地球在住の人類の文明レベルを嘗ての様に向上させるべく密かに活動を継続してきました。』
『ごめん。ちょっと待って???????』
『はい、待ちます。』
余りに多過ぎる情報量に、一人の隊員が手を上げてタンマを言い渡した。
『どーすんです?どーすんですかこれ?』
『何か壮大な話になってきましたよ隊長ー?』
『……取り敢えず、この話は持ち帰ろう。面倒事は上にブン投げるのが一番だ。』
『『『『『『了解!』』』』』
艦隊首脳部の胃痛が確定した瞬間だった。
この後、一日で工廠内部を見学するのは無理と判断して、一週間に分けて調査しました。
艦の補給も滞りなく完了し、出る時には皆すっかり慣れていましたとさ。
『大変申し訳ございません。女王陛下一押しのリラクゼーション施設等は後回しになっているため、娯楽施設等に関しては食堂・運動施設・データ閲覧施設(電子情報版図書館と映画館と本屋のミックス)のみとなっております。』
『いやいやいや十分ですからそれ!』
『お詫びとしてこちらをどうぞ。巨人族の使用する兵器(美品)並び我々が使用しているエクセリオン級恒星間航行戦闘艦です。』
『どう持ち帰れと!?』
なお、帰りの途中に寄って、持ち帰る事となった。