多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
『久しぶりの滞在、真にありがとうございました。』
『改装中故にお寛ぎできず、真に申し訳ありませんでした。』
『お詫びの品を積みましたので、後でご確認してくださいませ。』
『『『それでは、皆様のまたのお越しをお待ちしています。』』』
こうして、太陽系外縁部調査試験艦隊は冥王星工廠基地を出発したのだった。
「凄い場所だったな、色々と…。」
「えぇ…。」
「補給物資も満載ですし、人員の休暇も取れたので良い事かと…。」
下手な格安ホテルよりも遥かに充実した施設だった。
大浴場もあり、個室のベッドもあり、食事は全てバイキング形式。
食料は地球の軍用レーションだが、レーションはレーションでもA.I.M.グループ製の高級士官並び将官向けの超豪華なレーションだった。
積載量の関係で普通の食材は少なめで後は普通のレーションとなっている太陽系外縁部調査試験艦隊の面々からすればとても嬉しい驚きだった。
加えて、各種作業は何処から入り込んだのか人間サイズまで縮んだ無人機らによって手伝ってもらい、各種資材を満タンに、機体と艦は完全整備してもらったので言う事はない。
唯一、渡されそうになった巨大なお土産だけは帰りに受け取ると約束して受け取らずに済んだが、それ以外は快適な停泊だった。
まぁ、常に何処からか見られているというのは落ち着かなかったが…。
「司令、お断りすればよろしかったのでは…?」
「君は、犬を飼った事があるかね?」
「は?」
ちょっと遠くを見つめるグローバル司令の言葉に、副官は聞き返した。
「私はある。子供の頃だがね。」
「それが何か関係が?」
「彼女らの雰囲気というか何かがね……家に帰ってきた飼い主を迎えて大喜びしている犬にしか見えなかった。」
「あー……。」
「人間に尽くす事。それを心の底から喜びとし、忠犬の様にキラキラとした眼差しを向けられていると思うと…。」
「すいません。自分はちょっと無理です。」
副官は諦めた。
何というか、もう、色々と諦めてしまった。
「ふぅ……すまないが、コーヒーを頼む。」
「はい、どうぞ。」
グローバルは全身に伸し掛かる脱力感から目を反らすため飲み物を頼んだが、空かさずその背後から淹れ立てのホットコーヒーが差し出された。
「………………………………聞いても良いかね?」
「はい、何なりと。」
絶句する副官を脇目に見つつ、背後から聞こえる聞き覚えのある声にグローバルは問うた。
「何故、ここにいるのかね?」
「はい。女王陛下の命により皆様の航海のサポートを行うよう仰せつかりました。以後、よろしくお願いします。」
「そうか……?????」
色々と言いたい事があったので振り向いたグローバルの視線の先。
そこには実戦経験豊富な、若くして准将となった(この艦隊を任せるに当たって先払い昇格された)グローバル司令をして絶句する光景があった。
ふわりと広がるロングスカート、純白の前掛け、古式ゆかしいデザインを基調としたメイド服。
そう、そこにはメイドがいた。
顔も人間の女性、それも美女のものとなっており、無人機らの存在を知っているグローバル達だからこそ気付けるが、そうでなくば人間の女性と勘違いしていただろう。
「その、姿は…?」
「はい。女王陛下の許可の下、地球人類の皆様にお仕えするには兵器として、機械としての姿ではなく、人間の似姿である方が良いと判断し、この姿となりました。性能面に変化はないので、以後よろしくお願い致します。」
これと同様の混乱は艦隊各所で発生しており、太陽系外縁部調査試験艦隊はこの珍事を「機械人形事件」として長くその記憶と記録に留めておく事となる。
……………
新西暦183年初頭 太陽系外縁部
太陽系外縁部調査試験艦隊の太陽系未踏破宙域の調査は、様々な問題が発生しながらも続けられた。
具体的にはあの機械人形どうすんの!?とか男性型はいないんですか!?或いは元の機械の姿にしてください!というそれぞれの趣味に応じた意見というかアレな問題だったが、それに関しては追加の機械人形が男性の執事の服装だったり、女性の執事だったり、元の機械の姿が追加で来てくれて対処したので済んだ。
勿論、冥王星以降の各惑星、即ち魔王星・智王星・神無月星・雷王星とその衛星の調査も行われた。
これら惑星並び衛星の資源と遺跡等の所在の確認、そしてここまで来る航路のデータも含め、綿密に測量され、記録されていた。
これら全てが人類の宝であり、開拓・防衛のための第一歩だからだ。
そして今日、地球圏出発から実に5カ月、年の瀬を跨いで新西暦183年初頭。
遂に人類は公式に太陽系の外へと踏み出そうとしていた。
「これより本艦隊は太陽系外縁部、即ち太陽系の外へと踏み出す事となる。何が発生するか、正直言って予想できない。故に全艦隊はこれより第2級警戒態勢に入り、太陽系外縁部にいる限りこれを維持するものとする。艦隊各員には負担を強いるが、調査終了までどうか耐えてほしい。」
グローバル司令の言葉と共に、艦隊各員が次々と所定の配置へと付いていく。
皆、分かっているのだ。
ここから先は舗装されていない獣道、否、道ですらない未知なる領域なのだ。
何があるか予想もつかず、一歩踏み出した瞬間に異星人や敵性存在に襲われるかも定かではない。
「では、全艦全速前進!太陽系外縁部へ向けて出発せよ!」
こうして、人類初の太陽系外進出が始まった。
そして、当然ながら太陽系を外から見ていた者達は、この好機を見逃さなかった。
太陽系外縁部調査試験艦隊が太陽系外縁部へと出て一時間が経とうという頃、唐突にレーダーがワープアウト反応を捕らえた。
「ワープアウト反応を確認!出現まで9秒!質量推定…1kmを超える反応多数を確認!」
「全艦隊に第一級戦闘態勢を発令!機動兵器は準備でき次第順次出撃!縮退炉の出力を戦闘出力まで上昇!DFの強度を目いっぱいまで上げろ!各銃座は敵を確認次第撃ち方始め!非戦闘員は最寄りのシェルターへ避難せよ!」
「ワープアウトします!」
そして、空間を砕くように現れたのは、人類が未だ出会った事のない程に巨大な生命体だった。
内臓や肉、甲殻を無理矢理繋ぎ合わせ、戦艦の形に見えるよう子供がこね回したと言っても信じられるような姿をした異形の群れ。
それが50を超える数で突然現れたのだ。
「ライブラリ該当、STMC!宇宙怪獣です!」
「全力で応戦せよ!奴らを太陽系内部に入れるな!人類が滅ぼされるぞ!」
そして、互いが一斉に牙を剥き、砲火を交わし合った。
大小無数の宇宙怪獣から発せられる大量の光弾と小型種(後に兵隊級と命名)を前に、しかし太陽系外縁部調査試験艦隊は事前に出力を上昇させていたDFによって耐え凌ぎ、反撃の砲火を浴びせる。
機動兵器部隊も艦隊を守るべく小型種並び艦艇サイズの宇宙怪獣へと果敢に攻撃を仕掛けていく。
「何!?」
しかし、小型種まではどうとでもなるものの、その攻撃の殆どは大型種へは通じない。
理由は単純、威力が小さ過ぎるのだ。
宇宙怪獣はバリアも張らずに亜光速で戦闘機動する極めて強靭な生命体だ。
それの意味する所は即ち、生半可な攻撃では痛打を与えられないという事。
未だ火力の低めなこの世界線の兵器ではインベーダーなら兎も角、宇宙怪獣の小規模艦隊相手であっても、まともに通る火力を機動兵器隊は持っていなかった。
それこそ以前の巨人族相手の時の様に、要塞主砲級の火力があるのなら別だが。
「グラビティ・ブラスト発射用意!目標、正面の敵集団!」
「了解!チャージ開始…完了しました!」
「撃てぇい!」
ミスマル・コウイチロウ艦長の号令の下、数少ない火力の一つであるナデシコの重力波砲が火を噴いた。
空間を歪曲させ、内部にある物質を全て砕き潰す重力波の帯が戦場を縦断し、一撃で4隻もの大型種を討ち取る。
しかし、相手は50を超える大群なのだ。
この程度何という事もなく、火力を発揮した事で注意を引いてしまったナデシコへと小型種が殺到し、光弾の射撃が集中していく。
「仕方あるまい。これより本艦はマクロスキャノンのチャージに入る。」
「宜しいのですか!?チャージ中は本艦はまともに移動できず、的になります!」
「このままではジリ貧だ。動ける余力のある内に動く!」
「了解しました!」
「るくしおんに伝達!特機二機はマクロスキャノン発射用意完了まで時間を稼げ!るくしおんも亜光速機動の制限を解除!自らの判断で行動せよ!」
太陽系外縁部調査試験艦隊の苦難は、まだ始まったばかりだった。
……………
太陽系外縁部 ???
「連中が出てきたか…。」
「どうする?こちらから声をかけるか?」
「一応いつでも出せるようにはしてるぞ~。」
「あの災害生命体、地球人類の艦隊じゃ荷が重いかと。」
「焦るなって。もうちょい待ってから出るぞ。」
「恩の売り時を待つ、か?」
「応。序に最新の地球人の軍事力・技術力を見ておきたい。」
「では、何時でも出れるように待っておくとしよう。」
同時刻
「で、何時助ける?」
「今直ぐにでも、と言いたい所ですが…。」
「ここいらで戦訓を積んでもらい、尚且つ危機感を持って頂かないと…。」
『えぇいクソ!悩ましい!』
『とは言え、この程度の不利、今後は幾らでも出会う事になるでしょう。今の内に慣れて頂かねば。』
ちょいやっつけ過ぎたかな?