多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第5話 条約締結 そして暴走

 TF達が地球人と接触を持ってから早3カ月。

 遂にTFと地球人類の間で通商・平和条約が結ばれた。

 

 とは言え、その内容は極々在り来たりなものであり、双方の行き来が可能なのはTF側のスター級機動要塞並び各艦艇のみで地球側は母星の位置を押さえられている上にそもそもの技術力・国力・軍事力などで圧倒的に差があるため、一見対等な様に見えてその内実は地球側が遠慮する様な形になるだろう。

 それでも領土や賠償金等を取られる事もなく、TFからの技術提供や資源のお友達価格での購入を実現できた辺り、異星人に対する偏見や敵意を持っていた地球の市民からも取り敢えずの納得を得られたため、暴動が起きる事は避けられた。

 また、TF側がそのままの姿で地球に降りずに、一見して地球人と酷似した姿で現れた事も受け入れの流れを後押しした。

 先の外交使節団を派遣した各国にはTF側の大使館が設置され、各国ごとに合わせた交渉が開始された。

 各国は相手の機嫌を絶対に損ねない事を絶対条件とし、決して無茶難題を押し付ける事は無かったものの、基本的に気の長い者が多いTF達との交渉は長引く傾向にあった。

 最初の技術提供や資源のお友達価格での売却は各国とTF側で即座に合意したものの、その具体的内容に関してはほぼ明文化されていなかった。

 そのため、各国は他国に負けたくないけどTFの機嫌損ねる訳にはいかないから下手な事も言えないというジレンマとTF側の気長な性質も相俟って、地道な交渉を続ける事となる。

 しかし、ここで停滞せずにスタートダッシュかました国があった。

 そう、皆大好きな某極東の変態的島国である。

 

 「今○○が足りなくて、取り敢えずこれだけ出せるんですが…。」

 「なら~~でどうでしょう?」

 

 と、下手に外交でイニシアチブを取ろうとか考えず、正直に自分達の懐事情をお話してTF側とさくっと友好関係を築いていた。

 

 「あ、新刊出ましたから書籍版と電子版両方ともお納めください。」

 「ありがとうございます。これ私達の間でも大人気で、購入できない人も多くて困ってたんですよ。」

 

 無論、種はある。

 彼らは世界に誇るサブカルチャーで文化的侵略をかましてたのだ。

 これはユニクロンが「私こういったものも大好きなんですよー」とかニコニコ宣ったのも原因で、現在彼の国の書籍や映像作品等はTF側でも大人気となっていた。

 また、制作側への配慮と敬意を持つ彼らは海賊版とかを作る事もなく、ちゃんと原作を購入してからMADや二次創作に手を出し、順調に沼に嵌るのであった。

 勿論ユニクロンのライブラリにはしっかり記録されてはいるが、そちらを商業目的ではないので無料公開している事もあり、貸し出し予約がどれもこれも最低で3年先(長いと10年先)までいっぱいになっていたりする。

 そのため、ユニクロン大始祖様大好きなTF達は「大始祖様のお気に入りの作品を見逃すな!」と皆して購入に踏み切るのだった。

 結果、所謂名作アニメや映画のスタジオ・制作会社の株価が急激に上昇する程度には売り上げが激増した。

 これを受けて各国では各種文化(特にゲーム・アニメ・映画・ラノベ等)が推奨され、支援金制度に加えて今までブラック所かダークマターだった現場にもメスが入り、大いに賑わう事となる。

 こうして文化的・経済的に繋がり、徐々にTFは地球人類に受け入れられていった。

 

 とは言え、異星人は皆殺しだ!殲滅じゃ!とか言う連中は普通にいる。

 彼らは地道に異星人の危険性を訴え、時にはデモ行進も行っているが、TF側から流れてくる膨大な量の良質な各種資源と工作機械等に狂喜乱舞している政府や経済界は聞く耳持たず、それら全部敵に回す事は出来ないマスコミの多くは上っ面を撫ぜるだけの記事しか書けなかった。

 最終的にはテロ行為をして民衆や政府の目を覚ます!と覚悟を決めるも、大使館は事前にTFと各国側双方から常に厳重な警備が敷かれているため、どうしようもないと諦めるか玉砕して闇に消え去るのみだった。

 

 この五年後、遂にトニー・スタークが量子世界を経由する事で実現した時間遡行技術の開発に成功した。

 彼は密かにTF達のTOPであるユニクロンと会談し、時間による歴史改変の結果が新たな平行世界の分岐である事を確認した後、「時間泥棒」計画を実行に移す事となる。

 

 但し、彼らアベンジャーズの望んだTF側の全面的な支援は「当時結んだサノスとの契約に抵触する恐れがある」として取り付ける事は出来なかった。

 これには元々サノス自身がストーン無しでも時空間移動が可能であり、全てのストーンを二度も使用したが故に致命的に弱体化するまではTF達ですら交戦を避ける程の難敵であったからに他ならない。

 無論、ストーンを集める前のサノスと戦えば、例え時空間移動可能であるとはいえ、彼が生まれる遥か以前から存在し、そもそも他の世界で生を受けて無数の世界を移動してきたTF達を全滅させる事は至難の業故に勝率自体は高いだろう、その被害にさえ目を瞑れば。

 そういう訳で、TF側はアベンジャーズの活躍を遠くから見守り、指パッチンの被害者全ての復活が終わったら被害者の治療や復興を手伝う事を約束するに留まるのだった。

 

 

 ……………

 

 

 「大丈夫。何も怖い事なんて無いからね。」

 

 

 その優しい言葉を、五年経った今も僕ことロバート・ブルース・バナーは覚えている。

 あの地球人類史上初の、異星人(それも異世界人で機械生命体!)との会談のための使節団にトニーと共に特別顧問として参加した時の事だ。

 使節団があの小惑星サイズの機動要塞に到着して観光した後だから…確か五日目の事だったか。

 使節団の面々とTF側の実務者達が交渉を始めるという頃、僕とトニーは彼らの母星たるユニクロン(何と彼女自身が木星サイズの機械生命体なのだ!)との正式な謁見のために呼び出されたのだ。

 通常、TF達はユニクロンに交渉段階の他種族を呼ばない。

 ユニクロンは彼らの聖地にして母星であり、始祖である。

 彼らTF全ての母にして神なのだ(この辺り、TF達は母系社会とも言える)。

 そんな相手にまだ敵対するかどうか分からない連中を入れる事は普通なら無い。

 しかし、今回は特例中の特例として僕ら二人が招かれる事になった。

 しかも特段武装解除される事もなくだ!(僕は武装なんか持ってないけど)。

 その事で向こうは大分混乱してたらしいと今なら分かるんだけど、当時の僕達にはそんな事も分からず、ただ深刻な顔でどうするどうすべきどうしたら?と移動中にグルグル考えてたものさ。

 最終的には当たって砕けろの精神で僕達は表向きすまし顔で(TF達から見れば心拍数や発汗等で丸分かりだったけど)謁見に望んだんだ。

 再び外交船アラナに乗り込んだ僕らは何度かのワープの後にユニクロンとその防衛艦隊のある異相空間に到着した。

 事前説明されていたとは言え、僕とトニーはその余りの巨大さに呆然とした。

 木星、即ち地球の10倍以上の巨大さを誇る惑星が一つの知的生命体であるという事実。

 それに圧倒されたままアラナは表層に到着し、そこから小型艇に乗り替えて幾つものワープポイントを経由した。

 周囲を明らかに精鋭と分かる兵士達に囲まれた状態でだ。

 普通のTFが分かりやすく機械的な外見をしてるのに対して、彼らは地球の中世の鎧の様な外観をしていた。

 武装も銃じゃなく近接武装を主体にしてるようだけど、明らかに他とは違う雰囲気に舐めてかかるなんてとても出来ない。

 少なくとも、チタウリなんて目じゃない位強そうな連中だったよ。

 そして、遂にユニクロンの最奥部に案内された。

 そこはトニーのスーツに入ってるフライデー曰くこの惑星の最も奥深い中心部であり、重力制御されてないと普通の人間じゃとてもじゃないが生きていけない場所だとか。

 そこは機動要塞中枢と同じと思われる美しくも不可思議な結晶体に包まれており、余りに幻想的な光景に何度目かも分からないが目を奪われてしまう。

 そんな場所を通り過ぎて直ぐ、巨大な門を通り抜けた所が、ユニクロンとの謁見の場所だ。

 そこは地球と変わらない大気成分に調整されて、足元には青々とした草原が広がっていた。

 天井には外交船の壁と同じであろうスクリーンによって地球の青空が映し出され、人工的とはとても思えない自然で爽やかな微風が吹いていた。

 そこから先はトニーと二人だけ、護衛達も「ここから先は我らの立ち入りは許可されていない。くれぐれも失礼の無き様に。」と言って門の外で待つ構えだ。

 

 「じゃぁ行こうかブルース。地球人類初、異星人の女王様から拝謁の栄誉を浴しに。」

 「今だけは君の面の皮の厚さが羨ましいよトニー。」

 

 後、女王様ってより女神様とか地母神様の方が合ってる気がする。

 そんな事を思いながら草原を歩いていく事、大体1km位だったかな?緊張してたからもっとだったかも。

 正確な数値はトニーに聞いてみた方が良い。

 ずっとまっすぐ歩いていくと、前方に人影が見えてきた。

 外見は若い人間の女性だった。

 下手すると少女と言うべき年頃だったのかも知れないけど、その中身は地球よりも長生きのお婆ちゃんだと聞いていたから、どう表現すべきかちょっと分からないや。

 彼女は僕達が来るのをずっと待っていたのか、傍らの白いテーブルには三人分の椅子とお茶、茶菓子が置いてあり、僕達を歓迎しようと椅子から立ち上がっていた。

 それよりも僕らが気になったのは、彼女の外見だった。

 

 SF映画に出てくる様なちょっとピッチリした黒いインナースーツの上にちょっと大きめな白い肩抜き・袖広がり(ニット・オープン・ショルダーとワイドスリーブって言うと後で知った)のセーターの様なものを着て、下には飾り気の無い紺色のロングスカートを穿いていた。

 それだけならまぁ似たような恰好してる友人(後でガチで怒られた)もいるから気にならないんだけど、肝心なのは彼女の容姿だ。

 作られたものだと分かってる、それでもなお目を奪われた。

 白銀から毛先に行くに従って灰色、そして黒へとグラデーションの掛かった長髪が腰まで延び、微風と戯れる様に泳いでいる。

 その瞳は暗い宇宙の様でいて、しかしその引き込まれる様な深さと相反する星の様な煌めきを宿していた。

 そして容姿は文字通り神が作り給うたかの様な正確な黄金比によって形成された、凡そ人間では到達できない美を体現していた。

 

 「こうして直接拝謁するのは初めまして女王陛下。ご存じでしょうが、私がトニー・スターク、アイアンマンです。」

 「ロバート・ブルース・バナーです。えと、ハルクと呼ばれています。お会いできて光栄です、女王陛下。」

 「えぇ。私も貴方方と直接会えて光栄です。」

 

 だって、地球の方と直接お話するのはこれが初めてですから。

 コロコロと、童女の様な、少女の様な、女性の様な、老婆の様な、そのどれとも異なり、どれとも同じである様な、完全に未知の雰囲気をしていた。

 それでも共通しているのは、彼女が僕達に微塵も敵意を抱いておらず、心底歓迎しているという事だった。

 

 「さぁ、おかけ下さいな。茶葉もお菓子も材料は地球産ですから、お味の方は大丈夫ですから。」

 

 こうして、彼女とのお茶会が始まった。

 とは言え、会話の内容は本当に些細なものだった。

 やれ、お茶とお菓子は美味しいか、とか。

 やれ、外交船や要塞、この星を見てどう思ったか、とか。

 やれ、今何か足りていないものはあるか、とか。

 やれ、良ければ私のライブラリの中身(此処には彼女らの見てきたあらゆる文明や宇宙のデータがごまんと詰まってるのだ!)を見てみないか、とか。

 特に四つ目は僕ら二人にとってはどれ程の価値があるかすら計り知れない宝の山だ。

 僕らは喜んで彼女から許可を取り、謁見終了後にでも直ぐに向かう予定を立てた。

 そして僕ら二人はどちらも多少分野は違うが(と言うかトニーが手広すぎるんだよ)世間からは天才科学者と一括りにされる人材で、彼女ことユニクロンは人類が初めて出会い、これ以降出会わないだろうと思われる程には膨大過ぎるビッグデータの管理者だ。

 当然、話題はそういった方向へと向き、僕らは最初の手探りでのんびりとした会話から、徐々に白熱した討論へと移っていった。

 そうして数時間程だろうか、討論で乾いた口を淹れてもらった紅茶で湿らせていた時、ふと会話が少しずれた。

 

 「そう言えば、二人の至上命題というか、一番やりたい事って聞いていませんねぇ。」

 「ん?そうだったかな?」

 

 討論の息抜きといった体で話がずれ、専門家ですら頭を悩ませる様な知識の応酬が一時停止する。

 彼女率いるTFの至上命題は知られている通り「知識の収集」なのだから、他種族の一個人のそれが気になるのも分かる。

 うーんと…トニーは兎も角、これは僕にとっては分かり易いな。

 

 「僕はほら、ハルク化の治療だよ。」

 「あぁ、ガンマ線で突然変異したんですよね。でも…」

 

 ふと、彼女は何でもない事の様に告げた。

 

 「お話を聞くに、技術よりも医療の問題な気がしますね、バナーさんは。」

 「へ?」

 

 医療?確かにハルク化するようになった当初は最先端の病院に幾度もかかった。

 七つの博士号を持った生物学者の僕自身も治療のためと医師免許を取れる程度には勉強し、実践経験も本職程じゃないとしても豊富だ(とは言え医者としては並程度。現役時代のストレンジ程じゃない)。

 それでも彼女はハルク化は医療の範囲だと言うが、一体どういう事なんだ?

 

 「フィジカルじゃなく、メンタルの問題です。その体質になったばかりの頃、貴方は武道家に師事して精神面でも鍛錬を積んでいたとか。」

 「あぁ、そういう事でしたか。」

 

 確かに、さっぱり治療の糸口が見つからないフィジカルよりも既にある程度の成果が出ているメンタルの方が優先すべきだろう。

 が、それはあくまで対症療法で、根本的な解決にはなっていない。

 …というのがこの時点までの僕の考えだった。

 

 「そちらの方は確かに効果はありました。でもある程度の安定には寄与しましたけど、それ以上の効果は無くて…。」

 「えぇ、それはあくまで『怒らないように耐える』という事ですよね。」

 

 視点を変えましょう。

 そう言って彼女は立体映像を呼び出す。

 そこには僕の身体を変えてしまったガンマ線を用いての兵士強化実験の詳細が表示されていた。

 

 「ほぅ、こいつがあの緑の巨人君誕生の秘密か。」

 「元々はトニーさんのお父様の成果を再現しようと始まったらしいですね。キャプテン・アメリカさんがいてトニーさんがいれば以前とはまた違った結果になりそうですが。」

 「ふーむ、一考の価値はあるな。」

 「もし何かやったら僕は全力で反対するからね???」

 

 僕みたいな故郷を追われ、恋人と別れ、人里離れて暮らして、曲者だらけの友人達に囲まれる生活をする人を増やすような真似は許さない(漆黒の意思)。

 

 「問題はこの実験の効果です。これはあくまで人体の超人化が目的で、事実ブルースさんの血液を注入した軍人の方はハルク化はしましたが、元々の人格は保ち、最初から会話も可能だったと。」

 「まぁあいつは自分からハルク化しましたからね…。」

 

 当時を思い出してゲンナリとする。

 最終的にブロードウェイを瓦礫の山としたあの事件。

 最愛の恋人と険悪だったとは言えその父親との今生の別れは、今になっても胸が痛む。

 

 「なのに、ブルースさんは変身すると自我が薄まり、会話も片言。おまけにハルクと会話可能だとか。」

 「! 二重人格、解離性同一性障害か!」

 

 医者ではないトニーだが、直ぐにユニクロンが言いたい事に気づいた。

 

 「普段のブルースさんは穏やかで優しい温厚な方です。しかし、そんな方が自分の意思によらず理性を薄れさせて破壊衝動のまま暴れてしまった。意識が戻った時のブルースさんは一体どう思うでしょうか?」

 「成程。それまで経験した事のない過剰なストレス。おまけに変身の副作用で理性もトンで自己統制権を失ったと。」

 「止めに『あんな怪物は自分じゃない!』と思う事で自己防衛し、切り離された破壊衝動と記憶が暴走の度に成長していき、やがてブルースさん本人の代わりとなるために自我を得た。」

 「言われてみれば割と典型的な解離性同一性障害のプロセスだな…。」

 

 絶句、正に絶句だ。

 今まで治療すべき、根治すべき対象でしかなかったハルクが、まさかの二重人格だと言われる日が来るとは。

 

 「で、具体的にはどう治療するか、だが…。」

 「うーん、問題なのはハルク化した時の被害であって、ハルクさんもブルースさんも悪い方じゃないですから…。」

 

 あーだこーだ話し合うも、やはりここは基本に立ち返るべきだという事になった。 

 解離に対する精神療法の基本的前提という10の項目がある。

 

 1、安全な環境と安心感の獲得

 2、有害となる刺激を取り除く

 3、人格の統合や心的外傷への直面化にはあまりこだわらない

 4、幻想の肥大化と没入傾向の指摘

 5、支持的に接し、生活一般について具体的に助言する

 6、言語化困難な状態であることを考慮し、隠れた攻撃性や葛藤についてふれる

 7、病気と治療について解りやすく明確に説明する

 8、自己評価の低下を防ぎ、つねに回復の希望がもてるように支える

 9、破壊的行動や自傷行為などについては行動制限を設け、人格の発達を促す

 10、家族、友人(恋人)、学校精神保健担当者との連携をはかる

 

 多少時代や国で差が生じるが、概ねこんな所だ。

 加えて言えば、別に二重人格そのものは悪い事ではない。

 二重人格であっても日常生活に支障を来す事なく大学を卒業し、就職した前例もある。

 この場合、真に問題なのは二重人格によって引き起こされる精神的混乱、不安定さ、人格の希薄化、実生活面での混乱や困難なんだ。

 僕の場合は怒るとハルクに切り替わる事じゃなく、怒ったハルクが暴れてしまう事で生じる被害と僕自身の実生活面の困難(具体的には暗殺とか捕獲とか追放とか)が問題なんだ。

 

 「なぁブルース。君、暫くこっちで過ごすつもりはないか?」

 「急にどうしたんだい?」

 「いやね、僕なりに考えたんだけどさ、このまま地球に戻っても君の治療をまともに出来る気がしないんだよ。」

 

 トニーは先の10の項目の他、患者の周囲が持つ3つの役割に言及した。

 

 1、「異常」扱いをしない。

 2、どの人格にも愛情をもって接する。依怙贔屓しない。

 3、話をちゃんと聴く。気持ちを受け止める。

 

 「うん、無理だね!」

 「だろう?」

 

 トニーがハルクバスターなんて専用装備を開発してもなお苦労する様なハルク相手に上記の三つの条件を達成して生活し続けるなんて地球人類基準じゃどう考えても無理だった。

 

 「じゃぁ私の方でハルクさんとブルースさんの関係が落ち着くまでお預かりすれば解決ですね。」

 

 ふんす、と鼻息荒く頑張ります!と可愛らしくガッツポーズするユニクロン(一大種族の始祖にして女王様)の姿を見た僕らは、彼女に背を向けてこそこそ話し出した。

 

 「これ大丈夫?外交問題にならない?」

 「なる、絶対なる。もしハルク化して暴れようもんなら地球滅亡待ったなしだ。」

 「何でそんな所に僕みたいなの連れてきちゃうかなぁ!?」

 「君だってノリノリだったろ!現に期待通り治療法が見えてきたんだから!」

 

 責任を擦り付けあってる僕らに対し、ユニクロンはその優れた感覚器で会話内容を聞き取ると、ぽんと手を鳴らした。

 

 「あぁ、私に危害が及んで問題にならないか心配なんですね。大丈夫、この端末もあくまでたくさんある端末の一つですから、壊れても大丈夫ですよ。」

 「ごめんなさい、もし今の貴方に危害を加えちゃったら僕の心が擦り減るんです。」

 「あら、それなら大丈夫ですよー。私、こう見えても強いですから。」

 

 にこにことほほ笑む女性の姿からはさっぱりそんな様子は見えない。

 トニーも僕も知識としてそれを知っているが、しかし未だ人類とTFとの間では武力衝突の経験はないため、その言葉がどこまで本当か分からない。

 一見してユニクロンが華奢な女性で、ここが地球の環境を再現した場所だから余計にそう思えてしまった。

 

 「いや、それは…。」

 「大丈夫ですよ。ブルースさんも、ハルクさんも。」

 

 

 たとえお二人が全力で暴れても、何も問題は無いですから。

 

 

 その挑発とも取れる一言に、サノスと出会ってから奥底でずっと眠っていた相方が起きたのが分かった。

 

 「ブルース!呼びかけろ、落ち着くように言うんだ!」

 「な、ダメだハルク!落ち着くんだ!彼女は敵じゃない!」

 

 「うるさい!だまってろ!」

 

 「あ、やばいもう無r」

 

 自分の喉から雄叫びが上がるのを最後に僕の意識は闇に包まれた。

 そして、冒頭に語ったあの言葉が目覚めた僕が最初に聞いた言葉だったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




すげぇ長くなってしまったんで一旦切ります。

前半は交渉後の地球の話
後半は交渉中のトニー&ブルースとユニクロンのハルク化の治療のお話前編
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