多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
新西暦183年における正式配備の開始された新型機動兵器類は多様であった事から、運用する現場では混乱が予想されたものの、実際はそこまでではなかった。
これは事前に入念に各地に配備されるのに最適な機種を選定した事もあるが、操縦を補助するサイコセンサーにより機種転換が容易になっていた事も大きい。
しかし、メーカーである各大企業群をして、太陽系全土へと新型を配備できるだけの数を揃えるのは極めて困難だった。
そのため生産ラインは連日フル稼働、社員は上から下までデスマーチを謳歌していた。
だが、各企業がそんな地獄の行軍をしている中でまだ比較的余裕のあった連中がいた。
そう、いつものA.I.M.とイスルギ重工である。
説明の前に、今回量産している5機種に関してちょっと比較してみよう。
生産・運用コスト(右ほど高価、左ほど安価)
ガーリオン ≧ バタラ > ジェガン > ゲシュペンスト > VF
攻撃力(左ほど高威力、右ほど低威力)※反応弾・戦術核除き、格闘武器他オプション含む
ゲシュペンスト > ジェガン ≧ バタラ > VF > ガーリオン
防御力(左ほど固く、右ほど脆い)
ゲシュペンスト > ジェガン > バタラ > VF ≧ ガーリオン
運動性(左ほど高く、右ほど低い)※スラスター等を用いない機体の運動能力(歩行・走行含む)
ゲシュペンスト > ジェガン > ガーリオン > VF > バタラ
機動性(左ほど高く、右ほど低い)※スラスター等の燃費や最高速度、加速力、旋回性能等
VF > バタラ ≧ ガーリオン > ゲシュペンスト ≧ ジェガン
大体この様な性能比になっている。
で、生産・運用コストを見ても分かる通り、安価かつ生産性の高いガーリオンとバタラを担当するイスルギ重工とA.I.M.は比較的余裕があったのだ。
機動兵器の量産、という観点では。
「あの、うちはネルガルとクリムゾンと一緒にジガン系も全力で生産してますから余裕は無いですよ?」
特機、そして艦艇も含めると一社を除いて何処も余裕がない状況だった。
何処も彼処も生産に次ぐ生産であり、子会社に任せる所も多く出ている。
しかし、その子会社で問題が出ると当然ながらリテイクの嵐となって余計な手間が増える上に担当者はあちこちに頭を下げる事態になる。
加えて、大企業群がそんな状態なので、資源・資材調達コストも高騰の動きが出ており、木星・火星・土星圏からの資源採掘・精錬のための重工業施設もフル稼働し、それらを繋ぐ運輸業もまたピストン輸送よろしく大忙しとなっていた。
以前よりも輸送速度も輸送量も多くなっているとは言え、未だ全ての民間輸送艦艇が亜光速航行やワープ航行が可能ではないため、あっと言う間にパンク寸前になっていた。
また、そうした運輸状況を少しでも好転すべく各大企業のジャンク回収部門やフリーのジャンク屋が航路上に広がるジャンクを回収し、それらを資源としてリサイクルしていくも、それでもなお資源不足の状態が続いていた。
この状況は主力機更新をゆっくり行っていれば起こらなかったのだが、一刻も早い配備を望む現場と市民の声に応えるにはこうするしかなかったのだ。
『どもーゴライクンルですー。』
そしてこの好機を見逃す程、共和連合も甘くはない。
好機と見て動き始めたゴライクンルを後押しする形で介入してきたのだ。
彼らは大量の資源を太陽系の相場よりも少しだけ安い値段で大量に売り捌き始めたのだ。
これは販路獲得を目的としたものだが、それが分かっていても今は資源が喉から手が出る程に欲しい地球側としては積極的に購入、代わりに未だ開発の難航しているというMSサイズの縮退炉を輸出するバーター取引が行われた。
ゴライクンルは新たな販路を得て、地球側は共和連合との経済的結びつきを強化(=戦争が損になる)する事が出来るという両者にとってお得な取引だった。
これにより新型主力機生産は再び軌道に乗り、各地へと配備されていく事となる。
一年戦争後、最大の好景気。
軍需によるものとは言え、太陽系の殆どの人類はこの恩恵を受ける事が出来た。
この好景気は新西暦183年から185年まで続いていく。
そして、これら主力機動兵器並び艦艇の更新が終わった後、遂にゴライクンルすら含めた各大企業群による熾烈な特機開発競争が更に激化していく事となるのだった。
……………
新西暦184年 月 アナハイム月支社(実質本社)
「ふむ、まぁ今はこんな所か。」
スカウトマンが100面ダイスで100を連続で出したと言われても信じられる様な人材、マスターアジアをパイロットとした試作特機系MSの一機がオーバーヒートした状態で辛うじて格納庫へと戻ってきた。
「MSにあんな動きが出来るなんて…。」
「まさかここまでとは…。」
「我々の予想以上だ。素晴らしい…!」
しかし、機体がボロボロの状態でありながら、それを見ていたアナハイムの社員らは感嘆の声を上げた。
アナハイム製ムーバブルフレームに最新の最高級材質で作った試作機でありながら、マスターアジアの動きに付いていけずにオーバーヒートしたのだ。
「エネルギー自体は新型のプラズマ・ジェネレーターのお陰である。しかし…」
「少しでもギアを上げて動くと途端に排熱が追い付かなくなるとは…。」
「既存のムーバブルフレームでは関節の可動域も強度も足りん!」
「仕方ない。購入していたゲシュペンストを改造して試験してもらおう。その間に次の機体を設計する。」
マスターアジアの極めた流派東方不敗の技の数々。
それを機動兵器で発揮させるには、MSは余りにも脆弱に過ぎた。
改善するにはムーバブルフレームの再設計が必要であり、既存のコスト重視のそれでは歯が立たないのが現状だった。
『おお、以前よりはマシだな。』
そして、翌日には操縦系統を直接動作操縦システムに入れ替えたゲシュペンストでの動作試験が行われた。
結果、適当に流す分にはオーバーヒートしない程度にはなった。
本気出したら?宇宙なのに機体が空中分解します。
「ムーバブルフレームの新規設計がここまで難しいとは…!」
「まぁ要は骨だからな。そりゃ難しいさ。」
「一度武装の搭載は見送ろう。先ずは基礎を固めねばならん。」
そしてマスターアジアとお手伝いのドモンによって得られたデータを元に半年後に出来上がったのが、後の全てのMFの祖となる機体「ヤマトガンダム」である。
徹底したムーバブルフレームの強度UPと関節可動域の拡大を目指した機体であり、武装は一切存在しない割り切り過ぎた構造の機体である。
その設計の優秀さは後に大小のビームサーベルとバルカン、専用の強化繊維で編まれた帯が追加されるまで、一切の武装を用いずに地球を目指す侵略者達を徒手格闘のみで撃滅し続けた伝説が刻まれた事からも明らかである。
この伝説が成立以降、マスコミがマスターアジアを「ガンダムファイター」と呼称するようになるに至り、アナハイムはこれを宣伝に利用した。
「ガンダムファイターを志す者はアナハイムへ」
「今日から君もガンダムファイターだ!」
こうして集まったガンダムファイター志望者は徹底した身体能力検査と実際の動作試験の後に合否を決定した。
合格した候補生にはヤマトガンダムの設計を引き継ぎつつ、より反応速度と自由性を優先した「モビルトレースシステム」への更新が行われた機体が与えられ、そこから更に個々人向けのカスタマイズを行っていく事となる。
装備の多くは通常の量産機と共通の武装から新規設計の専用武装まで様々であるが、共通している事が一つだけあった。
どれだけ異形となろうとも、どんな搭乗者だろうとも、全ての機体はガンダム顔であり、通常のMSに比べて高い格闘性能を持ち続けた。
こうして生まれた「ガンダムファイター」達は太陽系を、人類を、地球を守るために侵略者達と戦い続け、一連の戦乱を駆け抜ける事となる。
そんな彼らを纏め、指導し、更なる高みへと導き続けたのが、マスターアジアを筆頭に彼の格闘技仲間である「コロニー格闘技五天王」、後の「シャッフル同盟」のメンバーである。
彼・彼女らはガンダムファイターを始め、多くの人々から称賛を集めていく事となる。
「よし、これは予想外の大商いのチャンス!」
これを好機と見たアナハイムは彼らを前面に出した社のイメージアップ戦略を展開した上、平時においてはプロレスよろしくガンダムファイター同士の模擬戦を行い、その技術力とファイター達の活躍を太陽系全土(と共和連合)へと放送した。
この模擬戦は後にランキング制度を導入し、幾度も行われていく事となる。
(よし、彼らの名声を利用して更なる拡大を…!)
流石はアナハイム、やる事が分かり易い。
が、その目論見を見抜いていたシャッフル同盟とガンダムファイター、彼らを慕う超熱烈な社員らの手によって潰え、徐々にアナハイム全体へとその風潮が広まっていく事となる。
なお、全てを知ったトレミィは「なぁにぃこれぇ?(困惑)」となっていた。
そりゃそーである。
が、なってしまったものは仕方ない。
マスターアジアらは優秀極まりなく、アナハイムの内部洗浄が進むのは大助かりだったので、この動きを支援するのだった。
「月行く用事あったらサイン貰ってきて。」
「畏まりました。」
なお、サイン色紙はシャッフル同盟全員分とドモン・カッシュの分の6枚だったりする。
マスターアジアがおかしい。
何処に突っ込ませるにしても悠々と勝って帰ってくる姿しか想像できん(汗
なお、原作のMFよりまだ性能は低いです。
ビームクロスやリボン、液体金属とかビームフラフープとかグラビトン・ハンマーとかどう再現せいと言うのだ(汗
幸いにして強化型バイオセンサーのお陰で性能UP、時々異常現象が発生して限定的にパイロットの全力の技が再現されてますが、安定して出せるにはまだまだ色々足りてません。