多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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また長くなりすぎた…(汗


第28話 特機開発競争とブルーコスモス

 新西暦184年、それは各大企業群と民間の研究者らによる特機開発競争の激化が最も活発だった時代だ。

 何処から嗅ぎ付けたのか、ゴライクンルすら参加したこの開発競争、最終的には量産型MAすら発表されて一部が地球連邦軍に採用される等、中々にカオスな事になった。

 だが、これは太陽系と共和連合双方の技術的交流の切っ掛けとなり、一連の戦乱を共に戦い抜く無二の戦友という意識を現場レベルで浸透させる事となるのだった。

 が、それは未来の話。

 

 「こちらが我がイスルギ重工のジガン系の簡易量産型特機、グラビリオンの正式モデルです!」

 「同時に新型量産MAであるサイリオンです。高機動・高火力・(機体本体は)低コストですよ!」

 「テスラ・ライヒ研究所からは正式版グルンガストです!人型・航空機型・戦車型と三段変形が可能!」

 『うちらゴライクンルからは拠点防衛用特機としてガルガウ(初期型)をお出ししまっせ。』

 「我がアナハイムからは新型のMFシリーズをどうぞ!パイロット込みで派遣いたします!」

 「マオ社からは特機に匹敵する突破力を持った機体としてアルトアイゼンを紹介させて頂きます!」

 「ネルガル並びクリムゾングループからは新型のジンシリーズを発表させて頂きます!」

 「A.I.M.からは特機にしてISA戦術専用艦として改マクロス級可変強襲揚陸母艦メガロードを発表させて頂きます。」

 

 「「「「「『ちょっと待って!!』」」」」」

 「はい、何でしょうか?」

 

 最後に発表された代物に他全員(連邦軍の担当官含む)がA.I.M.の担当者へと突っ込みを入れた。

 

 「もうこのやり取り何度目だっけ?」

 「忘れたわ!ってか毎度毎度何だよこれぇ!!」

 「マクロスと同サイズで格闘戦まで可能な艦を特機として出すなよ!?」

 『なんだこれは…たまげたなぁ…。』

 「これで格闘戦が出来るんだってさ。ふざけてるみたいだろ?マジなんだよ…。」

 

 今日も開発現場は修羅場です。

 

 

 ……………

 

 

 地球 北米某所

 

 「お待たせして申し訳ありません。」

 「いえ、こちらこそお忙しい所に申し訳ありません。」

 「なに、貴女の様なレディを待たせてしまったのです。謝罪するのはこちらですよ。」

 

 何処とも知れないオフィスビルの応接室にて、ムルタ・アズラエルは微笑んだ。

 

 「では、ご用件をお伺いしましょう。」

 「それでは先ずはこちらのデータをご覧ください。」

 「拝見させて頂きます。」

 

 渡された情報端末を受け取り、アズラエルはゆっくりと目を通し始めた。

 それから暫くはアズラエルが端末を操作する動きだけで、時間が過ぎていく。

 時折アズラエルの息を飲む音を除けば静かなもので、アズラエルの様子をA.I.M.社長兼代表取締役たる武蔵はじっと静かに見つめていた。

 そして、約20分程が経過した頃、アズラエルは漸く頭を上げ、自身を見つめる武蔵へと視線を返した。

 

 「…これを見せて、僕にどうしろと?」

 「いい加減、時計の針を進めるべき時が来たと、我々は判断しました。」

 

 ブルーコスモスという過激な環境保護団体が存在する。

 当初からその過激さで知られていたのだが、何時しか彼らは遺伝子調整技術ならびそれによって誕生した存在、つまり一部の遺伝子組み換え食品やコーディネーター等の排斥を主張し、幾度か大規模なテロ行為をも計画・実行した。

 その度にリーダーを始めとした幹部らを逮捕しているのだが、毎度毎度何処から人と資金を入手してくるのか、夏場の雑草が如く組織を立て直してはテロ行為に走るのである。

 その資金源はアズラエル財閥からの資金が主であり、同財閥の非正規活動部門の表の顔こそがブルーコスモスだった。

 元々宗教的な理由で環境保護並び遺伝子調整反対の立場を貫いてきた彼らはコーディネーターという自分達を脅かす唾棄すべき存在に対して憎悪を燃やしており、それを排斥、否、根絶するための活動を続けてきたのだった。

 そうした活動を支援する中で、実質趣味とも言えるブルーコスモスへの支援に託けてその内部に自社のための非正規部門を設立する辺り、アズラエルは間違いなく極めて優秀な商人だった。

 まぁ、プライドが高過ぎるのとトラブルに若干弱いのが玉に瑕だが。

 武蔵が渡した情報端末には、そうしたアズラエル財閥のブルーコスモスへの支援と非正規部門の行った作戦内容についての報告書だった。

 これが世に出ればアズラエル財閥は実質的に崩壊、他のロゴスを始めとした近しいグループに吸収されるならば兎も角、他の敵対的大企業群に吸収されては目も当てられない事になる。

 そんな死刑執行書を見せられてのアズラエルの言葉に対し、武蔵は相変わらずの無感動そうな声音で返答した。

 

 「既にプロトカルチャーを始めとした地球の先史文明による遺伝子調整は耳に入っていますね?」

 「えぇ、まぁ。」

 

 冥王星工廠基地にて人類に齎された驚きの情報は、地球連邦政府首脳部によって一時規制されたものの、政府関係者上層部から有力者を始めとした者達へと混乱を起こさないように徐々に伝播されていた。

 結果、レビル首相の就任演説のお陰もあって、市民の混乱は想定内で収まる見通しだった。

 

 「僕らもあの宙の化け物共も、とんだ道化だったと思い知らされましたよ。まさか現在の人類全てが先史文明による遺伝子調整を受けていただなんて。」

 「えぇ、その通りです。しかし、その様な顔が出来るようになったのなら、多少は吹っ切れたのですね。」

 

 やれやれ、といった風に肩を竦めるアズラエルに、武蔵は若干の安堵を吐露した。

 

 「?」

 「本題に入りましょうか。現状の地球人類では、絶対に絶滅します。」

 「理由をお聞きしましょう。」

 

 武蔵の断言に、アズラエルは商人の顔で問うた。

 

 「単純に言って、数で負けているからです。」

 「宇宙怪獣、インベーダーにバッフクラン、ズール銀河帝国とゼ・バルマリィ帝国でしたか。」

 「えぇ。それら全ての勢力が我々地球人類並びそれに協力的な存在全てを合わせてもなお100倍では済まない程の国力と人口の差があるのです。」

 

 当たり前である。

 宇宙に出て、他の惑星へと有人船で行けるようになってまだ100年かその程度しか経過していない太陽系と、遥か古代から宇宙に進出・発展してきた文明とを比較する事すら烏滸がましいのだ。

 だが、地球はそれら大勢力の精鋭とも戦力の質だけなら追い付きつつあるのだから、やはり頭おかしいと言える。

 しかし、国力と生態、時間によって培われた物量だけはもうどうしようもない。

 例え太陽系の全てのリソースを振り絞ったとしてもこれらの大勢力から自身を守る事は不可能であり、例え相手側のトップの撃破に成功したとしても後に残るのはトップの仇討ちに燃える敵軍による殲滅戦のみだ。

 加えて言えば、宇宙怪獣やインベーダーはそもそもトップが存在せず、ただただ圧倒的物量によって磨り潰されるのみだろう。

 

 「それらを解決するには…」

 「無人機、或いは人に代わる労働力・戦力となる機械の導入。」

 「言わずとも分かっていましたか。」

 「そりゃ僕も商人ですからね。無人作業機械の導入は今まで幾度も行って来ました。それで発生する労働者の解雇や抗議活動への対処も含めてね。」

 

 それは財閥の長ならば当たり前の事だった。

 産業革命等の例に漏れず、技術の発展によって多くの人員を使うしかなかった作業が機械によって代替可能になるのはよくある事だった。

 同様に軍事においては兵の損耗を抑えるべく無人兵器が開発され、時代と共に発展していき、一部の兵士らは配置転換を余儀なくされた。

 だが、今回の件はその程度で済むものではない。

 

 「ヒューマノイドの軍事への導入。確かに必要不可欠です。」

 「………。」

 「ですが、これは確実に大きな火種になるでしょう。私がブルーコスモスから手を退いても同じ事です。」

 

 冥王星工廠基地を始め、太陽系無人防衛部隊にて運用されているヒューマノイド。

 現在、マクロス内部やエクセリオン内部でも活動が観測されている彼らの存在が民間に知れ渡れば、とてつもなく面倒な事になるのが目に見えていた。

 人権保護団体が飯の(火)種だとばかりに人間とヒューマノイド双方の人権の擁護を歌い上げ、過激な反ロボット団体がイラストや写真を燃やし、職や権利を失う事を恐れる労働者達が不安を訴え、それらを編集したニュースを見た関係のない人々まで危険性を疑い、何となく排斥へと動いていく。

 どう考えても地獄絵図である。

 

 「えぇ、それで良いのです。」

 「ふむ?」

 「人間というのは、自分の認識する範囲内に自身の嫌うものが存在する事には敏感です。しかし…」

 「認識する範囲外ならば、どんなものであっても許容できる、と。」

 

 そこまで言って、アズラエルは不意に天性の商人としてのセンスによって、今が大儲けのチャンスである事を嗅ぎ取った。

 

 (なんだ、なんで儲ける?いや、そもそも単純な儲け話の筈がない。)

 

 ヒントは認識する範囲外。

 先程の会話と繋がっているのなら、ヒューマノイドを多くの人々が認識できない場所で運用する事を指している筈なのだが…。

 

 (僕に話を持ってきたという事は何らかの協力が必要という事。だが、天下のA.I.M.にそんなもの必要か?いや、必要がない……ッ!?)

 

 そこまで考えて、アズラエルは悟った。

 

 「今から僕が言う事は推測ですが、宜しいですね?」

 「えぇ、どうぞ。」

 

 今朧げにアズラエルが掴んだもの、それをゆっくりと、興奮と戦慄で僅かに震えながら口に出していく。

 

 「先ず、ヒューマノイドを運用するのは反対派の人々の認識の外。」

 「えぇ。」

 「運用するのに邪魔となる人々の殆どは、その活動から過激な環境保護団体等で大体把握する事も出来る。」

 「えぇ。」

 「そして、この銀河に存在する大勢力から身を守るには、今現在の地球人類では絶対に不可能。」

 「えぇ。」

 「だからこそ、絶滅を避けるためにも太陽系の外に人類種の生存領域を広めねばならない。ヒューマノイド達と協力しての可及的速やかな移民。」

 「当たりです。」

 「そのためにも、行動を起こしそうな過激な反対派は今後も地球に居続けてもらう必要がある。その方法としてブルーコスモスの構成員となってもらい、僕の方で手綱を握れという事ですね?」

 「大当たりです。」

 

 武蔵はアズラエルの言葉に満足そうに頷いた。

 暴走するのなら、管理すれば良い。

 知れば嫌悪するのなら、知られなければ良い。

 永遠に小さな揺り籠の中で、勝手にさせれば良い。

 その間に、情勢を判断できるだけの者達やそんな好き嫌いしている余裕のない者達は太陽系を出て、銀河の各地へと入植していく。

 やがて現在の太陽系の様に、外に出た者達が力を蓄え、独自の生存域を確保していく事だろう。

 それは同時にもしもの時の移民先が出来る事、太陽系を守るための外郭部が出来る事と同義だ。

 

 (成程、これは確かに途方もないビッグチャンスですね。)

 

 彼女らの片棒を担ぐ事で、アズラエルの方はこの地球における大企業群の中でも一歩先んじる存在となるだろう。

 無論、彼女らを除いて、と付くが。

 このまま彼女らが太陽系を去った後、座視すれば訪れるだろうアナハイム一強の時代よりは遥かに良い。

 

 「条件付きでお受け致します。」

 「分かりました。詳細な内容は後日実務者協議で…」

 「あぁ、そっちじゃなく。もっと個人的なものでして。」

 「? 珍しいですね、貴方がその様な事を言うとは。」

 

 武蔵の言葉を手で制し、アズラエルが切り出した。

 

 「これを受け取って、こちらにサインして下さるのならば、アズラエル財閥はA.I.M.並び外宇宙移民政策を全面的に支援させて頂きます。」

 「これ、は」

 

 応接室のテーブルの上に出されたのは、婚姻届と小さくとも一目で高級と分かるリングケース=指輪の入った小箱だった。

 

 「こちらに合意し、サインをして頂ければ契約締結となります。」

 「正気ですか?私は…」

 「知ってますよ。貴女がヒューマノイドなのは。」

 

 昔、武蔵は所要にて渡った北米にて、コーディネーターの少年をいじめようとして返り討ちに合い、泣いていた情けない少年を助けた事があった。

 その少年は何を思ったのか、「お礼したいから」と熱心に武蔵から連絡先を聞き出し、それ以来小まめに連絡を欠かさずに来た。

 そして今日、嘗ての少年はその関係を前進させようと腹を括ってこの場に臨んで来たのだ。

 正直、前半で大分正気度が削られたが、嫌われてはいないようなので無問題にしよう、うん!

 

 「それでもあの日、僕を慰めてくれた貴女は美しく、優しかった。」

 「私はヒューマノイドです。その様にプログラムされています。」

 「えぇ、知ってますとも。同時に君達は人間と変わらない程に複雑極まりない心を持っている事も。」

 

 マシンハートという機能がある。

 トレミィの作る全ての自動人形に搭載された、TFにおけるスパークに代わる本質的な部分。

 自動人形らの最も根幹的なソースコードに記載された、他者との愛情を育む機能。

 それが本格的に起動した場合、プトレマイオスからの直接命令すら拒絶可能になる独立・自主性を獲得する。

 嘗てから現在に至る、人間と結婚した生体式自動人形の全てがこの機能の起動に成功、そして人として生き、我が子を産み育て、不死性を捨てて死んでいった。

 

 「一体誰からその事を?」

 「Sfさんからお聞きしました。いい加減焦れったいから教えます、と。」

 

 武蔵は瞬時に自動人形らの固有ネットワークにてやらかしたアホを問い詰めた。

 

 『おい、おい筆頭侍女おい。』

 『謝罪プログラム起動。てへペロ!』

 『これが…愉悦…!』

 『良いからとっととカップル成立しちゃいなさい。』

 『いい加減腹を括るべきかと。』

 

 あのアマ絶対許さねぇ。

 武蔵は激怒した。

 必ずあの邪知暴虐の先輩、序に部下や同僚に上司もブチ転がす事を決意した。

 

 「それで武蔵さん、合意は頂けますか?」

 「わ、私は……。」

 

 その後、応接室で何があったかは分からない。

 しかし、小さいながらも給湯室とシャワー室完備のこの場所にアズラエルが武蔵を通したのは、偶然ではないとだけ言っておく。

 彼と彼女が部屋を出たのは、会談が始まって実に10時間後の事だったそうな。

 

 

 

 

 

 三日後、A.I.M.社長兼代表取締役とアズラエル財閥総帥の結婚についての緊急特別報道番組が放送された。

 これにはA.I.M.内外の武蔵のファンや信望者らを中心に暴動が起きたが、一時間とせぬ内に暴徒鎮圧用装備で固めた警備部と同部責任者の鹿角によって鎮圧されたのだった。

 そんなちょっとしたカオスを挟みつつ、これ以降アズラエル財閥はA.I.M.と極めて親密な関係となり、本格的な外宇宙移民政策が開始されて以降は太陽系内で最も勢いのある大企業の一つとして数えられるまで成長する事となる。

 

 

 

 

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