多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第2話 母と子

 

 新西暦186年 5月 首都ダカール 地球連邦政府首相官邸

 

 大型母艦 ガンテ ×2

 海月型航空機 ドローメ×40

 化石獣(多数)×14

 

 それが初陣で鬼神の如く暴れ回ったライディーンの戦果、否、暴走の結果だった。

 報告書と映像資料によれば、包囲からの集中攻撃の後に拘束されたライディーン並びにひびき洸は初陣の恐怖と念動力に目覚めたばかりの極度の興奮からその念動力を暴走、周辺一帯の大気を操作、巨大な台風を作り出す。

 この巨大台風により敵海月型航空機ならび化石獣(機械獣ならぬ岩石で構成されていたため)は纏めて撃破され、ガンテもまた艦隊を編成していたがために互いに衝突し合い、不運にも5隻中2隻が大破、残りは撤退していった。

 戦闘終了後、ひびき洸とライディーンは臨海市の岬に聳え立つ神面岩内部に隠されていた修理施設へと機体を格納、機体頭部から出てきたひびき洸は緊急搬送され、現在も眠り続けている。

 

 凡そこの様な内容の報告書を、ひびき玲子もといレムリア女王は顔を青くしながら熟読した。

 

 「現状、女王陛下に出来る事はございません。」

 「…何が言いたいのかしら?」

 

 傍に控えていた護衛用高級自動人形の一体、神通が思い悩むレムリア女王へと声をかけた。

 

 「現状、共和連合からの支援に関しての話は纏まり、女王陛下の出番はありません。また、他の異星人や異次元人に対しては交渉のとっかかりすらありません。」

 「つまり、女王様はお母さんらしい事してきても大丈夫だって事だよ!」

 

 もう一体の護衛用高級自動人形、那珂が女王の真意を見抜いて告げた。

 

 「娘さん、晶ちゃんでしたっけ?久々におうちに帰ってあげたらどうです?どうせ今は一段落して仕事も無いんですし。」

 

 更に付け加えたのが最後の護衛用高級自動人形、川内だった。

 彼女ら三体がレムリア女王の身辺警護として配置された戦力であり、戦い慣れしていないレムリア女王を守るためにあらゆる手段を許されていた。

 とは言え、その精神性は見た目よりもかなり好戦的かつ油断ならないとは言え、我が子の身を案じて思い悩む母親の背を後押しする程度には情け深くもあった。

 

 「そうですね…今日は、そうさせてもらいましょう。」

 

 言うが早いが、レムリア女王はその場で念動力を用いて姿を消した。

 ワープだった。

 

 「わー、私らがこの端末じゃ出来ない事を生身で易々と…。」

 「すっごーい!女王様、やっぱり凄い人なんだー!」

 「二人共、驚いてないで私達も行きますよ。」

 

 そして、部屋には誰もいなくなった。

 

 

 

 

 なお、病室では初陣の恐怖で未だ震えていた洸をマリが身体で慰めていた最中であり、うっかりそこにワープしてしまったひびき玲子が息子の二次性徴を確認してしまう事態となり、阿鼻叫喚の地獄絵図になるのだった。

 

 

 ……………

 

 

 新西暦186年 6月

 

 今後の戦略方針を決定すべく、地球連邦政府閣僚とひびき玲子外交特使とそのお付きによる会議が開かれていた。

 

 「現状、ムゲ・ゾルバドス帝国並びに地底種族連合に対する戦争に関しては小康状態となっておりますが…。」

 「何時破られるか分からない、かね。」

 「はい。現状、我々は彼らに対し打って出る手段がございません。」

 

 既に転移や地中侵攻の兆候を即座に捕捉する索敵システムが組まれている。

 これによりVFを始めとした機動力に長ける戦力が瞬時に展開、転移や地上出現とほぼ同時に攻撃、撃破出来ずとも相手を混乱させて時間稼ぎ、その隙にやってきた抽出打撃部隊や特務部隊によって殲滅という流れが出来上がっていた。

 人間に化けた爬虫人類による工作活動やコマンド活動に関しても、既にその体熱分布や骨格を始めとした生体反応から見破る事が可能なゴーグルが生産、各地に配備されており、開戦当初の様な一方的な事態は防いでいた。

 しかし、未だどうしようもない事もある。

 それは彼らの本拠地や拠点の位置が全くもって不明である事だった。

 

 「成程、拠点の位置情報が無いか…。」

 「捕らえた捕虜にしてもその辺は一切吐かずに自害するか沈黙したままです。酷いと自爆します。」

 

 恐竜帝国や百鬼帝国の兵は暴れ回るので射殺され、そもそも自分の意思といったものが割と希薄なムゲ兵は沈黙を保ち、機械獣の中身はAIであり、鹵獲して解析しようとすると自爆してくるため、各勢力の情報は殆ど分からなかった。

 

 「辛うじて占領された我が方の基地施設等の情報はありますが…。」

 「大体既に奪還済みだな。」

 「極東方面にあった恐竜帝国の秘密基地に自爆されてしまったのが痛いですな…。」

 

 極東方面の某山中で発見された恐竜帝国の秘密基地。

 そこでは民間人が捕らえられ、人類抹殺を目的とした非人道的な人体実験に供されていたのだ。

 基地自爆までに得られたのは極僅かなデータだったが、BC兵器に始まり、人間の改造や洗脳技術等を含めたあらゆる研究がそこで行われていた事が判明している。

 この情報は半月程で太陽系全体で共有される事となり、一時は広まった再び始まった戦乱に対しての厭戦感情がすっかり払底され、軍官民全てで抗戦ムードが高まっていた。

 

 「財政並び各種物資の生産と流通に関しては、漸く戦前の7割まで回復しました。」

 「おお、それは幸いだな。」

 

 兵站は元より、民間の流通もまた大事な事だ。

 流通が極めて活発かつ広大化している現在、それこそ土星から地球まで物流網は繋がっている。

 一度各地で寸断されてしまったそれを繋ぎ直し、再建された生産地帯や工場で作られた商品を必要な所に運ぶのは本当に骨の折れる作業だった。

 

 「とは言え、このままダラダラと続ける訳にも行きません。」

 「元々、地球圏の軍備はコロニーを除いて後回しでしたから、まだまだ旧式機が多いのが現状です。」

 「抽出打撃部隊等が火消し役をしていなかったらと思うと、ゾッとしますな。」

 

 事実、コロニーと各星系駐留艦隊の方が優先されて戦力の更新が成されており、地球は地の利がある上に旧式とは言えまだまだ現役の兵器が多数ある事から後回しにされていたのだ。

 今回はその隙を突かれた形だった。

 しかも、宇宙は宇宙で太陽系外縁部に留められているとは言え、太陽系目指してやってくる複数の大勢力相手に防衛用無人兵器部隊が奮戦している最中なので、下手に戦力を抽出してはア・バオア・クー攻防戦時の様な奇襲を受けかねなかった。

 

 「では次に地底種族連合ならびムゲ・ゾルバドス帝国に関して、ある程度判明した情報をお知らせします。」

 

 そして、本命とも言うべきA.I.M.もとい太陽系防衛用無人兵器部隊からの報告の番となった。

 

 「先ず、恐竜帝国と百鬼帝国、最近確認された地底種族連合の首魁たる妖魔帝国の拠点ですが、これらは全て移動拠点である事が判明しました。」

 

 おお、と俄かに会議室がどよめいた。

 

 「彼らは皆全長数kmの移動要塞を保有しており、兵器の生産ならび全体の指揮をそこから取っていると思われます。」

 「では、それらを撃破すれば解決かね?」

 「現在、こちらの調査班の情報からそれら移動要塞は海中や地中、マグマの中を移動しているため、例え捕捉に成功したとしても攻撃は不可能です。」

 

 余りの情報に閣僚らは真顔になった。

 海中は兎も角、地中やマグマの中を移動するkmサイズの要塞ってどんなやねん。

 彼らの中でまた一つ常識が殺されてしまった。

 

 「また、ムゲ・ゾルバドス帝国に関してですが、彼らの機動兵器ドルファー並びゼイファーを解析した結果、彼らの本来所属する宇宙、便宜上ムゲ宇宙と呼称しますが、そこからワープして我々の住まうこの宇宙へと侵略している事が判明しました。」

 「異なる、宇宙?」

 「はい。端的に言って異世界です。」

 「いせかい?」

 「はい。」

 

 閣僚らは天を仰ぎ、或いは両手で顔を覆って俯くか、放心した様に虚空を見つめた。

 先の地底種族連合の移動要塞よりも無理ゲーだったからだ。

 

 「現在、ムゲ宇宙よりワープしてくる際には量産型無人OF部隊が展開可能な位相空間にやってくる事が判明したため、そこで侵略してくるムゲ帝国の戦力の7割を撃滅していますが、残り3割だけはこちらの人手が足りず、どうしても取り逃がしてしまっているのが現状です。」

 「3割。」

 「はい、申し訳ありません。」

 

 閣僚らは(ry

 が、もう何度目となるか分からない事態に早急に精神を立て直すと、話を次へと進めた。

 

 「で、対処法はあるのかね?」

 「…彼らが面倒な場所に引き籠っているのなら、こちらに釣り出してしまえば良いのです。」

 

 報告を行っていた侍女型自動人形は、一瞬ちらりとレムリア女王へと視線を向け、それに女王が頷いたのを確認した後、説明を続行した。

 

 「恐竜帝国は嘗て地底へと逃げる原因となったゲッター線に恐怖し、それを用いたゲッターロボに対して憎悪を抱いています。百鬼帝国もまた理由は不明ですが、ゲッターロボに執着しています。」

 

 つい先日漸くメンバーの揃った事もあり、正式に稼働を開始した三段変形・分離・合体を可能とするゲッターロボに対し、恐竜帝国は我先にと殺到しては戦闘を繰り広げ、相性の悪さから悉く返り討ちに合っていた。

 百鬼帝国はゲッターロボを一時追い詰める程には強力だったのだが、ゲッターロボ単独ではなくプロトゲッター三機並び他の民間研究所で開発された特機の協力もあって今の所返り討ちに成功している。

 

 「機械獣軍団は指揮官であるDr.ヘルの個人的怨恨からマジンガーZに固執しています。」

 

 事実、稼働前のマジンガーZと開発者の兜十蔵博士に対して攻撃を加え、更にはマジンガーZを鹵獲しようともした。

 しかし、辛うじて間に合った連邦軍の救援(と自動人形らの救護)によりマジンガーZは兜甲児により運用され、十蔵博士は未だ意識が戻らないものの命を繋いでいる。

 一説にはマジンガーZに隠された機能に固執しているらしいのだが、真相は未だ不明である。

 

 「妖魔帝国に関してなのですが……嘗てムー帝国を滅ぼした勢力であり、そのためムー帝国の遺産にして最終兵器でもあるライディーンと末裔たるレムリア女王ならびお子様である洸様と晶様の御命を狙っているようです。」

 

 妖魔帝国の数少ない艦載機運用能力を持ったガンテの艦隊を派遣する程度には、妖魔帝国は未だにムー帝国を警戒し、今度こそ絶滅させようとしていた。

 プロトカルチャーの末裔が築いた超古代文明たるムー帝国。

 それを滅ぼした妖魔帝国が今再び自分達に襲い掛かってきたという状況に、レムリア女王の表情は硬かった。

 そして、これから自分が一旦を担う作戦についても母親として、一個人として、只管に胸が痛かった。

 しかし、女王としての彼女はやるべきだと断言していた。

 

 「ゲッターロボ、マジンガーZ、ライディーン。これら三体を周辺被害の心配のない一か所へと集め、囮とします。後に地底種族連合に対して挑戦状を叩き付けます。具体的には全方位周波数で煽りに煽ってやるのです。やーい、お前ら大言壮語してんのにさっぱり勝てねーでやんのー、と。」

 

 連中のプライドの高さを思えば、何らかのアクションをするのは目に見えていたので、有りと言えば有りだった。

 しかし、あんまりな作戦の説明に、やっぱり連邦閣僚らの目は死んでいった。

 

 

 ……………

 

 

 「精神…未熟スギル…。」

 「欲ノ力……知識ヲ貪リ……宇宙ヲ蝕ム……。」

 「広ガリ過ギタ種……刻ヲ待タズ……潰エル……。」

 「修正が、必要だ。そのための、サンプルを。」

 

 

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