多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第13話 脅威

 新西暦186年7月 地球 極東方面 光子力研究所近郊 

 

 

 デビルマジンガーに搭載された精神攻撃兵器「インフェルノデモリッション」にて兜甲児の精神を破壊せんとした時、Dr.ヘルは兜甲児の精神の最奥から、兜甲児ではない声を聞いた。

 その声を聞いた瞬間、Dr.ヘルは一切の逡巡もなく接続を解除、翼から発生させていた氷も切除して、距離を取った。

 

 (何じゃ今のは!?否、考えるのは後!今は逃げるのみ!)

 

 その声を聞いた瞬間、その声の主の気配を感じた瞬間、Dr.ヘルは明確に悟った。

 世紀の天才たる自分をちっぽけに感じる程の圧倒的な存在感。

 まるで山脈を前にした時の様な、圧倒的なスケールの違い。

 明確な大きさの違いすら測れない程の、格の違い。

 

 (現状の装備で勝てる訳が…っ!?)

 

 目が合う。

 兜甲児の、マジンガーZの奥に潜んでいた本物の魔神が、自分を見ている。

 その事を悟ったDr.ヘルはこのままで絶対に逃げきれない事を悟った。

 

 『機械道空手奥義…!』

 

 故に、自身の持つ最高最大の攻撃で以て一か八かの活路を開く事を選択した。

 圧倒的格上の存在を前にして、その挙動は彼の人生の中でも最速を記録、本物の魔神が本格的に動き出す前に一撃を与えて逃げる隙を作るべく、一切の遅滞も逡巡もなくその一撃は放たれた。

 

 『ビッグバンパンチッ!!』

 

 構えとしては単なる正拳突きに過ぎない。

 しかし、それが超人的身体能力と頭脳、弛まぬ鍛錬の果てに放たれたのなら話は違う。

 それこそ生身なら最高位のガンダムファイター、同サイズの人型機動兵器なら特機でも一握りの機体でしか出せない様な一撃。

 当たれば防御の上からであろうと問答無用で木端微塵にするであろう恐るべき拳。

 

 『甲児!?』

 『甲児君!?』

 『マジかよ…!』

 

 状況が把握できていない光子力研究所の面々が悲鳴を上げ、再出撃してきた特機達はその光景に戦慄した。

 悲鳴をあげたいのはこちらだと、この光景にDr.ヘルは思った。

 凡百の者ならその拳を認識する事も出来ずに撃破されるだろうその拳撃は、しかし、氷を何の障害にもならないと至極簡単に砕きながら動いたマジンガーZのボロボロの掌に受け止められていた。

 氷の隙間から自身を除く魔神の眼光に、Dr.ヘルは自身がしくじった事を悟った。

 

 『ロケットパンチ!』

 

 受け止められた右拳を躊躇なく捨て、ロケットパンチ射出の反動で少しでも距離を取ろうとする。

 もうどうしようもないとその優れた頭脳で結論付けながらも、それでもDr.ヘルは生来の諦めの悪さから逃げの一手を打とうとする。

 

 

 『…消えろ。』

 

  ル ス ト ハ リ ケ ー ン 

 

 

 その瞬間、巨大台風が如き暴風が周辺一帯に吹き荒れた。

 

 

 ……………

 

 

 光子力研究所一帯が巨大台風に包まれる少し前。

 

 「見事、だ……ひびき洸よ…。」

 

 互いに消耗した中での接戦の末、漸くシャーキンと洸の決着が着いた。

 シャーキンはライディーンに馬乗りになった状態からその胸を貫くゴッドゴーガンの先端、和弓で言う所の末弭(うらはず)へと視線を向け、次いでライディーンの額、即ちひびき洸へと視線を向けると、その巨大化した身体を横へと落とし、地面へとうつ伏せに倒れた。

 

 「シャーキン!」

 

 仰向けになったライディーンの頭部から、すぐに洸が出てきた。

 巨大化が解け、等身大に戻ったシャーキンの元へと直ぐに駆け寄るが、その死体は直ぐに灰となり、崩れていく。

 宿敵の余りの最後に洸は愕然としながら、暫くの間その場に残った灰を沈痛な面持ちで見つめていた。

 

 「お前が、味方だったらなぁ…。」

 

 最初はいけすかない、気に食わない奴で、許せない敵だった。

 しかし幾度も戦い、その心情を理解するに連れ、そしてその事情を知った事で、ひびき洸の中でのシャーキンはただの一個人、ただ一度の過ちを犯してしまった遠縁の叔父となっていた。

 それが仕方なかった、そうするしかなかったとはいえ、こうして手にかけてしまった。

 怪物ではなく、等身大の人間を相手にした殺し合いは、洸にとってはこれが初体験だった。

 

 「っ」

 

 何時までもこうしてはいられない。

 そう思っていても中々動けなかった洸の周囲を暴風が吹き荒れた。

 それはマジンガーZ、否、マジンガーZEROの放った余りにも強大化したルストハリケーンの余波だった。

 洸が無意識に発動させた念動力によって防がねば、大型台風よろしく人が飛んでいた可能性すらある程の暴風だった。

 

 「何だ、この巨大な力は!?」

 

 それは洸のまだ短い人生において、初めて出会う程に巨大で、強大で、途方もない威圧感だった。

 海や空、山脈といった大凡人間一人と比べるには余りにも巨大で雄大な、絶対的な存在感。

 ただ悠然と存在する自然よりも遥かに禍々しく、殺意に溢れたその存在に対し、洸はとてつもない恐怖を抱いた。

 

 「行かないと!」

 

 だが、彼は勇者だった。

 リスクを考慮しながらも、しかし仲間達が危機に晒されている現場に向かうという選択をできるのが彼だった。

 

 「フェード・イィィン!」

 

 こうして、勇者ライディーンは戦友らの危機を救うべく、再び立ち上がった。

 

 

 ……………

 

 

 「…ぐっ、状況報告!」

 

 一方その頃、光子力研究所近郊は完全に更地と化していた。

 富士の樹海も完全に禿げ上がり、生態系も崩壊していた。

 

 「特機は全機無事です!ですが、マジンガーZのエネルギーの上昇が止まりません!」

 「パイロットからの応答ありません!完全に制御不能、暴走状態だと思われます!」

 「くそ、各機はマジンガーZを止めろ!このままではパイロットも死ぬぞ!」

 

 スペースノア改は動けず、先程の暴風でDFジェネレーターも焼き付いて展開できない。

 各特機は持ち前の頑強さで無事だったが、先の隕石落下から未だ擱座したままだったスペースノアは更に損傷が重なって武装すら使用できない状態に陥っていた。

 

 『てめぇ甲児!何考えてやがる!』

 

 先程の一撃とは打って変わって、不自然にも動きの止まっているマジンガーZへ突っかけたのは、血の気の多いコンバトラーチームのメインパイロット、葵豹馬だ。

 

 『超電磁タ・ツ・マ・キー!』

 『馬鹿、退け豹馬!』

 

 獣戦機隊の隊長たる忍の制止の声も何とやら。

 超電磁タツマキ、即ち超電磁エネルギーの渦による拘束技が放たれた。

 これを受ければ特機と言えどそう簡単には抜け出せない。

 しかし、そんなもの何の意味もないとマジンガーZは動きを止めない。

 マジンガーの視線の先、そこには巻き上げられた土砂に埋もれる形で上半身のみとなりながらも未だ元型を保つデビルマジンガーの、Dr.ヘルの姿へと歩みを進めていく。

 

 『…不愉快だ。今度こそ消えろ。』

 

 既に戦意は消え、意識すらあるかも分からないDr.ヘル。

 そんな事には一切構わず、マジンガーは先程まであんなに苦戦していたスクラップ同然のデビルマジンガーの頭部をわし掴むと、その眼光を輝かせた。

 

 

  光 子 力 ビ ー ム 

 

 

 地表から放たれた一条の光はその射線上のあらゆる物質を消滅させながら、大気圏を余裕で突き抜け、遥か遠く宇宙の彼方へと消えていった。

 無論、その射線上にあったデビルマジンガーとDr.ヘルはこの世界から完全に消滅していた。

 

 『マジかよ…。』

 

 その圧倒的威力に、一同は戦慄した。

 全機が一機当百には最低でも値する面々でありながら、その中でも際立って今のマジンガーは異常だった。

 

 『てめぇ、甲児じゃねぇな?』

 

 そして、不意に忍が奇妙な事を呟いた。

 

 『忍、どういう事?』

 『甲児の奴なら普通に返事するし、あんな行動はしねぇ。なら、コイツは別の誰かだ。』

 『単純だが正論だな。』

 『荒唐無稽だけど…こんな時代じゃねぇ。』

 『全機、何時でも動けるようにしておけ。場合によってはあのマジンガーZを相手に戦闘になる。』

 

 シャピロの言葉に、一同は身構える。

 何処か及び腰なそれは、先程の威力を見てからでは当たり前のものだった。

 しかし、それは恐れられている当人からすれば、滑稽極まりないものだった。

 

 

  な ん だ と 思 う ? 

 

 

 不意に、光の文字と共に、マジンガーが機体を小刻みに揺らす。

 その様子はまるで人間がくっくっくっと笑っている様子にそっくりで、今までのマジンガーZとはまるで異なる挙動だった。

 

 

  我 は 最 終 に し て 原 初 

 

 

 マジンガーZの総身が膨らみ、デビルマジンガーとは異なるマッシブな生物的外見へと変化していく。

 更に全身のパーツが鋭角化、両腕からはアイアンカッターが展開、口部は牙のある顎のような上下に開閉可能な形態へと変化し、そのカメラアイには明確な意思を示す瞳が現れる。

 

 

  唯 一 無 二 の ス ー パ ー ロ ボ ッ ト 

 

 

 背面のスクランダーの真紅の翼が膨張しながら変形、巨大なZの文字となる。

 しかしそれもまだ変異の途中に過ぎない。

 更に先端が伸長し、遂には円になる形で繋がり、一つの形となる。

 Zから0、右上から左下に/の入ったZEROの数字。

 

 

  マ ジ ン ガ ー Z E R O 

 

 

 ここに終焉の魔神、究極の破壊神、マジンガーZEROが余りにも早く降臨してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『コードRED・パターンZ発令。コードRED・パターンZ発令。』

 『旗艦プトレマイオスとの通信途絶により、これより地球圏防衛用無人兵器部隊の指揮は恒星間航行大型戦略工作艦ドゥーベが担当します。』

 『太陽系絶対防衛線は外郭部を放棄。冥王星工廠基地防衛圏内まで後退。』

 『太陽系防衛には最低限の戦力を残し、他全戦力は対マジンガーZEROへ振り分け、所定の戦略プログラムを実行せよ。』

 

 

 

 




 コードRED…地球人類を絶滅させ得る事態が発生した場合に発令する緊急コード。問題への対処に失敗、リカバリー不可能と判断された場合には即座に本国艦隊へのSOSが発信される。
 パターン…幾つかの通常戦力・戦術では対処できない特殊な事例にて発令。
 パターンZ…マジンガーZERO出現時の専用コード。
 パターンD…イデオン覚醒時の専用コード。
 パターンG…ゲッターエンペラー艦隊出現時の専用コード。

 
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