多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
新西暦186年7月 地球圏 宇宙空間
対マジンガーZERO用兵装を急遽追加した巨人族のものを無人化を主として改装した機動艦隊3000隻。
対マジンガーZERO用装備に構造を変化させた無人量産型OF部隊7000機。
兵装の縛りさえ無ければ大抵の星間国家なら正面から軽く捻り潰して滅亡させるだけの戦力。
しかし、兵装以外にもこれらの大戦力には致命的な縛りがあった。
それは場所、戦場が太陽系内部である事。
例え地球上からマジンガーZEROを退去させたとは言え、ここは太陽系の内部、地球人類の根拠地たる地球の傍なのだ。
当然、使用する兵装や機動にも影響が出る。
特にマジンガーZEROの兵装は全てが簡単に単一惑星を滅ぼせるだけの攻撃力を有している上、その膨大な光子力エネルギーからくる射程も出鱈目である。
単なる戦闘の余波・流れ弾でサイド一つが壊滅する事態が簡単に起こり得る。
故に、太陽系防衛用無人兵器部隊対パターンZ特設任務隊はその行動可能な範囲を大きく縛られたまま戦闘を開始するしかなかった。
先手を取っての地球上から追い出すだけなら兎も角、そのまま太陽系の外周部に追い出すのは抵抗を考えると難易度が余りに高かったからだ。
だからこそ、その制約を即座に第四の魔神パワー「高次予測」で読み切られ、一斉掃射で行動可能な宙域を埋め尽くされた。
無論、対パターンZ特設任務隊もばれないために巧みに錯覚を引き起こし易い機動を行って攪乱をしていたのだが、そんなものは未来予知にも匹敵する状況シミュレーションが可能かつ平行世界(マジンガーZが存在する世界のみ)の観測さえ可能とするマジンガーZEROには無意味だった。
『全機、緊急空間潜航実行。』
『各艦、緊急フォールド実行。』
が、そんなものは想定済みでしかない。
その場から動く事なく、一時的に位相空間に潜行、或いはその場へのワープにより発生するディレイを用いた疑似空間潜航によって回避された。
『量産型無人OF隊、現在の損耗率17%。』
『無人機動艦隊、現在の損耗率21%。』
『攻撃を続行。次は同じ手は通じません。防御用マイクロブラックホール展開準備。』
な ら ば 続 け る ぞ
即座に回避の種を見抜いたマジンガーZEROは、今度は緊急潜行可能な範囲の位相空間ごと吹き飛ばすべく、再度攻撃態勢へと移る。
そこに先程の焼き直しの様に無数のバスタービームやGB、マイクロブラックホールキャノン、そして亜光速レールガンにより加速した光子弾頭が突き刺さる。
この一斉射だけで地球を軽く滅ぼせるだけの威力があるのだが、その程度で滅ぶのなら魔神等とは言われない。
無 意 味 だ
再び放たれたマジンガーZEROの一斉射。
今度はルストハリケーンも追加されており、より攻撃密度が増している。
しかも宇宙空間で使えるという事は、既にして限定的な物理法則の改竄まで行えている事を意味する。
恐らくだが、バスタービームのマイナス一億度等の原理を解析したのだろうが、それにしたって早過ぎる。
環境への、戦術・戦略への適応能力が桁違いだった。
『全艦、防御用光子ミサイル発射。』
『OF隊は退避せよ。』
が、対パターンZ特設任務隊もまた頭おかしかった。
敵の攻撃がヤベー威力で回避は空間潜航しても無理?
なら極小のブラックホールを展開して全部飲んで貰えば良いじゃない!
そんな構想で開発された防御用光子ミサイル群によって、マジンガーZEROの攻撃は二度に渡って対処されてしまった。
しかも今度はブラックホールが相手であり、対応する因果を引っ張ってくるには少々時間がかかるだろう。
良 い だ ろ う
遊 ん で や る
マジンガーZEROのボディ、全長30m程だったサイズが突如成長していく。
成長痛の様な軋みを上げながら肥大化し遂には50mを超え、ゆっくりと、しかし確実に大きくなっていく。
『目標の機体サイズ並び出力の向上を確認。』
『全員、ここからが本番です。』
ア イ ア ン カッ タ ー
マジンガーZEROの両腕から突き出た斧状の刃が突如肥大化、その全長の倍近くまでなった上、まるでブーメランの様なくの字になって前腕を覆い隠した状態で両腕が発射された。
『全機、乱数回避。』
『各艦、迎撃に注力。』
光速の7割で放たれた巨大なギロチン染みた刃はただ真っ直ぐに進むのではなく、艦隊とOF隊の陣形の内部を所狭しと滅茶苦茶に荒らし回り、蹂躙していく。
『DF突破、艦中央大破、自沈します。』
『DF突破、回避間に合いまs』
『DF突破、左舷大破、総員退艦せよ。』
OF隊は辛うじて回避に成功したものの、小回りの利かない無人機動艦隊の多くが不規則かつ無軌道に動く二つのアイアンカッターの機動に追従できず、餌食になってしまう。
『防御用光子ミサイル、目標2・3に対して照準不可能。』
『こちらのFCSを解析したものと思われます。』
『通常のレーザー機銃なら捕捉可能ですが…。』
『全艦、回避を徹底。』
数を揃えるための艦隊とは言え(それでもクラップ級よりは遥かに高性能)、その防御を易々と貫通、回避不能な速度で飛んでくるアイアンカッターを前に轟沈する艦が大量に発生した。
OF隊は辛うじて回避に成功したものの、この攻撃だけで無人機動艦隊の4割が消えた。
よ く 頑 張っ た
だ が 無 意 味 だ
そして再び、マジンガーZEROから一斉射が放たれる。
豪雨を超えて流星雨となった光子力ビームとサザンクロスナイフ。
地球ではなく木星基準の巨大竜巻となったルストハリケーン。
プロミネンス以上の膨大な熱量となったブレストファイヤー。
それらが宙域全てを蹂躙し、あらゆるセンサーがホワイトアウトした。
だからこそ、付け入る隙が出来た。
『別働隊、第三シークエンス実行せよ。』
通常よりも遥かに深い位相空間から指揮管制を行っていた工作艦にして無人機動艦隊の旗艦となったドゥーベ。
自身もまた大きく損傷し、艦隊戦力の7割を戦闘開始数分で失いながら、それでも最後まで指揮を放棄する事なく、その役目を全うし続けていたが故に見いだせた千載一遇の瞬間だった。
……………
数分前 太陽系 金星宙域
『ゼロシフトによる空間圧縮、間も無く予定数値に到達。』
『通常の700%まで圧縮続行。』
『了解。』
『各機は僚機の状態に常に留意せよ。失敗は許されない。』
『空間圧縮、700%まで60秒。』
『現状のまま維持。暫定旗艦ドゥーベからの指示を待て。』
金星宙域で密かに準備していた別動隊。
彼女らは量産型無人OF一個大隊27機で構成されており、今か今かと号令を待っていた。
そして、無人機動艦隊が一方的な攻撃を受け、虐殺に近い状態になった時。
漸く、作戦は次のシークエンスへと移行した。
『空間圧縮、700%に到達。』
『! 許可を確認。第三シークエンス実行!』
第一シークエンスは戦場が地球上並び人口密集地であった場合、戦場を移動するための作戦。
第二シークエンスは移動した先で艦隊戦力による物量を活かした砲撃による殲滅。
これらが失敗した時のみ、第三シークエンス以降が発動される。
機体周辺の空間を圧縮し、その復元作用をバネとして用いて亜光速まで加速するゼロシフト。
それを通常の5倍の空間圧縮率で行った場合、その速度は光速の98.7%に到達する。
これ以上はワープか物理法則の改変を必要とする程の直線加速力を発揮できる。
『全機、ゼロシフト実行。』
そして、遂に第三シークエンスが実行された。
……………
同時刻 地球圏 宇宙空間
終 わっ た な
戦闘開始から4分、無人機動艦隊並びOF隊は壊滅状態だった。
自分という魔神を相手に、単なる無人兵器がよくぞ健闘したものだとマジンガーZEROは思った。
彼我の戦力差は絶望的であり、例え何度繰り返しても手傷を多く与えるだけでどうにもならないと互いがとっくに結論付けられていた。
それでも彼女らは逃げる事も憶する事もなく、その役目を果たし切った。
その姿に若干の言語化し辛い感情を抱きながら、マジンガーZEROは本来の目的、即ちマジンガーZこそが唯一無二のス-パーロボットだと証明する事を、兜甲児を守りながら行うべく、地球上の全ての特機や侵略者らを撃滅すべく、光子力ビームを地球全土に向けて放とうとして…
な ん だ ?
太陽系の内側、金星方面からの反応をキャッチし、それを解析しようとした瞬間、
『空間圧縮刀、アクティブ。』
『兜甲児救出ミッション、実行。』
それは正しく光の速さだった。
強化に強化を重ね、巨大化し続けるマジンガーZERO。
その頭部にあるホバーパイルダー、即ちコクピット部分は未だ旧式であり、続く戦闘に改良が間に合っていなかった。
また、全ての部品が超合金Z製でもなく、ホバーという構造上宇宙空間での機動は殆ど出来ない。
例え強化に強化を重ねても、まだ損傷を受ける可愛げが存在するこの魔神は、自我を持つが故に油断する自由性もまた獲得してしまっていた。
故に、ほぼほぼ光速であるこの奇襲に対し、例え亜光速対応可能であったとしても、一瞬だけ遅れてしまった。
そして、彼女らにはそれで充分だった。
二機の量産型無人OFが一撃離脱、ひき逃げの要領でZEROの頭部に対して×の字に交差する様に一閃、ホバーパイルダーを切り離したのだ。
『トラクタービーム最大出力、救出目標を確保。』
そしてほんの僅か、それこそ刹那の差で遅れてきた三機目の無人量産型OFがトラクタービームでホバーパイルダーをその腕の中に確保、そのまま遠ざかっていく。
な ! ?
予測していない、全くの意識外からの攻撃。
それによる最重要防衛目標にして最重要生体部品である兜甲児の奪取。
精密無比な機械である程に、パーツが欠けた時は脆いもの。
マジンガーZは無敵であると信仰する最重要な部品の欠落によって、ZEROの性能が見る間に堕ちていく。
お の れェ !!
魔神が激昂する。
もしももう少しだけ注意を払い、より力を強めていたのなら、こんな事態は起こらなかっただろう。
しかし、高度な自我を持つが故の気の緩み、未だ進化し切れていないが故の性能により、千載一遇の勝機を掴む事に成功したのだ。
『シズラー改1・3号機、スーパー稲妻キック。』
『『了解。』』
太陽系外縁部に向けて亜光速の98%のまま遠ざかっていく3機のOFを追撃しようと振り返った瞬間、今の今まで隙を伺っていた二機のシズラー改が左右からその質量と機動性を活かしたスーパー稲妻キックを実行、挟撃した。
邪 魔 だ !!
しかし、巨大化してサイズ差の無くなったマジンガーZEROは左右から迫るスーパー稲妻キックを両掌で受け止め、そこから吸収を開始する。
そこでZEROは予想外の行動を取った。
完全に吸収し切る前、未だ活動が完全停止していないシズラー改二機を引き摺る形で追撃を開始したのだ。
『バスタービーム発射。』
『縮退炉、臨界まで後5秒。』
空かさず二機のシズラー改は自爆を選択、縮退炉を臨界まで上げる。
『追撃を実行。各機、特攻せよ。』
そして、背を見せたこの瞬間を好機と見て、残った24機のOF隊が特攻を仕掛ける。
その形状を人型からまるで鏃の様に変形させた姿はあのエーテル宇宙における量産型バスター軍団にも似ていた。
加速と装甲の貫通へと特化させたこの形態は、彼女らのこの任務に最適だった。
次々とマジンガーZEROの背中へと突き刺さっていくOF隊。
しかし、順調に行ったのは7機までだった。
小 賢 し い !!
ダ イ ナ ミッ ク ファ イ ヤ ー !!
魔神化によって巨大化し、/の入った0の数字へと変貌した嘗てのジェットスクランダー。
その赤い翼部分を放熱板として、極太の熱線が放たれる。
原理としてはブレストファイヤーと変わらないものの、放熱板の面積の増大故か、その攻撃範囲は出力の向上も相俟って倍以上となっている。
その極太の熱線に呑まれ、後続のOF隊は既に加速していた事もあり、回避できぬままに蒸発してしまった。
『各機、縮退炉臨界まで3秒。』
『強制超長距離ワープ開始。安全シークエンス全排除、即時実行まで3秒。』
『試作多次元跳躍装置、起動。安全シークエンス全排除、ランダムで跳躍開始。』
しかし、そんなもの気にしている余裕はないとマジンガーZEROは限りなく光速に近い三機のOFを、彼女らに抱えられた兜甲児を奪還せんと猛追する。
最早兜甲児一人にしか意識の行っていない様子は、それだけこの成長途中の魔神の必死さを物語っていた。
だからこそ、足元の小石を見落としてしまう。
『目標進路上への緊急浮上完了。各防御手段、最大値に設定。』
『緊急超長距離ワープ並び試作多次元跳躍装置起動、縮退炉は全基臨界まで後5秒。』
眼前に現れた全長14kmもの工作艦ドゥーベに、マジンガーZEROは正面衝突した。
そして、邪魔だとばかりに両腕を振るい、未だ吸収され尽くしていないシズラー改2機を叩き付けるのだが…
何 !?
元々、恒星間航行大型戦略工作艦ドゥーベは巨大なナノマシンの集合体であり、内部工廠には量産型無人OFの製造ラインと構成部品、即ち大量のメタトロンが存在する。
『艦構成ナノマシン、標的への融合と同時にハッキング開始。』
『空間圧縮、安全制限を解除。本機破壊まで空間圧縮を続行。』
『残り3秒、時間を稼げ。何としても。』
殴った所でぐにゃりと歪み、機体表面へと纏わり付き、積極的に融合して活動を阻害してくるナノマシンの軍勢に対し、マジンガーZEROは対処を誤った。
最初から最大火力で吹き飛ばしていれば、こうはならなかっただろう。
しかし、機体の正面方向、即ち射線軸上に兜甲児がいてはそれは出来なかった。
兜甲児の救出を許してしまった時点で、この状態は想定しておくべきだったのだ。
良 い だ ろ う
今 回 は 勝 ち を 譲 る
だ が 次 は 無 い
諦めたのか、その動きを停止したマジンガーZEROは光の文字を描いていく。
それは己の優位性を知り、自身が遥か高みにいる事を、再戦の機会を得る事を微塵も疑っていない強者の自負に満ちた言葉だった。
ま た 会 お う
『プトレマイオス様、これにておさらばです。』
そして、一機と一隻はこの宇宙から完全に消滅した。
後に魔神覚醒事件と言われる事件は、こうして終了したのだった。