多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話 作:VISP
新西暦186年7月 太陽系 位相空間内
「スーパーエクセリオン級1番艦・2番艦の分離シークエンス開始…分離成功。以後、両艦は周辺の空間変異基点の破壊に専念せよ。合流は通常空間復帰後に行う。」
『『了解。』』
「本艦はこのまま敵主力と交戦続行。時間を稼ぐ。ヴァルチャー隊も出せ。」
「了解。艦載機は全機出撃。」
こうして第二ラウンドは開始された。
後は分離したスーパーエクセリオン級二隻が空間変異基点=ストーンサークルの破壊をどれだけの速さで成功するかに掛かっている。
「敵主力艦隊、本艦を中心に鶴翼陣形を構築。半包囲する模様。」
「フォールド断層障壁展開。光子ミサイル並び光子魚雷全発射管装填。」
「敵艦隊、砲撃を開始。」
アインストによってコピー・変異したメルトランディ系中型砲艦アインスト・シュラハトシッフ(ドイツ語で戦艦の意)とその派生艦から成るアインスト艦隊より、無数の砲撃が放たれ、改エルトリウムへと突き刺さる。
しかし、その全てがエネルギー兵器に対して圧倒的防御性能を誇るフォールド断層障壁の前に意味を成さない。
「着弾を確認。損害無し。」
「反撃開始。敵艦隊に向け、扇状に光子魚雷全弾発射。」
そして、返礼として発射された光子魚雷は一方的にアインスト艦隊を虚空へと飲み込み、その7割を消滅させた。
しかし…
「敵艦隊の7割の消滅を確認、いえ……再構成を確認しました。」
「敵戦力、約10秒でその戦力を復元しました。」
「マジで?」
これがアインストの恐ろしい所である。
ストーンヘンジ等の空間変異特異点が必要とは言え、インベーダー染みた同化・侵食・吸収能力を持ち、自分達の宇宙から次々と増援を送り込む、或いは即座に消耗した戦力を再構成する。
アインスト達の所属する宇宙との接続を断つ、或いは宇宙そのものを破壊するか、そのエネルギーを大きく減衰させなければ、消耗する事なく幾らでも戦力を投入できる。
しかも、その戦力はアインストの宇宙に侵食=近ければ近い程に強大化し、更には進化したり、強化されたり、合体してくるのだ。
その変異の速度は一度始まってしまえば極めて速く、これを凌駕するのは因果律兵器によって急速に自己進化し続けるマジンガーZERO位しかいないと言えばその脅威度が分かるだろうか。
「敵中枢への突入を行いますか?」
「…連中、どうしてこのタイミングで仕掛けてきたと思う?」
「こちらを撃破する術があると?」
「或いは是が非でも私達に太陽系にいてもらっては困るってのもあると思う。」
「突入はリスクが大き過ぎますか。」
「当初の作戦通り、友軍が空間変異基点を破壊するのを待とっか。」
「全艦、実弾兵器の使用は必要最低限にして、エネルギー兵器の使用を優先して攻撃せよ。」
こうして、無限湧きバグなアインスト艦隊と無敵バリアなエルトリウム・オブ・プトレマイオスは不毛な消耗戦へと突入したのだった。
……………
『ち、気付かれたか。』
一方その頃、アインスト艦隊の中枢ではその指揮官、死亡寸前の人間を素体にして改造されたアインストが舌打ちをしていた。
『このまま突っ込んで来てくれたら楽だったのに…。』
アインストとしての名称をアトミラールというこの女性。
この世界線で恒星間物量戦を行うに辺り、対宇宙怪獣や異星人戦も考えて、ノイレジセイア視点でも明らかに指揮官格が足らないとして回収されたサンプルを改造されて作られた内の一個体だった。
アインスト・アルフィミィの様な存在、と言えば分かるだろうか?
アルフィミィがエクセレンに似ていても異なる容姿をしているのと同様に、生前の連邦宇宙軍として女性ながら若くして小艦隊の司令を務めた優秀な軍人だった彼女だが、その外見は随分と様変わりしていた。
艦隊これくしょんの空母棲姫が如く、悪堕ちっぽく劫火の如く赤黒く変色・改造した連邦軍服を着こんでおり、制服の腕は捲って、手足には原作空母姫の腕甲・脚甲のような防具を装着している。
雪のように白い肌と白い髪も以前のそれよりも血色が遥かに悪く、一見すると死体にも見えるが、生来からの美貌に衰えはない。
寧ろ一年戦争時の苛烈な勤務状況で小皺も増え、髪艶も悪くなっていたのだが、その辺は逆にえらく健康的になっている。
本人的には肌年齢が十代相当になっててどんな時も健康なのがアインストになってからの唯一の利点でもあった。
『こっちに伏せてた子達が無駄になったわね。』
彼女の乗艦にして艦隊旗艦たるグラウベン。
この戦艦型のアインストは彼女の専用艦であり、外見イメージは鋼鉄の咆哮シリーズの超巨大双胴戦艦播磨型一番艦「播磨」をベースに、深海棲艦の生物的デザインと改マゼラン級よろしくな濃密な対空火器類や艦砲が増設され、各所にアインストの証たる赤い球状の宝石が付いている。
また、その艦体中央には奥の手として2門の超重力砲が搭載されているため、こいつ単艦でも理論上はプトレマイオスにダメージを与える事は出来る。
その周囲に展開しているのは先も説明したメルトランディ系中型砲艦ベースのアインスト艦隊(一隻辺り約1800m)であり、その陰に隠れる形で存在している小型艦(350m)こそがこの作戦の肝だった。
名称をアインスト・ヴァール(ドイツ語で鯨の意)と言う。
このサイズの艦艇としては平凡な性能なのだが、こいつの厄介な所はこの艦単独で空間変異基点の機能を持っていながら一定の戦闘能力を保有しているという点だ。
こいつは既存のストーンサークルとは異なり、移動も攻撃も出来るし、空間変異基点の能力を活かして機動兵器サイズ以下のアインストを幾らでも召喚できるのだ。
無論、一隻では一度に呼べる数には限りがあるものの、同種の個体と連携すると乗で召喚可能な数と空間変異の範囲が広がっていく。
分かり易く言うと、2隻いると2倍ではなく2乗=4倍もの小型種召喚・空間変異を行えるのだ。
こいつを伏せ、もし敵艦が突撃してくる様ならこいつで囲んで機動兵器サイズのアインストを無数に召喚、後は艦の方も必要なら突撃させたりして物量チートを用いて撃沈、あわよくば鹵獲するというのが狙いだった。
『…って、あらま。』
そんな事を思ってると、不毛な艦隊戦をして数分と言う間に周辺を囲んでいたストーンヘンジの方が破壊されてしまった。
あちらにも戦力は配置していたのだが、どうやら敵を見くびっていたらしい。
こちらの広域空間侵食が解除されるのとほぼ同時、直ぐに通常空間へと浮上していった。
この逃げ足の早さでは、もう今回は追えないだろう。
『ま、しょうがないか。今後は敵戦力の見積もりを上方修正して…?』
不意に、アインストの宇宙の方から通信が入る。
最上位個体たるノイ・レジセイアから通達であり、拒否権は無かった。
『想定外の事態発生に付き、一時全面撤退?』
現状の地球圏最上位戦力であろうプトレマイオスの戦力を把握するための威力偵察以上に大事な事。
それを考えると、アトミラールの頭脳はどう考えても厄ネタだと結論を出すのだった。
これ以降、アインストは一時地球圏へと手出しを控え、銀河系の他地域へとちょっかいを出す様になる。
アトミラールはその中でも艦隊戦力の運用において使い勝手の良い指揮官ユニットとして幾度も戦場に出撃し、死んでは復活してまた出撃し、戦って撃破されては復活する生活を繰り返す事となる。
後に連邦軍人時代の知り合いと再会して曰く、「魔王倒す為とはいえ、死んでも何度も甦らされる勇者の気持ちが良く分かったわ…」と死んだ目で愚痴ったそうな。
……………
新西暦186年7月 地球圏
「…………。」
何とか通常空間に復帰したプトレマイオスは分離した2隻のスーパーエクセリオン級と再合体した後、状況を把握した。
ズール銀河帝国並びゼ・バルマリィ帝国、そして宇宙怪獣にインベーダー等が太陽系外縁部より撤退した事。
その撤退の原因が太陽系内部より飛んでくる巨大なエネルギーの奔流、即ちマジンガーZEROの攻撃である事。
そして、マジンガーZEROが覚醒し、地球の最終防衛ラインとして配置されていた恒星間航行大型戦略工作艦ドゥーベと1億機もの無人量産型OF隊とシズラー改一個小隊、最近ある程度数の揃った巨人族系兵器を改装した無人機動艦隊の全てが壊滅しながらも辛うじて兜甲児の救出とマジンガーZEROの多次元世界への放逐を成功した事。
消耗した戦力は甚大であり、これを完全に補充するには5年はかかるだろう事。
今現在は各勢力が状況把握のために一時侵攻が停止しているが、直に一気に押し寄せてくるだろう事。
「…………。」
それら全てを把握したが故に、完っ全に真顔になっていた。
呆然や驚愕故の絶句ではない。
活火山のマグマが如く、その内心には怒りが渦巻いていた。
何せトレミィは自分の娘である自動人形らの全てを覚えている。
生まれた日付に細かな仕様、趣味や好物に至るまで全てだ。
もう死んでしまった娘も、その結婚相手も、生まれてきた人間との孫も、全てだ。
人間では到底覚えきれないだろう記憶容量でも、元が巨大要塞の統括制御AIである彼女には余裕なのだ。
それの意味する所は一つ。
彼女は決して、身内を殺した相手を許さない。
事故や戦乱、自分の命じた任務の最中に死ぬ事はあるだろう。
機械である事を止め、愛に生きる事を誓った娘達とその孫達は寿命で死んでいく。
だが、それは全て納得ずくで、彼女らのバックアップを取れた上での話だ。
事故や戦乱、任務で破壊されたのならボディを用意すれば復帰できる。
今まで出た死者はほぼ全てが愛に生きる事を誓った娘達だけだった。
今回の一件ではOF隊並びシズラー改の制御担当のAIも含めて一度に余りに大量の娘達が旗艦であるドゥーベと共に残骸も碌に残さず破壊されたため、本来リアルタイムで取っている筈のバックアップに大量の取り残しが発生してしまったのだ。
即ち、生まれて百年以上経過し、その間ずっと地球の守りを任せていた腹心の一人であるドゥーベ含む多くの娘達を初めて殺された事に他ならない。
これが大勢力や一軍人であるのなら、トレミィは一勢力の長として、その真の目的のためにも苦渋を飲んで納得した。
それが彼女らを死の危険のある任務に就かせた自分の役割であり、危急の際に不在だった自分の責務だと理解しているからだ。
しかし、相手は究極にして終焉の魔神とは言え、我欲で動く一個人である。
単体にてこの銀河最強の一角であるが、間違いなく一個人である。
トレミィがその殺意を我慢する必要性は無かった。
「Sf。」
「此処に。」
「冥王星工廠基地に伝達。あらゆる手段を以て太陽系防衛に務めよ、と。」
「あらゆる手段で、ですね?」
「二度も言わせないで。」
それはつまり、今まで温存していた無人エクセリオン級(艦内構造が無人運用前提なので、本家より量産性高し)並び以前から大量生産を続け、温存していた量産型無人ヴァルチャー隊を武装の無制限使用を許可した上での全力運用も含まれるという事を意味する。
現在は払底しているが、本来ならばここに巨人族系兵器を改装した無人機動艦隊も数合わせに含まれていた。
「地球に帰還します。フォールド用意。それとレムリア女王とレビル首相、メキボス特使との会談をセッティングして。対策と今後の事を協議をしないと。」
「畏まりました。」
こうして、現在太陽系にて最強の勢力の長が漆黒の意思を胸に抱き、地球へと帰還するのだった。
トレミィ「ぶち殺す」漆黒の意思
レムリア「洸!洸ー!?」息子の気配が弱弱しくなって動揺中
レビル「情報を集めろ!現状確認が最優先だ!」部下叱咤しつつ情報待ち
メキボス「」観測した情報の結果に絶句中