多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第19話 束の間

 新西暦186年7月末 

 

 この時期、太陽系は一時的に数多くの侵略者達の行動が全面的に止まるという珍事が起きていた。

 しかし、その原因を知った地球人類は一様にその顔を引き攣らせ、頭を抱える事となる。

 

 マジンガーZ暴走事件。

 通称、魔神覚醒事件。

 

 地球を守るスーパーロボット、その最初期から戦い続けている一角たるマジンガーZ。

 それに搭載された人工知能がパイロットの意思を無視して暴走を開始、あらゆるリミッターを解除して暴走を開始した。

 戦闘の結果、百鬼帝国と恐竜帝国、Dr.ヘル一派は壊滅し、妖魔帝国も現在確認されていた稼働戦力は完全に消滅した。

 しかしその後、味方である筈の他のスーパーロボットにすら襲い掛かったマジンガーZに搭載されたAI、通称ZEROは太陽系防衛用無人機動部隊の内の地球防衛用直掩部隊の重力場レールガンによって宇宙へと射出され、待ち構えていた無人機動艦隊との交戦に突入した。

 その結果は悲惨なもので、この戦闘に参加した無人機動艦隊並び機動兵器、そして旗艦である14km級の巨大空母(艦載機運用能力はあるので嘘ではない)が丸々消滅し、ZEROは辛うじて遠い宇宙の彼方へと放逐された。

 ここまでが今回の魔神覚醒事件の公式見解である。

 

 さて、当然ながら太陽系は揉めに揉めた。

 何せ自分達を守る筈のスーパーロボットが暴走し、剰え長く太陽系を守ってくれている無人機動兵器部隊に壊滅的打撃を与えたのだ。

 マジンガーZ、その開発と運用に携わる兜一族には非難が殺到し、一時はマジンガーZに関する技術情報全ての廃棄すら叫ばれた程だった。

 しかし、当の太陽系防衛用無人機動部隊からの声明が発表されるに至り、その勢いは大きく減衰した。

 

 『地球人類の開発した単一の機動兵器がここまでの戦闘能力を発揮した。これは先史時代から地球人類を庇護し、その発展を見守ってきた我々にとっては大きな成果と言えます。今後も地球人類並びその友邦の方々には一層の繁栄と技術発展に万進して頂けますようお手伝いさせて頂きます。』

 

 ものは言い様である。

 この声明発表の直後、地球連邦政府並び共和連合、A.I.M.に開発元の光子力研究所(十蔵博士含む)によって単体で恒星間文明を壊滅可能な脅威に関する対策プロジェクトが発足され、以降のマジンガーシリーズの機体はこのプロジェクトの成果物として登録される事、両国の厳重な共同管理の下で運用される事を条件に量産が決定されるのだった。

 勿論、この一件に反発する声も上がったのだが、これに関して連邦政府はこう返答している。

 

 「銀河の辺境も辺境の我々ですら、あそこまでの兵器を開発出来たのです。では、この銀河に存在する大勢力は一体どれ程の技術力を、戦力を有しているのか?そんな者達を相手に、地球連邦軍は確実に勝てるのか?それが断言できない以上、我々はリスクを飲み込んで進み続けるしか無いのです。幸いにも、我々には既に共和連合という心強い友人がいるのです。彼らの知恵と力を借りて、身を守るための力を得ていくしかないのです。」

 

 これによって、魔神覚醒事件におけるマジンガーZ並び兜一族へのバッシングは表向き沈静化した。

 無論、これには人工衛星や一部のパトロール部隊を除けば被害らしい被害が発生しておらず、更には遺族や何らかの被害を受けた団体や個人には念入りに謝罪かつ慰謝料をばら撒いたお陰でもあるのだが。

 こういう時、大企業というのは便利だった。

 社会的信頼度が高く、こういった緊急時のマニュアルと専門家に不足しないで済むからだ。

 

 「とは言え、感情的納得が出来る者ばかりではありません。敵も味方も。」

 

 兜一族は今後、自らの血と汗と涙の全てを以て贖い続けなければならない。

 それは無論、1億人以上の娘達を殺されたトレミィに対してもである。

 

 

 ……………

 

 

 新西暦186年 地球 極東方面 光子力研究所地下

 

 

 『私は貴方を恨みます、兜十蔵博士。』

 

 『例え貴方がZEROを完成させてしまった時点で、因果律兵器の効果で自由意志を事実上剥奪されてしまっていたとしても、貴方さえ余計な事をしなければ私の娘達は死なずに済んだし、死んだとしても蘇生可能だったから。』

 

 『でも貴方の頭脳とマジンガー、そして貴方の子と孫は人類の発展に必要不可欠なピースです。だから今は殺さない。』

 

 『でも次に同じ事があれば、今度は貴方も、貴方の大事な息子と孫も私の娘達の後を追わせます。』

 

 『精々死ぬまで、血の一滴残らず人類のために使い切りなさい。』

 

 

 「分かっておるんじゃよ、そんな事は…。」

 

 兜十蔵は再建予定の光子力研究所地下にて、項垂れながら呟いた。

 その胸中には先程現れ、言いたい事だけ言って去っていった少女の姿をした機械達の長、否、母の言葉が渦巻いていた。

 彼は自他共に認める天才だった。

 同年代の多くの天才科学者らの中でも群を抜き、年上のこっちを餓鬼扱いする早乙女の糞爺位しか太陽系に匹敵する者はいないだろう程の天才だった。

 その優秀さはマジンガーZ、そしてZEROの存在が物語っている。

 しかし、そんな十蔵ではなく、世間の目の多くは一人の天才科学者へと向けられ続けていた。

 

 早乙女賢博士。

 彼こそはA.I.M.から莫大な支援を得て、それを上回るだけの成果を100になっても出し続けている世紀の大天才だった。

 

 才能を持ちながらも評価が一段落ちる扱いをされ続けた事に、十蔵はプライドを肥大化させながら、何時しか早乙女博士をライバル視、否、敵視するに至った。

 そこには彼の古くからのスポンサーであるA.I.M.にも不信の目を向ける様になった。

 自分の方にも後からスポンサーとして来たが、そんな彼女らに対して十蔵は「何故もっと早くから来ないんじゃ!そんなに早乙女の方が良いのか!」と天才だが科学者らしい鬱屈としたプライドでそんな事を思っていた。

 そして、早乙女博士が早々にプロトゲッターロボを開発・ロールアウトすると、十蔵は早乙女博士を超えるべく以前より構想していた光子力エネルギーを用いたロボット兵器、即ちマジンガーZの開発に着手した。

 出来上がったロボットは何体かの試作を経て、素晴らしい作品として出来上がった。

 また、早乙女博士のゲッターロボよりも量産が可能で、出力も大きく超えている。

 

 「よし、これで早乙女の爺に勝った!」

 

 十蔵はそう言って喜んだ。

 しかし、早乙女がほぼ同時期に出した完成版のゲッターロボは三人乗りだが三段分離合体変形をするという驚きの機能を有し、極めて高い汎用性を持っていたのだ。

 加えて、既に新型機の開発を進めているという。

 これに十蔵の鼻っ柱は圧し折られた。

 しかし十蔵はめげずに決意した、必ずやゲッターロボを粉砕し得るマジンガーを開発すると。

 更に、この頃の少し前に発表された外宇宙からの侵略者、そして太陽系を守る先史時代の無人兵器に対しても、十蔵は敵意を向けた。

 十蔵は一地球人として地球を、家族を愛していた。

 それを害する侵略者は憎んでいるし、先史時代から太陽系を守ってくれている無人兵器に対しては頭の下がる思いだったが、同時にそんな戦力が一個人の思惑で動く事にシビリアンコントロールの点から見ると極めて危険かつ一科学者として「そんな何万年も前の機械が問題なく稼働し続けられる訳がない」と不信感を抱いていた。

 そのため、新たなゲッターロボを超え、外宇宙からの侵略者から地球を守り、何時敵対か暴走するとも分からない太陽系防衛用無人機動部隊を駆逐するためのスーパーロボットを開発しようとした。

 

 「そうじゃ!こいつに甲児を乗せて、もしもの時の自動操縦機能を付ければ甲児は何があっても安全じゃろ!ふはははは、ワシって頭良いー!」

 「さぁマジンガーZよ、否、ZEROよ!お前は甲児を守りながら、お前こそが唯一無二のスーパーロボットだと全世界に証明するんじゃ!」

 

 そうして研究を進めた結果、完成してしまったのが魔神パワーを備えたマジンガーZである。

 しかし、十蔵は完成してから気付いてしまった。

 

 「あれ、これってもしかしなくてヤバくね?」

 

 遅いんだよ馬鹿野郎(殴。

 我に返った十蔵は大慌てで何とか魔神パワーを制御するべくリミッターを施そうとした。

 しかし、何故か何度試しても上手く行かず、出来たのは魔神パワーを七段階に分ける事だけだった。

 今にして思えば、この時点から十蔵もまた因果律兵器の影響下にあったのだろう。

 事実、監視任務に当たっていた自動人形達すら、「ナンノモンダイモアリマセン」と報告していたのだ。

 げに恐ろしきは因果律兵器、マジンガーZEROである。

 道理で何度やっても無理だった訳だと今になって納得する。

 そのため、外付けの安全装置として因果律兵器の強制停止を行えるミネルバXの開発と同時、完全に暴走してしまったZEROを破壊してでも止めるためのマジンカイザーの開発に着手した。

 しかし、それらが完成する事は無かった。

 

 『ぐははははは、我が名はDr.ヘル!そしてこやつらは我が僕の機械獣軍団!さぁ全世界よ、ワシの前に平伏すが良い!』

 

 こいつに襲撃され、落ちてきた天井の下敷きになった十蔵博士は何とか孫の甲児を守るべくマジンガーZの中に避難するように告げて気絶した。

 一時は危うい所もあったが、それ以降十蔵は長い昏睡状態に陥った。

 そして、目を覚ました時はこの宇宙からZEROが消えた=因果律兵器の影響が消えた直後。

 即ち、マジンガーZEROの覚醒によって太陽系が大混乱に陥った時だった。

 病院のベッドの上、テレビから流れるニュース映像で大凡の事態を悟った十蔵は後悔で一杯だった。

 自分がつまらぬプライドを後生大事に抱えてきたが故に、自分は息子と孫や教え子、その関係者らの名誉と尊厳を著しく傷つけ、また、多くの人間の生命を危険に晒してしまった。

 後はもう、既に語られた通りである。

 

 「ワシはもうどうなってもよい。しかし必ず、必ずや我が息子と孫にまで掛かってしまった汚名は返上する…!太陽系を、人類をあらゆる脅威から守る本当のマジンガーを作り出す事でな!」

 

 今日この日、兜十蔵博士は改めて決意した。

 以降、彼は人が変わった様に鬼気迫る勢いで研究に万進する。

 また、散々敵視し続けた早乙女博士の研究するゲッター線が有用と判断するや否や自ら早乙女研究所にアポイントを取って赴き、菓子折り片手に懇切丁寧に挨拶した上で、早乙女博士に直接土下座をして以前からの所業を謝罪した上でこう言った。

 

 「ワシはどうなっても良い!だから頼む!早乙女博士、貴方の力を貸してくれ!」

 「…分かった。儂に出来る事であれば何でも言ってみるがいい。」

 

 こうして、以前の十蔵博士を知る者ならば驚愕して信じない様な事件を挟みつつ、地球連邦政府並び共和連合、A.I.M.(太陽系防衛用無人機動部隊)による単体で恒星間文明を壊滅可能な脅威に関する対策プロジェクト、通称「プロジェクト・ハルパー」は始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「え、マジンカイザーは廃棄じゃと!?」

 「この機体、全体としては装甲とフレーム回りだけですが、AI回りのデータが残っておらず、危険です。」

 「あー……確かにワシもちょっと覚えとらんわ。半年近く昏睡しとったし。」

 「おまけにDr.ヘルの襲撃でデータも残っていません。」

 「うむむ…下手に起動すればZEROの二の舞か…。」

 「しかも超合金ニューZα製なので解体するにしても凄まじい手間でして…。」

 「どうする予定なんじゃ?」

 「下手に動き出す前に太陽に投棄する予定です。一応、これでマジンガー回りの禊は済ませる予定となっております。」

 「勿体ないが、仕方ないのぅ…。」

 

 『………』 まじんかいざー が じっとみつめている!

 

 「では、くれぐれも宜しく頼むぞ。」

 「お任せください。」

 

 『……!…!』 まじんかいざー が なにかいいたがっている!

 

 

 

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