多重クロス作品世界で人外転生者が四苦八苦する話   作:VISP

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第26話 十傑集その1

 第二新東京市は先の第三使徒の迎撃成功、第四使徒の海上での撃破成功(公式見解)と続き、未だムゲや外宇宙からの侵略の影も無い地球は正に平和と言えた。

 しかし、連邦軍並び連邦政府首脳はこれをあくまで「束の間の平和」と捉えていた。

 各スーパーロボット達の解析と改良、強化装備の追加。

 円滑な運用のための母艦の建造と代替不可能な貴重なパイロットらの休養と再訓練。

 それらのデータを元にした新たな量産型特機の開発、通常の量産型機動兵器並び新型戦闘艦艇の開発と建造。

 一部では既に一足早くアテネ級、ガリア級が新世代の宇宙戦闘用艦艇として実戦に参加している。

 事実として、その懸念は正しかった。

 ムゲの再侵攻、BF団の活動激化、外宇宙勢力の太陽系への進出。

 これに加え、何時現れるとも知れぬアインストに巨人族。

 これらが一度に参戦してくる状況が、刻一刻と迫っていたのだ。

 無論、地球連邦政府に無能はいない(いても末端)。

 

 先行試験型として配備された量産型ビルトシュバインの他、Rシリーズ等の特殊な才能を持つ人員を集団的に運用するSRX隊。

 ゲッターや量産型グレートマジンガー等の有名な民間製スーパーロボットを円滑に集中運用するために編成されたマーチウィンド隊。

 そして、特殊な才能や特機を持たず、一年戦争時代からのスーパーエースや超ベテランを中心に既に実戦証明済みの最高級装備類とマクロスを旗艦とするISA戦術対応艦で統一された切り札たる鋼龍戦隊。

 それぞれバンプレストオリジナル系、スーパー系、リアル系でほぼ統一されたこれらの小艦隊はどれも一騎当千と呼ぶに相応しい領域に到達しつつある。

 もしもの時は彼らが火消役として太陽系各地を飛び交い、或いは敵指揮系統の中枢へとカチコミをかけるのだ。

 彼らがこのまま成長すれば、何れは銀河に平和を齎す事も夢ではないとスパロボプレイヤーならば思うだろう。

 しかし、そんな彼らにも欠点、と言うか人類としてほぼ対処が不可能な問題が存在する。

 

 即ち、生身ではそこまで強くはない、という点である。

 

 

 ……………

 

 

 新西暦186年8月7日 地球 極東方面 第二新東京市

 

 

 首都防衛隊近くの訓練場にて

 

 「私が謎の覆面コーチXであるッ!!」

 「」

 

 シンジは突然の変質者の登場に絶句した。

 

 「グローリアス教官、それ毎度の恒例行事にしたんです?」

 「あ、ゴトランド。いやーこれやると侮る奴は凄く侮って鼻っ柱折れ易くなるから都合が良いのよ。」

 「お、女の人!?」

 

 突然登場した変な覆面の下から妙齢の美女が現れた事に、シンジは驚愕した。

 

 「シンジ君、この人はユン・グローリアス少佐。連邦の特機パイロット向け養成コースの教官で一番古株の人なの。」

 「ユン・グローリアスよ。階級は少佐、よろしくお願いね。」

 「は、はい!碇シンジです!よろしくお願いします!」

 

 にっこりと微笑む綺麗なピンキーモモにシンジは目を白黒させながら挨拶を返した。

 

 「素直でよろしい!スーパーロボットに乗りたいってパイロットはヤンチャな子が多くってね、君みたいな若くて礼儀正しい子は少ないから助かるわ。あ、でも教導で手加減はしないからよろしく。」

 「少佐は横塚少尉達の教官でもあるの。凄い優秀な方なのよ。」

 

 尚、今現在の特機パイロット養成コースには他に謎の覆面師匠1号と2号もおり、日々生徒達を扱いている。

 勿論中身は自分達の嘗ての経験をこの世界の自分達やその先輩後輩に体験させているノノリリの二人である。

 勿論オオタ・コウイチロウ少佐とも同じ職場なので、この世界のカズミとも割とバチバチ鞘当てしてたりする。

 なので、この世界線の沖女(トップをねらえ初期の舞台)は共学化&年齢層も広くされ、割と何でもありな校風になっている。

 原作みたいないじめ?

 アホな事やってる連中は即効締め出されれるか特殊部隊員養成コース一日体験、それでも改善されねば一般歩兵へ転向させられるか追い出される。

 それだけ才能や技術を持った人材というのは今の太陽系には必要不可欠なのだ。

 

 「さてシンジ君、貴方は経歴はどうあれスーパーロボットのパイロットとして選ばれました。」

 「あ、はい。突然で実感がまだ湧かないですけど…。」

 「でも、それじゃ駄目だって事は分かるわね?」

 「はい。でも自分じゃどうしたら良いのか…。」

 「そんな時にこそ周りを頼りなさい。少なくとも、首都防衛隊のメンバーは貴方に手を貸してくれるわ。」

 

 にっと朗らかな笑みを向けてくれる妙齢の美女の姿を直視して、シンジは知らず頬に血が上ってしまう。

 

 「えい。」

 「わ!?」

 「鼻の下伸びてたわよ?」

 「えええ!?」

 「他の女の人がいるのに、そんな風にだらしなくしちゃ駄目だからね?」

 

 頬を赤く染めていたシンジの鼻の下に人指し指を当てるゴトランド。

 もう仕方ないなぁ、と言わんばかりの呆れた仕草を取るゴトランドに、ユンは「あ(察し)」となった。

 一応事前にシンジのメンタルケア担当と知らされていたが、ほぼ間違いなくハニートラップ要員である事を見抜いたのだ。

 まぁ自動人形の性質上、そのまま死ぬまで一緒にいて同じ墓に入る位はするので余り心配してはいないが。

 

 「そういう訳で、今から訓練を始めます。と言っても、先ずは現時点のシンジ君の体力を測ってからになります。」

 「私も手伝うから、頑張ろうね?」

 「は、はい!」

 

 こうして順調にシンジは絡め取られていき、精神的に安定していくのだった。

 

 

 ……………

 

 

 NERV本部内医療区画 病室

 

 「・・・・・・?」

 

 ベッドの上で未だ包帯の取れない状態で横になってぼぅ・・・と天井を眺めていた綾波レイはふと視線を感じて視線を巡らせた。

 

 「・・・・・・・・・。」

 「・・・?」

 

 すると病室のドア(音もなく半分開いていた)に半身を隠しながらこちらを見つめるナニカを発見した。

 それはワッカ、もっと言えば白っぽい紫色のタライ程の大きさをした救助浮き輪の様な胴体に小さな手足と二本の角と口がある奇妙なナマモノが綾波にじっと視線を向けていたのだ。

 余りの未知との遭遇過ぎて、世間知らずで人生経験が0に近い綾波でなくとも視認した途端に呆然としそうな生命体?だった。

 

 「・・・・・・!」

 「あ・・・。」

 

 綾波に見られたことを理解したのか、正体不明の浮き輪型ナマモノは一瞬びくりと身体を竦ませるとビュッ!とドアの向こうへと姿を消してしまった。

 

 「何かしら、あれ・・・。」

 

 綾波の持つ如何なる知識にも合致しないあのナマモノに、綾波は本人ですら気付かない内に無邪気に興味をそそられていた。

 そして、またあのナマモノを見てみたいと、僅かながら思うのだった。

 

 (・・・また来てる・・・。)

 

 翌日の同じ時間に、またナマモノが来ているのを綾波は気付いた。

 じっと見つめると、今度はナマモノはちょっとびくりと震えたが、じっとこちらを見つめ?返してくる。

 どうやら今日は余り逃げるつもりはないらしい。

 

 「・・・・・・。」

 「あ・・・。」

 

 しかし、綾波が動こうとするとナマモノはすっとまた音もなく去っていった。

 同じ時間に現れ、何をするでもなく綾波を見つめてはすっといなくなる。

 そんな事が数日続いた。

 

 (増えてる・・・?)

 

 そして数日後、今度は頭部が連想式の砲を備えた四角い砲塔で構成された妙なナマモノが増えていた。

 以降、それらのナマモノはどんどん増えていき、顔とサイズが違う四角い砲塔型頭部を備えたものや機械と魚類が合わさったものが増えていき、最終的には機械と人間が融合した様なモノまで現れていくのだった。

 それらナマモノが織り成す日常・・・日常?の光景というかホームコメディ染みたやり取りの鑑賞は何時しか綾波の趣味とも言える習慣になっていくのだった。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 「っち、ドジっちまったぜ。」

 

 ヤザンは一人、真夏の第二新東京市の街中を散策しながら一人肩を落とした。

 

 「なに、今日は休みだぁ?」

 「すいません!今日はガス周りの工事でお店は丸一日休業なんです!」

 

 本当に申し訳ありません!と頭を下げる従業員に、それ以上声を荒げる事は歳を食って部下を多数持つようになったヤザンには出来なかった。

 行き着けの居酒屋鳳翔第二新東京市支店の急な休業から、ヤザンの調子はずれっぱなしだった。

 朝から飲むつもりだったこの不良中年、他にもこの街の幾つかにお気に入りの飲み屋があるのだが、どれも洋食や中華、南米風の料理だったりと和食で飲むつもりだったヤザンにはピンと来ない。

 そのため、新規開拓でもするかと色々と街をさまよい歩いていたのだが、どうにも良さげな店が見つからない。

 朝は適当にパンとコーヒーを腹に入れただけだった事もあって、ヤザンもそろそろがっつりとしたものを食べたかった。

 

 「あ~~どっか適当に入るか…。」

 

 もう安物のチェーン店にでも入って空腹を解消するかと考えていた時、

 

 「あ、皆さん見てくださいよアレ!和牛ステーキ食べ放題ですって!」

 「落ち着きなさいよフォアルデン!確かに食べ放題系の店は私達に都合が良いけど…ってアルフィミィ!レーベンを連れて走らないの!」

 「わたくしあのお店が良いですの~。」

 「ま、待って、アルちゃん…!」

 

 何か死んだ筈の惚れた年上の恋人が当時の姿のまま(髪と目の色が変化してるけど)頭軽そうな女と女児二人連れて平然と目の前にいるのに気付いた。

 

 「おい。」

 「へ、は?」

 「あらま?」

 

 意識せず、ヤザンは喉から絞り出すような低い声を出し、それにアトミラールとフォアルデンが気付いた。

 なお、女児2人は食べ放題の店(すた○な太郎第二新東京支店)の窓ガラスにべったり張り付いて中を覗いて店員の苦笑を誘っていた。

 

 「や、ヤザ「奢ってやるから洗い浚い吐け。」

 

 有無は言わせなかった。

 

 (やーん、これって堅物女のアトミラールさんの修羅場?修羅場なの?これ、どう動くべきかなー?)

 

 四人のアインスト娘達で最も冷静に判断を下せるフォアルデンは、ヤザンをどうするべきかを第三者目線で考えながら、もしもの時の期を伺うのだった。

 

 

 




この後、皆で仲良くいっぱい食べる事になります。

いかんなぁ、ヤザンが美味し過ぎるキャラなせいでドンドン設定盛り込んでしまうw
まぁ独自設定多数のタグがあるから良いよね別に。

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