若者の全て   作:白夏緑自

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 中学を卒業して、何の予定も無く、引っ越し業者が出入りしているエレベーターを使うのも億劫で、昼間からダラダラとこれまた興味もないワイドショーを見ていると速報が入ってきた。

 路線バスが暴走。交差点に進入。重傷者多数。

 その瞬間から、しばらくはこの暴走事故の話題で持ちきりだった。

 バス運転手の年齢。職務態度。持病の有無。

 事故現場に居合わせた人間の声。ひしゃげたガードレールや電柱。

 集められ、砂みたいにばら撒かれた情報に混ざって、読み上げられる死者の名前。

 亡くなったのはバスの乗客、通行人含めて五名。

 突然死んでしまう人間を、神様は選んでいるのだろうか。

 大きな事故とか事件で、一人は誰もが知っている人を殺さなくてはいけない決まりがあるのだろうか。

 五名のうち、一人は俺でも知っている人だった。

 いや、正確にはよく知らない。名前もその日初めて聞いた。

 大宮雅彦。

 大手製薬会社の若き社長。若き……と言っても五十手前。ちょうど俺らの親世代。

 大宮製薬は誰もが知っている製薬メーカーだ。どこの家庭にも常備薬の一つに大宮製品が混じっているし、健康食品なども手掛けている。

「あら、次の社長は誰になるのかしらね」

 なんて母さんは呑気に言っていたけれど、このときの俺は人って簡単に死ぬのだと改めて思い知った。死神の鎌は案外無差別で、近くにある。

 ショッキングなニュースは一週間の話題のタネとなり、ワイドショーでは競うように報道していた。

 それが段々と尺が短くなり、最期は有名俳優と無名女優の結婚でかき消された。俺も、入学式を迎えるころには忘れていた。人々の注目は移ろいやすいモノだ。できれば、制服合わせの際、身長が今から伸びるかどうかで親と言い争いになり、周りから浴びた注目も入学式の頃には忘れられていることを願う。

 

 残念ながらそんなことはなく、入学式が終わり。数日後に新学期が始まり、三日間行われる部活勧誘の一日目。朝の校門を──最寄り駅が同じで最近よく一緒になる──塚端真琴とくぐってすぐに「そこの身長が悩まないと思っている少年っ」と正面から声をかけられた。

 無視、したかった。

 でも、新緑の背景に仁王立ちしながら金髪を靡かせる人なんて初めてで、何よりもその美術品めいた雰囲気に、

「なに見惚れてるの~」と塚端に二の腕をつままれるまで反応できず、思わず「はい」と答えてしまう。

「やっぱり見惚れてたんだ」

「嬉しいね」

「いや、ち、違くて……」

 何も違わない。実際にその通りだ。

「そうじゃなくて、なんですか……?」

「この時期に在校生が新入生に声をかける理由などこれしかあるまい」

 と、金髪の先輩──後に白河・明日翔麗亜と名乗る──は一枚のチラシを俺と塚端に渡してくる。そこにはイラストなど一切なく、デカデカと『求む!君もシェア部で学園征服しないか⁉』と書かれていた。

「部活勧誘だ」

 先輩はそのまま活動内容など一切説明せず、校舎へと入っていく。他の新入生には目もくれず、つかつかと。校舎まで続く階段を上るその姿はレッドカーペットを歩く海外女優のようだった。

 

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