Summer Story ~妖精のように美しい君との夏~   作:寿垣遥生

2 / 6
今回は原作では一期以降ほぼ出番が皆無だったあの人が出てきます!

さてさて、誰でしょうか?(キャラ改変ありですが…)


Favorite person

side裕貴

 

 翌日、朝練を終えて僕達は玄関に着いてはシューズに履き替えていた時だった…

 

「ちょっ、何これ!?」

 

「直葉ちゃん、どうしたの?」

 

 直葉ちゃんの靴箱に1枚の封筒、しかも差出人が不明という何とも質の悪い贈り物が入っていたのだ。

 

「封筒だね。中に何が入ってるのだろう?」

 

「分からない。でも、確かめてみるね…」

 

 封筒を開けるとそこには紙切れが1枚入っていて、何と書かれてあるかを開いて確かめる。

 

『親愛なる桐ヶ谷直葉さんへ

 

昼休み、体育館裏で世界一美しい貴方を待ってます。世界一かっこいい僕のこの気持ちを受け取ってください!

 

貴方を愛する男より』

 

 そこにはラブレターと思われる高校生にしろ何にしろ短くも痛々しい文面が記されてあった。どこのナルシストなのだろうか…いずれにしても直葉ちゃんの身の回りの人間であることに間違いはないのだが、こういう痛いナルシストの知り合いがいた覚えがない。

 

「ね、ねえ…私、約束通り体育館裏に行った方がいいのかな?ちょっと不気味な予感がするんだよね。」

 

「とりあえず、それは後で決めよう。早く教室に行かないと遅刻しちゃうよ…」

 

「そうだね。うん…」

 

 考えなければならないことは山ほどあるのだが、ひとまず僕達は教室に入りこの問題を後回しにすることにした。まだまだ時間もある訳だし、誰が送ったのか分からない中で即決するのは危険だからね…

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

「ごめん、ちょっとトイレに行ってくるからノートと筆記用具を化学室まで持っていってくれるかな?」

 

「いいよ。それじゃあ、化学室で待ってるね!」

 

 1時間目の授業を終えてこれから化学の授業ということで化学室へと移動する訳だが、僕は荷物を直葉ちゃんに託してトイレにひとまず立ち寄ってから行くことにした。

 

(それにしても、直葉ちゃんにラブレターを送ったのは誰だろう?)

 

「やあ、梶達くん!」

 

 トイレを終えて真っ先に出会ったのは隣のクラスの長田慎一くん。彼は僕らと同じ中学校に通っていた友達の一人で、直葉ちゃんにALO【アルヴヘイム・オンライン】というゲームをお勧めした青年だ。

 

「長田くん、今日はどうしたんだい?」

 

「実は君に用があるんけど、直葉ちゃんはアレを読んでくれたかな?」

 

「アレ?」

 

「ほら、下駄箱の中に忍ばせたラブレターだよ。アレは僕が参考書を見ながら書いたもので、渾身の手書きなんだ!凄いでしょ?」

 

 なるほど、あの痛々しいラブレターは長田くんが書いたものだったのか…彼が直葉ちゃんに好意を寄せていたのは前々から知っていたけど、とうとうここまで強行手段に踏み込むとは思ってもいなかった。(それ以前にどういう参考書を見たらああなるんだ!?)

 

「こんなことをするぐらいだったら、LINEやメールでやり取りすれば良かったんじゃないの?何もわざわざラブレターを忍ばせなくても…」

 

「分かってないね…こうやって誰か分からない相手から来てと誘われて、相手が分かって『好きです』と言った方が女の子は惚れるものだよ。」

 

 長田くんは前髪をかき分けながらどや顔で持論かどうか分からないモテ論を語る。彼ってこんなキャラじゃなかったような気もするが…愛の力というのは無限大なのかもしれない。

 

「とにかく、いい結果になることを祈るよ。それじゃあ…」

 

「ありがとう、頑張るね!」

 

 そろそろ授業が始まるというタイミングで僕はこの場を後にした。どうやら長田くんは直葉ちゃんのことを今も諦めていないようだ…その執念が伝わってほしいと思う中でどこかに嫉妬というか彼女を奪われたくないと思う自分がどこかに住んでいる。

 

(何故だろう…長田くんのことは応援したいのに、どうしてこんなにも胸が苦しいんだ!この気持ちは一体…)

 

 とりあえず、ひとときの邪念を振り払って僕は化学室へと向かうのであった。何が原因なのかは分かってはいる…しかし、僕が相応の行動をしたらどうなるのかが不安となりなかなか邪念を振り払うことができない。どうすればこのモヤモヤは晴れるのだろうか?

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

 それから、昼休みとなりいよいよ運命の時間が来た。僕は体育館裏の隠れられる場所から行く末を見守る…待ち合わせ場所には既に直葉ちゃんが待機しており、どこかソワソワしている感じだ。

 

(もしも、長田くんの告白を直葉ちゃんが受け入れたらどうなるんだろう?なんだかんだで彼の気持ちもまっすぐだからね…それに折れる可能性も一概に無いとは言えないし、怖くて怖くて仕方ないよ。)

 

 正直な話、この現状を見ていたくはないと思っている。ただ、彼女が決めたことなら僕はもう直葉ちゃんの横にいることはできない…そう考えると、この告白は僕の運命を分けるものになるだろう。

 

「桐ヶ谷さん、お待たせ~!」

 

 丁度その時、タイミング的に良いのかどうかは分からないが、長田くんが走りながら直葉ちゃんの待つ場所へと向かう。彼の告白と彼女の返事次第で僕の運命は決まる…

 

「はぁ…やっぱりあんただと思ってたわ。」

 

「あのラブレター読んでくれたんだね。いやぁ、あれは参考書を読んでどうやったら桐ヶ谷さんが惚れるのかな~って考えて書いた力作なんだよ!どう?ドキドキした?」

 

「別にドキドキしてないし!それで、あんたが伝えたい気持ちって何なの?」

 

「おおっ、やっぱりドキドキしてるね!桐ヶ谷さんはツンデレだなぁ♪」

 

「誰がツンデレよ!いいから話しなさい!!」

 

「それじゃあ言うよ。桐ヶ谷さん…いや、直葉ちゃん、僕は君のことがずっと前から好きでした。僕と付き合ってください!」

 

 直葉ちゃんから催促されて長田くんは満を持してこれまで抱いていた気持ちを告白する。果たして、彼女の答えは…

 

「そういうこと?ごめんけど、あんたと付き合うつもりはさらさらないんだよねぇ…」

 

 その答えは僕の中では意外ながらもNOだった。僕は少し安心して胸を撫で下ろす…

 

「えっ!?どういうこと?僕達、ALOで一緒のギルドで冒険した仲じゃん!どうして…」

 

「別にあんたと冒険して楽しいと思ったことはないし…あんたと冒険するよりもお兄ちゃん達と冒険する方が楽しいわよ!」

 

「そんなぁ…」

 

「それに、私には好きな人ぐらいちゃんといるし!あんたよりも強くて優しくてかっこいい素敵な男の子がいるんだから。」

 

「その人って誰なの?僕に教えて!」

 

「あんたに教える筋合いなんてないわよ…とにかく、もう私につきまとうのは金輪際やめなさいよね!それじゃあ。」

 

「ま、待ってよ直葉ちゃん!僕に好きなタイプとかそういうのを教えてよ。それに相応しい男になるからさ…」

 

「しつこい!!」

 

「ぐわっ!?」

 

 直葉ちゃんは長田くんに一発ビンタを浴びせた。彼はあまりの威力に思わずダウンしてしまう…流石、上級生を差し置いて剣道の団体戦で大将に選ばれただけはある。ダウンしたのを見て彼女はこの場を無言で後にした。

 

「そんなぁ…直葉ちゃあああああああん!!」

 

 ビンタを食らった長田くんは地面にうずくまり、大声で泣き叫んだ。告白を断ってくれたことは安心したのだが、こうやって彼が絶望している姿を見ていると気の毒になる…

 

(僕としてはこれで良かったと思うけど…直葉ちゃんの言っていた好きな人って誰なんだろう?)

 

 僕はまた新たなる不安を抱きながら、直葉ちゃんの後を追って教室に戻る。彼女の言っていた強くて優しくてかっこいい男とは何者なのだろうか…この学校にいる人間なのか、はたまた今は違う学校に通う古い男友達のことなのだろうか、あるいはそれ以外の男なのだろうか?さらにモヤモヤが深まる。

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

 ショートホームルームが終わった放課後、今日は男女共に部活が休みということで僕達は並んで一緒に帰っている。

 

「ところで、今日は誰かから告白されたみたいだけどどうだった?」

 

「それがまさかとは思ったけど長田くんだったんだ…もちろん振ってきたけど、しつこかったから金輪際話しかけるなとは言っておいたの。でも、それでも諦めが悪かったから一発叩いちゃった…」

 

「なるほどね。長田くんは直葉ちゃんのことが好きそうだったから、いつか告白するとは思ってたけど…」

 

「そうだけど、アイツはしつこすぎ…別に私は一緒にゲームやる程度でしか意識してないのに、少し『上手だね』と褒めただけでこんなにも調子に乗るヤツだとは思わなかったよ。」

 

 まあ、彼も彼で褒められたことが嬉しかったのだろう。そこから相手も好きじゃないのかと考えたくなる気持ちは同じ男としてよく分かる。

 

「そうなんだ…ところで、直葉ちゃんに訊きたいことがあるんだけど。いいかな?」

 

「いいよ、言ってみて。」

 

「直葉ちゃんに好きな人っているの?」

 

「えっ…ヒロくん、どうしたの?」

 

「いや、直葉ちゃんは強くて優しくてかっこいい人が…あっ!」

 

 まずい、あの時に彼女が言っていた好きなタイプを聞いたままに言ってしまった。これで盗み聞きしたことが多分バレたかもしれない…

 

「ヒロくん、もしかして告白の現場を見てたの?」

 

「いや、その…はい、見てました。」

 

 僕も必死にごまかそうとするが、直葉ちゃんの睨みに屈してしまい正直に白状してしまう。

 

「まったく…見てたのなら見てたって素直にそう言えばいいのに。」

 

「ごめん、長田くんが直葉ちゃんに告白することは前々から知ってたんだよ。それで、どんな返事をするのか気になってね…正直な話、いいよって言ったらどうしようって思ってたよ。彼は直葉ちゃんのことが好きだったから…」

 

「誰がアイツのことを好きになると思ってたの?たとえ相手が好きだと思っててもありがた迷惑だよ…」

 

「まあ、しつこく迫られると嫌になるからね。それで、好きな人って誰なの?大丈夫、秘密にするから!」

 

「内緒、ヒロくんにも教えないよ~♪」

 

「あっ、ちょっ…待ってよ!」

 

 好きな人を聞き出そうとしたところで、直葉ちゃんは逃げるように走って駅へと向かう。彼女が好きな人って一体誰なのだろうか…そんな不安の中で僕は背中を追いかけるのだった。

 

To be continued…




自分で書いてみて、レコンこと長田くんの本性ってこんなもんだと僕は思うんですよ。

原作では弱々しくも直葉ちゃんに話しかけてましたけど、本性は粘着性のストーカー的なところもありそうだと読みました。その本性をフルに発揮した結果…今回のような結果になった訳ですw

次回はいよいよ直葉ちゃんの兄であるキリトこと和人が登場しますが、そんな中で気になるのは直葉ちゃんが本当に好きな人…誰なのかはいずれ明かされるので、そちらの方もどうぞお楽しみに!

では、また次回♪
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。