Summer Story ~妖精のように美しい君との夏~ 作:寿垣遥生
藤原さんのひろしボイスは『国民のお父さん』としての象徴でした。数多くの名ゼリフ、笑い、希望を届けてくださり感謝申し上げます。
ご冥福をお祈りいたします…
『僕、直葉ちゃんのこと大好き!大きくなったら直葉ちゃんをお嫁さんにしてあげる。』
『ありがとう、私もヒロくんのことが大好きだよ。大きくなるのを待ってるね♪』
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side裕貴
「…きろ、起きろ!」
「あいたっ!?」
幼馴染で直葉ちゃんのお兄さんである和くん(桐ヶ谷和人)に教科書で叩き起こされて目を覚ます。ここは川越市立中央図書館、今日は土曜日で午前中に部活が終わり今は和くんに数学を教えてもらってるところだ。
「お前、人に勉強を教えてもらおうという時に普通寝るか?」
「ごめん、部活が大会前でハードだったから疲れちゃって…アハハ。」
「まあ、それもそうか…裕貴はいつも練習を頑張ってるとスグから聞いてるからな。」
和くんはなんとか自分の事情を納得してくれた。しかし、その中で気になるのは僕が先ほど夢で見ていた過去の記憶、僕は直葉ちゃんにプロポーズしてたんだな…それをふと思い出す。
「ねえ、和くん。」
「どうした、分からない問題でもあるのか?」
「いや、数学のことじゃなくて直葉ちゃんのことについて質問したいことがあるんだけど…」
「スグのこと?」
「うん。直葉ちゃんの好きな人って誰なのかってことだよ…昨日、長田くんに告白された時に『私には好きな人がいる』って言ってたんだ。和くんは何か知ってる?」
「分からないな。でも、スグは俺のことが好きだった時期もあったのは確かだよ…」
「えっ、和くんのことが?」
僕は衝撃を隠せなかった。兄妹でこういうことはいけないのだが、和くんは悔しいけども優しくて強くてかっこいいという条件をクリアしている。やはり、僕のことなんて…って何を考えてるんだ、僕は!
「まあ、随分前の話だけどな。俺がSAOから帰ってきて明日奈がALOに幽閉されていた時にリーファという名でスグと出会って、アイツは知らずに恋をしてたらしいんだ…」
和くんはその当時のことをしみじみと話す。彼が今付き合っている明日奈さんはSAO時代からの付き合いで、ゲームクリアをした後もALOに閉じ込められてしまい彼女を助け出そうとした中で直葉ちゃんと出会ったという話は聞いたことがあるのだが、まさかその直葉ちゃんがキリトの正体を和くんだとは知らずに…そんな残酷な恋を直葉ちゃんは経験していたなんて。
「なるほど。それで、直葉ちゃんはどうなったの?」
「ああ…それ以降、スグは恋愛関係の話を聞きたくないと塞ぎ込むようになってしまった。俺が明日奈のことしか考えてなかったのが悪かったんだ…」
「ううん、和くんは悪くないよ。今も僕達は仲良くできてる訳だし…和くんだって明日奈さんを助けようとしていたから仕方ないんじゃないかな?僕が和くんと同じ立場だったら、きっと同じことになると思うから。」
「ありがとう、裕貴。お前に弱音を吐いちゃって…」
「いいんだよ。僕も和くんにいつも助けられてるから、お互い様ってことでいいんじゃないかな?」
「まあ、そうだな…ありがとう。ところで、どうしてスグの好きな人を訊くんだ?」
「うん…それがここ最近、直葉ちゃんのことを考えると胸が苦しくなって何も考えられなくなっちゃうんだよ。」
僕は自分の思ってることをありのままに話す。最近の自分の異常を話せるのは同じ男である和くんしかいないのだ…どんな答えでもいい、とにかくそれが解決に繋がる糸口になればそれで十分だ。
「お前、もしかしてスグのことが好きじゃないのか?」
「え、まあ…好きか嫌いかで言えば好きだけど。」
「やっぱりな。流石、プロポーズしたことあるだけあるぜ!覚えてるか?小さい頃、おままごとが終わった後で俺のいる前で堂々と…」
「わーーーっ、和くん!それ以上はあああああ!!」
「二人とも、静かに!!」
「「すみません…」」
和くんが昔の思い出を語ろうとするのを止めたところで図書館のスタッフから怒られる。思えば、恥知らずだったあの頃は『大好き』という気持ちを直葉ちゃんに伝えることに何の抵抗はなかったのだが、今となってはその気持ちを伝えることすら難しい作業だ…それは相手も同じだろう。
「それじゃあ、真面目に勉強を続けようか…」
「うん…」
そして、僕達は再び数学の勉強を続けていく…結局は解決の糸口は掴めなかったが、確かなことに気づくことができた。直葉ちゃんのことが今でも変わらず好きだということを…
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週が明けて月曜日、この日からテスト1週間前ということで部活が休みということがあり早めに帰って自宅学習ということになるのだが…
「どうしてこんなに雨が降るの~!もう…」
電車を降りた川越駅に着いた途端に大雨が降っており、しかも山の上から来るバスが土砂崩れでストップしてしまう。街からのバスが隣のバス停なら1時間待てば来るということで雨宿りの為に近くの古い神社まで走ってきた訳なのだが…傘を持ってきてないので、言うまでもなくずぶ濡れになってしまった。
「天気予報では雨は降らないと言ってたのに…電車に乗ったら急に大雨なんて予想できないよね。」
「それは仕方ないけど、もうずぶ濡れだよ…」
僕はふと直葉ちゃんの方を見る。今は夏服ということもあり半袖のワイシャツ1枚なので、濡れれば下着が透けてしまうのだが…まさに、彼女の現状もまさにそれで白のブラジャーが透けている状態だ。
(下着が透けてるなんて死んでも言えない…言ったら僕は直葉ちゃんから嫌われてしまう!)
「ヒロくん、何を見てるの?」
「えっ?いや、その下g…ううん、何でもないよ!」
しまった、またしても正直なところが出てしまうとは…『下着』とはハッキリ言い切らなかったのだが、逆にそれがまずかった。
「下、下着?…ちょっ、ヒロくんのエッチ!」
直葉ちゃんは自分の状況に気づき、濡れた胸元を隠して僕にエッチと顔を赤くして言い放つ。お互いの下着は着替えで見たことがあったとはいえ、その時とは状況も場面も全く違うのだ…
「ごめん。決してイヤらしい気持ちがあった訳じゃなくて…」
「ヒロくんのバカ…もう知らない!」
彼女の怒りは頂点に達し完全にそっぽ向いてしまい取り返しのつかないことになってしまった。もしかして、嫌われちゃったパターン?
「…反省してる?」
「えっ?」
すると、直葉ちゃんはしばらくの沈黙の後に横目で僕を見て一言訊ねる。救われたのか否かは分からないが助かったらしい。
「う、うん…」
「そう。今回は特別に許してあげるけど、次はないからね…分かった?」
「分かりました。」
「よろしい…それじゃあ、今から練習着に着替えるから目は閉じててね。」
そう言われて僕は目を閉じて彼女の着替えが終わるのを待つことにした。その間に生地が肌に擦れる音が耳に入るが、目を開けてはならない…開けたら確実に絶交だ。
「ねえ、直葉ちゃん…」
「なに?」
「いきなりだけど、和くんについてどう思ってるの?」
「お兄ちゃん?うーん、何と答えればいいのかな…今は普通に仲良くしてるよ。」
「そうなんだ。でも、和くんから聞いたんだ…直葉ちゃん、和くんのことが異性として好きだったって。それは本当なの?」
僕は一昨日、和くんから聞いた話を直葉ちゃん本人にぶつけてみた。これでどんな答えが返ってきても後悔はしない…
「一時期ね…私、キリトくんをお兄ちゃんと知らずに好きになっていた時期があるんだ。いや、それ以前からずっとお兄ちゃんのことが好きだったの…強くて優しくてかっこよくて、お兄ちゃんは私のそばにずっといてくれたんだ。でも、ある日お兄ちゃんは私を避けるようになって…」
言われてみれば、和くんと直葉ちゃんの距離がちぐはぐになっていた時期もあった…その時の二人は気まずいオーラが漂っていて僕も居心地が悪かったのはよく覚えている。
「それで、理想の和くんの雰囲気があったキリトに恋をしたってことだね。」
「うん。ヒロくんに話すことじゃなかったんだけどね…でも、私はキリトくんがお兄ちゃんだと知ってから恋をすることが怖くなってしまったの。好きになっても捨てられるんじゃないだろうか、って…」
「それじゃあ、もしも直葉ちゃんの好きな人が突然好きだと言ったらどうするの?」
「そうだね…好きな人が私に告白してくれるのは嬉しいな。でも、その人と付き合ったら私は一緒にいたいと思うから、一度でも離れないつもりだよ。」
直葉ちゃんは着替えながら恋愛観を語っていく。彼女は過去の苦しみから相手とは離れたくないという束縛に似た感情が芽生えており、僕が仮に付き合うともなればずっとそばにいることを誓わなくてはならないのだ。その覚悟が僕にできるのか…
「そうなんだ、覚えておくよ。」
「うん…それと、着替え終わったからもう目を開けても大丈夫だよ。」
そして、言われるがままに目を開けると直葉ちゃんはいつの間にやら部活の練習着に着替えが完了していた。
「ヒロくんも着替えたら?結構濡れてると思うけど…」
「じゃあ、僕も着替えさせてもらうよ。」
僕も言われるがままに部活の練習着に着替えようとするが彼女の方は目を閉じようとしない。
「あの、目を瞑ってくれるかな?着替えずらいんだけど…」
「あっ、その…ヒロくんってどんな感じで筋肉がついているのかが気になって。いいかな?」
「えっ!?別にいいけど…」
参ったな…直葉ちゃんは僕の筋肉の付き具合が気になるようだ。『僕の着替えだけ見て不公平だぞ!』と言いたいところだが、男と女では裸を見られる意味合いは大きく異なるからね。渋々了承した…
(なんか恥ずかしいな…直葉ちゃんが興味津々に僕を見てるよ。)
僕はネクタイを外し、ワイシャツと濡れてるタンクトップを脱ぐ。上半身は完全に雨を被ってしまった為にずぶ濡れだ…
「ヒロくんも逞しくなったね…」
「そ、そうかな?」
「だって、剣道を始めたばかりのヒロくんって細くて弱々しかったんだよ?今は筋肉が綺麗について、凄く練習を頑張ったということが分かるようになって…本当に素敵だよ。」
直葉ちゃんは僕の上半身を見て感心する。自分の身体がどのように映っているのかは分からないが、一応部活が終わっても家で筋トレはやっているので練習をサボるような連中よりかは身体の仕上がりには自負できるものがある。
「まあ、一応真面目に剣道に打ち込んできたからね。ありがとう…」
少し照れるかもしれないが、こうやって直葉ちゃんから褒められるのは凄く嬉しい。やっぱり、僕は彼女のことが好きなんだ…自分の気持ちをようやく完全に理解することができた。
「あの…下は流石恥ずかしいから、目を瞑ってくれるかい?」
「あっ、そうだね。ごめん…」
そして、僕は下も短パンに履き替えて着替えが完了する。このタイミングで雨は止み、空も晴れ間が見えるようになった。
「晴れてきたね…」
「うん。あっ…ヒロくん、見て!」
「虹だ…綺麗。」
直葉ちゃんが指を差した先には虹がかかっており、先ほどまでの土砂降りが嘘かのように空は澄み渡っている。
「それじゃあ、帰ろうか。そろそろバスが来るだろうし…」
「うん!」
こうして、僕と直葉ちゃんは遅れてきたバスに乗って無事に家へと帰宅する。そんな中で僕の心もモヤモヤが消え、空のように晴れた気分がした…今日のこともあり、この気持ちが伝わる希望も湧いてきたのは言うまでもない。
(直葉ちゃん、いつか君に伝えるよ…『大好き』だという気持ちを。)
To be continued…
コロナウイルスの保障として国から10万円が国民一人一人に寄付することが決まりましたが、皆さんはどのように使いますか?
僕はやっぱり…推しと趣味の麻雀の為に使いますね!