Summer Story ~妖精のように美しい君との夏~ 作:寿垣遥生
里帰りしたり、レジャー施設へ遊びに行きたいという気持ちは十分に分かりますが…コロナウイルスの感染拡大を防ぐためにどうかお控えください。
そして、全国に出されている非常事態宣言は今月(5月)末まで延長される見通しです。それまでの辛抱ということで身と心の負担は計り知れないものになるでしょうけど、それらを乗り越える為に家の中で何か気晴らしになるようなことが何なのか…YouTubeやニコニコで動画を観るなり、あつ森とかのゲームをやったりと楽しめる時間は十分にあります。なので、今年のGWは家族全員で『STAY HOME』生活を楽しみましょう!
以上、作者からのお願いでした。
side裕貴
金曜日の夜、僕は自分の部屋に戻り直葉ちゃんに電話をかけようとする。もちろん、デートに誘う為なのは言うまでもない。
「もしもし、直葉ちゃん?」
『ヒロくん!こんな時間にどうしたの?』
「実はね…久しぶりにお出かけしようかと思ってるんだけど、明日は空いてる?」
「空いてるけど、テスト前だよ?勉強はしなくても大丈夫?」
「勉強は帰ってからやればいいよ。僕はどうしても君に言いたいことがあるし、直葉ちゃんも観たい映画があるってこの前言ってたよね?折角だし、その映画を一緒に観ようよ!」
『分かった。それじゃあ、明日ね…待ち合わせ場所はヒロくんの家の前でいい?』
「いいよ。詳しい時間とか場所は明日の朝に連絡するから…」
『うん!明日、楽しみにしてるね。おやすみ~♪』
「おやすみ、直葉ちゃん…よっしゃあああああ!」
とりあえず、明日のデートの予約に成功した。後は集合時間を決めたり、映画館を調べたりするのみ!そして、デートを楽しんだ後は…
(映画の後は告白…それも、恋愛モノの映画の後だから激熱!楽しみだなぁ~♪)
僕は高鳴るワクワクを膨らませ、勉強に戻る。明日は直葉ちゃんとデート!楽しみでしかない…
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翌日、僕は朝ごはんを食べてから歯磨きや着替えを済ませていく。今日の予定は朝の9時半に直葉ちゃんが僕の家の前に来て、11時半からは映画があってその後に遅めのランチを設けた後にお買い物…こういう流れからの告白と見積もっている。
(時間は9時半ぴったり…直葉ちゃんがそろそろ来る時間だ!)
「裕貴~、直葉ちゃんが呼んでるわよ~?」
「はーい!」
直葉ちゃんが来たことを母さんが知らせる。僕の部屋からはインターホンの音は聞こえないので、用のあるお客さんが来た時はいつも母さんや彩海を通して対応しているのだ。
「お待たせ!待った?」
「ううん、私もさっき来たところだから。」
「ねえ、今はテスト前だけど二人とも勉強しなくても大丈夫なの?」
「家に帰ったらすぐに勉強するからさ!心配する必要はないよ。」
「…とヒロくんは言ってるので大丈夫だと思います。」
母さんは僕達がテスト前ということでそんな中で遊び行くのが不安に思い訊ねてくるが、ひとまず大丈夫だと必死にアピールした。物分かりの良い母さんだからきっと分かってくれるはずだ…多分。
「まあ、直葉ちゃんが大丈夫と言うなら大丈夫なのよね…とにかく二人で楽しんでらっしゃい、お土産楽しみにしてるわよ?」
「う、うん…行ってきます。」
こうして、予定にまた一つ母さんへのお土産選びが加わった。正直に言うと楽しみにしてたのに水を差されたような気分がする…本当に母さんの気遣いができないところが迷惑だ。
「ごめんね…母さんが邪魔しちゃって。」
「気にしなくてもいいよ。ヒロくんのお母さんって相変わらず元気いっぱいで楽しそうだね♪」
「まあ、元気だけが取り柄のようなものだからね…」
直葉ちゃんを含めて僕は自分の母親を他の人に会わせるのはハッキリ言って嫌だ。小さい頃はそれほど抵抗はなかったものの僕が成長すればするほど鬱陶しく感じていくものである…できることならもう少し大人しくしてほしい。
(それにしても、直葉ちゃんの私服って久しぶりに見たけど…私服を着ても可愛いな。)
ふと僕は直葉ちゃんの方に目をやる。元々彼女はスポーティーなイメージがあるというのもあるが、白のTシャツとホットパンツというシンプルなコーディネートがよく似合っていて可愛い。
「ヒロくん、何を見てるの?」
「いやぁ…直葉ちゃんの私服を久しぶりに見たからついつい見入っちゃってね。」
「そ、そうなんだ。もうちょっと可愛い服があったら良かったんだけどね…もう少し見られてもいい格好にしとけば良かったなぁ。」
「大丈夫。直葉ちゃんは可愛いし、どんな服も似合ってるから問題ないよ!」
「もう、恥ずかしいよぉ…」
直葉ちゃんは顔を赤くして苦笑いを浮かべる。普段の彼女は明るくて元気いっぱいな雰囲気なのだが、こうやって僕だけに見せる乙女な一面も素敵に思う…もうすぐそんな子に気持ちを伝えることができる、そう思うと胸の高鳴りが止まらない。
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それからしばらく移動して、俺達は目的地である川越ユニシティーというショッピングモールにたどり着く。ここには映画館だけではなくゲームセンターや衣服を売ってるお店があったり、スポーツジムの備わっている市民だけじゃなくて埼玉県民誰もが利用する憩いの場でもあるのだ。二人でここには来たことはないが、僕に関しては家族で行ったことはあるのでどこにどのようなお店があるのかは完全に把握しているつもりだ。
「わぁ…大きい。」
「ここに来るのは初めて?」
「テレビのCMでユニシティーは聞いたことあるけど来るのは初めてだよ。」
「それじゃあ、詳しい場所は僕が案内するよ…ついて来て。」
「うん…お願いね。」
僕達は施設の中へと足を踏み入れる。僕もぶっちゃけ緊張しているのだが、直葉ちゃんにはかっこいいところを見せておかないと…上手くリードできてるかどうかで告白が上手くいくかは決まってくるからね。
「まずは映画観よう。この後、放映されるから急いでチケット買うよ!」
「いいの?映画が先で…」
「直葉ちゃんが喜んでくれるならそれで十分だよ。どうしても観たい映画なんでしょ?」
「そうだけど…ありがとう、ヒロくんってやっぱり優しいんだね。」
こういう風に改めて直葉ちゃんに『優しいね』と言われると嬉しい反面で凄く照れる…好きな人からの一言というのはとんでもないぐらいに強力だ。
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それから、僕達は目的の映画を隣同士の席に座って観る。今観ているのは巷で有名な学園恋愛モノでコミックも社会現象になるぐらいに売れた『向日葵咲く夏恋』という作品で、キャスト陣並びにスタッフの豪華さもセールスポイントという贅沢要素満載の傑作だ。
(幼馴染の恋が題材か…重なるものがあるね。)
この作品のストーリーは主人公の夏井渉(なついわたる)がヒロインで幼馴染の日向葵(ひなたあおい)に恋をして、その中で小さい頃に交わした『結婚』の約束を思い出した渉が彼女に徐々にアプローチしていき、葵の抱えるトラウマを共に乗り越えながら恋を繰り広げるという感じである。僕はコミックを自ら進んで読んだことはないのだが、直葉ちゃんから何冊かは借りて映画前によく読んで事前学習はある程度済ませているつもりだ。なので、今のところはわりかし直葉ちゃんと共に楽しめている…
『俺、葵のことが好きなんだ。お前にプロポーズしたあの時からずっと…この気持ちは変わらないから、俺のそばにいてくれ!』
『ごめん、渉が好きな気持ちは嬉しい。だけど…いつか渉がいなくなると思うと怖くて、寂しくて、不安で仕方ないの。だから、気持ちに応えられない…裏切られたくないんだよ!』
『大丈夫だ、俺は嘘をついたりなんかしない。俺を信じろ!』
『信じられるわけないでしょ…私がこうなったのは渉が原因だから。』
『どういうことだ?俺は葵を裏切ったことなんて…』
『嘘つき!小学4年生の時に私を置いて転校したじゃない…それで私は一人になってみんなからいじめられて、貴方を忘れようとして付き合ってた彼氏からも裏切られた。そう、渉が私を裏切ったの…渉が一緒だったらこんな辛い目には遭わなかったんだよ!』
僕はこの場面を観て、自分がもしも転校した時のことを想像する。僕が直葉ちゃんの目の前からいなくなったら、彼女はどう思うのだろうか…この作品があまりにも僕達と重なる部分が多い故に考えてしまうのだ。
(直葉ちゃんは言っていた…『付き合ったら私は一緒にいたいと思うから、一度でも離れないつもりだよ。』と。葵と同じなんだろうね…)
『あれは家庭の事情だよ。お前にちゃんとした形で伝えられなくて悪かった…もう別れることはないから、俺の全てを信じてくれ。』
『本当に?信じていいの?』
『ああ、もうお前を離したりはしない…ずっと、いつまでもだ!』
『ありがとう、私も渉のこと大好きだよ…これからもよろしくね。』
こうして、渉と葵は無事に結ばれた…こうやって想い合っていれば愛は必ず実る。僕達もこのように上手くいくのだろうか?映画を観てランチと買い物をしている最中もこのことを考えるのであった。
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「今日は楽しかったね!久しぶりに勉強以外のことをしたから息抜きになったよ…誘ってくれてありがとう♪」
デートを終え、僕達は近くの公園でひと休みしているところだ。ドキドキワクワクの時間というのは実に短いもので、あっという間だった…
「僕も直葉ちゃんが楽しそうだったから凄く嬉しいよ。また誘ってもいいかな?」
「うん、また遊ぼうね。それじゃあ、帰ろう…テスト前だし、これから勉強勉強!」
直葉ちゃんは帰ろうと僕の前を歩こうとする。しかし、まだ帰らせる訳にはいかない…自分の気持ちを伝えないと!
「待って、直葉ちゃん…」
「どうしたの?」
「帰る前にどうしても伝えたいことがあるんだ…いいかな?」
「いいよ。それで、伝えたいことって?」
僕は覚悟を決めて好きだという気持ちを伝えようとする…こうやっていざ言おうとすると緊張して口が重くなってしまう。何をどのように言えばいいのかは分かっているのに不思議な感覚だ。
「ぼ、僕…小さかった時から直葉ちゃんのことが好きなんだ!いつも優しくしてくれて、笑顔でいてくれる妖精のように輝いている君のことがずっと…だから、僕と付き合ってください!」
そして、一か八かで僕は直葉ちゃんに好きだという気持ちをぶつける。どんな答えが出ようがもう今まで通りの仲良しな友達関係には戻れない…それでも、僕の中に好きだという気持ちが生きている限りはそれを伝えるのみ。その覚悟で告白した。
「ありがとう、その気持ちは嬉しいんだけど…ヒロくんの気持ちには応えられないよ。」
「えっ!?どうして…」
「私…もう誰も失いたくないし、誰からも裏切られたくないから。お兄ちゃんとは仲直りできたけど、私が憧れてたお兄ちゃんは明日奈さんに奪われた…みんなが私の前からいなくなるのが嫌なの!」
直葉ちゃんは涙を流して僕にしがみつきながら自分の心の内を訴える。 和くんの言う通り、彼女は恋愛に対してトラウマを抱えているようだ…
「大丈夫、僕は君の前からいなくならないから安心して!もちろん、ずっとそばにいるつもりだよ。」
「でも、私は友達のヒロくんを失いたくない…ヒロくんと離れたくないよ。」
「離れないよ、いつまでも…だって、僕は直葉ちゃんと約束したんだ。『大きくなったら直葉ちゃんをお嫁さんにしてあげる』って…だから、僕を信じてほしい。」
「ヒロくん…ありがとう、私も大好きだよ。絶対に離さないでね…」
「もちろん、約束するよ。」
そして、僕は泣く直葉ちゃんを抱きしめ返す。彼女も告白を受け入れてくれて、凄く嬉しい…心の暖かさが身体を通して伝わってくる。
「落ち着いた?」
「うん…ごめんね、ヒロくんの前でこんなにも泣いちゃって。」
抱きしめられること5分、直葉ちゃんは落ち着きを取り戻して涙をハンカチで拭う。よほど嬉しかったのか、彼女は満面の笑みを浮かべていた。
「いや、むしろ良かった…小さい頃の約束を覚えてて嬉しかったよ。辛い想いをしたショックで思い出を忘れていたのかと思って不安だったんだ…それで、フラれたらどうしようかとも考えてたよ。」
「そうなんだ…私ね、実はヒロくんのことも小さい時から好きだったんだよ。でも、ヒロくんってかっこいいから私と一緒だったら迷惑かけるんじゃないかと思ってずっと言えなかったの…ごめんね。」
「ありがとう…これからもよろしくね。」
なるほど、直葉ちゃんも僕のことが好きだったのか…こうやって相思相愛だということを知って安心する。
「こちらこそ。それじゃあ、一緒に帰らない?手を繋いで…ね♪」
「うん!」
僕達は手を繋いで家までの帰り道を楽しく話しながら帰るのであった。これで僕達は正真正銘のカップル、これからも結婚するまでずっと一緒にいれれば…この時はお互いにそう思っていた。
To be continued…
こうして、めでたく裕貴と直葉ちゃんは結ばれた訳ですが…前作とは違いまだ終わりではありません!
付き合ってからが物語の始まりです。どんな夏になるのか…今後もどうぞお楽しみに♪