東方暇潰記   作:黒と白の人

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第24記の内容が変わりました
割りと大幅に…優柔不断ですいません


第25記 アルビノの少女

畳の敷かれた部屋、胡座を掻いて座る俺は目を瞑りウトウトと首を揺らしながらこの眠気に身を委ねるか否かを考えている

 

「虚ー?」

 

そんなことを考えてコクリ、コクリと舟を漕いでいると幼い女の声が俺を呼ぶ

俺は虚ろになっている目を擦って声の主のもとへと顔を向けた

 

「どうした妹紅?」

 

歩きにくそうな服を着て、襖から顔を覗かせながら俺の部屋に来た白髪赤目(アルビノ)の少女は藤原妹紅(ふじわらのもこう)

藤原氏、古典文学や日本史等でよく見かける姓の名門氏族だ、この妹紅も藤原の姓があるとおりその名門氏族の一人である…ことには違いない

 

その藤原妹紅は今にも裾を踏んで転けそうにトテトテと俺に走り寄って抱き付く

 

「おっと」

 

俺は妹紅に出来る限り衝撃がいかないように抱き止めた

 

俺はどうやらこの妹紅にかなり気に入られている…と言うよりは、俺と妹紅の父親と極少数の側仕えの者にしか気軽に話すことが出来ないが故にこのような形になっている

「またお父様どっか行っちゃった」

 

藤原不比等(ふじわらのふひと)

名前だけで少し分かりづらいのであれば車持皇子、竹取物語でかぐや姫に蓬莱の球の枝を持ってくるように命じられたその人である

なぜ不比等の話をしたかというと今の俺の立場と少し関係がある

俺はこの京の都で陰陽師の真似事をしている……とは言っても実際の陰陽師のように符術や陰陽術を使って妖怪を祓うのではなく、俺は刀を使い妖怪を切り捨てる、別に符術等が使えないわけではない、だがそんなことをするより刀を振るって妖怪を斬る方がずっと速いのだ

 

さて不比等の話だが簡単な話だ、少し昔に何処かの国の狩人を助け国に呼ばれた時と同じように、人喰い妖怪に襲われていた人間を助けただけなのだ、「そんな腕があるならば家で働かないか?」と言われその人間、藤原不比等の誘いに応じて俺はここに居る

 

「そうかーじゃあ今日は何をするかね?」

 

俺は妹紅の頭を撫でながらそう言った

 

「虚、私ってさやっぱりいらない子なのかな?」

 

妹紅は目を伏せてポツリと言う

 

「そんなことはない、不比等はお前を愛してるさ」

 

俺は妹紅を俺の体から少し放して妹紅の顔を見てそう言った

 

「それじゃあなんで…」

 

妹紅の言葉が止まる

妹紅は苦しそうに胸を押さえ蹲る

 

「大丈夫か?妹紅」

「うん、大丈夫だよ…」

 

妹紅は胸を抑え少し過呼吸のように息を荒くする

 

「そうか、あまり無理をするなよ?」

 

そう言って俺は妹紅の頭を再度撫でる

しばらく撫でていると寝息が聞こえ始めた

 

「黄昏様」

 

一人の女が俺を呼ぶ

この女は極少数の妹紅と話せる側仕えの一人であり不比等との連絡係のような役目もある

 

「なんだ?」

「不比等様がお呼びです」

「わかった」

 

俺は妹紅の頭を一度撫でてその女に妹紅の面倒を頼み部屋を出ていく

 

長い廊下を歩き不比等の部屋の襖を開ける

 

「不比等どうした?」

 

部屋の中には長い髭を携えた優男、不比等が仕事をしているのか筆を取り何やら書いている

 

「あぁ虚来てくれたか、妹紅はどうだった?」

「……アンタには言っておいたほうが良さそうだな」

「……」

「余り気を落とさないで欲しいが妹紅の命は持って十と数年が限界だろう」

「そうか…あの子には何もしてやれなかったな…」

「無感動だな」

 

不比等の表情は変わってないように見える、ドロドロとした宮廷では能面のように表情を変えない事が必要だったのだろう

 

「ハハハ…よく言われるよ感情が薄いって」

 

不比等は顔の表情はほぼ変わらないまま乾いた笑い声をあげる

 

「アンタにとって妹紅はどうでも良いのか?」

「そんなわけないだろう!妹紅は私の大事な娘だぞ!」

「なんだそんな表情(かお)できんのか、なら娘の前でさっきの言葉言ってやれよ、妹紅が自分のこと何て言ってるのか知ってるか?」

 

声を荒げた時の不比等の顔は間違いなく自身の娘を心配する父親の顔だった

 

「……」

「私はいらない子なんじゃないか、だってさ」

 

不比等は驚いた顔をする

 

「それは……」

「俺だってアンタが親バカなのは知っている、でもなそれを本人の前で言ってやれなかったら意味はないだろう?まぁ話すだけでもしなよ、それで妹紅も救われると思うぜ?」

「……わかった妹紅と話してみる」

 

不比等は決意した目で俺を見る

 

「まぁこれぐらいしか言えないけど頑張れよ」

 

俺はそう言い残して部屋を出ていった

 

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