東方暇潰記   作:黒と白の人

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第52記 力が強いだけのただの鬼

縁側に座っていると萃香と勇儀が帰ってきた

二人とも心なしか吹っ切れたような表情だった

 

「……」

 

しかし気まずい……告白してきた女を振って顔を見合わせる、もの凄く気まずい……

 

「な……なぁ虚今日はどうするんだい?」

「……今日か?んー」

 

正直考えてはいなかった

当初の目的の交渉は結局萃香と勇儀は受け入れる事になって成功に終わったし特にやることは残っていない

 

「今夜は泊まってったらどうさ?」

 

萃香が床をトントンと指して言った

 

「いや、流石に悪いから帰ることするよ」

「そうかい、それなら少し付き合いなよ」

 

萃香が先程とは別の瓢箪を振り、勇儀は盃を俺に見せ指でついて来いと合図して俺は立ち上がって二人について行った

 

 

階段を登り四階に連れてこられた

そこはいくつも襖があり、所々襖が開いており中を覗くとそれぞれ個室になっているようだ

 

「余り覗かない方が良いよ、ここ女部屋の階だからバレたら張り倒されるよ?」

 

萃香はチラリ後ろを向いて俺にそう忠告した

 

「待て、それは俺はここに来たらダメだろう?」

「あぁ別に良いよ、女部屋の階って言ったけど、たまに男が上がって来ることもあるし、私達が傍にいるからね」

「そうなのか?」

「まぁだからと言って覗いて良いなんて理由にはなんないがね、ここがアタシの部屋だよ」

 

襖を開けると中はそこまで特別なことはなかった、丸障子に違い棚に床の間には酒器が置かれ、黒い木で作られた机に八畳程度の部屋、その違い棚に様々な盃が並べられて勇儀のコレクションか何かなのだろうと俺は推測した

 

「まっ、座りなよっと」

 

カンッと固い音

音は勇儀が丸障子を開けた音だったようだ

俺は勇儀の言葉に従って俺は畳の上に腰掛けた

 

丸障子の縁に勇儀は腰掛けて月に照らされていた

その姿がとても綺麗だな俺は思ってしまった

 

「綺麗だろ?アタシはここで飲むのがお気に入りなんだよ、まぁドンチャン騒ぎして飲むって言うのも楽しいけど、たまにこんな風に飲みたくなる時もあってね」

 

勇儀は満月に照らされて微かに笑いながら言った

 

「私もよくここで勇儀と飲むんだよ、まぁ辛気臭い空気も酒と一緒に流そうか?勇儀盃貸して」

「好きなの使いな」

「星熊盃は?」

 

萃香はキョロキョロと盃を見ていき最後の盃を確認して勇儀にそう聞いた

勇儀は噎せたように咳き込んだ

 

「……迷いもなくアタシの一番指名するなんて思いもよらなかったよ」

「私だってお宝の伊吹瓢持って来てるんだからアンタも使わせなよ?」

「まぁ元々虚に振る舞う積もりだったし別に構いやしないんだがね」

 

勇儀は笑いながらそう言って自身が持っていた盃を差し出した

萃香はそれを受け取った

 

「ねぇ虚、私が持ってるこの瓢箪、伊吹瓢って言うんだけど知ってる?」

 

俺は首を横に振った

 

「これはね、ほぼ無限に酒が湧き出る瓢箪なんだよ、中には酒虫(しゅちゅう)っていう奴の体液を塗ってあるんだこれが水を酒に変えてくれるんだよ、でも酒虫そのものじゃないから味は数段劣るのが難点なんだよねぇ……」

 

萃香はチャプチャプと音を鳴らして瓢箪を振る

 

「そんでアタシが持っていたのが星熊盃、注がれた酒を極上のものに変える盃でアタシの一番のお気に入りでね、まぁ多少急いで飲まないと味が劣化するけどそこまで問題ないがね」

「良いのか?」

「良いんだよ、元々アンタに飲んで貰いたかったんだよ、これ以上をアタシの口から言わせる気かい?」

 

勇儀は人差し指を俺の口元に当てる

 

「すまない」

「別に良いんだよ、さて萃香も言ってたけど全部酒と一緒に流すよ、萃香盃渡してやんな」

 

萃香は俺に盃を渡して

勇儀はその盃に酒を注いだ

萃香と勇儀はそれぞれ別の盃を取り

伊吹瓢の酒ではなく別の酒を注いでいる

注ぎ終わり勇儀が盃を掲げた

萃香も掲げた

俺は二人について行くように掲げた

 

「それじゃ乾杯!」

「乾杯ー!」

「乾杯」

 

勇儀が言い萃香、俺と続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星熊勇儀

 

何がどうしてこうなった……

 

 

 

今アタシは虚に抱き締められて接吻されている

アタシの隣では萃香が目を白黒させて驚いている

 

 

もう一度言う何がどうしてこうなった……

 

 

アタシは何故こうなったのかを思い出す

 

 

虚の顔が赤らみ始め酔いだした位から何かがおかしくなった

 

 

「ねぇ虚、私さ少し酔ったみたい」

 

確かに赤みが増しているが萃香にとってむしろこのくらいが何時もの萃香もと言える程しか酔っていない、その萃香はしなだれ掛かってそう虚に囁いていた

 

「そうかい、ならこれで酔いは覚めるかい?」

「ん!?」

 

そう言って萃香の顎を自身の方へと向けて虚はいきなり萃香の唇を奪った

 

「な、何やってんだい?!」

 

アタシは慌てて虚と萃香を引き離した

 

「おやおや、赤くなって可愛いねぇ」

 

萃香が自身がさっきまで何をされていたか認識して顔を酔っていたときよりも赤くしていたのを虚は見てニヤついてそう言った

 

アタシは虚に腕を引かれて抱き寄せられ押し倒された

 

「な、なな何すんだい!?」

「勇儀も顔赤くして、可愛いとこあるじゃないの」

「ちょっ止めないかい!」

 

虚はアタシの頭を撫でる

 

「嫉妬した勇儀可愛いよ」

「別に嫉妬なんか…ん!?」

 

虚はアタシに接吻をする

さらにアタシの口の中に舌を入れて中を舐め回すように動かした

 

そして先程に戻った

 

おかしいね、萃香との事前の予定ではどちらかが虚にしなだれ掛かって気を引いてもう片方が酔った虚の衣服を脱がして二人で一気に押し倒す、というものだった

だが気を引いた所でおかしくなった

いざアタシが押し倒すときになると虚は萃香に接吻し、アタシは逆に虚に押し倒された

 

虚は萃香の腕も引き抱き寄せ押し倒す

 

虚は萃香と接吻するためにアタシから唇を放した

唇が冷たい空気に触れて物寂しさを感じた

 

「虚、アンタが欲しい、頼む…だからもっと……な?」

 

アタシは虚の首に両手を回して自分から虚を抱き寄せる

 

「駄目な男だよ?俺は」

「あぁ確かにアンタは駄目な男だよ、誘ったのはアタシ達とは言え妻がいるのに手を出しかけている」

「でもね虚、そんな駄目な男に惚れた私達もまた駄目な女なんだよ」

「寂しいのはもう嫌なんだよ、アタシ達は四天王とまで呼ばれてね、アタシ達を超人のように崇めるアタシ達はただ力の強いただの鬼なんだよ」

 

あぁ何でだろうね……虚の前だとどうしても弱くなっちまう

 

「……甘える位なら良いよ」

「酔い覚めちゃったか」

 

萃香が言って気づく、いつのまにか虚の顔から赤みが消えていた

 

「元々俺は酔いが覚めるのが早いんだよ、ただ酔ったときに何が起こったのかは覚えてないんだけどな」

「ならさ、今の状況わかってる?」

「………襲いかけてたかな?」

 

虚はタラタラと汗をかき始めた

 

「けどまぁ、それならお言葉に甘えさせて貰うとするよ」

 

アタシは虚の首に掛けている手を引く

 

甘えていい、ならこの疼きを起こした張本人に慰めてもらって甘えるのも、もちろんありに決まってるんだよね?

 

「駄目だね虚、無防備にそんなこといっちゃ……期待しちゃうじゃんか……」

 

萃香も息を荒くして虚を見ている

 

「もう少し甘めな甘えるだと思っていたのですが」

「そりゃ悪いね、少しキツく甘えさせて貰うよ?」

「私も忘れないでね?」

 

アタシ達は虚を押し返して虚にのし掛かった

 

優柔不断で駄目な男だけどそれでも好きだと思うのは

きっと惚れたアタシ達の弱みなんだろうかねぇ……?

今夜は寝かせやしないよ虚……

 

 

星熊勇儀END

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