日が沈み月が顔を出すか出さないかの黄昏時
「さて、そろそろだな」
「そうね」
鳥居の下で赤い館を見る
「そう言えば人里は大丈夫なのか?」
「ええ、彼処には慧音がいるからね」
「上白沢?」
「そ、慧音はハクタクなの」
「ハクタク、俺のなかじゃ歴史家位の認識しかないな」
「あまり間違ってないわよ」
「しかし上白沢がハクタクだとしても何故里が安全に?」
「慧音の能力である程度の妖怪は里を認識できないのよ」
そう靈夢と人里について話していると月が昇る
「これは……」
「へぇ……」
その月は赤かった
周囲を不気味な赤い光りが照らし出す
「それじゃ行きますか、靈夢はここで結界の準備だろ?」
「えぇそうよ、行ってらっしゃい」
「行ってきます、なんてな」
俺は赤い館に向かって走る
赤い館に最短で行くのなら必然的に人里の近くを通らないと行けない
そして吸血鬼の最終目的は紫を殺す若しくは紫を下し幻想郷を支配すること
人里が無ければ幻想郷は滅びかねない、俺が吸血鬼なら先ずは紫をあぶり出すために人里を襲うだろう
赤い館に走っていると紫がいた
「紫どうしてここに?」
「吸血鬼の目的は私を殺す若しくは隷属させること、ならば私を出すために人里を襲って来るはず、だから人里と赤い館の間であるここで待ち構えているのよ」
紫の話を聞いていると後ろから軽い衝撃が来る
雪のように白い腕が俺を抱き締める
そっと俺は顔を後ろに向ける
帽子を盛り上がらせている三角形の耳に帽子から少し出ている金色の髪、金色の九本の狐の尻尾の美女
俺は俺を抱き締めている美女の名を呼ぶ
「……藍」
「虚……久しいな」
藍は少し目を赤く腫らしながら俺を見る
「……」
何と声をかけて良いやらわからない
俺は藍を放り捨てたようなものだ
怒鳴られたり殴られたりする事はあっても抱き締められるようなことはしていない
「虚」
抱き締めている腕に力を込めて再度藍は俺の名を呼ぶ
「……俺は藍、お前を放り捨てたようなものだぞ?」
「別に気にしてなどいない……と言えば嘘になるなやはり……」
藍はふふと笑う
「人使い……いや、妖獣使いが荒いが、紫様は良い主だ」
「……そうか」
どうやら紫に任せたのは間違いではなかったらしい
「暑いわ、凄く」
紫は扇子を開き自分を扇ぐ
「ハハハ、なんかすまないな紫」
「少しは緊張感持ったらどうなの?」
「吸血鬼は俺がやる、それに紫と藍に指一本たりとも触れさせやしないよ」
「……それじゃあ任せるわ」
「ふふ……頼むぞ私の旦那様…」
藍は口許に手を当て笑った後続けて言う
「…否定はしないのだな」
藍は嬉しそうに笑う
「……うるさい」
「…紫様から聞いた、また居なくなるのだな」
「……あぁ」
「次は……いつ、会えるのだ?」
「博麗大結界はこの幻想郷と外を強固に隔離する結界……だったな紫?」
俺は強固に隔離すると言う言葉を強調して言う
「……ええそうよ、だから一回張ってしまったら穴を開けるのは時間がいるわ」
「どれくらいになりますか紫様……?」
紫は顔に影を落として言う
「……どれだけ早くても百年はかかるわ……」
「百年……なぁ虚…」
俺は藍の言葉を遮り言う
「無理だろうなぁこう言いたいんだろ藍、他の方法はないのかって?」
「ああやはり無いのか……?」
「おそらくな、気長に俺は待つとするよ藍と紫が迎えに来るその時まで……」
俺はシシと笑う
「必ずだ、必ず迎えに行く」
「貴方には返しきれていない恩が沢山あるもの、迎えに行くわ、必ずね」
騒がしい足音が聞こえる