「早苗ちゃん」
「は、はい!」
俺が名前を呼ぶと早苗はビクッと背筋を伸ばし返事をする
「なに怯えているんだい?」
「えっとそれは……」
早苗は目線を右往左往させている
「早苗、別にやましいことなんか私はしてないよ、全然会いに来てくれなかった夫が帰って来てくれたんだ、抱きつきたくもなるもんだよ」
「全く二千年以上も待たせるなんてねぇ」
ヤレヤレと言うように神奈子は溜め息を吐いた
「夫?えっ?諏訪子様結婚されてたのですか?!」
「あれ?言ってなかったっけ?」
諏訪子は首を傾げて言う
「聞いてませんよ!?」
「……あぁ、そう言えば言ってないね」
暫く考えた後に諏訪子は言った覚えはないらしい
「あっ……待ってください諏訪子様の夫が虚さんなんですよね?ってことは虚さんってロリ……」
「その先は言わせねーよ!?」
俺は手を早苗の方向へと突きだしながら言う
「さーなーえー?」
「ごめんなさい?!」
「誰がロリだってぇ?」
諏訪子が早苗に詰め寄っていく
「今のは早苗ちゃんが悪い」
「だね」
俺の言葉に神奈子も同調する
「そう言えば虚は否定しないんだね?」
「……否定したいが出来ないんだ、それで察してくれ」
神奈子は口許に手を当てて考える素振りを見せて言う
「……あぁ、諏訪子以外に居るのかい」
俺は無言で頷いた
「後で色々聞かせてくれよ」
「拒否権を行使する」
「そうかい、ならいいよ」
アッサリと神奈子は引いてしまい
不意に俺は礼を言ってしまった
「……ありがとう」
「私は礼を言われるようなことをした覚えはないねぇ」
神奈子はカラカラと笑いながら言う
「さて、そろそろ止めますか……諏訪子」
「なにさ?」
「飯が冷める、先に食べよう」
早苗は救世主でも見たかのように目をキラキラさせている
「そうですね!そうしましょう!」
早苗はタタタとまた何処かへ走り去っていく
「あっ待ちな……って聞こえてないね」
「別にそこまで怒ってないだろ?」
「ご想像にお任せするよ」
諏訪子はクスクス笑いながら言い
何か思い出したように続ける
「そういえば永琳……だっけ?その人とは会えた?」
「あぁ会えたよ、少し変わってたから驚いたよ」
「それじゃあなんで一緒じゃないのさ」
首を傾げた諏訪子はそう俺に問い掛けた
「彼女は追われててね、まぁだいたいの場所はわかってる」
「追われてるって何したんだい?」
神奈子は不思議そうにそう言った
「不老不死だよ」
「不老不死って……人間がそんなもの作れば私達の耳に入らないはずはないと思うんだけどねぇ?」
神奈子は諏訪子に視線で問い掛けたが諏訪子は首を横に振った
「入らないのは当たり前だと思うよ、俺だって再会して言われたことだからね」
「最近は無くなって行ってないけど、神の集まりに前はよく行ってたから、そんな話の種あれば上がってこなかったのが不思議だねぇ?」
俺はクスリと笑った
「あぁ、なるほどね……永琳はこの星に住んでいたけど再会するまでは彼処に住んでたよ」
俺はそう言って目線を夜空に浮かぶ満月に向ける
「……月かい?」
「そのとおり」
俺は頷きながらそう言って肯定する
「あぁ…少し思い出したよ、昔月読が彼処に国作って信仰を得ているって話があったねぇ」
「けどなんで不老不死で追われることになるのさ?」
「妖怪が持つ力、つまり妖力だな、こいつは向こうでは穢れって言われてな、これがあると寿命が出来てしまうんだってさ」
「寿命が出来る?」
俺の言い回しに首を傾げた諏訪子はオウム返しにそう言った
「そう、本来妖力さえなければ人はほぼ永遠に生きることができるらしい、だから妖怪がいない、つまり妖力がない月へと永琳達は移住したんだよ」
「へぇ……」
「永琳の作った不老不死の薬は飲むと穢れを生み出してしまう、だから永琳は罪人って言われてるんだよ」
「そうかい」
「不謹慎かもしれないが俺としては永琳が罪人にされたから、こっちに来てくれて嬉しかったんだけどな」
俺がそう言うと諏訪子は胡座をかいた俺の足の上に腰を下ろす
「私達が聞いといてアレだけど、あまり他の女の話をされるのは気分が良いことではないんだよ?」
神奈子は俺の横に座り俺にもたれ掛かる
「そのとおりだね」
「……悪かったよ」
俺はそう謝りこの光景を覗いている少女の名前を呼ぶ
「早苗ちゃんまた覗いてるのかい?」
「はひ?!違うんですよ!?」
「何が違うのさ早苗?」
諏訪子は微笑むように笑って障子に隠れている早苗に目を向ける
「いや、これは別に覗いていたとかではなくてですね!」
「まぁまぁ諏訪子、先にご飯食べよう」
俺は苦笑しながら諏訪子を止める
食事中は仲良く談笑している諏訪子と早苗の姿があった