東方暇潰記   作:黒と白の人

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第81記 案内

「少し落ち着いたか?」

「あぁすまない見苦しい姿を見せたな……」

 

俺達の視線の先には博麗の巫女が箒を持って掃除をしており、隣に魔理沙が居て一緒に話している

 

「こーりんが……あ……」

「ん?どうしたのよ魔理沙」

 

博麗の巫女は振り返り俺達を見る

 

「先程ぶりだな霊夢」

 

靈夢は片手を挙げて博麗の巫女に挨拶する

 

「今日はよく来客がある日ね……お茶でもどう?お母さん」

「あぁ貰おうか」

 

俺は素早く魔理沙のそばまで移動する

 

「魔女っ娘ちゃん、できれば幻想郷を少し案内してくれないかな?」

「うお?!いつまのに……いいぜ、あっ虚の兄ちゃんは飛べるのか?」

 

俺が靈夢と博麗の巫女を指さすと理解したのか了承してくれる

 

「あぁ軽くだがね」

「そうかわかった、霊夢それじゃあまたなー」

「えぇまたね魔理沙」

 

魔理沙は箒に飛び乗って

俺は霊力で足場を作り乗り継ぐように跳んでいく

魔理沙が大きく手を振っている

振り向くと博麗の巫女と靈夢も手を振っている

博麗の巫女の後ろにいる靈夢が口パクで何かを言っている

ありがとう……か

俺はそれに答えるように手を振った

 

「さて案内って言っても何を教えるべきかわかんないんだぜ……」

 

霊力の足場を道のように繋げてそこを歩く

その隣に魔理沙がゆっくりと箒で飛びながらうんうん唸っている

 

「ここ百年で新しく出来た物とかはないか?」

「とくに思いつかないんだぜ……すまねぇな虚の兄ちゃん……」

 

魔理沙はショボンと落ち込んだ

 

「ふむ……たしか鈴奈庵だったかな……そこに案内してくれないか?」

「いいぜ、鈴奈庵だな」

 

魔理沙は溜めるような動作の後に速度を上げた

俺はその場で屈んで跳び足場を作りさらに速度を上げる

 

「すげぇなついてこれるのか!」

「俺置いていく気だっただろ魔女っ娘ちゃん?」

「そんなつもりはないんだぜ!」

 

目線を明後日の方向へと逸らして魔理沙は言う

 

「まぁいいけど、鈴奈庵はこっちなのかい?」

「あぁ鈴奈庵は人里にある貸本屋のことなんだぜ!」

「あやややや!見つけましたよ!」

 

そんな声が聞こえる方向に目を向けると

黒い短い髪、その頭に赤い山状帽風の帽子を被り

白い半袖シャツに少しフリルのついたスカート

黒い羽を生やしそして首からカメラを下げている少女

それがこちらへ猛スピードで近づいている

 

「げぇ、パパラッチ!」

「貴方が新しく幻想郷に来た外来人ですね!」

 

高速で接近してきた少女は両足で踏ん張るようにして速度を落として止まる

 

「そうだが君は?」

「あややや、これは失礼しました!私射命丸文(しゃめいまるあや)と言います!文々。新聞(ぶんぶんまるしんぶん)という新聞を書いています新聞記者です!」

「それでは俺は黄昏虚と言う」

 

射命丸文と名乗った少女は懐から手帳を取りだしてメモを取りだす

 

「虚の兄ちゃん別に答える必要ないぜ、こいつの記事は嘘ばっかりだからな!」

「嘘はついてませんよ嘘は!」

 

山状帽に黒い羽、そして高下駄……人間でないのは確実当てはまりそうな妖怪と言えば

 

「……天狗か?」

「御明察!私は鴉天狗(からすてんぐ)の射命丸文です!」

「君も一緒に来るかい?」

「あやや?どこかへ向かっているのですか?」

「鈴奈庵にちょっとね」

「えーこいつ連れてくのかよー」

 

魔理沙は射命丸を指して不満を隠すこともなく言う

 

「まぁ旅は道連れとも言うじゃない?」

「私じゃ頼りにならないのかよー?」

 

どこか拗ねる様子で魔理沙は言った

 

「それにしても鈴奈庵と言うことは何か調べものですか?」

「いやどんな所なのかなってね」

「そうですか!そこなら腰を落ち着けて取材できますし速く行きましょう!」

 

そう言って射命丸は羽を広げて飛ぶ

 

「ならさっさと行こうぜ!」

 

魔理沙は溜めるような動作をして速度を上げる

 

「幻想郷最速の座は誰にも譲りませんよ!」

 

射命丸も追いかけるように速度を上げる

 

「……俺の案内って言うの完全に忘れてないかね?」

 

俺はそう呟いてパチンと指を弾く

場所は人里と聞いたならばその道中を(無かったこと)にする

視界がコマ落ちしたかのように切り替わる

俺は靈夢に案内されたときに来た人里の入り口付近に移動した

少し空を眺めていると青白い色の光を纏った魔理沙と黒い羽を真っ直ぐにして降下してくる射命丸を見つけた

 

「あややややや?!速すぎませんか?!」

「ってえぇ?!虚の兄ちゃんもう人里来てたのか!?」

「人里には昔来てたからね」

「空を通る以外の近道なんてないと思うのですが……」

「そう言う能力だよ、それじゃ案内よろしくね」

「と言ってもすぐそこなんだぜ」

 

魔理沙は一件の家を指す

その家はかなり年期が入っているように見える

看板には確かに鈴奈庵と書かれている

俺は引き戸を開けて中に入る

中はある程度本棚に整頓されてはいるがそれでも収まりきらないようで辺りに本が塔のように積み重なっている

漫画や文学に専門書等々と本の種類は多岐にわたる、奥の方には妖力を纏っている怪しげな本も紛れている

 

「いらっしゃいませ!」

 

奥で本を読んでいた飴色の髪を小さな鈴の髪飾りで括り市松模様の服の上にクリーム色のエプロンをつけている少女が顔を上げながら眼鏡を外す

 

「よう小鈴」

「どうもー小鈴さん」

「魔理沙さんに文さんですか!今日はどのような本をお求めですか?」

「今日は借りに来たんじゃないぜ、この人がここに案内してくれって言われたから連れてきただけだぜ」

 

仲が良さそうに魔理沙は少女にそう言って俺を指差す

 

「ふむ?初めまして私は本居小鈴(もとおりこすず)、ここ鈴奈庵(すずなあん)の店主のようなものです、貴方は何をお求めですか?」

 

小鈴と呼ばれた少女は首をかしげて言う

 

「初めまして俺は黄昏虚と言う、さて本なのだがとくに決まってはいない、靈夢にここの名前を聞いたから来てみただけだ」

「霊夢さんですか?」

 

小鈴と呼ばれた少女は不思議そうな顔をしている

 

「……とりあえず訂正しておこうか俺の言う靈夢とは先代博麗の巫女のことだ」

「あぁ先代様ですか!」

 

少女はどこか納得いったように手を打ち頷く

 

「あぁ、外の世界の漫画に専門書まで……本当にここはすごい量の本があるね」

「えぇまぁ、なにか気になった本があるならお貸ししますし、買うこともできますよ?」

 

俺は口許に手を当てて考える

正直に言えば気にならないこともない程度の本はあるがまだ俺には家がないんだよなぁ……

 

「……いや本を借りようにも住む場所すらまだないからね今度借りに来ることにするよ」

「そうですか……分かりましたお待ちしています!」

 

俺は周囲に積まれた別々の本の塔の中から本を三冊取って忠告する

 

「妖力を纏った本が幾つかあるね?読むときは気を付けなよ?」

「え?本当ですか?!全部奥に入れたと思ってたのに、すいませんがその本此方に持ってきてください!」

 

俺はその言葉に頷いて妖力を纏っている本を差し出す

 

「ありがとうごさいます!普通の人の目に触れさせないように気を配っていたつもりですがダメですね……」

 

少し恥ずかしそうに本居小鈴と言う少女は頬を掻く

 

「まぁ今度から注意すれば良いんじゃないかな?それじゃあ機会があればまた来るよ」

「それじゃなー小鈴」

「あっ待ってくださいよ虚さん取材ー!」

「またのお越しをお待ちしております!」

 

俺は引き戸を開けて鈴奈庵を出る

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