東方暇潰記   作:黒と白の人

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第87記 八雲一家

「もう出来上がりますから居間で待っててください!」

 

勝手場を覗くと藍が宙に怒鳴る姿が見える

 

「藍、大丈夫か?」

「ん?あぁ虚か、紫様のつまみ食いと言う名の襲撃だよ」

 

藍は疲れたようにため息をつく

 

「あはは、お疲れ様」

「あぁすまない虚、客人に頼むのも失礼なのだが料理を運ぶのを手伝ってくれ」

 

藍は最後の唐揚げを皿に落とし他の皿を見ながらいう

唐揚げの盛りつけられた皿や焼き鮎を乗せた皿、茶碗蒸しに白米、味噌汁など様々な香ばしい匂いが漂い空腹を誘う

 

「かなり豪勢だな」

「私の旦那が来てくれた日だからな、かなり頑張ったのだ……ついてはだな、私に褒美があっても良いと思うのだ」

 

藍は菜箸を皿の上に置き振り向き俺に自然体で近寄り首に腕を回しそのまま俺の口を塞ぎ軽い触れ合うようなキスをする

 

「……今はこれだけで我慢する、続きは夜に」

 

藍は顔を離した後に俺を抱き締めてそう耳元で囁く

 

「……嫁さん一筋……になりたかったなぁ……」

 

俺はため息をついて呟く

 

「もう遅い諦めろ、それとも私達を捨てるか?全く酷い男だな私の旦那は……」

 

俺を離した藍は目元に手を当ててシクシクと泣く真似をする

 

「言ってろ」

「私の旦那が冷たいのだ……」

「……よしよし、これで良いか?」

 

俺は藍の頭を撫でる

布越しだが狐耳の弾力が気持ちいい

この甘さが無ければこういう事にならなかったのかもしれないなぁ……

 

「ん……仕方ないこれで許してやろう」

 

藍は目を細めて気持ち良さそうに声を出す

 

「橙と紫も腹空いてるだろうし、冷ますのももったいない、速くこれを持っていこう」

「そうだな」

 

盆の上に皿や茶碗を乗せていき五つの盆の内の一つ差し出されて

 

 

 

残りの四つを藍が持つ

 

「……俺必要なくね?」

 

盆を持った尻尾以外がゆらりゆらりと揺れる

藍は振り向き自分の尻尾を眺める

 

「……いや、そんなことはないぞ、尻尾が九本もあると他の尻尾に皿が当たったりして危険なのだ」

 

その言葉とは裏腹に尻尾は見事なバランス感覚でお盆を持ち上げている

 

「……まぁそう言うことにしておこう」

 

俺は盆を片手で持ち直し障子を開ける

中には橙がチョコンと座っており主たる紫の姿は見えない

 

「……橙、紫を知らないか?」

「紫様ですか?まだ来てないでしゅ、ですよ」

 

気のせいか後ろの藍の息が荒い気がするがきっと幻聴だろう、橙が噛んで言い直した時に息の荒らさがさらに酷くなった気がするがきっと俺の耳がおかしいだけだろう

 

「私はここにいるわよ」

 

声のした方向に目を向けると、紫が扇子を広げて座っておりその後ろではスキマが閉じていくのが見えた

 

「今来たんだろう?」

 

俺はそう言いながら盆の上の鮎の塩焼きを置いていく

 

「鮎!塩焼き!」

 

料理を見た橙はとても嬉しそうに喜ぶ

 

「喜んで貰えると私も嬉しいぞ橙」

 

そう言いながら藍は盆の料理を次々に置いていく

 

「ほれ座れ虚」

「あ、あぁ」

 

藍は自分の隣に座蒲団を敷いてそこに座るように誘導される

 

「……近くないか?」

「まぁ良いではないか」

 

藍の尻尾が一本俺の腰辺りに巻き付き

藍自信は肩がふれあうほど近づいている

 

「紫様、藍様と黄昏様は恋人なのですか?」

「あら橙藍から聞いてないのかしら?そうよ虚と藍は愛し合っていて、虚と離れる前は毎ば……」

「紫様!橙に何を教え込もうとしているのですか!」

 

離れる前と言っても

藍を拾って傷治して出てって

また拾って傷治して

紫に引き渡して、と計3日

そして、その……事があったのは一回

毎晩と言うわけではないな……

 

「まぁ俺の話は置いといて、せっかくの旨そうな料理を冷めないうちに食べようか、橙も地味に待っているしね」

「はう?!」

 

ビクッと身体を強ばらせた橙が声をあげる

橙を除いた俺達はクスリと笑って、全員手を合わせて同時に言った

 

「「「「いただきます!」」」」

 

まず味噌汁から飲むとする、その具を見て俺は少し笑ってしまった

 

「虚どうしたのよ?」

「いや、具が藍らしいなと思ってな」

 

味噌汁の具は豆腐に葱、馬鈴薯(じゃがいも)そして油揚げ、どこも特におかしくはないいたって普通の味噌汁だ、ただ一点油揚げの量を除いて……比率的にいうなら豆腐2葱1馬鈴薯2そして油揚げ5と言う油揚げ尽くしだ

 

「特におかしな所はないでしゅよ?」

 

あぁ駄目だ洗脳済みか……

 

「ふふふ、この家の家事は一手に私が担っているからなまぁ役得のようなものだ」

 

藍は隠す気はないらしい

 

「いやまぁ俺も好きだからいいけどさ」

「ほうお前もか!旦那と気が合うのは良いことだな」

 

藍はさらに身体を寄せ付け、そして一本目の尻尾の上に二本目の尻尾が巻き付いてくる

このままいけば俺の体は藍の尻尾でミイラのようにされるのだろうか

……一瞬それも良い気がした俺を誰か殴ってくれ

 

「藍、少し暑いのだが」

「あのときはずっと私の尻尾に体を埋めていたではないか、もう嫌になったのか?」

「……もう好きにしろ」

 

好きにするさと藍は言ってもう一本尻尾が俺の胸辺りに巻き付く

そのサラサラとして心地よい感触をできる限り無視して唐揚げを一つ摘まんで口に頬張る

 

「そういえば虚は私をここに放り込んで何をしていたのだ?」

 

言葉に少し刺を感じる辺り怒っているらしい

 

「あー……うん、この幻想郷に入る人探したりしてたよ」

「……詳しく聞かせてくれ」

 

藍の目が少し厳しくなる

 

「いや特にそれだけだよホントだよ?」

 

紫は箸を止めて俺と目をあわせる

引き込まれそうな薄紫色の瞳が俺を見つめる

 

「嘘ね」

「嘘だな、さぁ本当のことを言うが良い」

 

全く同じ様なタイミングで紫と藍が言う

 

「まてまて、何故そう言いきれる」

「貴方嘘つく人の典型例みたいに癖がでるもの、分かりやすいわ」

 

紫は大皿の唐揚げを一つ摘まんで口に運ぶ

 

「私も同じ様なものだ、私と紫様に隠し事は無意味だと思うが良い」

「……まぁ鬼ヶ島行ってたのが一番大きな話かな」

 

そういえば萃香と勇儀、今何しているだろうか

 

「いずれ行こうと思っていたけど貴方が行って話をつけてくれたお陰で助かったわ、間違いなく喧嘩をやれって言われただろうし」

「例に漏れず俺も喧嘩をやったよって痛っ?!」

 

藍が俺の太股をつねっていた

 

「何をする?!」

「お前今他の女のことを考えただろう?」

 

不機嫌そうな、ジトリとした目を藍から向けられる

藍は覚、いや女は覚の間違いだったな

 

「別に私は覚ではないし、思考を読んでいる訳ではないさ、ただお前限定で少し分かるだけだ」

 

読んでいるよね?しかもかなり正確に

そんな言葉が出かけたがその言葉を呑み込む

 

「す、凄いですね鬼と渡り合えるなんて」

「伊達に化物なんて名乗ってないよ」

「そういえば虚、貴方は何故自分を化物と名乗るの?」

 

紫が箸を止めて俺に聞く

 

「ん?確か……そうだ大昔の鬼に妖怪(化物)より化物しているって言われたんだったかな」

「妖怪より化物をしている、ねぇ……」

「まぁ否定はしないし、間違ってもいない、それにあの時よりさらに化物になっているって言う自信もある」

 

そう言い切って俺は油揚げだらけの味噌汁を飲む

 

それから話すことは俺が居なくなってからの幻想郷、主に靈夢の活躍を聞かされた

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