東方暇潰記   作:黒と白の人

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第91記 八雲の夜

紫は何時もの南蛮風のドレスから着替え

紫色の浴衣に身を包み沢山のリボンと帽子を取り髪を流している

肌が赤く上気して湯気が立ち上っているので先程まで風呂に入っていたのが分かる

金髪の女が浴衣を着て何かチグハグ感がある、が……思わず、魅入ってしまった

 

「……紫か、すまん助かった」

 

紫は扇子で自分を扇ぎながら何故というように首を傾げニヤリと笑った

 

「あら?私は何時貴方の味方になったと言うのかしら」

「……え?」

「……でも藍、我慢出来ないのは良いけど場所を考えなさい、外でなんてアブノーマルな行為は慎みなさいよ?」

 

そう言われて体を見ると浴衣の帯は外され、かなり浴衣をはだけさせられていた

 

なん、だと……?

何時の間にここまで脱がされて……

 

「……猫の手癖が悪いのは聞いたことあるが狐も手癖がかなり悪いのだな」

「あと少しだったのにな……」

 

ジトリとした俺の目を素知らぬ顔で流し、俺の言葉など耳に入らないと言うように悔しがる藍

 

「藍、貴女も少しその火照った体を冷ましなさいな」

「……はい」

 

藍は渋々といった様子で立ち上がり紫が来た方向へと進んで行った

 

「全く、あの子は……」

「うん、なんだかんだで助かった、ありがとな」

 

俺は立ち上がり浴衣の帯を締め直す

 

「あら?正直私は邪魔したかしらって思ってたのにね」

「何故そうなる!?」

「貴方だらしない顔していたし、抵抗らしい抵抗してなかったじゃない、受け入れていたんでしょう?」

 

そこを言われると辛い

あの時確かに俺は藍を受け入れていた気がする

いや、受け入れていた、あのまま進んでいたら間違いなく抵抗などしなかっただろう

 

「……」

「図星…かしらね?」

「……あ"ぁ"ーうんそうだよ!抵抗しようとかほとんど考えてなかったよ!」

 

俺は頭をガシガシと掻いて紫から目を逸らす

俺の逆ギレに紫はおかしそうにクスクスと笑いだした

 

「ふふふ、初めて……かもしれないわね、貴方がそんなに感情出したのを見たのは」

「……そうか?」

 

そうかもしれない、そもそも紫と初めて知り合ったのは幻想郷を作るために式になれと言われたとき、そこからたまに幻想郷がどうなっている等の話はしたが言ってしまえばそれだけ、そして藍を式にさせた時から全くと言って良い程会ってなかった

 

「えぇそうよ」

「そうか……」

 

俺は腰を落とし胡座をかく

その横に足を崩して座り

俺の肩に寄り添うように紫は体を預けてきた

そして手を握られる感触

 

「紫?」

「このくらいは許しなさいな、私だって貴方に気がある女の一人よ?」

 

少し頬を染めて紫は照れくさそうに笑った

その顔が眩しくて俺は顔を背けた

 

「……あ、あぁ……なぁ紫、お前はさ…お前はなんで」

 

そこまで言って紫に人差し指を口に押し当てられ口を閉じさせられた

 

「そこから先は言わずとも……そうね」

 

紫は少し言い辛そうにする

 

「……この幻想郷を笑わなかったから、かしらね……我ながら軽い女だと思うわ……妖怪は捕食者であり人間は被捕食者…だったあの時代、貴方は幻想郷という夢物語を馬鹿にするのでもなく不可能だと嘲笑するのでもなく、不可能と断じた上で協力をしようと言ってくれたわ……それじゃあ不満?」

 

紫は俺を下から見上げるように見る

 

「……俺でなくとも良かったんじゃないか?」

「極論を言ってしまえばそうかもしれないわ、でも出会いなんてそんなものよ?大切なことは、私は貴方に……恋をしたこと」

 

恥ずかしそうに顔を赤くして紫は笑う

 

「……なんでこう俺の周りの女はストレートに告白してくるんだよ」

 

俺は顔を逸らし

ため息をついて頭を掻く

 

「あら?決まってるじゃない逃がさないためよ、遠回しな告白なんて貴方絶対気づかないふりをするでしょう?」

 

頬に手を添えられて俺は紫の方へと顔を向けさせられる

目に映る紫は恥ずかしそうに顔を赤くしている

その深い紫色の瞳は俺の全てを見透かされているようで落ち着かない

 

「それは……痛?!」

 

目を逸らそうとして頭を扇子で叩かれた

 

「そこは嘘でも否定なさいな」

「嘘の否定しても嘘つくなと言って叩かれた気がするのだが?」

「あら、正解よ」

「……どうしろと?」

「それは自分で考えなさい」

 

そこで会話は打ち切られた

外の世界のように車や電車もないのでとても静かだ、聞こえるのは風鈴の音くらいなものだ

 

「……ねぇ虚」

「なんだ?」

「改めてお礼を言わせて頂戴な、ありがとう」

 

何の礼だろうか?

彼女に礼を言われることなどはっきり言って何もしていない

 

「この幻想郷、私一人ではたぶん無理だった」

「……紫らしくないな、そしてそんなことはないよ、俺が居なくてもこの幻想郷は完成していた、偶々藍が俺と出会っていたから俺が紹介するような形になっただけだし、吸血鬼だって俺が居なくても紫ならスキマに閉じ込めた上で放置もしくは妖怪でも生きていけない場所に放り出すなりして倒していただろう?」

 

実際俺が居なくてもこれに近いものになっていたのは間違いない、そう決められていたはずなのだから

 

「それは何処まで行っても所詮もしも(if)の話よ」

「……そうだなもしもの話だな」

「えぇ、ね…ねぇ虚」

 

肯定した紫の声は穏やかだったが

次に俺の名を呼んだ紫の声は掠れるような小さな声だった

 

「……なんだ」

 

返事を返すと後ろから抱きつかれた

紫は隣で手を握っているため抱きついたのは別の女だ

 

「随分と良い雰囲気を出しているな虚」

「……藍か、お帰り」

「ただいま、で良いのか?」

 

藍はクスリと笑い

甘えるように自分の顔を俺の肩に擦り付ける

 

「私は…その、色々…初めてな訳なんだけど…リードは、お願いね?」

 

紫は俺をチラチラと見ながら顔を赤らめては言う

 

「大丈夫ですよ紫様、虚の体については虚自身素直で分かりやすいのもあり数回で粗方調べ尽くしました」

「た、頼もしいわね」

「えっと、え?」

 

ちょっとなにを言ってるかよく分からないですね

 

「お前は手慣れていると思っていたのだがな、数百年越しだが今夜もまたよがり狂わせてやるから覚悟しておけよ?」

 

抱きついていた腕を放し俺の隣に回り込んで俺の目を覗き込むように藍は目を会わせる

藍の目が妖しく光っている

まるで肉食獣が獲物を見つけた時のような目だ

 

「頭で警鐘が鳴っている!今すぐここから逃げろと叫んでいる?!」

「安心しろその警鐘……それは正しいからな」

「できるか!安心なぞできるか!」

 

藍から逃げるため後ろに後退りすると

誰かに後ろから抱き止められる

 

「か、覚悟を決めなさい、わ、私だってもうき、決めたんだから!」

「紫様そのまま耳を甘噛みしてください、虚耳が弱いんです」

 

四つん這いのまま近付いてくる藍はそう紫を見て言った

その後ハムと言う声と息が耳に当たる感覚

背筋に電気が流れたように痺れる

 

「ちょとま?!紫待て待って!」

「そこが弱いのはあの時から変わってないようだな?」

 

紫の声の方向に目線を移している間に藍が目の前に来ていた

耳に少し絡み付くような生暖かい液体と柔らかい感触

 

「紫くすぐったいって!それに舐めないで!」

「それでは紫様、虚を運びましょうか」

 

紫は俺の耳を噛んだまま頷く

その拍子に耳に紫の息がかかり

ビクンと俺の体が跳ねる

 

「あ、あのだな紫、藍」

 

少し息が荒くなっている俺は紫と藍の名前を呼ぶ

 

「なふに?」

「どうした?」

「…………お手柔らかに、お願いします」

 

キョトンとした表情の藍

藍の金色の瞳に映っている紫も目をパチクリと瞬きしてキョトンとしている

 

「くふ、ふふ」

「ふふ、ふふふ」

 

藍はニンマリ笑う

紫は笑いながら腕の力を強めていく

 

「私嗜虐趣味なんてないと思っていたんだけど、これは少しゾクゾクするわね」

 

俺の耳を噛んでいた紫は放して俺の耳を舐める

その度に自分は捕食されているのではないかと錯覚して体が跳ねる

 

「お手柔らかにとはおかしなことを言う、以前も優しくしてやっただろう?」

「待ってくれ柔らかくと優しくは似ているかもしれないがその二つにはかなりの違いがある!」

「私だって長い間おあずけされていたのだ、今夜くらいは溜まったモノを発散させてくれよ?」

 

ニコリと笑っているが目が笑っていない

俺の目に涙のようなものが溜まるのが分かる

 

「あらあら虚、泣いてるの?」

「全く、大の大人が泣くでない」

「いやね、お前等いま凄く怖いのよ大丈夫?俺死なない?」

 

後ろから紫が俺の目元に指を当てて涙を掬い取る

 

「全くまるで私達が貴方を殺そうとしてるみたいじゃない?」

「いやあの、実際搾り殺されそうなのですが?」

「今夜はやけに弱々しいな虚?誘っているのか?」

「嫌だ嫌だ言ってるけど本心はって感じかしら?面倒な男ね」

 

クスクスと紫は笑う

 

実際この状況も俺が動いて振りほどけば良いのかもしれない、だがそれができれば苦労しない

俺は今藍に上から押さえ付けられるように押し倒され、後ろでは紫が俺の腕を押さえて動けない

 

逃げれないよね、これ……

 

体を起こして抜け出そうとしたが藍に口を塞がれた自分でも多少耐性とか付いたと思っていたがそんなことはなく、次第に体が痺れ始め力が入らなくなった

 

「……ふふ少し耐性が付いてしまったか…だがそれも良し、いずれお前も抵抗しなくなり自ら私達にせがむようになる……」

 

体が痺れて重い

そこから俺は逃げるように腕を支えにして移動しようとするが肘を打たれ体がカクンと力が抜け紫に体を預けてしまう

 

「あら、逃げちゃ駄目よ?」

「もっと力を抜け、それともじっくりと時間をかけて無理矢理抜かされる方が好みなのか?」

「…………分かった」

「何がだ?」

 

俺は深呼吸して体を落ち着かせる

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺を……俺を愛してください、代わり…代わりに俺もできる限り愛しますから」

 

自分でも気恥ずかしいなんてレベルじゃない告白

顔は一瞬で赤くなり、深呼吸して落ち着かせた心音も一気に高くなり少し離れている呆けている藍や紫にも聞こえているんじゃないかと思ってしまうほど激しく鳴っている

 

「……くっふふ、好きにしてくれと言われると思っていたが良い意味で期待を裏切ってくれたな」

 

噛み殺すように笑うがその笑いは愉悦に浸るような笑いではなく、恥ずかしさを誤魔化しているような笑いに感じた

 

「……ね、ねぇ藍凄く体が熱いのだけど」

「私もですよ紫様、まさかコイツからそう言われるのはまだ先だと思っていたのですが……体が火照って仕方がありません」

 

そう言うと藍は四つん這いの状態から

俺を抱き寄せるように抱き締めた

 

「……返答は」

「「喜んで」」

 

俺がそう聞くと二人は同時に言って

俺の両頬にキスをした

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