Fate/Grand Order CCC tearDrop 作:アマシロ
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白と黒の狭間で女は生まれた。
気づいた時には周囲は捻れた欲ばかり。愛と楽、節制と渇望。
輝く白のような肉親でさえ、裏では淀んだ黒い顔。
闇夜に揺蕩うシーツの上で、女は白いページに焦がれゆく。
物語のような幸福と不幸。塗り分けられる善と悪。
どうか誰も彼もに幸福な夢を! どうか誰も彼もが不幸でないように。
窮屈でも管理された平和を! 故に、焦がれ融ける愛より慈しむ愛を。
“白”に憧れ、“黒”を疎む。愛こそは善だ、と物語は語る。
夢見る無垢な子どものままで愛を願い、しかして愛は女を傷つける。
誰も彼も、“白”い愛など求めはしない。
“黒”い悪などいはしない。現実にあるのはどちらでもない混沌だけだ。
全てのものが愛し合ったなら、なるほど世界は平和であるかもしれない。
ところが白いページは一つだけ。後は有象無象の混沌ばかり。
女は微笑む。もしも泥に塗れるのなら、全てを呑み干す虚ろのように。
“白”くないなら“黒”いもの。善を愛し、悪を憎む。なるほどそいつは分かりやすい。
注がれる慈愛はただ一人に。
分け隔てないそれこそが、正しいものだと女は謳う。
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―――――今日も変わりなく / ■■■■■ 目を覚ます。
SE.RA.PH.によって作られた上級AIにはそれぞれ
それを逸脱せず、世界を運営していく聖杯戦争のための舞台装置。
では、ならば―――――聖杯戦争が破綻しつつあるこの状況で、どうするべきだろうか。
半壊した校舎は、虚数の海に半ばまで侵食されている。
普通では起こり得ない破壊が、校舎をデータの破片として撒き散らし復興を困難にしている。
ムーンセルの処理能力すら超える破壊と生産、そして苛烈なまでの生存競争が適切に割り振られるべきリソースを食い潰し始めて久しい。
あるいは、記録のために人類を招いたが故の必然か――――かつての記録のように、ムーンセル上ではリソースを全て焼き尽くさんばかりの消費戦争が起こっている。
このままでは、いずれ月は滅びる。
ムーンセル・オートマトンがほぼ無限とも思えるリソースの分配が可能であったとしても、人智の及ばぬサーヴァントを“一陣営につき”最大128騎も使役して無事で済むわけではない。ましてや、その陣営そのものが増え続けているのなら。
なんとかしなくては、と焦る気持ちに反するように少女はリソースを限界まで絞った白いだけの椅子に腰を下ろす。
力がなければ何もできはしないが、何かするためにはリソースを必要とする。
せいぜいただの上級AIの力しかない自分が下手なことをしても“確率的に”事態は好転しないという計算。それが少女をスリープモードで消費を抑えるという消極的な行動に終始させていた。
だから、だろうか。
校舎の異変を感じ取り、僅かに顔を上げた少女は運命的な / 意外なものを感じていた。
ムーンセル側から何か動きがあるはずだ、と思っていた故にやっと何かが起こったのだろうということに。そして不必要かもしれないのに自分が顔を上げたことに。
「……いいえ、違いますね。私は、私の目的を果たすために」