Fate/Grand Order CCC tearDrop   作:アマシロ

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第6話:女神/少女

 

 

 

 

 英霊召喚――――カルデア式では、人理を守るために協力する(やる気があるとは言っていない)英霊が無作為に召喚される。つまりガチャ。

 それがムーンセル式では、英霊からの選択式であるがマスターの希望も若干通るらしい。つまりお見合い。

 

 複数体の召喚が可能になったという点があるため、そのあたりは謎らしいが。

 

 

 

「――――というか、それくらいあらかじめ確認しなさいよ」

 

 

 

 遠坂さん―――凛でいいらしい――――凛さんは凄腕の魔術師(ウィザードというらしい)だということで、右も左も分からないひよっこを不意打ちで倒すのはプライドが許さないらしい。あと何故か桜の方を怪訝そうな顔で見ているが。

 

 しかし確認といえばあのキングプロテアは結局何なのか――――BBから別れたアルターエゴだから岸波さんが大好きというところまでは分かったが、それがなんで殺しにかかるのかがさっぱりだ。

 

 

 

 

 

「って、ふーん。はくのんの陣営なのね……なんで一人でサーヴァントも連れずにほっつき歩いてるのよ。まあ似た者同士感はあるけど」

 

 

 

――――いや、なんか虚数空間っぽいところから出てきた“目”と“手”に襲撃されて岸波さんとはぐれたから一刻も早く合流したかったのと、早く治療したくてしかたなさそうな桜に負けて……。

 

 

 

「どちらかというと不正ログインしている藤丸さんを消去するかしないかの執行猶予の関係ではないでしょうか?」

 

 

 

 せっかくマイルドに乗り切ろうとしたのだが、桜にばっさりと切り捨てられる。

 おかげで凛さんにも胡乱な目で見られる始末である。

 

 

 

「……不正ログイン? ふぅん、無害そうな顔してなかなかやるじゃない……どうやったらムーンセルに“不正”にログインできるのか知らないけど」

 

 

 

――――そこはBBという電脳魔が勝手にやった。

 自分はムーンセルの異常事態を解決するために放り込まれたので、できれば知っていることを教えてほしい。

 

 

 

「異常事態? そりゃあもう何もかもが異常よ。あなたが襲われたっていう“目”と“手”はどこからともなく現れて、サーヴァントと見るや襲いかかってくるし。妙な黒い影みたいなのがサーヴァントを飲み込んでいくって噂もある――――それを解決してくれるっていうなら願ってもない話ね」

 

 

 

 大金払わされたし、と恨めしげな目で見てくる凛さんだが、なんと言っていいやら。

 そうこうしている間に召喚準備が整ったのか、ステンドグラスのように一瞬だけ床が光輝き、思い浮かべるのは―――――。

 

 

 

 

 

ANSWER   愛の黒子を持つ騎士

     ⇒サトウキビの弓を持つ愛の神

      狐耳を持つ巫女の9つの分身の1

      古き双神の兄妹

      炎門の守護者たる王

 

 

 

 

 

 脳裏を過ぎったのは、とある女神。

 愛憎、快楽、渇愛――――BBの愛から生まれたアルターエゴ、そういった“愛”を司る彼女であるのなら。そして何よりも、“彼女”と同じ顔をしていることに意味があると直感している。

 

 なぜなら、彼女は死ぬほど苦しんで、捻くれて、荒んでいても。

 救われず、何一つの救いもないままに。それでも“愛する”ことを選んだのだから――――。

 

 

 

 

 いつの間にか、部屋の中央に小柄な影があった。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……本当はお邪魔する予定なんて無かったんですけど。また難儀なことをしてるんですね、マスターさん」

 

 

 

―――――カーマ、来てくれたのか!

 

 

 

「いえ、どっちかというとマスターさんが来てほしそうなので、しかたなーく、ええ不本意ながら参上しただけですけど。………というかパールヴァティーならともかく、なんで同じ顔の子がいるんです?」

 

「―――――」

 

「カーマって、まさか神霊? 何で知り合いなのよ」

 

 

 

 

 流石に同じ顔が出てきて驚いたのか、フリーズしている桜はともかく凛さんが「さっさと吐け」と言ってる気がするので改めて自己紹介をしておく。

 人理継続保障機関カルデア所属、人類最後のマスターをやってます。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「――――へー、じゃあ危うく人類最後の希望を殺しかけてたってわけね」

 

 

 

 あんまり信じてなさそうな凛さんだが、それもそのはず。確か前(セラフィックス)の時にBBが説明していた限りではムーンセルは未来に存在するらしい。2019年で地球が漂白されたと言われても意味不明だろう。

 

 

 

「まあ私としては、人類を滅ぼすなら思いきり愛して(堕落させて)滅ぼしたいですしマスターさんに協力してあげますけど」

 

 

 

 やる気なさげに、「うわぁ、もとから無いやる気がもっと無くなりそうな部屋ですね」などと保健室を酷評しつつもこちらに妖艶に流し目などしてくるカーマであるが、これでも一緒に大奥を攻略した(こっちも相手もカーマだった)後はインドの異聞帯で大暴れしたり、リンボに何もさせずに叩きのめしたり、天の牡牛と戦ったり、最近ではオリュンポスでも助けてもらった。

 

 絆レベルで言えば8くらいはありそうな感じである。ので協力してくれるだろうことは疑っていないのだが、流石に発言が意味不明だったのか桜が疑問を口にした。

 

 

 

「滅ぼすために愛するって、理論的に破綻していませんか?」

 

 

 

 うんまあ、それももっとも。

 だがこのカーマは愛の神であるが、平和のためにその力を使ったら宇宙レベルの炎で焼き殺されたという可愛い……もとい可愛そうな女神。全力で嫌がらせに走りたい系の愛の神である。

 

 

 

「あれですよ、あれ。ダメ男製造機。愛の神なんてものに生まれたので、心底嫌ですけど人類全てを徹底的に愛して、どろどろにしてあげるっていうことです」

 

「それは―――――愛ではないのでは? 全ての人に与えるのは慈愛だけ、他の愛はただ一人に固執するものだと思いますけど」

 

 

 

 まあ普通は複数人を愛しているというと家族愛とかそっちになるだろう。ただこのカーマの恐ろしいところはちゃんと人類と同じ数だけカーマを内包した宇宙を創り出して、一人ひとり個別に好みのカーマになって愛して(墜として)いくことである。

 

 

 

「まあこれでも女神様なので、きちんと全員愛してあげますよ。――――心底嫌ですけど」

「SE.RA.PH.のAIは聖杯戦争への協力、ひいては人類全体への奉仕を目的にしています。その立場から言わせていただきますがカーマさんは人類全体への脅威なのでは……」

 

 

 

 桜の心配ももっとも。

 このカーマ、元はあの殺生院キアラと同格のビーストである。とはいえしばらくは人類のために奉仕してくれるらしいので、そのあたりは疑っていない。妙なところで消極的というか、素直だからあっさり攻略された経緯もあるし。

 

 

 

「――――いや、なんですかマスターさんその目は。生暖かい目で見ないでもらえません? 矢を撃ち込みますよ?」

 

「藤丸さんがそうおっしゃるのなら……」

 

「ふーん。まあいいわ、愛だか何だか知らないけれど西欧財閥より悪いこともそうないでしょう。義理は果たしたから私はもう行くから」

 

 

 

 

 黙って話を聞いていた凛だが、そのまま立ち上がって立ち去ろうとする。

 自分は協力してくれたことに礼を言うと、とりあえず桜にSmを注ぎ込んでこの校舎を回復ポイントにするので是非利用してほしいことを伝えておく。

 

 

 

「――――呆れたわ。貴方ね、回復ポイントなんて独り占めしておけばけっこうなアドヴァンテージでしょう」

 

 

 

 そう言いながらも、凛の視線に軽蔑はない。

 面白いものを見たような、闘志を燃やしているような。

 

 

 

 

――――桜には、そして凛さんにも世話になっているので。

 あと利用者が増えてSmが充実すれば、あの“目”や他の脅威に対抗する拠点になるかもしれない。

 

 

 

「別に呼び捨てでいいわ。―――ま、前半はともかく後半はよく分かるし受けてあげる」

 

 

 

 言いながら、小切手として実体化させたSmを桜に投げ渡す。

 その額、なんと5000Sm――――いや、なんというか。さっきのを見た後だと……。

 

 

 

「――――仕方ないでしょう!? ほとんど全財産だったんだから! そのカーマの召喚代金をトイチで取り立てたいくらいよ!」

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで凛は月海原学園を出ていき。

 桜とカーマという色違いの姉妹みたいな二人と取り残された自分もなるべく早くSmを集めるべく出発したい旨を説明する。

 

 

 

 

「ええー、召喚してすぐお仕事ですかー?」

「藤丸さん、ここに5000Smがあります――――お注射しましょう?」

 

 

 

 いや、待ってほしい。

 それは凛が桜のためというか、校舎復活計画のために投資してくれたもので―――。

 

 

 

「――――大丈夫です、治療に関しては無利子・無担保で受け付けています」

 

 

 

 

―――――借金!?

 

 保険は効かないだろうか。

 まあ回復して稼いでこいということなのだが、この藤丸立香今までに借金を背負わされた状態で特異点を攻略したことはない――――。

 

 

 

 

「……仕方ないので、応援してあげますよ。ほら、がんばれー。がんばれー」

 

 

 

 

 くっ、受けるしか、ないのか――――。

 覚悟を決めた自分の前に向けられたのは、殺意すら感じるほどの巨大な注射器。

 

 せ、せめて利き腕はやめて――――――――。

 

 

 

 

「はい、えーいっ!」

 

 

 

 

 

――――なんでお尻!?

 

 

 

 見た目の割には痛くない、というか痛み以上に回復する感じがある。

 つまりは意外と平気なのだが、見た目が完全に兵器なので釈然としない。

 

 

 と、不意に眠気が―――――。

 

 

 

 

「――――睡眠導入ですか、エゲツないですね」

「健康管理の一環です。カーマさんの矢ほどじゃないでしょう?」

 

 

 

「へぇ、―――――なんて――――――すね」

「―――――も、――――――しょう?」

 

 

 

 

 二人の話す声が徐々に遠ざかる。

 抗えない眠気に、そのまま意識を手放した――――。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

―――――欠けた 夢を見た。

 

 

 

 和服を着た幼い少女が、BBと向き合っている。

 何か話をしているのか、苦しげな表情をしている少女に手を伸ばしてみるが届く気配はなく。

 

 

 

「私は―――――、ただ―――――――良かったのに」

「それは出来ません。貴女は―――――――――です」

 

 

 

 

 

 少女の目にあったのは、憎しみだけではない。

 追い求めて届かないものを見るように、あるいは――――を見るように。

 

 BBが少女を見る目は、哀れみのような、見守るような。いつもの小悪魔系を名乗るふざけた雰囲気もなく、ただ無機質な機械の神のように告げる。

 

 

 

「構いません、ただ役割を果たしなさい。ただ――――ために」

「―――――私は、こんな――――存在になんてなりたくなかった」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 ふいに、暖かなものが額に触れた。

 ゆっくりと目を開けると、少し困ったような顔をした桜が手を伸ばしていた。

 

 

 

「――――すみません、起こしてしまいましたか?」

 

 

 

 

――――――問題ない、けれど。自分はどのくらい寝ていたのだろうか?

 

 

 

 

「大体、体感で6時間位でしょうか。やっぱり疲れが溜まっていたのか、魘されていましたよ?」

 

 

 

 

 

―――――それは、助かった。

 

 

 あんまり内容は覚えていないのだが、見知らぬはずの誰かの悲しそうな顔が妙に印象に残っていた。

 けれど自分が、その子のことが気になるとすればその理由は――――。

 

 

 

 

「……すみません、ちゃんと治療ができるのが嬉しくて――――少し張り切りすぎてしまったかもしれません」

 

 

 

―――――実際こっちも助かっているから気にする必要はない。

 実際、いつも無茶しないように言われているけれど、カルデアの人たちと連絡が取れない今、きちんと専門家に診てもらえるのは正直助かる。うん、桜がいてくれて良かった。

 

 

 

「――――そう、ですか」

 

 

 

 

 桜は少し驚いたような、どこか遠くを見るような顔をした後に淡く微笑む。

 

 

 

「うれしいです――――そんなふうに言っていただけたのは、初めてです」

 

 

「で、どうして私が働いてる間に甘ったるい空気になってるんですかぁ?」

 

 

 

 

 霊体化を解除したカーマがジト目で睨んでくるが、完全に誤解である。

 甘ったるい空気だったらもっと自分は慌てている、と胸を張って応えるとカーマは呆れ顔で首を振った。

 

 

 

「処置なしですね。――――で、軽く調べてきましたよ」

 

 

 

 カーマのスキルには単独行動―――の上位互換である単独顕現がある。マスターから離れて行動するなど大した労力でもなかっただろう。とはいえ気配遮断が無いので敵に発見されなかったどうかは心配だが。

 

 

 

「そのあたりは軽く姿を変えればよゆーです。とはいえ面倒だったのでちゃんと労ってください」

 

 

 

――――うん、ありがとうカーマ。頼りにしてる。ところで情報は?

 

 

 

「このあたりはキングプロテアの出没地帯として遠巻きにされてるみたいですね。そうした中でもこのあたりに進出しているマスターは間桐シンジ、どうやらサーヴァントに賃金を払うために仕方なくみたいですけど」

 

 

 

―――――賃、金?

 

 

 なんということだ、自分が今までサーヴァントたちにマトモな報酬を支払えていないことをこんな時に気づくことになろうとは。

 

 

 

「まあ奴隷(サーヴァント)ですし。あ、私への報酬は愛でいいですよ、マスターさん」

 

 

 

――――きよひーかな?

 

 

 

「………あの、流石にバーサーカーと一緒にしないでほしいんですけど。分かってて言ってますよね。ご不満なら私に存分に奉仕させてもらえればいいですよ?」

 

 

 

―――――考えさせて下さい。

 

 

 

 受けると多分、普通にやばい。

 スルーすると微妙に不満げなカーマだが、特にそれ以上は何か言うでもなく。ただ気の抜けた表情のままこちらを見据えた。

 

 

 

 

「――――で、どうするんです? 合流を目指すのか、間桐シンジを倒すのか」

 

 

 

 

 

 

 

どちらを目指す?

  • 岸波さんとの合流優先
  • 間桐シンジを倒す
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