仮面ライダーヒーロー   作:NORI

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ハーメルンでの初作品です。
皆さま、どうぞよろしくお願いします。
※追記11月16日修正しました。他に不備などがあれば、ご報告お願いします。


ヒーローと仮面ライダー

 「ひどいよかっちゃん・・・!泣いてるだろ・・・!?これ以上は僕が許さゃなへぞ!!」

 

 泣いている少女を背に震える膝を立たせ、緑がかった癖毛とそばかすのある少年は、必死に目の前の同年代の少年たちを威嚇した。

 しかし、その奮闘空しく、少年はなすすべなく、相手達にやられた。

 同年代の少年らは、嘲笑いながら、様々な個性を使い、少年を痛めつけた。

 人は生まれながらに平等じゃない。

 これが無個性の少年、緑谷出久が齢四歳にして知った社会の現実。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 「なるほど~。いじめられっ子を守るために、その子らに立ち向かっていったと。幼い頃からヒーロー気質だったんですね~」

 「ヒーローという言葉は止めてくれるかな、好きじゃないんだ」

 

 記者のコメントを拒否する出久。

 あの出来事から十数年の時がたち、細かった腕はしなやかながらも、筋肉がつき、背ものびた。

 彼はすっかり大人になっていた。

 

 だが、一番大きく変わったのは彼の両眼だろう。優しく大きかった瞳は、今では鋭く暗い闇を宿している。

 そんな彼の瞳に留まるのは、フリージャーナリストの黒井咎彦だ。

 出久とは真逆に背は低く、黒い純真な瞳が特徴的な男だ。

 

 「ほえ?でもでも、出久さんは、ヒーローじゃないですか?」

 

 咎彦のその質問はけっして比喩ではない。

 世界総人口の約8割が、個性と呼ばれる超能力を持つようになった現在。

 その個性を犯罪につかう者を、ヴィラン。逆に人を救うために使う者を、ヒーローと呼ぶようになった。

 誰もが一度は夢見たコミックの世界、それが今の社会なのだ。

 

 しかし、当の出久は無個性だ。無個性ながらにして、ヒーローになった男だ。

 今だって、こうして初の無個性ヒーローということで記者が取材に来ているのだ。

 しかし、その男が自ら、ヒーローという言葉を否定した。

 

 「本当のヒーローなんて存在しないよ」

 

 吐き捨てるように口にする出久。

 咎彦はどういう意味だと質問する前に、出久のカバンから、けたたましい着信音のような音が鳴った。

 出久がカバンから取り出したのは、シルバーのベルトのようなもので、音はベルトから鳴っていた。

 出久がベルトに触れると。

 

 『緑谷さん!ショッカー発見です!至急現場に向かってください!!』

 

 女性の声がベルトから聞こえた。

 

 「え、なにそれ」と咎彦が驚いていると、出久は目の色を変え飛び出した。

 

 「ちょ、ちょっと待って!まだ聞きたいことが!」

 

 後ろから聞こえる咎彦の静止を振り切り、出久は階段を下り走っていた。

 地上の駐車場についた出久は、止めてあるブラックのオートバイに手を触れると、自動的にエンジンが起動した。

 出久はオートバイにまたがり、ヘルメットをかぶり、腰にベルトを装着した。

 相棒であるオートバイと共に、出久は事務所から出動した。

 

 オートバイを走らせながら、出久はベルトの上部のスイッチを押した。

 中央内部のフィンのようなものが回りだす。まるで、風の力を吸収しているかのように。

 そして、出久を中心に緑色の風が巻き起こった。

 突風の中から、現れた出久は戦士の姿になっていた。

 光沢のないブラックボディー、全身に刻まれたネオングリーンのライン、ヘルメットはバッタを彷彿とさせるデザイン、赤い複眼とマフラーは彼の中に宿る闘志を表しているかのようだ。

 

 シルバーのベルトが太陽光を反射した。

 変身した出久はオートバイのバーハンドルのスイッチを押した。

 すると、オートバイが戦闘機のような姿に変形した。

 戦闘機オートバイは天空へと飛翔した。

 

 飛行モードを使ったおかげで出久は現場に早く急行出来た。 

 オートバイを着陸させ、元の地上モードに変形させる。

 オートバイを路肩につけた後、現場へと近づいた。

 

 現場は出久が思っていたよりも静かだった。

 人通りの少ない路地。

 その奥にある開発中の建物。

 ショッカーはこの場所で目撃された。

 まだ、他のヒーローは到着していない。

 

 「発目さん、周辺の避難とショッカーの数は?」

 

 通信装置で、ある者と連絡をとる出久。

 

 『私のドッ可愛いベイビーのドローンであちこちを調べましたが、まず、建物内部に人はいませんね、流石にまだ、他の周辺の避難は完了していませんが。それと、ショッカーは一人と見て間違いないです』

 

 「そう・・・なら」

 

 このまま他のヒーローが来るまで待機しよう、と言おうとした次の瞬間。

 

 『ただ、どうも、子供が人質にとらわれているようでして』

 

 それを聞いた瞬間、待機の二文字が出久の頭から吹き飛んだ。

 

 『あ、でも、もうすぐ、そっちに別事務所のヒーローが駆けつけるって、さっき連絡が』

 

 通信を切り、出久は建物の中へと、走っていった。

 建物の中は不気味なほどに静まりかえっていた。

 開発中とはいえ、壁や天井はほぼ完成しているが、証明がないために薄暗い。

 暗闇の中で出久は、僅かばかり焦っていた。

 

 「あれを長く使っていれば、人質に危険が及ぶ・・・早急に片づけないと」

 

 出久は人質に及ぶ危険性を危惧していた。

 しかし、本来ヒーローの仕事は多数のメンバーで行う方が効率的だ。

 ヴィランの対応、周辺の人の避難、人質が捕らわれていれば、その者の救出。

 やることは山積み。一人でやるより、複数人で対処する方がずっと良いのだ。

 しかし、それらを無視してでも出久には、焦ってしまう理由があった。

 

 「あれは・・・人を暴走させる」

 

 出久が静かにそう呟くと。

 背後からの殺気。

 それに、一瞬早く気づいた出久は、振り向きながら前に跳躍した。

 着地し、現況を確認する。

 自分が立っていた位置に刺さる長い紫色の機械の触手。

 その触手を突き刺した人物は、出久から見て50メートル前方にいた。

 

 全身が紫色の機械のアーマーを装着しており、両腕が長く太い触手となっている、頭はタコのようなデザイン、腰には猛禽類をモチーフにしたかのような、銅色のベルト。

 

 それが『ショッカー』別名『怪人』。

 出久の追っているヴィランだ。

 そして、地面に突き刺していない方の腕に巻かれているのは、5歳程度の少年。

 少年は恐怖で顔が強張り、助けを求める声も出せないようだ。

 

 「お前、怪人だな?今すぐ人質を解放するんだ、出来なければこちらも実力行使する」

 

 出久は酷く冷淡な声で、怪人に告げた。

 しかし、その声に怪人は「グルルル・・・」と唸るだけで回答はなかった。

 

 《回答なし、対話は出来ない。獣のような唸り声、知能の低下を確認。人質を捉えているだけで危害を加えていないのは、僅かばかり、残った知性によるものか》

 

 出久はすぐ飛び出していきそうなのをぐっと堪えながら、敵の分析を開始していた。

 

 《・・・怪人が触手を引き抜いて、短くしている。延長可能か。とすると、遠距離戦術を持たない自分は不利だな。一気に間合いを詰めて先手を打つしかない。とにかく、人質の救出が優先される・・・。》

 

 出久は超スピードで勝利の法則を、頭の中で描いていた。

 答えを導き出した出久は、構をとる。

 両者に流れる一瞬の緊張。

 出久が横に飛び出した。その後もジグザクに飛び回り続ける。

 怪人は触手を蛇のように動かし、攻撃の機会を探っている。

 

 一瞬、出久のスピードが遅くなった。

 それを怪人は見逃さず、出久を触手で薙ぎ払おうとする。

 しかし、それは出久の罠。

 片足で怪人の触手を叩き落とし、触手の上に立ち、走り抜ける。

 怪人が驚いて触手の上を走る出久を払いのけようとするが、それよりも早く、出久の蹴りが怪人に届いた。

 

 出久が四歩走った所で、その場で前方に飛び、蹴りをかましたのだ。

 怪人が後ずさり、人質を盾に使おうとするが、自分が捉えていたはずの人質がそこにいない。

 前を向けば、出久が少年を腕に抱いていた。

 蹴りを入れた直後、緩んだ触手から、少年を救出したのだ。

 

 「・・・ありがとう」

 

 少年は涙を浮かべ、出久の胸に顔をうずめた。

 

 「もう大丈夫だよ、遅くなってごめんね。」

 

 出久はそう、優しく言いながら少年をゆっくり地面におろした。

 

 「僕の後ろにいて」

 

 少年は頷くと、出久の後ろにまわった。

 

 「キシャアア!」

 

 怪人が遭遇して初めて吠えた。

 怪人が触手を鞭のように振るい、地面を何度も叩いている。人質を奪い返されたことに酷く腹を立てているようだ。

 

 出久はあえて動かず、攻撃のタイミングを窺う。

 その瞬間。

 

 「キシャシャシャ!!」

 

 怪人の触手が爆発的なスピードで出久に迫る。

 だがしかし、出久は相手の攻撃を既に見切っていた。

 出久は落ち着いて、ベルトの左側のボタンを押す。

 緑色のエネルギーが両腕に充填されていく。

 出久はその状態で駆け出す。

 迫る触手。

 

 しかし、出久はそれらを両腕で切っていく。

 その姿はまるで、竜巻のようだ。

 切りながら怪人へと、近づいていく出久。

 そして、一歩手前というところまで、迫った。

 出久はすかさず、変身の際に使った、ベルト上部のスイッチを押す。

 

 「ライダーパンチ!」

 

 出久の右ストレートが怪人に炸裂した。

 倒れる怪人、それを確認した出久は完全に倒したと思い、振り返り少年の方へ向かおうとした。

 その時だった。

 

 触手が身体に巻き付いてきた。

 慌てて振り返ると、倒したはずの怪人が復活していた。

 切った腕も、もう再生している。

 

 「っ!まずいっ!」

 

 触手を外そうと、もがくが腕や足に絡まってくるのでロクに動けない。

 

 《くそっ!エネルギーも尽き欠けてきた!!》

 

 出久は諦めず、何とか勝利の糸口を見つけようと考えを巡らすが、触手の締め上げはどんどんきつくなっていく。

 遠くに見える絶望しそうな少年の顔。

 

 《嫌だ、何も守れないのはもう嫌なんだ。考えろ、考えろ、考えろ。この状況をどうにかする方法!》

 

 思考と肉体は何とかもがき続けようとするが、如何せん触手のせいで身体の自由が利かない。

 ベルトに触れることすら出来ない。

 つまりは先ほどの必殺技を放つことも出来ないのだ。

 

 《いよいよ限界か・・・》

 

 「もう、逃げろ」出久が少年に向かって、そう叫ぼうとした。

 

 DOOOOOON!!!

 

 もし、ここがコミックの世界だったら、そんな風に大きく書かれていたであろう爆発音。

 外側からの突然の大爆発。

 

 「何してんだぁ?それでもテメェヒーローかぁ!?」

 

 広がる黒煙から現れたる来訪者。

 その場にいる、誰もがその者に注目した。

 

 「爆心地!!」

 

 少年がその者の名を叫んだ。

 

 「ハッ!ガキを人質に使おうなんざ、余程殺されてぇようだなぁ?糞ヴィラン!!」

 

 手榴弾を模した籠手、腰に下げた手榴弾、後頭部には爆発のエフェクトのような飾り。

 ヴィランのような言動とは裏腹に、少年の前に守るように立つその姿。

 その者の名は、ナンバーワンヒーロー、爆心地。

 

 「かっちゃん・・・」

 

 思わず出久はそう呟いた。

 爆心地は、不敵な笑みを浮かべながら、怪人に躍りかかった。

 両手を後ろに突き出し、爆破させ勢いを推進力にして一気に加速した。爆心地の個性『爆破』によってなせる『爆速ターボ』という技だ。

 

 右手を振りかぶり、手から爆発が起き、怪人の顔面に炸裂した。

 出久も近くにいたのに、ダメージがないのは、本人のセンスによるものだろう。

 爆破の勢いで後退する怪人。

 

 さらにそれにより、触手から解放された出久。

 膝をつき、肩で息をする。

 見上げると、ただ敵を睨みつける爆心地がいた。

 

 「動けるか?だったらガキ連れて離れてろ」

 

 短く伝え、爆心地は敵の方へ向かっていった。

 

 《今の自分には・・・何も出来ない》

 

 悔しい思いを噛み潰しながら、出久は少年の方へと、向かっていった。

 その後は、実にシンプルな展開だった。

 出久は少年を外に連れ出し、その間に爆心地が怪人と戦闘を行う。

 

 その戦闘は、怪人が哀れに思うほどに一方的だった。

 爆破の閃光による目くらまし。

 更にそこに爆破の直接攻撃。

 怪人が触手を伸ばし、捕縛、攻撃しようとするものの、爆破で消し飛ばされるか、爆速ターボで躱される。

 

 怪人側の体力がいよいよ尽き欠けてきた、その一瞬の隙を狙って、爆速ターボを応用した飛び蹴りが炸裂した。

 蹴りは怪人のベルトを破壊した。

 ベルトを破壊された怪人は、一瞬の閃光の後、人の姿になっていた、いや、戻っていた。

 

 その人は力尽きたように地面に倒れ伏した。

 それを確認した爆心地は後の処理を、駆けつけた他のヒーローと警察に任せ、自身はベルトの残骸を拾い集め、出久の方へと、戻っていった。

 だが、その後ろ姿を黒いローブを着た2人組が見ていたことには、気がつかなかった。

 

 「これ、テメェに回収させろってウチの所長が言ってた」

 

 その声で出久は回想から現実に引き戻された。

 爆心地はレジ袋(ベルトの残骸をネジ一本残らず入れたもの)を出久に手渡した。

 ちなみに出久はまだ変身状態だ。

 

 「・・・・・どうも」

 

 出久はそれだけ言うとレジ袋を受け取った。

 

 「もうクソみてぇな事やんじゃねーぞ、テメェもヒーローなら」

 

 爆心地の言うことは正しかった。

 敵に突っ込んだ挙句、逆に捕らえられるとは、ヒーローとして減点だ。

 危うくあの少年まで危険にさらすところだった。

 爆心地はそれだけ言うと、踵を返しどこかに立ち去った。

 出久はその背中を見ていた。ただ静かに、静かに見つめていた。

 

 《僕は・・・僕は何やってんだ。結局かっちゃんに助けてもらうなんて。あの子にも謝りに行かないと》

 

 少年はすでに警察に保護を任せたし、後日、謝りにいこう。

 出久はそう考え、ゆっくりとその場を立ち去った。

 

 「あぁー!ここにいたんすか!?探しましたよ!」

 

 出久に声をかけてきた人物は咎彦だ。

 どうやら、事務所から追いかけてきたようだ。

 

 「もうー!急にどっか行っちゃうなんて!びっくりしましたよ!?出k」

 

 言葉が続かなかったのは出久が慌てて、咎彦の口をふさいだからだ。

 

 「僕の正体は秘密だって約束だよ?」

 「あぁ~。そうでしたね、ごめんなさい。『仮面ライダー』」

 

 仮面ライダー、それが緑谷出久のヒーローとしての名前。

 二人が人目につかない路地に移動した。

 仮面ライダーがベルトを外すと、出久本人の姿に戻った。

 

 「そういえば、あの爆心地と出久さんは、幼馴染だって情報があるんですけど、それって本当ですか?」

 「どこで、嗅ぎつけてきたの・・・まぁ、そうだよ」

 《そして、僕を虐めていた相手でもある》

 

 だが、その彼が、あの場では、誰よりも一番ヒーローだった。

 

 《だけど、自分は、まるで何も出来なかった》

 

 出久は穏やかじゃない胸中の中、咎彦と共に事務所へと、戻っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




作品を作るうえで、完璧なものは出来ません。
それでも、悪いところは直していかないといけない。
なんと、難しいことでしょう。
それでも一生懸命書いていきます。
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