ハードモードなリリなの転生モノ(旧代:リリなのテンプレ転生モノ)   作:振り米

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1話

 深く、深く目を瞑る。

 

 瞼の裏に鮮明に映るモノは、脳裏に焼き付いた自分の死の直前の映像。

 

 なんてことはない。

 何処にでもあり、誰にでも起こりうる、変哲のない事故死。いつものように、つまらない日常を歩いている時であった。

 何処からともなく聞こえてくる他人事のような悲鳴と、遅れてくる衝撃。

 信号無視をした車に跳ね飛ばされた。

 こうして俺は一瞬でお陀仏となった。

 

 ──はずなのに、現在、どうしてかこのようにして思考を続けられる程度に意識ははっきりしている。意識は失っていると言うのにだ。まったく訳がわからない。

 なんというか、まあ、不幸中の幸いというべきか、死へと移行する束の間に思考する時間だけをこのように得たのだ。

 果たしてここは天国や地獄なのか。どちらにせよ生前に聞いていたものとは全く程遠いな、とどうでもいいことを折角の死亡猶予時間に考える。とはいえ、それもそうだろう。天国も地獄も、死んだことのない生きている人間が勝手に生み出したものなのだから。

 ──そんな下らない思考をする中で、ようやく客観的に見て自分が死んだことを理解する。

 そうか、これが死というものなのか。つまり俺は死んだのか。

 

 後悔はしないつもりでいた。たとえいつ死んでもいいようにと考えているつもりではあった。しかし、いざ死ぬとなると、どうも冷静にはなれないものだ。

 そして、次に来るのは後悔や嘆きの嵐。

 どうして俺が死んだのか、どうして俺が死なねばならなかったのか、どうして、どうして。

 様々な“Why”が気泡のように出現と消滅を繰り返し、頭の中で反芻する。そうして無意味にも見える文字列が頭を必死に刺激する。しかし、ぼやけていく頭では段々とその意味も理解できなくなっていく。

 死というのはこういうものなのだろうか。

 薄れ行く意識の中、もう殆ど思考などできなくなってきた。しかし、最後に、一つだけ理解できた。

 俺という概念はもう根本的に消滅するのだろう。

 

 ああ、何でもいい。

 願うなら、次の人生は、こんな中途半端な死に方をしない程度に、幸せな人生を送りたい──

 

 

 

 ──さて、そう願ったからだろうか。

 あいにく神様など信じていないが、神様からのプレゼントなのだろうか。それとも仏陀が語ったことが真実であったのだろうか。はたまた前の人生はただの前座であったのか。

 答えは知らない。

 知らないが、一つ言える事はある。

 

 俺、大神一縒(いっさ)は新しい生をこの大地に授かったのだ。

 

 ○ ○ ○

 

 おぎゃあおぎゃあと泣いたことに対して、何が悲しくて泣いているのかと疑問に思ったこと以外、生まれた直後の記憶は無い。だが、ぼんやりとした意識の中で「自分が新しく生まれ変わった」と言う事実だけは漠然と理解できた。仏教信者では無いが、輪廻転生の輪にでも組み込まれたのかと思う。それ以外に考え当たる節がない。

 と、こんな考えを持っていたのも幼稚園に入学する直後までであった。

 生まれ変わった、と言う俺の予想は半分正解で半分外れだ。正解としては──

 

「どうした、一縒。緊張してるのか」

 

「うん、ちょっとだけ」

 

「それもそうか。何せ、今日から小学生だもんな」

 

「うんっ」

 

 この世界は、元々俺がいた世界とは別物なのだ。

 今日から俺が通う小学校の名前は聖祥大付属小学校。知る人ぞ知るこの学校の名前は、そう、某魔法少女アニメ、『魔法少女リリカルなのは』の舞台に他ならないのだ。

 つまり、なにが言いたいかと言うと──

 

「転生者……ねぇ」

 

「ん、何か言ったか?」

 

「ううん、なにも」

 

 あろうことかコテコテのテンプレートな何かに巻き込まれてしまったと言う訳だ。

 右隣にいるのは、俺にとっては二人目となる父親、大神淳一。外資系企業に勤めるバリバリのエリートサラリーマンだ。普段は忙しく、中々家にいる機会はないが、行事ごとや祝い事などは欠かさずに参加してくれるような、理想的な父親だ。

 

「カメラのバッテリーはへーきなの?」

 

 そう言いながら後ろでそわそわしているのはこれまた俺にとっては二人目の母親となる大神美代。こちらは元バリバリのキャリアウーマン。現在は専業主婦をやっている。曰く「優良物件のダンナ捕まえて、昔からの夢だったお嫁さんを全うしている」だそうだ。

 ここまで聞いて分かるであろうが、そこそこ栄えた町のそこそこ広い一軒家で、尚且つ子供に私立小学校を通わせられるくらいには裕福な家庭である。

 

「大丈夫大丈夫、予備のバッテリーも用意してあるしな」

 

 後ろを向いた父は笑顔でサムズアップを決める。

 

「さすがあなたね」

 

 それに合わせて母親もキメ顔でサムズアップ。

 見ての通り、今でもラブラブである。

 ……そもそも入学式にそこまでの準備は必要だろうか。

 まあ、親心というものはそういうものなのだろう。俺にはまだ分からない。生前(転生前)からの合算した数え年で言うと、俺の年齢は20代後半ではあるのだが、思考構造などはわりと肉体年齢に引っ張られている気がする。

 年代と言えば、こちらの世界は生前の世界よりも10年近く前であろう。何故なら、ガラケーが主流だからだ。

 下手に未来の話では無くてよかった。最悪ついていけない可能性もあるのだから。

 

「でも、一縒も本当に大きくなったわね」

 

「本当に、そうだな」

 

 わしゃわしゃと頭の上に手を置く父親。

 ──少しだけ、胸に罪悪感が走る。

 もちろん、悪い事をしたわけでは無いのだが、心の中で二人目の親と考えてしまっている自分がいる。もちろんそれは紛う事なき事実ではあるのだが、彼等にとって俺は唯一の子供であるということもまた紛う事なき事実であり、その二つの事実の距離感に負い目のようなものを感じているというわけだ。

 だが、その借りは真面目に生きる事で返すつもりだ。この二人が自慢できるような、立派な息子にだ。

 幸い、生前から割と努力家であり、元から県内トップの国立大学には入れる程度の頭は持っている。そして知識のアドバンテージもあるのだし、慢心さえしなければ、国内トップレベルの大学にも受かるだろう。本来であれば、それほど二週目の人生というものは有利であるのだから。

 

 とまあ、自慢話は置いておいてだ。

 最も肝心な部分は、転生されたこの世界、魔法少女リリカルなのはの世界でどう生きるか、と言う事なのだが。

 小学校に入学するまでの数年間も考える時間はあったのだ。答えは出ている。

 物語のストーリーに関わる、例えば魔法関連であったりなどは、原則的には接触をしないつもりだ。ひょんな行動から原作の流れがずれてしまったら、もともとハッピーエンドに向かう物語のはずなのに俺のせいでバッドエンドにでもなったら、たまったものではない。

 次に、原作キャラとの接触についてなのだが、これはしても良いと考えている。折角こちらの世界に来たのだから、魔法関連以外でなら、クラスの友人としてなら接触くらいはしても良いだろう。寧ろ、避けるような事をすれば逆に怪しまれたり、マイナスファクターに成りかねない。

 まとめると、原作の流れには不介入、それ以外なら接触OKという事だ。

 ──つまり、自然に、普通に生活をするという事。

 そもそも普通に生きていれば一生の間、魔法とは無縁でいられよう。魔法との接触など、この世界にいる限りでは天文学的な数字の話だ。

 そして、これを徹底すれば物語に異常をきたす事はないだろう。

 

「よし、それじゃあ行くか」

 

「うんっ」

 

 ドアを開ければ、光り輝く小学校生活の始まりであり、また、光り輝くこの物語の始まりである。

 

 ○ ○ ○

 

 それからは、なんの変哲のない日々を送った。果たして二度目の小学校生活が「変哲のない」と修飾していいものなのかは知らないが。

 主要人物、例えば高町なのはや月村すずかなどとは普通のクラスメイトとして十二分に交流は持っている。尤も、一緒に遊んだりする仲では無く、会話程度ならする、仲がいい部類に入る、その程度の関係だ。

 ただアリサだけに関しては先述の2人よりも、深い関係にある。理由としては簡単で、勉強などにおいて張り合いのある相手であり、一方的にライバル視をされているのだ。一方的にというのも当然で、こちらも対抗心をあらわにするだなんて大人気ない真似は流石にできないからだ。

 ──まあこちらから手を抜く気はまったくもって無いが。

 

 そして現在は小学3年生の春。

 俺の記憶が正しければ、おそらく今年が、『魔法少女リリカルなのは』の開始する年、であろう。

 

 前述の通り、俺は物語に関わるつもりはさらさら無い。

 故に、この一年間が勝負の年になるだろう。無印とA's。その2つがこの一年の間で起こることになる。

 そこから先の作品、例えばStrikerSに関していうと、残念ながら未視聴であり、未知の領域である。だが、多少の知識は持っており、物語の舞台がミッドチルダに移ることと、彼女たちが大人になっているという事くらいは知っている。

 

 しかし、大事なのは、俺がStrikerSを知っているかどうかでは無い。

 StrikerSが舞台を地球から移すということだけを知っていたかどうかだ。

 

 つまり、俺が達成すべき目標は、無印とA'sにおける接触を絶対に避けることとなる。

 

 やってやる。二度目の人生だ。しかも他人よりも幾分も有利な条件を持っている。絶対にこの人生こそは後悔せずに生き抜いてみせる。

 

 などと、ぼけっとしながら歩いていたからだろう。学校の廊下の曲がり角で誰かとぶつかったのは。

 女の子の小さな悲鳴と、同時にちょっとした衝撃を感じる。倒れそうにはなったのだが、なんとかその両足に踏ん張りをきかせて耐えてみせる。曲がり角ということもあるのだが、ぶつかってしまったのはぼけっとして前方不注意であった俺に責任がある。

 

「ごめん、大丈夫?」

 

 そう声をかけながら件の少女に右手を差し出す。

 

「うん、大丈夫。ごめんね大神くん」

 

 ──その声を聞くと無意識に体を強張らせてしまう。

 別に因縁があるわけでも、好きな訳でも、ましてや嫌っているでもない。

 

 彼女が、彼女こそがこの物語の本当の主人公であるから。

 

 差し出した右手を握り返されたのを、小学生特有の柔らかい手と、優しい温もりを感じ取る。

 

「よっ、と」

 

 高町が立ち上がるのに合わせるようにつながれた右手を軽く引き上げる。

 

「ありがとう」

 

 起き上がり、スカートを軽くはたいて埃を落とすと、こちらに向き直し屈託のない笑顔を向ける。

 

「いや、ぶつかったのは俺の責任だったから感謝されても困るって」

 

「えへへ、でも、私もちょっと不注意だったからおあいこって事で」

 

 俺の言葉を聞くと表情を崩して優しい笑顔をこぼす。人柄の良さというものがひしひしと伝わってくる。

 事実、『魔法少女リリカルなのは』を見ていても、彼女がどれだけ心が広いか、どれだけ優しいか、どれだけ強いのか、そんなことがはっきりとわかる。それ故に彼女は多くの人を救う事ができるのだろう、これから先に待ち受ける様々な物語の中で。

 

 ──とは言え、こうして見ていると、何処にでもいそうな唯の優しい少女なのだ。

 

「……そ、それじゃあ」

 

「ふぇ?」

 

 俺はそういうとそそくさとその場を立ち去る。

 何時も高町なのはの前ではこうなってしまうのだ。俺のこの人生のモットーとしては、普通に接するくらいの加減を目指すべきなのだが、どうも彼女を前にするとやり切れない気持ちになる。

 これから先、彼女は魔法の力に触れて、多くを救い、まさに英雄になるだろう。

 しかし、もし、彼女が普通の女の子として過ごす“lf”があったとしたならば、魔法に触れない彼女がいるのならば、魔法なんて物は不純物でしかない。

 それだと言うのに、俺はそれを知っているのに、もしかしたらより良い未来を選べるかもしれないのに、それでも俺は自己保身に走る。我が身の大事さに怯えて隠れる。エゴの塊だ。

 

『困っている人がいて、助けられる力が自分にあるなら、その時は迷っちゃいけない』

 

 いつだったであろうか、いや、この世界ではこれから起きることであるのだが。

 彼女──高町なのはのセリフ。

 俺の「知識」も立派な力であろう。それなのに、俺はその力を誰かのために振るおうとはしない。出来ない。ビビってる。そして結局は自己中心的なのだ。

 一つ、訂正。彼女のことを「何処にでもいそう」だの、「唯の」などと修飾したが、あれは嘘だ。

 たとえ魔法がなくても、彼女の心は何よりも強く、何よりも真っ直ぐだ。

 

 ──ともあれ、眩しすぎる彼女を直視する事が俺には出来ないのだ。

 

 ○ ○ ○

 

 授業のチャイムが鳴り響くと同時に、こちらに向かって駆けてくる影が1つ。

 

「今日の小テスト、どうだった!?」

 

 ドンと手を机につき、闘志をこちらにむき出しにしている目の前の人物。

 ──そう、アリサ・バニングス。

 ニヤリ、と一笑した後に、俺は自身の丸で埋め尽くされた解答用紙を机の上に叩きつける。

 

「もちろん、満点だよ」

 

 序で、アリサも自身の丸で埋め尽くされた解答用紙を机に叩きつける。

 

「そう。なら今回も引き分けね」

 

 もちろん、アリサの解答用紙には100の文字が。

 お互い100点というわけだ。

 

「これで今シーズンは俺の1勝12引き分けってとこか」

 

「くっ……!」

 

 非常に悔しそうな表情を見せているアリサ。

 ──しかし、悔しがってはいるものの、満点を逃したのは彼女が一回だけということであり、尚且つこの学校の出してくる問題レベルからいえば毎回満点を取っている段階でかなり凄いのだ。

 前世の俺であったら、おそらく、いや、確実に彼女に負けていただろう。

 ……べ、別に張り合ってるわけじゃないんだからね! 

 

 俺はそのテストを自分の机の中にしまおうとする。すると、目の前の少女が何かを言いたそうにしていることに気がつく。

 

「あ、あのさ」

 

 先ほどまでくだらないやり取りをしていたはずのアリサの語調が急に変わる。時たま見せる真面目な時のそれだ。その声に釣られるように彼女の顔を覗くと、真っ直ぐにこちらに向かっている双眸から彼女の真剣さがひしひしと伝わってくる。

 少なくとも三年生のする表情ではないな。

 

「一縒は……なのはのこと嫌いなの?」

 

 ……おいおい急に何事だ。

 いきなりなぜそんな事を聞かれているのだ。

 だが、焦ってはダメだ。あまりに唐突に問いかけられた問いではあるが、努めて冷静に、とりわけ余裕を持って相手をする。

 

「どうして? 別にそんなこと無いと思うけど」

 

 ニコリ、と。得意な作り笑顔を1つ浮かべてみせる。そうして彼女の表情を冷静に観察する。

 

「だってあんたなのはのこと避けてるじゃない」

 

 ……図星である。

 なんとまあ鋭い小学生なのであろう。正直、内心ではかなり驚いている。表に出す気はさらさらないが。

 理由としては先ほど述べた事、彼女が眩しすぎると言うのもあるのだが、それとは別に、ちゃんとした論理的理由もあるのだ。

 それは、実際に俺は高町なのはとの接触を意図的に避けるようにしていると言う事だ。なぜなら、彼女はこの物語の、まさに主役であり、なんとしても干渉を避けなければならない人物だからである。

 しかし、あからさまに彼女を避けているつもりは無かった。そんなことをしてみては、寧ろ本人や周りの人たちに意識されてしまい、接触の可能性のタネを増やしてしまうだけだからだ。

 付かず離れず、だけれどちょっと離れ気味。そんな距離感を意識し、実行してきたはずだ。

 それなのに彼女、アリサ・バニングスは気がついていた。

 俺の行動は、小学生相手だからといって決して手を抜いたわけでもない。二十余年の人生で培ってきたそこそこ自信のある対人スキルを行使してこの有様だ。見事に看破された。

 やはりこの、アリサ・バニングスも並の人間では無い。

 

「まさか、好きになる理由はあっても、嫌いになる理由なんてないだろ」

 

 相手にこちらの気持ちを微塵にも感じ取らせないために、わざと戯けて見せる。そんなこちらの様子を余所に、彼女の内心からは安堵と喜びを感じ取ることができる。

 

「本当に?」

 

「本当に」

 

 それを聞いた彼女は、やっと嬉しそうな笑みをこぼす。

 気持ちは分かる。

 誰だって自身の友人同士の仲が悪かったら嫌であろう。だから、恐らく彼女は、俺と高町に仲良くしてほしかったのだ。要はそういうことだ。

 良い子だ。良い子すぎる。どうしたらこうも出来た子供になるのだろうか。自分の三年生の頃など遊びとゲームとくだらない下ネタしか頭になかったというのに。

 

「そう! それなら今度4人で遊ばない? すずかとなのはとさ。あんたなら絶対仲良くなれるって」

 

 ここですぐにYESと言えれば楽なのだろう。しかしこちらは考えてから行動をする必要がある。まず前提条件として、高町なのはと仲を深めすぎてはならないという事だ。理由としてはもちろん原作介入を防ぐために。その考えでいくのなら彼女の問いに対して、答えはNOであろう。

 しかし、もし、NOと答えた場合。

 それは明らかに怪しいではないか。先ほど仲が悪くないと言ったばかりだというのに、一瞬にして手のひらを返すようにその評価を覆すのには流石に無理がある。

 さらに楽観的な考えでいくと、たかが俺程度の存在が彼女と一度か二度遊んだだけで、物語に大した影響は与えないかもしれない。

 故に、もう答えは決まっていた。

 

「もちろん。というか、お前は一体俺をなんだと思ってたんだよ。そんなに社交的に見えないか?」

 

「別にそういう訳じゃないわよ。ただ、なのはの時だけ少し態度が違う気がしただけ!」

 

 アリサの表情が何時ものそれに戻る。

 どうやらこの件はこれで一件落着らしい。

 

「次の授業始まりそうだし、そろそろ席に戻れば?」

 

「そうね、それじゃあ約束、絶対に忘れないでよね」

 

 そう言った彼女は自分の席に戻っていく。

 チラリと、件の人物である高町なのはを横目で見る。近くの席の友人と楽しそうに談笑している。

 ──それにしても、本当に、こんな少女が戦いに身を投じるのか。

 少し聡明な、だけれど運動音痴な何処にでもいる普通の少女にしか見えない。そんな彼女が、誰にも砕けぬ不屈の闘志と、魔導師としての希代の才能を持ち合わせているなどとは誰が信じられようか。

 

 しかし、物語が始まる直前のこの時期に。

 今まで近づくことも遠ざかることもなかった、俺と高町なのはの距離が動き出すような事が起こるとは。

 偶然にしてはあまりにも出来すぎているのではないか? 

 

 俺がこの世界に転生した理由。

 あるのだとしたら、多少は気になる。

 そして──俺がこの世界に与える影響。

 もし、そんな事があるとしたら、俺は一体──

 

 いや、考えすぎだろう。

 そんなものあまりに出来すぎている。

 

 暇だからと言って最近読んだSF小説に、少しだけ頭が引っ張られているだけだろう。

 そう結論づけて、俺はこの退屈な授業に耳を傾けた。

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