ハードモードなリリなの転生モノ(旧代:リリなのテンプレ転生モノ)   作:振り米

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書き溜めというか、昔書いていた分が全て終わった……
ここからは昔考えた構成の記憶を頼りに書き進めますのでペースが落ちるかもしれませんが、ごゆるりとお付き合いください。


14話

 この前の戦いから数日。1週間が経っていない程度の日にちが過ぎた。朧げな原作の記憶を、手繰るようにして引き出すのだが、正直な話を言えば詳しい日時など覚えていない。そもそも、アニメ内では明確に日にちなどは説明されていないのだ。故に、前後に起きたイベントを頼りに、起こる事態と起こる日時を類推していくしかない。

 だとするのなら、これは、分かりやすくてありがたい。

 

「へー、明後日すずかの家でお茶会あるのか」

 

 始めた日から、一度も欠いた事のない魔法の朝練を終えた俺たちは、帰路に着く。学校はもちろんこの後にある。大変だと思わなくもないが、この程度で根を上げているようでは到底ダメだろう。

 

「うん、そうなの」

 

 なのは達が、月村家でお茶会をする日。その日は、魔法少女リリカルなのは一期における、ひとつの転換ポイントでもある。

 多くの重要なポイントが存在するとはいえ、今回に関しては頭一つ抜きん出ていると言えるだろう。物語構成で言うなら、魔法との出会いが「起」ならば、起承転結の「承」の部分に当たる。それは、彼女にとってライバルであり、最高の親友でもあるフェイト・テスタロッサとの出会いのシーンだ。

 

「そこで──」

 

「俺もどうかっていうお誘いだな」

 

「えへへ、そういう事」

 

 正直に言えば、こうやって誘ってもらえるのは非常に嬉しいし、彼女達との信頼関係が築けていると思うと悪い気はしない。実際に最近は、彼女との距離感が一層縮まったように感じるのだ。ちょっとした表情が柔らかくなっていたり、冗談も気にせずに言ってくれるようになったし、物理的にも距離感は近くなった。

 今になってもなお、原作通りにことが運んでいれば彼女とここまで仲良くなる事は無かったのにな、と自嘲気味に思う。そして、それは事実だと思う。だが、だからこそ俺は、自分の責任を見つめ直して、自分がするべき行動を考えなければならない。

 

「うーん、ごめん。俺はやめとくよ」

 

「ええー、どうして? 一縒くん、何か用事でもあるの?」

 

 こてん、と可愛らしく小首を傾げる。その動きについていくように、彼女のツインテールもぴょこりと跳ねた。

 俺が行かない理由は簡単だ。

 その日は、なのはとフェイトが相対しなければならないのだ。現状では、フェイト・テスタロッサも強くなっている可能性は高いだろう。今までの敵もそうであったし、強さに関して上振れに警戒する分は問題もない。

 しかし、今回に関しては、なのはは負けていいのだ。原作において、このシーンは負けイベントなのだ。

 今のなのはは、おそらく原作よりも強くなっている。というのも、純粋に、今まで戦ってきた敵が原作より強くなっているからだ。大半は俺と共闘したとはいえ、俺が学校で戦闘をしている間に、彼女もプールにてジュエルシードを封印していた。原作よりも敵が強くなっているはずの敵を、怪我もなく封印していたのだ。まず間違えなく彼女は成長したと言っていい。

 故に、フェイトが強くなっていることに関しては問題がない。

 なのはが多少強くなっている分、バランスが取れることになるから。

 

 そして、それらが俺の立ち振る舞いにも関係する。

 俺は、なのはとフェイトの戦闘を邪魔してはいけない。具体的にどうすればいいのかと言うと、保険としてなのはのサポートにギリギリ回れるくらいの距離感から見守るしか無いのだ。本当にヤバイ時だけ手助けに入る。そうする事によって、少しでも原作と似たような流れへと誘導できる筈だ。

 しかし、それをなのはに説明する訳にもいかないので、今は、それと無い理由をつけて適当にごまかそう。

 

「用事とかは無いんだけど、もしその時間にでもジュエルシードが発動して、俺たち2人がすずかの家に居たとするとなかなか現場に向かえないからさ。前回から数日経ってるし、いつジュエルシードが発動してもおかしく無いと思うし」

 

「う〜〜〜ん、たしかに。でも、一縒くんだけ遊べないのは、ちょっと寂しいし、申し訳ないと言うか……」

 

 本当に、高町なのはは心の優しい少女だ。分け隔てない、真っ直ぐな優しさは、眩しすぎて胸に刺さるほどだ。

 

「いや、大丈夫だよ。俺だって誰かと遊ぶ時くらいあるからさ、その時には、今回と同じようになのはがメインで対処してくれるように頼むかもしれないだろ?」

 

 口ではそう言っているが、そんな機会は無いだろう。俺は、無意味に楽しむ暇があったら、修行をするか対策を講じるかでもしなければならない。今は、幸せな時間を享受する暇も余裕も理由も無いのだ。

 

「……わかった。一縒くんも、遠慮なく私のこと頼ってね! 絶対だよ!」

 

「ああ、もちろん」

 

 ──もちろん、頼らなければいけないし、頼るわけにはいかない。

 彼女は、この物語の主人公であるのだから、彼女自身の活躍に関しては、間違えなく彼女のことに頼りっぱなしになるだろう。

 

 だから、彼女が安全に確実にその道を辿れるように。俺は、その道を作って、邪魔なものを退かすために、彼女のことを頼るわけにはいかないのだ。不必要な負担は、彼女が背負って良いものでは無い。背負わなければいけないのは、この俺自身だ。

 故に、俺が彼女を頼るような真似だけは決してしちゃダメなんだ。

 

 ○ ○ ○

 

 ──などと格好つけてみたのだが。

 

 残念ながら俺は、一回も月村家なんて行ったことなかった。そして今日は、なのはが月村家でお茶会をし、フェイトと出会うはずの日の前日。

 何が言いたいかと言えば、俺は月村家の位置の確認を兼ねて、現場の下見をしにきたのだ。

 

「それにしても」

 

 なんと大きな家だ。

 アリサ宅には行ったことがあるのだが、相変わらず彼女たちのスケールは一回りも二回りも違う。自分の家だってちょっとした庭付きの一軒家であり、世間的に見ても決して小さいとは言えないと思うが、これを見てしまうとダメだ。

 そして家が大きいだけならまだしも、すごいのはその敷地面積だろう。森だか山だか林だかよくわからないところまでもが、この家の敷地であるのだ。この中で戦闘が起きていたとなると、場所を見つけるのも駆けつけるのもそう簡単じゃないな。

 

「フェイトとの戦闘は、あっちの木が生えてる方だったよな」

 

 俺はその屋敷に圧倒されながらも、彼女の家をぐるりと大回りして後方にある林の近くまで歩いてゆく。明らかにそこまでの道のりは長く、目的地まで1,2分は歩かされた。自分の家の敷地内で1,2分も歩くことなんて、想像もできない。端から端まで歩けばほんの十数秒とかからないだろう。

 

「このへん、かな」

 

 俺は木々の生い茂る場所へと目を向ける。しかし残念なことに、どこで戦闘が起きたのか正確には知らない。目印もなければ、朧げな記憶を頼りにそれっぽい場所に目星をつけるだけなのだから。

 まあ、何にせよ。木々が生い茂る中、少しだけ開けているこの辺りで戦闘が起きたことはまず間違えなさそうだ。

 

 作戦としてはこうだ。

 なのはがアニメ通りにジュエルシードの発動を感じて、アニメ通りにフェイトとの戦闘をする。原作より強くなっているであろうフェイトとなのはの戦闘が始まったら、俺は有事の際を除いて見守る事に徹していればいい。フェイト自身が強くなっていようが、なのはに大怪我をさせるようなことは彼女の性格からあり得ないだろう。気を失わせるくらいならするかも知れないが、優しい子なんだ。おそらく大丈夫であろう。それよりも、これは負けイベであり、2人が出会う大事なイベントだ。可能な限り俺の参加は避けたい。

 それに、なのはも原作よりは少し強くなっているのだ。このペースならば、きっと問題は無いだろう、ら

 

 そうして俺は近くの木にもたれかかりながら、明日のことを想定する。

 大丈夫。今回は上手くいくだろう。そもそも、俺が変に格好つけて介入さえしなければイレギュラーが起こり辛い内容なのだ。あくまでも原作の流れに沿ってサポートできればそれで良い。

 

 さて、そろそろ帰るか。

 

 そう思い、俺は木から背を離した時だ。

 

「──魔力反応」

 

 しかも、近く。

 

「くそっ、なんで今日なんだよ!」

 

 そして、それは知っている魔力反応だった。

 そう、ジュエルシード。

 

 想定と外れる事が、今まさに起きようとは。正直なところ、この事態は予想だにしていなかった。今まで敵が原作より強くなっいるというイレギュラーは存在したが、それ以外のイレギュラーは無かったはず。

 

 ──いや、イレギュラーなら、あった。

 

 1週間ほど前の戦闘。

 なのはがプールで戦闘を行った時、俺がたまたま居た学校でもジュエルシードが発動していた。これは、明らかにイレギュラーの事態だ。

 

 つまり、この世界に起きてる不測の事態は「敵が強くなっている」という点と「ジュエルシードの発動がバラバラになっている」という点なのか。

 

 本当に、そうなのか? 

 

 違和感だ。強い違和感を覚える。

 

 何かが違う。

 そもそも、その2つは別で考えていいものなのか。もし、その二つに関連性があるとすれば。その可能性を捨て切って良いのだろうか。この世界におけるイレギュラーとして、全てを曲げてしまった元凶は、本当に俺の存在だけなのか。俺の存在で世界のバランスが崩れて敵が強くなっている、それなら話は早いし理解できる。

 だが、ジュエルシードの発動タイミングがズレるのは、それに関係するのだろうか。そもそも、本当にたかが俺程度の存在で、この世界のバランスは崩れ得るのであろうか。

 

 だとしたら、一つの推測ができる。

 しかし、今それを証明するのには、あと一つピースが足りない。

 

 それに、今はそれどころではない。発動したジュエルシードを封印する事、それこそが優先すべき事態だ。

 俺は無駄に働く頭を一旦止めて、気合を入れるために顔を2、3回両手で挟むようにして叩いた。

 

「シナツヒコ、行くぞ」

 

「おうよ」

 

 俺はすぐにシナツヒコを起動し、バリアジャケットを生成する。そのまま魔力源へと足を動かす。何にせよとりあえずは、連絡をしなければ。

 

『なのは、ユーノ、ジュエルシードが俺の近くで発動した』

 

『──今、感じたよ! どこら辺なの?』

 

 なのははすぐに念話に出た。

 

『すずかの家の近くだ、とりあえずは様子を見る』

 

『分かった、出来るだけ早く行くね!』

 

 本当に困ったイレギュラーだ。ジュエルシードが起動して、それを封印するだけなら問題は無いのだが、今回に関しては、魔法少女リリカルなのはの一期における重要人物「フェイト・テスタロッサ」の初登場シーンに影響を与えてしまっている。この場面を後に修正していくのは、不可能では無いかもしれないが作戦を練り直さなければならない。

 

「にゃお〜〜ん」

 

「……ああ、くそ。こっちはこんなに悩んで、考えてるっていうのに。お前は呑気そうで可愛いな」

 

 ジュエルシードを発動させていたのは、アニメと同じ子猫だった。「大きくなりたい」という純粋な願いを、ある意味その通りに叶えてしまった結果だ。ここに関してはアニメ通りだ。

 

「猫派だから、なるべく痛くならないようにするさ」

 

 俺はシナツヒコを構える。

 流石にイレギュラーな事態とはいえ、このまま放って置いたら巨大猫として世間を騒がすだけでなく、ジュエルシードの暴走で何が起こるかわからない。

 ……ちょっとだけもふもふしてからでいいかな。

 

 ……いや、フェイトも来る気配がないしささっと封印して終わらせよう。

 そうして、封印術式を込めた一撃を放とうとした丁度その時だ。

 

「フォトンランサー」

 

「──っ!?」

 

 黄色い稲妻の魔弾が奔る。

 俺の後ろ、少し上空あたりから、声と魔法が。

 黄色い魔力光の魔法は巨大猫に直撃する。

 

 ──おいおい、マジかよ。本当に最悪なタイミングで現れやがった。

 

「──あなたは、魔導師ですね」

 

 先程と同じ位置から、澄んだ声が聞こえてきた。

 当然彼女にバレてるし、俺はすでにバリアジャケットを展開していた。ここから言い逃れは出来ないだろう。

 まずい。非常にまずい。

 この展開だと、俺は高町なのはとフェイト・テスタロッサの出会いのシーンを書き換えてしまうことになる。

 俺は振り返り、上を見上げる。

 

「ああ、そう言う君こそ──」

 

 凛々しい表情と、哀しそうな瞳。

 黒を基調としたバリアジャケットと、稲妻のような黄色の魔力。

 

 フェイト・テスタロッサは、木の上からこちらを見下ろしていた。

 

「ロストロギア、ジュエルシード。申し訳ないけど頂いていきます」

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