ハードモードなリリなの転生モノ(旧代:リリなのテンプレ転生モノ)   作:振り米

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おひさしぶり!
もし仮に投稿を待ってた人でもいたらごめんね!!


15話

「ロストロギア、ジュエルシード。申し訳ないけど頂いていきます」

 

「──っ!」

 

 その迫力に、咄嗟に身構えた。

 

 なんとこれは俺にとって、実戦においては初めての対人戦なのだ。対人戦用の訓練も積んできたが、流石に未経験の領域へと初めて踏み入れることになる。しかもその相手が、フェイトときた。そう簡単には上手くいかないだろう。

 

 だが、そんな経験が浅い俺でも間違いなく一つだけ言えることがあるある。

 彼女は強い。

 正直ビビってしまっている。なんと言えばいいのだろうか、勝てるビジョンが浮かばないとでも言えばいいのか。自分が彼女に勝つ姿を想像できないのだ。そんなことを考えしまうだなんて、戦う前から負けているも同然だ。

 

「バルディッシュ」

 

 彼女は自身の愛機に声をかける。すると、それに反応したデバイスは死神の鎌のような形へと変形する。

 

「アークセイバー」

 

 デバイスを上段に構えると、その場で技名と共に電光の刃を強く薙ぐ。その刃が空を切ると雷の魔力弾がこちらに向かって放たれた。

 魔力弾は俺の命を狩るようにして空を駆ける。

 

「平和的な解決はする気はないのな!」

 

 ビビる自分に喝を入れる。

 弱気な相手ほど簡単な物はない。自信なさげにバッターボックスに立つ打者ほど、投手にとっては楽に感じるのと同じだ。ここで弱気を彼女に見せて仕舞えば少しはあるかもしれない勝機を逃してしまうことになるから。

 

 カウンターにと刀を振り抜き、ここ最近はお世話になっている自身唯一の遠距離技を放つ。

 

「鎌鼬!」

 

 新緑の魔力刃は風切音を上げながら彼女の黄色い閃光に向かう。

 ぶつかり合い、小さな爆発が起きて、俺は八相の構えを取る。彼女の魅力はなんと言ってもその素早さにあるのだ。今の攻撃はあくまでも牽制に違いない。

 爆発の煙の中でも、決して彼女から目は離さない。少しでも多くの情報を読み取って、次の動き、次の一手を防がなければならない。

 暫時、煙に視界を奪われる。

 

「坊主、目だけで敵を追うな。五感を、お前の肌で感じる感覚を信じろ」

 

「……ああ」

 

 俺は自身の肌で周りの風を感じ取り──違和感の方向に目を向ける。煙の不自然な揺らぎを視界の端に捉えた。俺は武器とっさに構えると、予想の通りにそこから彼女が高速で接近してくる。

 勢いのままに戦斧を彼女は振り下ろすが、すかさず刀身で受け止めた。実戦の慣れというものを少しずつだが実感した。

 

「君は、誰なんだ」

 

 もちろん正体は知っている。フェイト・テスタロッサ。リリカルなのはに出てくる2人目の魔法少女であり、この物語の重要人物だ。

 だが彼女からしてみれば、こちらとは初接触であるため形式的に聞いておく必要がある。

 

「答える理由はありません」

 

「ごもっともで」

 

 刀と戦斧で競り合いながら軽口を叩く。このままでは埒があかないので、今一度魔力と力を瞬間的に刀に込める。彼女もそれに対応するように力を込めると、お互いに押し飛ばされる形となる。再び距離ができてから、体勢を立て直し間合いをはかる。お互いが近接戦闘を得意とするタイプであるが、武器の特性や速さの面から彼女の方が総合的なリーチが広い。戦斧と刀では攻撃範囲は前者に軍配が上がる。遠距離攻撃に関しても、俺にはミドルレンジ程度にしかならない鎌鼬のみだが、彼女はアークセイバーの他にもいくつかの遠距離技を持っているに違いない。

 俺が有利に立ち回るにはかなり距離を詰めた接近戦に持ち込むしかない。

 だが、当然彼女もそれを理解していた。

 高速で移動をしながら魔力弾を飛ばしつつヒットアンドアウェイの要領で攻撃を仕掛けてくる。

 

 アークセイバーを切り弾くとその隙に高速で接近され、彼女に有利な間合いから凪いでくる。避けながら接近を試みるも、速度では相手に軍配が上がるためこちらの間合いにすることができない。

 防戦一方の状況に陥り、このままでは防御や回避を一度でもミスしたら圧倒的に不利な状況になるだろう。実力の差というものを感じさせられる。

 

 だが、ここで一つ気がついたこともある。

 ──彼女は、強すぎない。

 

 当然のことだが、俺よりフェイト・テスタロッサの方が実力的にも上であるし現時点でのなのはよりも確実に上だ。だが、ジュエルシードの魔力による今までの敵たちは原作から大幅な強化がなされたのに対して、彼女に関しては想像通りの強さなのだ。

 それは彼女がのちに仲間になるから? 

 

 いや。そもそも、なぜ俺はこの世界をハードモードと判断しているのか。

 簡単に問題を解決したいがために、何か問題を見落としていないか。

 一つの仮説が頭の中に浮かぶが、やはり現状では手がかりが足りない。

 

「ってあぶな!」

 

 余計なことを考えながら戦っていると彼女の攻撃が顔の真横を掠めた。そんなに余裕を持って戦える相手では当然ないというのに。

 

 とりあえず、現状俺にできることはこれでいい。状況をなんとか膠着させることが第一だ。このまま俺がすぐに負けても、あり得ないとしても彼女を倒してしまっても、どちらも原作に大きな影響を与えかねない。彼女はなのはと出会わなければいけないのだ。

 

 だからこそ、俺はなのはが合流して彼女と刃を交える状況を演出するまでは、勝つわけにも負けるわけにも行くない。

 

 しかし、膠着状態をずっと保つのも簡単ではない。当然俺の魔力や体力は摩耗させられるのであり、痺れを切らした彼女も別の攻撃に移る。

 

「フォトンランサー!」

 

 デバイスを斧のような形状にすると、今度は直射型の射撃魔法を連射する。先ほどよりも手数が増えたその魔力弾をいちいち弾くのは一方的に消耗してしまうだけだと悟った俺は左右に動き攻撃を躱す。

 

「だったら……連射!」

 

 難なく避けるこちらの様子に業を煮やし、フォトンランサーの一斉射撃をさらに強める。

 

「──加速魔法、疾風!」

 

 俺は足りない機動力を補うために、魔力を風に変換させて自身の高速移動のブーストにする。それこそがこの技、疾風。完璧とは言わないものの上空での移動や高速移動に使える汎用性の高い技だ。

 魔力弾の隙間を縫うように動き、次の攻撃はと彼女に目をやる、が。

 

「いないっ……!?」

 

 上空に彼女の姿は既になかった。

 

「目だけで追うなっつたろ、坊主」

 

 シナツヒコの声。

 戦闘中なのに余計なことを──

 

 空気の流れだ。自身の背後の空気の流れが先ほどとは違う。

 

「……遅い」

 

「それはどうかなぁぁ!!」

 

 背後をとり攻撃体制に入っているであろう彼女に向けて、俺は刃を振り抜く。状況の維持、戦況の拮抗を貫くことが目的とは言え倒す気持ちで挑まないと確実に負けてしまう。

 

 刀の進行方向と逆の方向に風を噴出。その反作用の力を用いて彼女が武器を振り抜くより先にこちらの攻撃通す。

 

 ふっ、と。雑音もなく振り抜かれた刀の先には、しかし彼女はいなかった。

 

「それは、どうですか」

 

 背後から声。

 

 背後を取られそちらにギリギリ対応し振り向いた俺の、さらに背後を取られた。

 

「くっ」

 

「ごめんなさい……サイズスラッシュ!」

 

 俺は防御の構えをなんとか取ろうとするも、間に合わないなと頭の片隅に浮かぶ。

 

 魔力の斧が思い切り叩き込まれた。

 

 防御は薄くノーガードだった俺は思い切り吹き飛ばされて──そこで意識が途切れた。

 

 ・

 

「────ー」

 

 魔力を感じユーノと急いで現場に向かった高町なのは。もう1人の魔法少女と、吹き飛ばされる友人の姿が視界に入った。

 

「一縒くん!!」

 

 急がなければと吹き飛ばされた彼の元に駆け出す。しかし、この場にはもう1人の魔法少女の存在もあった。

 

「あなたは、彼の仲間?」

 

「……っ! あなたは誰なの!?」

 

「悪いけど、構ってる暇はないから」

 

「待って!」

 

 悲しい目をしている。高町なのははそう感じた。

 目の前のもう1人の魔法少女、自身の友人に危害を加えた存在。

 ──であると言うのにも関わらず、なのはは彼女に対して敵愾心を向けることはできなかった。

 

「……」

 

 フェイトはなのはを一瞥すると、その場を去ろうとする。

 

「待って! あなたの名前を教えて!!」

 

「彼と同じことを言うんだね」

 

 吐き捨てるようそう言うと、フェイトはその場を後にする。

 残されたなのはも、倒れた一縒を置いて彼女を追いかけることはできない。

 

「なのは、それより一縒を!」

 

「う、うん!」

 

 なのはは一縒に目を向ける。気絶はしているが、目立った外傷はないし心臓も動いている。バリアジャケットを介していたことと、おそらく先ほどの悲しい瞳をした彼女も殺意があるわけではなかったこともあり、ひとまず無事であることに安堵する。

 

 ──彼が無事で本当に良かった。高町なのは気絶する彼の様子を伺いながら息を撫で下ろす。

 もし私が遅れてしまったことが原因で、彼を傷つけてしまうとしたら。それは巻き込んでしまった私の責任なのでは無いか。彼の無事に対する安堵と同時に自責の念を募らせた。

 

 それにしても、と。

 高町なのはは先ほどのもう1人の魔法少女のことも思い出す。

 大切な人である一縒を傷つけた人物。そして、彼よりも強い魔道士である事実。

 だのに、彼女を恨むことはできなかった。敵として切って捨てることはできなかった。

 

 突然現れたもう1人の魔法少女。

 彼女もまたジュエルシードを求めていた。

 彼女が誰かを傷つけてまでジュエルシードを探す目的はいったい何なのであろうか。そもそも、彼女は何者なのだろうか。

 彼女はどうして、あんなにも悲しい瞳をしているのだろうか。

 

 なのはは先ほどの出来事に思考を巡らせながら、目の前の彼の目覚めを待つことにした。

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