夏海「“ペルセウス”とのギフトゲームが始まり、見事十六夜さん達は敵の親玉がいる場所までたどり着きました。このルイオスとかいう人、絶対好きになれません」
ユウスケ「まあ確かに嫌な奴だよね。でも、十六夜くん達がきっと倒してくれるよ!」
夏海「そうですね。それに、大樹さんも強いですし負ける事はないと思います」
ユウスケ「そうそう。さて俺達も祝勝会を行うためにも、しっかりと頑張ろうよ!」
白夜叉「こんな感じかの、栄次郎殿」
栄次郎「いいねいいね〜。レティシアちゃんもそう緊張しないで。ほら、にっこり笑って」
レティシア「う、うむ。こんな事をしていても良いのだろうか……」
白夜叉「今は楽しむ時じゃぞ。ほれ、次はこっちの衣装も着るぞ!」
レティシア「貴方は楽しみ過ぎな気がするぞ」
夏海「それでは第11話『悪魔は泣き、英雄は嘆く』をどうぞ」
栄次郎「さて、それじゃあ撮るよ〜。はい、チーズ」
十六夜、大樹、ジンは最奥の最上階にたどり着いた。
耀は十六夜達を最奥まで送り届けると士と飛鳥に合流するため別れた。
最奥には天井はなく、まるで闘技場のような簡素な造りなっている。イタリアにあるコロッセオを想像してもらえれば分かりやすいだろう。
最上階には審判としてついてきている黒ウサギが先におり、上空には膝までを覆う翼の付いたロングブーツを着用している男、ルイオスが十六夜達を見下ろしていた。黒ウサギは十六夜達を見るや安堵したようにため息をもらす。
ルイオス「───ふん。ホントに使えない奴ら。今回の一件でまとめて粛清しないと」
大樹「おや、随分と彼らの事を見下しているんだね」
ルイオスは十六夜達の前に降り立ちながら、大樹の言葉にさも当然というように返答する。
ルイオス「当然だろ?このコミュニティが存続出来ているのは僕のおかげなんだから。自分達の無能っぷりを省みてもらうにはいい切っ掛けだったよ」
大樹「君のような傲慢な人間は嫌いじゃないよ。でも、その傲慢さは後悔する事になるよ」
ルイオス「フン。なにはともあれ、ようこそ白亜の宮殿・最上階へ。ゲームマスターとして相手をしましょう。………あれ、この台詞を言うのってはじめてかも」
ルイオスは形式通りの挨拶をする。
ゲームマスターであるルイオスがその挨拶を今までしてこなかったのは全て部下である騎士達が優秀であったからである。今回のように準備が整わない突然の決闘でさえなければ、ここまで十六夜達の目論見通りに事が進む事は無かっただろう。
十六夜「ま、不意を打っての決闘だからな。勘弁してやれよ」
ルイオス「フン。名無し風情を僕の前に来させた時点で重罪さ」
ルイオスは翼を羽ばたかせ空へ上がる。
自身の懐から“ゴーゴンの首”の紋が入ったギフトカードを取り出し、光と共に燃え盛る炎の弓を取り出した。
大樹「ペルセウスの武器で戦うつもりはない、ということでいいのかな?」
ルイオス「当然。空が飛べるのになんで同じ土俵で戦わなきゃいけないのさ」
ルイオスは小馬鹿にするように天へと舞い上がり、壁の上まで飛び上がると、首にかかったチョーカーを外し、付属している装飾を掲げた。
ルイオス「メインで戦うのは僕じゃない。僕はゲームマスターだ。僕の敗北はそのまま“ペルセウス”の敗北になる。そこまでリスクを負うような決闘じゃないだろ?」
慢心のしないルイオス。
それがどういうことが黒ウサギは理解した。彼の使うギフトが黒ウサギの想像通りならば、ギリシャ神話の神々に匹敵するほど凶悪なギフトであるからだ。
ルイオスの掲げたギフトが光り始める。星の光のようにも見間違う光の波は、強弱をつけながら1つ1つ封印を解いていく。
十六夜と大樹はとっさに構える。
ジンと黒ウサギを背後に庇い、いつでも戦えるように臨戦態勢をとる。
ルイオス「目覚めろ──“アルゴールの魔王”!!」
ルイオスが獰猛な表情で叫ぶと、光りは褐色に染まり、4人の視界を染めていく。
白亜の宮殿に共鳴するかのような甲高い女の声が響き渡った。
アルゴール「ra……Ra、GEEYAAAaaaaa!!!」
それは最早、人の言語野で理解できる叫びではなかった。
冒頭こそ謳うような声であったが、それさえも中枢を狂わせるほどの不協和音だ。
現れた女は体中に拘束具と捕縛用のベルトを巻いており、女性とは思えない乱れた灰色の髪を逆立たせて叫び続ける。女は拘束するベルトを引き千切り、半身を反らせて更なる絶叫を上げた。黒ウサギはたまらず耳を塞ぐ。
アルゴール「ra、GYAAAAaaaaaa!!!」
黒ウサギ「な、なんて絶叫を」
十六夜「避けろ、黒ウサギ!!」
えっ、と硬直する黒ウサギを十六夜が、ジンを大樹が抱き抱えるように跳び退いた。
直後、空から巨大な岩塊が山のように落下してきたのだ。2度3度、と続く落石を避ける2人を見て、ルイオスは高らかに嘲った。
ルイオス「いやあ、飛べない人間って不便だよねえ。落下してくる雲も避けられないんだから」
黒ウサギ「く、雲ですって………!?」
全員がハッと外に眼をやる。
雲が落下しているのはこの闘技場の上だけではなく、このギフトゲームに用意された世界全てに対して、“アルゴールの魔王”は石化の光を放ったのだ。
黒ウサギ「星霊・アルゴール………!白夜叉様と同じく、星霊の悪魔………!!」
“アルゴル”
ペルセウス座で“ゴーゴンの首”に位置する恒星であり、アラビア語のラス・アル・グルを語源とする“悪魔の頭”という意味の持つ星のこと。
ゴーゴンの魔力である石化を備えているのはそういう経緯があるからだろう。
1つの星の名を背負う大悪魔であり、箱庭最強種の一角“星霊”である“アルゴール”がペルセウスの切り札である。
外は敵味方関係なく石化の光を浴びているはずである。黒ウサギは外から士達を探すが、その姿が見つからず焦る。
もしも先程の雲が石化した士達に当たっていたとしたら………そう考えてしまうのは仕方なかった。
大樹「僕らを石化させなかったのは、君なりの優しさかい?」
ルイオス「そうさ。なんせ初めての挑戦者なんだ。すぐに終わらせちゃ勿体ないだろ?」
十六夜「それは感謝しねえとな」
十六夜はジンを下げさせ、ルイオスと向き合う。
ルイオスはアルゴールと炎の弓を。
十六夜はその拳を。
大樹はディエンドライバーを。
戦闘準備は完了した。
十六夜「さ、それじゃいいかよゲームマスター」
大樹「君のお宝、全部いただくよ」
ルイオス「はっ。名無し風情が、精々後悔するがいいッ!!」
アルゴール「ra、GYAAAAaaaaaa!!」
“ノーネーム”と“ペルセウス”の、命運をかけた戦いの火蓋が切って落とされた。
*
アルゴールが石化を使用する少し前
士達は騎士達との戦闘を行っていた。
十六夜達は既に最奥にたどり着いているため、もう戦闘はしなくてもいいのだが、大手コミュニティとしての意地とプライドがある騎士達はノーネームには負けられなかった。
十六夜に倒された騎士長も再び立ち上がり、騎士達を指揮し自身も戦闘に参加して、士達を統率のとれた動きで追い詰めようとしていた。
だが士達も負けておらず、3人で連携を取りつつもライオトルーパーによる援護によって敵の統率も崩せているのであった。
士「それにしても数が多いな」
耀「それに、みんな強い」
飛鳥「ああもう!本当にしつこいわね!」
士「そうイライラするな」
飛鳥「アンタが落ち着きすぎているのよ!」
耀「飛鳥、抑えて抑えて」
士達は戦場で軽口を叩ける位には余力を残していた。そのため戦闘でもお互いの様子を把握しながら戦うことが出来ていた。
士「そろそろキツいんじゃないか、お嬢様」
飛鳥「フン。誰に言っているのかしら?私はまだまだいけるに決まってるじゃない」
耀「士こそどうなの?」
士「そうだな。ま、これくらいならまだまだイケるさ」
直後、士は嫌な予感を感じた。
すぐさま後ろにいた飛鳥を背負い、耀と目の前にて戦闘をしていた騎士長を抱えて近くの窓ガラスへと飛び込んだ。
3人は急な事に慌てたが、窓ガラスは割れず、そのまま彼らはミラーワールドへと入っていった。
そのすぐ後、もとの世界は光に包まれ、光が収まったそこには、石となった騎士やライオトルーパー達が佇んでいた。
飛鳥「ちょっと!急に何するの………」
耀「何、これ………」
窓ガラスからは戦闘をしていた広場が見え、先程までいた場所には石化した雲が落ちてきていた。
あと少し遅ければ、そんな想像を3人はする。
士「おそらく、アルゴールの悪魔とやらが石化を使ったんだろ」
騎士長「そのようだ。…それにしても、ここは?」
周囲はもとの世界とは何もかも反対となった風景。騎士長は思わず士へと尋ねる。飛鳥と耀もその答えを知る為、士の方へと視線を向ける。
士「ここはミラーワールド。簡単に言えば鏡の中の世界だ」
飛鳥「鏡の中の世界って、まるで御伽噺のアリスね」
士「ま、ここはそんなにいいものじゃないがな。とりあえずこの世界まで石化は及んでいないらしい。が、もとの世界は何もかも石化されてしまったから出るにはゲームが終わってからだ」
飛鳥「そう、仕方ないわね」
飛鳥は驚きつつも納得し、近くにあった瓦礫に腰掛ける。先程まで行っていた戦闘での疲労がドッと押し寄せたのだ。彼女だけでなく、耀や騎士長も疲労を感じその場へ腰を下ろす。
しかし士だけは辺りを警戒していた。
飛鳥「どうしたのよ?ここは安全なのでしょう?」
士「安全……とは言い切れないな」
飛鳥「え?」
耀「………何か、来る!」
???「「GYAAAAaaaaaa!!」」
耀のその言葉と同時に、明らかに人ではない存在の叫び声が聞こえた。その叫び声は士達へと突進し、士は飛鳥を、耀と騎士長はそれぞれ躱す。
その突進をしてきた叫び声の方をに目を向けると、そこには
飛鳥「何よアレ!?」
士「ミラーモンスター。このミラーワールドに存在する人を喰らうモンスターだ」
耀「ガルド、みたいなもの?」
士「その認識で合ってる」
士はバクラーケンとウィスクラーケンに向き合い、ディケイドライバーをギフトカードから取り出し、自身の腰にあてる。
士「お前達は休んでおけ。俺が相手してやる」
飛鳥「舐めないでもらえるかしら?」
耀「私も、戦える」
騎士長「これでも“ペルセウス”の騎士長をしているんだ。お前達にばかり任せてられんさ」
そう言って3人も構える。
士も仕方ないと思いカードを取り出しながら別の事を考える。
士(ジンの話ではミラーモンスターはいないはずだ。それはアイツらが認識していなかったのか、それとも別の理由があるのか。調べないとな)
KAMEN RIDE!DECADE!
士はディケイドへと変身し、2体のモンスターと対峙する。
*
ルイオス「押さえつけろ、アルゴール!!」
アルゴール「RaAAaaa!!LaAAAA!!」
十六夜「ハッ、いいぜいいぜいいなオイ!!いい感じに盛り上がってきたぞ………!」
ルイオス「チッ!」
大樹「彼にだけ意識を向けていていいのかな!」
ルイオスがアルゴールへ指示を飛ばし、十六夜を押さえつけるが、十六夜は真正面からアルゴールと組み合う。普通ではあり得ない事なのだが、それを可能にするのが十六夜という男なのである。
その様子に苛立ちを見せるが、大樹からの銃撃を躱しつつ大樹の方にも炎の矢を放つ。
大樹はその炎の矢を撃ち落とし、さらにルイオスへ追撃する。
アルゴール「GYAAAAaaaaaa!!」
十六夜「ハハ、どうした元・魔王様!今のは本物の悲鳴みたいだぞ!」
十六夜は一瞬だけアルゴールと押し合いとなるが、すぐにアルゴールが耐えきれずに押し切られ、その場でねじ伏せる。
獰猛な笑顔を見せ、アルゴールの腹部を幾度も踏みつける。十六夜の足踏みはそれだけで闘技場全体に亀裂を発生させ、白亜の宮殿を砕くほどの力があった。
ルイオス「図に乗るな、名無し風情が!」
大樹「それはそっくり君に返そう」
ルイオスは炎の弓からハルパーへと持ち替えて大樹を襲うが、下半身を捻った勢いで蹴りあげる大樹により空へと吹き飛ばされる。
辛うじて柄で受け止めるが、その衝撃に思わず嘔吐感が込み上げてきた。
さらに大樹はルイオスが怯んでいる隙にさらに銃撃を放ち、ルイオスに見事命中させ墜落させる。落ちるルイオスはちょうど十六夜に叩きのめされたアルゴールに重なるように落ちた。
ルイオス「ガッ!」
アルゴール「GYA……!」
あまりにもデタラメな2人に、ルイオスは体を起こしながら狼狽して叫ぶ。
ルイオス「き………貴様ら、本当に人間か!?一体、どんなギフトを持っている!?」
“星霊”を力でねじ伏せ、その“星霊”を圧倒する者と、人を空高く蹴りあげ、天駆けるヘルメスの靴を履いているにも関わらずそれを撃墜する者。
そんな存在がいるはずがない。
それがルイオスの認めたくない現実として突きつけられている。
十六夜と大樹は楽しそうに自身のギフトカードを見せる。
十六夜「“
大樹「通りすがりの泥棒さ。大したギフトなんて持ってないよ」
飄々とし余裕を見せつける十六夜と大樹に陣も黒ウサギも勝利を感じていた。
ルイオスははっきり言えば限界は近く、立ち上がる姿も初めて見た時と比べとても弱弱しいものである。足取りはおぼつかず、余裕を見せていた表情は苦痛と屈辱により歪み、小綺麗だった服はいたるところがボロボロでその間からは白い肌とは対照的な赤い擦り傷が見えている。
ルイオス「もういい。お遊びは終わりだ!アルゴール、宮殿の悪魔化を許可する!奴らを殺せ!」
アルゴール「RaAAaaa!!LaAAAA!!」
謳うような不協和音が世界に響く。途端に白亜の宮殿は黒く染まり、壁は生き物のように脈を打つ。宮殿全体にまで広がった黒い染みからは、蛇の形を模した石柱が数多に襲う。
十六夜と大樹は軽々とそれを避ける。
ルイオス「もうお前達は終わりだ!ここから生きてなんて帰さないッ!!!この宮殿はアルゴールによって新たな怪物となった!お前達の相手は魔王とこの宮殿だ!このギフトゲームに貴様らの逃げ場は無いものと知れッ!!!」
ルイオスの叫びに呼応する様にアルゴールと宮殿は叫び声を上げる。
最早十六夜達に逃げ場は無く、このゲームはそれこそお互いの命が散るまで戦い続けなければならない戦場と化した。
魔王が、ゲームの舞台が十六夜達へと牙を向ける。
十六夜達は避けるでもなく、逃げるでもなく、ただその顔には笑みを浮かべているだけであった。
*
一方、士達は場所を本来ならルイオスがいるはずの最奥まで移動し、2体のミラーモンスターであるバクラーケンとウィスクラーケンを倒していた。
飛鳥や耀、騎士長の援護によりそれ程苦戦する事も無く倒すことに成功し、一息ついているところであった。
士「さてと、ミラーワールドがあるならとは思ったが、お前達も認識していなかったようだな」
騎士長「まあな。我々も伝え聞いている限りでは、鏡の中の世界やその中に住むモンスターも聞いたことがない。それに、貴様が“世界の破壊者”ということもな」
士「そうか。なら、もっと他のやつに詳しく聞く必要があるな。あと、お前達の言うディケイドは俺とは別の存在らしい」
騎士長「どうだかな。まあ今は置いておくとしよう」
軽口を叩きつつも確かめたい情報を士は確かめる事にした。
士「お前達がレティシアを売ろうとしたのは誰か、お前は知ってるんだろ?」
その質問に騎士長は眉をしかめる。
ここで知らないと答えることは簡単だ。しかし、士にはこのミラーワールドに連れて来てもらった為にアルゴールの石化を逃れたという借りがある。
それは武人として気が引けた。
騎士長「……相手は、箱庭の外にある、一国規模の大型コミュニティだ」
それがどういう意味か分からないほど飛鳥達は鈍くはなかった。顔を見る見るうちに怒りに染め、今にも掴みかからんとする。
飛鳥「貴方ね!それが彼女にとってどういう意味か分かっているわけ!?」
騎士長「もちろん」
飛鳥「だったら!」
耀「飛鳥、落ち着いて」
飛鳥を何とか宥める耀に気にする様子もなく騎士長は自身の手を握りしめ、話を続ける。
騎士長「私だって鬼ではない。それに、彼女は優れたプレイヤーであった。だからこそ敬意を持って真摯に対応するべきだと私も思ったさ。今回の件もルイオス様に掛け合ったがそれも意味はなかった」
士「まあそうだろうな」
騎士長「それに、ルイオス様は相手方から何か受け取っていた。もしかすると先程のアレはそれかもしれんな」
どこか自嘲気味に笑う。
ルイオス自体、世襲によって現在の地位であるためどこまでも
士は話を聞き、何か違和感を感じていた。
士「それだけか?」
騎士長「それだけとは?」
士「他に何か無かったか?それこそ、ルイオスだけでその相手と話していたとかな」
果たして、レティシアという箱庭の中でしか生きる事の出来ない純血の吸血鬼に対して、たったそれだけだろうか。
取り引き自体はその場で行う可能性もあるが、相手は必ず前払いでそれなりに払うはずである。ならその前払いがたったのミラーモンスター2体というのはあまりにも純血の吸血鬼とは釣り合わない。
前払いがそれならばルイオスもわざわざこんな取り引きには応じないはずである。利益を優先するあのボンクラお坊ちゃんの事だ。前払いがそれだけとしても欲を掻いて更に求めているはずだ。
騎士長は顎に手を当て考える仕草をすると、思い出したようで士達にその時のことを語る。
騎士長「そういえば、少しだけだが席を外した。まあ数分後には話も終わって帰ったが」
士「それの内容は?」
騎士長「ルイオス様は“役に立つ物”としかおっしゃられていなかった」
士「そうか、大体分かった」
飛鳥「本当?」
士「ああ」
士の予想が合っていれば、おそらくミラーモンスターと同様の類、怪人や怪物を受け取っているはずである。さらに、星座、怪人、ペルセウス、アルゴールなどとヒントがちりばめられている。答えは出た様な物だが、士達はミラーワールドから出られず、出られたとしても大樹達に伝えることはできない。故に、大人しく待つしか出来ない状況である。
取ってきた窓に映る大樹達の戦闘を見ながら、ぼんやりと考えることにした。
*
十六夜「──······そうかい。つまり、
ジンと黒ウサギ「「え?」」
問題ないと言わんばかりに自信満々に応える十六夜。
その十六夜に嫌な予感を感じ、すぐさま避難体勢をとるジンと黒ウサギ。
その予感は的中し、十六夜は無造作に拳を上げ、それを黒く染った魔宮へと振り下ろした。
十六夜の周囲にいた千を超えるもの達は一斉に砕け、霧散する。直後に宮殿全体が震え、闘技場が崩壊し、瓦礫は四階を巻き込み三階まで落下した。
ジンと黒ウサギは早めに避難体勢を取っていたこともあり、崩壊には巻き込まれなかった。
ルイオスとアルゴールは上空に逃げていたのだが、黒ウサギ達と同じようにその惨状に息を呑んだ。
ルイオス「······馬鹿な······どういう事なんだ!?奴の拳は、山河を打ち砕くほどの力があるのか!?」
大樹「これが“
ルイオスはすぐに顔を真横に向けた。
そこにはさっきから姿が見当たらなかった筈の人物、海東大樹の姿があった。それも、赤紫色の謎の戦士とその戦士と同じ色をしたエイの様なモンスターの上に乗って。
大樹「さて、まだ君の手札は残っているんだろう?ならそれを見せてくれないか。早くしないと彼の機嫌がもっと悪くなってしまうよ?」
大樹の言葉の通り、十六夜はかなり不機嫌そうにルイオスを見上げていた。
まだ遊び足りない。そう駄々をこねる子供のような顔でルイオスを見ている。
その顔と先程の力に、ルイオスの心の中は怒りと恐怖で支配された。ここまでの屈辱に顔を歪ませ、悔しさで更に表情を歪ませた。
だがルイオスはスッと真顔に戻し、凶悪な笑顔を浮かべる。
ルイオス「もういい。
そう告げ、石化のギフトを解放した。
アルゴールを魔王に至らしめた根幹とも言うべき、褐色の光。天地に至るまで全てを褐色の光で包み、灰色の星へと変えていく星霊の力。
謳うような不協和音と共に放たれたその光は十六夜に目掛けて真っ直ぐに向かう。
褐色の光に包まれた十六夜は、真正面からその瞳を捉え──────
十六夜「────········カッ。ゲームマスターが、今さら狡い事してんじゃねぇ!!!」
褐色の光を、
········比喩でもなく、他に表現のしようもないほどそのままの言葉。
アルゴールの放つ褐色の光は、逆廻十六夜の一撃でガラス細工のように砕け散り、影も形もなく吹き飛んだのだ。
ルイオス「ば、馬鹿な!?」
大樹「あははははは!!!まさかあれを踏みつぶすなんて!最高のギフトじゃないか!!!」
ルイオスは思わず叫び、大樹は高らかに笑い声を上げる。戦局を見守っていたジンと黒ウサギですら思わず叫び声を上げていたのだ。
ジン「せ、“星霊”のギフトを無効化───いえ、破壊した!?」
黒ウサギ「あり得ません!あれだけの身体能力を持ちながら、ギフトを破壊するなんて!?」
天地を砕く
相反する二つをその身と魂に宿すなど、絶対にあり得ないのだ。
“箱庭の貴族”も、“白き夜の魔王”も、“ラプラスの紙片”ですら分からない、出所不明・効果不明・名称不明の三拍子揃った正真正銘の“
奇跡を身に宿しながら、奇跡を破壊する矛盾したギフト。
そんな存在に、ルイオスだけじゃなく黒ウサギとジンも呆然とする。
十六夜「さぁ、続けようぜゲームマスター。“星霊”の力はそんなものじゃないだろう?」
軽薄そうに笑う十六夜。
その様子にルイオスは悪魔を見た。
戦意は
大樹「残念だがここまでだよ」
十六夜「何?」
大樹は地面へと降り、これまで見ていた戦局から分析し、推察した答えを告げる。
大樹「アルゴールが拘束具に繋がれていた。それはつまり、ルイオスという存在は星霊を支配するには未熟過ぎたのさ」
ルイオス「っ!?」
ルイオスからは射殺さんばかりの視線を大樹に向けるが、否定する声は上がらない。否、上げられなかった。それが、何よりも真実であったから。
自身の拳を強く握りしめ、歯を食いしばる。
こんなはずではなかった。
数多のギフトで身を固め、更には世界を石化出来るほど凶悪な星霊を従えた自分が、“名無し”に負けるなど、ルイオスだけではなく誰も予想できなかった。
あまりの屈辱にルイオスは力なく膝をつきながら、拳を地面に叩きつける。もっと力があれば。もっと圧倒的と思えるほどの強さがあれば、負けなどしなかった。
そんなルイオスの想いに応えるように、ギフトカードが妖しく光り始めた。
それを見た十六夜は失望から期待へと変え、大樹は先程よりも警戒し、召喚したライアを盾にしながらカードとディエンドライバーを準備した。
妖しい光はどんどんと強くなり、ギフトカードは一人でに宙へと浮いた。
ジン「な、何がどうなっているんですか!?」
黒ウサギ「ルイオス様のギフトはもう無いはず!なのにどうして!?」
十六夜「知るかよ。だが、まだ終わりじゃないってのは面白いじゃねぇか!」
大樹「そうも言っていられないようだ。全く、落ちるところまで落ちていたようだね」
大樹はディエンドライバーでギフトカードを撃つが、妖しい光によって当たらない。ルイオスはまだ残っていたギフトを思い出し、今度こそ勝ちを確信した。
ルイオス「は、ははははは!!!まだ負けていない!そうだ!まだこの力が残っていた!お前達を地獄に落とすギフトが、まだ残っていた!」
そう言ってルイオスは、ギフトカードから禍々しいスイッチのような物を取り出した。
それを見た大樹はとある推測が確信へと変わった。
ルイオス「僕は負けない!負けたりなどするものか!!!これで貴様らは終わりだ!!!」
ルイオスはスイッチを押すと、禍々しいオーラに包まれた。
だがルイオスはそれを知らなかったようで、叫び声を上げる。
ルイオス「な、なんだこれは!?僕には害がないんじゃなかったのか!?う、うわぁぁぁぁぁ!!!」
黒いモヤのようなものがルイオスを覆い、赤い光と共に怪物になり果てた姿のルイオスが現れた。
右手に大剣。左腕にはアルゴールの様な顔。
凶暴な顔は二枚目だったルイオスとは全く異なっており、まさしく怪物のそれだった。
十六夜「へぇ〜、あれも怪人ってやつか」
大樹「まぁね。詳しい事は省くが、ゾディアーツスイッチを使って変身する怪物、ゾディアーツだよ。あれはペルセウス・ゾディアーツ。右手の大剣がオラクル。左腕のあれはアルゴールと同じ石化の能力を持っている。それでもやるかい?」
大樹の問いに、十六夜は鼻を鳴らしながら答える。
未知の敵との戦闘。人でありながら人ならざるもの。前回ではお預けとなったが、今回はこころいくまで戦える。そのことに胸を躍らせていた。
十六夜「ハッ。当然だろ!こんな楽しそうなイベントは見逃せねぇだろ!」
大樹「思っていた通りだよ。それじゃ僕も」
大樹はディエンドライバーにカードを差し込み、銃口をルイオスへと向ける。
大樹「変身!」
KAMEN RIDE!DIEND!
その掛け声と共にトリガーを引く。
するとディケイドの変身と同じように無数のカードが大樹の身を包んだ。そして、シアン色のライダー、仮面ライダーディエンドとなった。
十六夜「何だよ、やっぱり変身できるんじゃねぇか」
ディエンド「僕は一度も変身できないとは言ってないさ」
ルイオス「この俺様を無視して話をするとは、余裕だな!」
二人「「あぁ、余裕だとも」」
二人は怒るルイオスとアルゴールに対し、楽しげに笑いながら戦闘へと突入した。
皆様読んでいただきありがとうございます。
更新がかなり遅くなってしまいすみませんでした!
色々と勉強したり、ツイステやFGOのイベントや他のゲームとかやっていると思わず時間が経ってしまいました。
言った側から申し訳ないです。