飛鳥「黙りなさい」
飛鳥「私達と『ギフトゲーム』をしましょう。貴方の“フォレス・ガロ”存続と“ノーネーム”の誇りと魂を賭けて、ね」
大樹「違うよ。僕は世界中のお宝を集めているだけさ。という訳で、このお宝は頂くよ?」
白夜叉「おんしらが望むのは“挑戦”か──────もしくは“決闘”か?」
白夜叉の纏う雰囲気はまさしく、“階層支配者”に相応しい程の威圧感を与えていた。
軽く笑っていた飛鳥達はその顔から笑みは消え、十六夜ですら強がりの苦笑いを浮かべるのが精一杯であった。
白夜叉「今一度名乗り直し、問おうかの。私は“白き夜の魔王”──太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への“挑戦”か?それとも対等な“決闘”か?」
十六夜「水平に廻る太陽と…………そうか、
士「この世界自体がお前のフィールドなわけだ」
白夜叉「如何にも。この白夜の湖畔と雪原。永遠に世界を薄明に照らす太陽こそ、私がもつゲーム盤の1つだ」
大樹「これほどの莫大な土地がゲーム盤とは、本当にこの世界は底が知れないね」
白夜叉「如何にも。して、おんしらの返答は?“挑戦”であるならば、手慰み程度に遊んでやる。───だがしかし、“決闘”を望むなら話は別。魔王として、命と誇りの限り闘おうではないか」
飛鳥と耀はもちろんのこと、自信家の十六夜と士さえ即答できずに返事を躊躇った。
白夜叉への勝ち目は皆無に等しい。
しかし、自身から仕掛けた喧嘩をこのような形で取り下げるのもまたプライドが邪魔をした。
静寂───その重苦しい空気を断ち切ったのは紛れもなく十六夜であった。
十六夜「参った。やられたよ。降参だ、白夜叉」
白夜叉「ふむ?それは決闘ではなく、試練を受けるという事かの?」
十六夜「ああ。これだけのゲーム盤を用意出来るんだからな。アンタには資格がある。──いいぜ。今回は黙って
白夜叉「く、くく………して、他の童達も同じか?」
飛鳥「………ええ。私も、試されてあげてもいいわ」
耀「右に同じ」
白夜叉「して、おんしらは?」
苦虫を噛み潰したような表情で返事をする2人を見て、満足そうに声を上げる白夜叉であるが、残った2人の返答はまだ返ってきていなかった。
だからこそ、少しばかりの期待を抱いていた。
彼らの導き出す答えを。
士「………そうだな。この世界を破壊しても良いなら決闘を受けてやる。だが、オマエにとってはゲーム盤を無闇に減らされるのも嫌だろうから、今回は試練を受けてやるさ」
大樹「士と同意見だね。まぁ怪盗だから盗むのが普通なんだけど、今回ばかりは見逃してあげるよ。それに、僕は巻き込まれただけだしね」
白夜叉「ほう。なら、このゲーム盤がどうなっても良いとわしが言えば、おんしらは決闘を受けると?」
士「ああ。なんせ俺は、世界の破壊者だからな」
大樹「僕はお宝さえ手に入ればどうでもいいさ。でも、士が倒されるのは僕のお宝を横取りする事だからね。決闘なら士と2人で闘うよ?それでも勝てるかい?白き夜の魔王、白夜叉」
白夜叉「おんしらの覚悟、そして勇気は認めてやる。今回はわしの気が乗らんかったということで試練を受けさせてやる」
どこか楽しそうに答えた白夜叉に、うっすら冷や汗をかいていた2人は誰にも気づかれぬように安堵していた。
まだ自身の力、ギフトを確認していないため、今の状態では確実に負けてしまうからだ。
だからこそ、今回は言葉通りに命拾いしたわけである。
大樹「感謝するよ。それと1つ提案があるんだけど、僕にあと3つギフトカードを賭けた試練を与えてくれないかい?もちろん、士もその試練を受けるよ」
士「おい海東。勝手に決めるな」
白夜叉「ふむ、よろしい。ならまずはおんしら5人のギフトゲームを行うとするかの」
やっと一息ついたところで全員(海東も含めて)黒ウサギにこってりと叱られた。ついでに白夜叉にも飛び火し、当の本人はぬらりくらりとしている。
耀「何、今の鳴き声。初めて聞いた」
士「つまり、普通の世界には存在しない生き物ってわけか」
白夜叉「ふむ………あやつか。おんしら5人を試すには打って付けかもしれんの」
白夜叉が湖畔を挟んだ向こう岸にある山脈に、チョイチョイと手招きをすると、それは翼を広げて空を滑空し、風の如く5人の元に現れた。
体長5mはあろうかという巨躯に鷲のような翼と顔。鋭い爪とクチバシを持った上半身が鷲で下半身が獅子の獣。
御伽噺に出てくるその存在に、耀は驚愕と歓喜を隠せないでいた。
耀「グリフォン………嘘、本物!?」
白夜叉「フフン、如何にも。あやつこそ鳥の王にして獣の王。“力” “知恵” “勇気”の全てを揃えた、ギフトゲームを代表する獣だ」
グリフォンは白夜叉に手招きをされると、彼女の元へと降り立ち、深く頭を下げて礼を示した。
大樹「グリフォンを従えるなんて、ほんと、元魔王といえど規格外だね」
白夜叉「そう褒めるでないわ。さて、肝心の試練だがの。おんしら5人とこのグリフォンで“力” “知恵” “勇気”の何れかを比べ合い、背に跨って湖畔を舞う事が出来ればクリア、ということにしようかの」
そう言って白夜叉は双女神の紋が入ったカードを取り出すと、虚空から“
白夜叉は白い指を奔らせて羊皮紙に記述する。
『ギフトゲーム名 “鷲獅子の手綱”
・プレイヤー 一覧 逆廻 十六夜
久遠 飛鳥
春日部 耀
門矢 士
海東 大樹
・クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。
・クリア方法 “力” “知恵” “勇気”の何れかでグリフォンに認められる。
・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
“サウザンドアイズ”印』
耀「私がやる」
読み終わるや否やピシ!と指先まで綺麗に挙手をしたのは耀だった。彼女の瞳はグリフォンを羨望の眼差しで見つめている。比較的大人しい彼女にしては珍しく熱い視線である。
三毛猫『お、お嬢………大丈夫か?なんや獅子の旦那より遥かに怖そうやしデカイけど』
耀「大丈夫、問題ない」
白夜叉「ふむ。自身があるようだが、コレは結構な難物だぞ?失敗すれば大怪我では済まんが」
耀「大丈夫、問題ない」
真っ直ぐとグリフォンに向いている耀の瞳は、キラキラと光っており、まるで探し続けていた宝物を見つけた子供のようであった。隣の4人は呆れたように苦笑いを漏らす。
十六夜「OK、先手は譲ってやる。失敗するなよ」
飛鳥「気を付けてね、春日部さん」
士「まぁお前なら大丈夫だ。楽しんでこい」
大樹「少しばかりシンパシーを感じたよ。まぁ頑張りたまえ」
耀「うん、頑張る」
耀はグリフォンに駆け寄り、会話を交わす。
そして耀はグリフォンに誇りと命を賭けた勝負を挑んだ。
もちろん、そのことに待ったを賭けたのは黒ウサギと友達第1号である飛鳥だった。
黒ウサギ「だ、駄目です!」
飛鳥「か、春日部さん!?本気なの!?」
士「落ち着け2人とも。アイツが言ったんだ。なら仲間ならアイツのことを信じろ」
飛鳥「で、でも!」
白夜叉「これはあの娘から切り出した試練だぞ」
十六夜「ああ、無粋な事はやめとけ」
黒ウサギ「そんな問題ではございません!!同士にこんな分の悪いゲームをさせるわけには───」
大樹「なら君は彼女の覚悟を貶めるのかい?」
黒ウサギ「そ、それは──」
耀「大丈夫だよ」
耀は振り向きながら黒ウサギと飛鳥に頷いた。その瞳には何の気負いもなく、むしろ勝算ありと思わせる表情である。
耀はその後、グリフォンに跨り、耀が背中に乗り、しっかりと手綱を握ったのを確認してから薄明の空へと飛び出した。
耀とグリフォンの姿は見る見るうちに小さくなっていった。
飛鳥と黒ウサギは未だ不安な表情でその姿を追っていた。
士「さてと、俺達もそろそろ始めるか」
大樹「そうだね。こっちはすでに準備は出来てるよ」
白夜叉「あやつのことは心配ではないのかの?」
士「俺達が出来るのは応援することだけだ。あとはアイツ次第だからな。それに俺はアイツの覚悟を信じてる。だからこそ俺達は俺達の為すことをするまでだ」
白夜叉「フフン、あい分かった。ではおんしらのギフトゲームはこれにするとしようかの」
『ギフトゲーム名 “虚構の真実”
・プレイヤー 一覧 門矢 士
海東 大樹
・クリア条件 虚構の中の真実を見分ける。
・クリア方法 本物の仲間を見つけ出す。
・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下に、ギフトゲームを開催します。
“サウザンドアイズ”印』
黒ウサギ「こ、これは!勝利条件があまりにも抽象的過ぎます!」
白夜叉「いいや、これは正式なギフトゲームじゃぞ。何偽りなくな」
黒ウサギ「これで勝てだなんて、あまりにも横暴です!」
十六夜「ヘぇ。なぁお前らはこれの勝利条件を理解してんのか?」
士「ああ、大体な」
大樹「僕としては嘘も真実も大した意味は無いんだけどね」
飛鳥「春日部さんのこともあるし、正直言って不安だわ」
士「心配するな。今お前達が悩むのは今夜の晩飯を何にするかだ」
黒ウサギ「いやいやいやいや、不安しかないのでございますヨ!?」
白夜叉「まあよい。ではこちらも始めるとするかの。ちなみに、おんしらは何を賭ける?」
士「そうだな。じゃあ俺の全てだ」
大樹「僕は僕のお宝の1つかな」
白夜叉「承った。では始めるぞ」
士と大樹の周りには途端に霧が立ち込めた。
周囲に何があり、誰がいるのかが全く分からない状態である。
声も音も聞こえず、視界も白いため意味をなさない。
ただ分かることは、士からは大樹が、大樹からは士の姿が一応確認できるということだけである。
士「これが虚構か?」
大樹「そのようだね。仕方ない、しばらく相手の出方を伺うかな」
そう言って大樹は腰を下ろした。
士はとりあえずカメラで写真を撮ったが、真っ白な写真が撮れただけである。ちょっとした違和感を感じ、改めて大樹の話を聞きながら写真を撮る。
大樹「そう言えば士。夏海ちゃんが士のことを心配してたよ」
士「夏みかんならどうせ『どうせいつも通りふらっと帰ってきますよ』とか言ってそうだがな」
大樹「確かにね。でも今回はこの世界に来る方法が違っていたんだ。心配して当然だよ」
写真にはまた真っ白な風景しか映し出されていなかった。
その写真の意味を理解し、カメラに興味をなくす。
不気味さと静寂が支配するこの空間をどう破壊するかを士は考え、1つの答えにたどり着いた。
そして士が考えていた仮説は次の大樹の言葉で確信へと変わる。
大樹「それに君は早くナマコを食べられるようになった方がいい。ナマコぐらい食べれないと駄目じゃないかな?」
士「そうだな。さて、そろそろ終わらせるか」
そう言って士はライドブッカーを取り出し、ガンモードに変え、自身のカメラを空中に放り投げそれを撃った。
そして流れるように大樹のことも躊躇わずに撃った。
そこには一切の躊躇がなく、撃たれた大樹も驚きを隠せないでいた。
大樹「な、なんで………」
士「海東は夏海のことを夏海ちゃんとは言わない。夏メロンって呼ぶんだよ、俺に真似てな。それに、ナマコを食べられないのは海東の方だ。食べたら発狂するような奴が
このゲームをクリアするヒント。
大樹の口調。カメラの写真。
その2つが、普段と如何に違うのかを見抜くことができるかがこのギフトゲームをクリアする鍵となっていた。
そして士はその2つ共を見抜き、虚構である存在、つまり仲間や大切な物に姿を変えた偽物を破壊することこそが攻略の条件と理解したのだ。
そして、最後の条件も。
偽大樹「だが、本物の仲間を見つけ出さないといけないはずだが?」
そう。このギフトゲームのクリア条件である『本物の仲間を見つけ出す』ということ。
これを一体どうやって見つけたのか。それが偽大樹は疑問に感じたのだ。
士「そんなもの決まってる。自分にとって最大の仲間は、自分自身だ。自分自身が最大の仲間であると気づける奴こそが、共に過ごし、共に歩んできた奴らを仲間と信じられるんだよ」
士のその答えに、偽大樹は満足したように笑う。
彼は虚構の存在で、今回限りの紛い物の人形だが、それでも士の答えに嬉しいと感じた。
今までこのゲームをクリアした者達は、そんな士に似ていたから。
偽大樹「ふっ、正解だ。お見事、ゲームクリアだ。そして、君の仲間も無事クリアしたようだよ」
霧が晴れるとそこは元の場所であり、白夜叉は帰ってきた2人を見てニヤリと笑みを浮かべた。
白夜叉「よくぞクリアしたな。おんしらの勝ちじゃ」
士「そりゃどうも」
大樹「あの程度、どうってことないね。というかもう少し本物に寄せる努力をした方がいいと思うよ?」
白夜叉「ふむ、このギフトゲームはあまりクリアする者が少ないのだがな、実に見事だ。それに、ちょうどあやつも帰ってきたわ」
白夜叉が顔を向けた方を見ると、ちょうど帰ってくる耀の姿が見えた。
しかし、耀の勝利が確定した瞬間、耀は手綱を離してしまった。
その様子に黒ウサギは思わず飛び出そうとしたが、それを十六夜が止める。
その耀は空へと舞い上がり、このままでは落ちるのは確実であった。
しかし、士は耀を信じていた。
だからこそ動かなかった。
結果、それは正しい判断であり、耀は湖畔に落ちる寸前で飛翔したのだ。十六夜は呆れたように笑い、黒ウサギと飛鳥は驚愕しつつも安堵していた。
十六夜「やっぱりな。お前のギフトって、他の生き物の特性を手に入れる類だったんだな」
帰ってきた耀に十六夜は自身の仮説の答え合わせをする。
耀はその仮説に少し驚くが、耀にとって大事な部分を訂正する。
耀「………違う。これは友達になった証。けど、いつから知ってたの?」
十六夜「ただの推測。お前、黒ウサギと出会った時に“風上に立たれたら分かる”とか言ってたろ。そんな芸当はただの人間には出来ない。だから春日部のギフトは他種とコミュニケーションを取るわけじゃなく、他種のギフトを何らかの形をしたで手に入れられたんじゃないか………と推察したんだが、それだけじゃなさそうだな。あの速度で耐えられる生物は地球上にいないだろうし?」
興味津々な十六夜の視線をフイッと避け、耀はその傍に駆け寄ってきた三毛猫と会話しつつ頭を優しく撫でる。
パチパチと拍手を送る白夜叉と、感嘆の眼差しで見つめるグリフォンとも会話を交わし、耀はギフトゲームを見事クリアした。
白夜叉は耀を称賛しつつ、耀のギフトに対して興味を抱く。
耀は首から下げていた木彫りを白夜叉と黒ウサギに見せ、その隣から十六夜、飛鳥、士、大輝も覗き込んだ。
士「材質は楠の神木。それにこの模様は………お前の父親の知り合いに生物学者がいたのか」
耀「うん。私のお母さんがそうだった」
十六夜「生物学者ってことは、やっぱりこの図形は系統樹を表しているのか白夜叉?」
白夜叉「おそらくの…….ならこの図形はこうで……この円形が収束するのは……いや、これは……これは、凄い!!本当に凄いぞ娘!!本当に人造ならばおんしの父は神代の大天才だ!まさか人の手で独自の系統樹を完成させ.、しかもギフトとして確立させてしまうとは!コレは正真正銘“生命の目録”と称して過言ない名品だ!」
耀「系統樹って、生命の発祥と進化の系譜とかを示すアレ?でも母さんの作った系統樹の図はもっと樹の形をしていたと思うけど」
白夜叉「うむ、それはおんしの父が表現したいモノのセンスが成す業よ」
士「図形は系統樹を表し、円形は生命の流転、輪廻を表現しているものだな。輪廻を繰り返すことで生命の系譜が進化を遂げて進む円の中心は世界の中心を目指して進む様を表しているわけだ」
大樹「中心が空白なのは、これが未完成だからか、流転する世界の中心だからか、生命の完成が未だに視えないことを示しているのかは分からないけど、うん、いいお宝だ。是非とも欲しいところだね」
白夜叉「うぬぬ、凄い、凄いぞ。久しく想像力が刺激されとるぞ!実にアーティスティックだ!おんしさえよければ私が買い取りたいぐらいだの!」
耀「ダメ」
耀は即答し木彫りの細工を取り上げる。
白夜叉はお気に入りの玩具を取り上げられた子供のようにしょんぼりし、大樹は新しい獲物を狙うように微笑む。まぁその大樹を士が頭にチョップをするのだが。
詳しいことはより上位の鑑定が必要ということになり、大樹が盗んだのも合わせ、正式に5人の手にギフトカードが渡され、大樹だけは白夜叉にギフトゲームクリアとして提示していたギフトカード3枚を受け取る。
コバルトブルーのカードに逆廻十六夜・ギフトネーム“
ワインレッドのカードに久遠飛鳥・ギフトネーム
“威光”
パールエメラルドのカードに春日部耀・ギフトネーム“
マゼンタのカードに門矢士・ギフトネーム
“
シアンのカードに海東大樹・ギフトネーム
“
それぞれの名とギフトが記されたカードを受け取る。
白夜叉「それはギフトカード。正式名称を“ラプラスの紙片”、即ち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームとはおんしらの魂と繋がった“
大樹「なら僕はすでにコミュニティに加入してるからこういう風に記されるわけだ」
大樹のギフトカードにはギフトの名称の他にディケイドのベルトの様な紋が記されていた。
それを見た黒ウサギは驚きを隠せずにいた。
白夜叉「ほう、すでにコミュニティに属しておったか」
大樹「まあね。それに、このコミュニティは士もよく知ってると思うよ?」
士「何?」
大樹「僕らのコミュニティには後で案内してあげるよ。それよりも先に、そこの彼のギフトを確認した方がいいんじゃないかな?」
十六夜「へえ?この俺様のギフトがそんなに気になるか?」
大樹「敵戦力になりうるかもしれないからね」
大樹に促されるように白夜叉が十六夜のギフトカードを覗き込んだ。
そこには確かに“
白夜叉「………いや、そんな馬鹿な。“
十六夜「何にせよ、鑑定は出来なかったってことだろ?俺的にはこの方がありがたいさ」
白夜叉は十六夜を納得できないように怪訝な瞳で十六夜を睨む。
大樹が十六夜のギフトについて知っていたこともコミュニティに属していたことを隠していたことも懸念材料である。
それに門矢士という存在。
耀の“生命の目録”を一目見ただけで一瞬のうちに理解したことや、ギフトゲームでの躊躇いのなさ、そして時折見せるそれは、魔王のそれに近いものを白夜叉は感じていた。
そんな不安を抱えつつも、黒ウサギ含む“ノーネーム”の5人と1匹と大樹、そして白夜叉は暖簾の下げられた店前に移動し、大樹と士以外は一礼した。
耀「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」
飛鳥「あら、駄目よ春日部さん。次に挑戦するときは対等の条件で挑むんだもの」
十六夜「ああ。吐いた唾を飲み込むなんて、格好つかねえからな。次は渾身の大舞台で挑むぜ」
士「楽しみに待っておけ。次は本気で破壊しに来てやる」
大樹「他にも色んなお宝があるみたいだし、また盗みに来るよ」
白夜叉「ふふ、よかろう。楽しみにしておくわ。………ところで」
白夜叉は笑みから真剣な顔で黒ウサギ達を見る。
その真剣さは魔王のそれではなく、黒ウサギの友として、保護者的な立場としてのそれである。
白夜叉「今さらだが、1つだけ聞かせてくれ。おんしらは自分達のコミュニティがどういう状況にあるのか、よく理解しているか?」
士「ああ、名前や旗の話だろう。そして、それを取り戻すために“魔王”と闘うこともな」
白夜叉「そうか。………では、おんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」
飛鳥「そうよ。打倒魔王なんてカッコいいじゃない」
白夜叉「“カッコいい”で済む話ではないのだがの…………全く、若さゆえのものなのか。無謀というか、勇敢というか。まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰ればわかるだろ。それでも魔王と戦うことを望むというなら止めんが………そこの娘2人。おんしらは確実に死ぬぞ」
予言するように断言する。
2人は何か言い返そうとしたが、魔王と同じく“主催者権限”を持つ白夜叉の助言は、物を言わさぬ威圧感があった。
仕方なく2人は言い返したい言葉を飲み込み、強がった口調で返す。
飛鳥「………ご忠告ありがと。肝に命じておくわ。次は貴方の本気のゲームをしに来るから楽しみに待っていなさい」
白夜叉「ふふ、望むところだ」
ただでは引かないその強さこそが、彼女がこの世界に呼ばれた要因の1つだろう。
飛鳥の答えに不敵な笑みを見せる白夜叉。
楽しそうに目を輝かせる十六夜、飛鳥、耀、士、大樹。
疲れきったというような黒ウサギ。
そうして彼らは白夜叉と分かれ、今度は大樹の所属するコミュニティへと向かった。
UA500達成させていただきありがとうございます(^^)
皆様に楽しんでいただけて嬉しい限りです。
士と大樹のギフトについて説明させていただきますと、
“世界の破壊者”はまんまディケイド自身の力ということとなります。
“ Ride the Wind”は世界を渡る力で、主にカーテンを呼び出し、異世界へ行ける能力をギフト化しました。名前は門矢士のキャラソン『Ride the Wind』からそのまま取りました。
“Journey through the Decade”は士の持つカメラのことで、様々な世界を渡り、世界を映し出してきたカメラもギフトになり得ると勝手に自己解釈したものです。名前はGACKT様のディケイドの主題歌『Journey through the Decade』から。
大樹は主に盗んだ物がギフトに登録されているのと、“Treasure Sniper”は海東大樹のキャラソンである『Treasure Sniper』からです。
次回は大樹が所属しているコミュニティについての予定です。
次回も楽しみに待って待っていただけると幸いです。