妖精に魅入られた男   作:鈴木颯手

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001・全ての始まり

「お待ちしておりました、ルートヴィヒ殿下」

「ああ」

 

アールスハイド王国北部にあるとある森。現地の人すらほとんど立ち入らない森は人の手が入らない事で豊かな自然を残していた。そんな森に数人の人間が入っていた。上等な生地で出来た服に身を包んだ男と同じような服装をする数人の大人の男性である。彼らは青年を案内するように森の奥に入っていく。

 

「本当にいるのだな?」

「はい、間違いありません。ですが確保しようとして失敗し5名が死亡、18名が重傷を負いました」

「妖精兵も3名だが連れていたはずだろう?そいつらはどうした?」

「全員死亡者の中に入っています」

「何たることだ」

 

男、ルートヴィヒは部下の報告に頭を押さえる。しかしすぐに頭を振り声をかける。

 

「現状は?」

「何とか抑え込んでいますが運ぶのは難しいです」

「何としても運ぶのだ。ここではまともな移植手術が出来ん」

「ですが……」

 

その時、獣の咆哮が聞こえてくる。それもルートヴィヒ達が向かっている方角から続いて何かが壊れる音と銃声、男の悲鳴の様なものが聞こえてくる。それを受け周りの部下たちはルートヴィヒを囲むように配置につき銃を構えた。

 

「……どうやら、捕獲には失敗したようだな」

「殿下!ここはお引きください!」

「無駄だ、既に手遅れだからな」

 

瞬間、ルートヴィヒ達の前に巨大な獣が姿を現した。人間を軽く超える巨体に周辺の木の幹と同じ太さの腕、人間を軽くかみ砕けるであろう鋭利な牙を備えた顎。

 

「ほう、想像以上の妖精成体だな」

「殿下!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!!!!」

 

獣は一鳴きすると覆いかぶさるようにルートヴィヒに襲いかかる。そしてそのまま部下事体で押しつぶした。押しつぶされた人間だった肉片が周辺に散らばる。獣、妖精成体は体を起こし周辺を見渡した。

 

「ほう、あの一瞬で俺が潰されていないと気づいたのか。意外と賢いんだな」

「■■ッ!!!」

 

妖精成体は声のした方を見る。そこにはいつの間にか木の枝に腰を下ろし妖精成体を見下ろすルートヴィヒの姿があった。

 

「■■■■■■■■■■ッ!!!!!!」

「ふん、流石にこれ以上暴れると困るのでな。少し大人しくしてもらおうか」

 

ルートヴィヒは右手に炎の球体を作り出すと向かってくる妖精成体に放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界には魔力を制御しきれず魔物と化す獣とは別に古くから存在する獣がいた。それは妖精成体または単純に妖精と呼ばれるものである。半透明の妖精原体に憑りつかれた獣が姿を変えた姿でありその力は魔物をはるかに超え時には魔人すら超える力を持っていた。しかし、妖精成体になるために必要な妖精原体の激減に伴い妖精成体も数を減らし今ではほとんど姿を見なくなっていた。

しかし、完全に消えたわけではなく今でも人が入らない森の奥では存在しており民間伝承などで語り継がれていた。

 

「かつて人々は言った。妖精はこの世のバランスを司っていると。妖精が姿を消せば世界のバランスは崩れると。……実に愚かな事だ」

「では妖精がほとんど消えた今の世はバランスが崩れているというのか?そんなわけない。こうして今も人間の世界は続いている」

「ここは既に妖精の世界ではない。人間の世界だ。ならば妖精をどう扱おうとも人間の勝手であろう」

「俺は必ず成し遂げよう。魔法に現を抜かす今の世に新たな風を吹き込むのだ!」

 




妖精成体であっているのか……。生体なのか成体なのかは分からなかったので成体で統一してます。
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