妖精に魅入られた男   作:鈴木颯手

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アールスハイド王国ゼスキア公爵領公都ロンダキア

「妖精武器が奪われた?」

 

妖精成体を捕獲したルートヴィヒ・フォン・ゼスキア(旧姓アールスハイド)にもたらされた報告は意外な物であった。

妖精武器は妖精の力が込められた強力な武器でありこの世に七つしか存在しない。そしてそれらはルートヴィヒより功績が認められた最強の7人に与えられていた。

まさか奪わられるとは思っていなあったのである。

 

「はい、奪われたのはモルテラントで保有者ハリスタンは路地裏にて死体で発見されています」

「馬鹿な、奴とて7騎士の一人だ。そう簡単にやられるなど……」

「付近にはグイ・カーリンの者が確認されています。恐らく……」

「直ぐに全領境を封鎖しろ!あれが世界に出回る事だけはあってはならん!」

「はっ!」

 

妖精武器、ひいては妖精を使いこなせているのはゼスキア公爵領のみである。このアドバンテージは大きくルートヴィヒはこの保持を最も厳重に行っていた。

妖精をその身に宿す妖精兵程度ならまだ良かった。妖精兵にする方法が漏れない限り問題ないからである。しかし、妖精武器はそれだけで強力な力を持っていた。

部下が部屋を出て行くのと入れ替わるように一人の老兵が姿を現す。彼もまた7騎士の一人であるレイ・ドーンである。

 

「閣下、どうなさいましたか?」

「ハリスタンの馬鹿がマフィアに殺された挙句妖精武器を奪われた」

「それは……大変ですね」

 

レイ・ドーンは事の深刻さが伝わったようで眉を潜めていた。

 

「……この地を賜り早20年近くが経過した。俺ももうすぐ40になる」

「私はその時閣下の護衛として傍におりました。今でもその時のことを昨日の様に思いだせます」

「そこからここロンダキアを発展させ妖精の力を使えるようにして漸く最終段階まで来る事が出来た」

「我が心は閣下と共にあります」

「レイ……」

 

忠臣の言葉にルートヴィヒは笑みを浮かべた。

 

「……ところで、なんのようだ」

「はっ、実はフリードリヒ殿下が王都の高等魔法学院の試験の為にもうすぐに向かうとの事です」

「む、もうそんな時期か」

 

ルートヴィヒの長男フリードリヒは魔法の才があり成人を迎えた(15歳)ため高等魔法学院に試験を受ける事となっていた。フリードリヒはこれまで領地から出た事が無かったため領外の事を知るいい機会と受け取ったためである。

 

「確か護衛はアウラーだったか?」

「はい」

 

アウラーことネイン・アウラーは違法妖精取締機関ドロテアの局長であり7騎士の一人であった。本来彼女も多忙でフリードリヒの護衛が出来なかったが手が空いてないのと適任者の不在から選ばれる事となった。

 

「アウラーもかなり渋っていたな。まぁ、それならリスカーに任せると言ったら引き受けてくれたがな」

「彼の者には不適任ですからな」

 

彼らの言うリスカ―とは7騎士の一人ビーヴィー・リスカーの事である。戦争、戦闘を何よりも楽しみにしている傭兵でとても護衛を出来るとは思えなかったしさせたくはなかった。因みにレイ・ドーンにはこの後帝国との領境に行ってもらうため無理であった。

 

「なら息子に激励を送るとするか」

 

そう呟くとルートヴィヒは立ち上がり執務室を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殿下、到着しました」

「分かった」

 

フリードリヒはネイン・アウラーの言葉に頷き車を降りる。フリードリヒは表には出さないようにしていたがついつい周りを見回してしまう。彼にとって王都は初めて訪れるからだ。

 

「ここが王都か。……アウラーよ。ロンダキアの方が栄えているように思えるのだが……」

「実際そうでしょう。ロンダキアではあらゆる最新技術が集まる都市ですので」

「へぇー、確かその様にしたのも父上だったな。やはり父上は凄いな」

 

フリードリヒはアウラーの言葉を聞き改めて父の凄さに驚く。自分では到底真似は出来ない。そう思いつつ彼の心には一切の負の感情は湧かない。それだけ父の事を純粋に尊敬していたからである。

 

「試験が終わるまで待っていますので殿下は自分の持てる力全て使って頑張ってください」

「ああ、父の名を傷つけないように頑張るとも!」

 

フリードリヒはそう言って学院の方へ向かっていく。それを見送ったアウラーは心の中でため息をつく。

 

「(やれやれ、この視線にはまだ慣れんな)」

 

アウラーは先ほどから付近の視線を惹きつけていた。正確にはアウラーや彼女らが乗っていた車にである。ゼスキア公爵領以外では車は存在していなかった。最近漸く車の生産が各地で行われているがゼスキア公爵領の様な性能の良い車はまだ存在していなかった。

そこでふと、何か違う視線を感じた。アウラーがそちらの方に目を向ければこちらに驚いたような顔をしている青年の姿があった。青年は車というものを見て驚いているよりも何でここにあるんだ(・・・・・・・・・)という驚きをしているようにアウラーは感じたがゼスキア公爵領付近の者か?と思い直ぐに視線を逸らし殿下の帰りを待った。

 

「(嘘だろ!?何でこの世界に車なんてあるんだ!?まさか、俺以外にも転生者が……)」

 

その青年、シン・ウォルフォードは心の中でそう呟くのであった。

 




レイ・ドーンとかネイン・アウラーの口調ってこんな感じでいいのかな……?
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