Moon Light   作:イカーナ

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45.宮廷舞踏会[序]

 

 宮廷舞踏会。

 

 その開催規模は言わずもがな巨大であり、毎年恒例で開かれるその会には全国各地に散った王国貴族が一斉に集まるため、普段はその広さ故に閑散としたロ・レンテ城内も、期間中だけ賑やかとなるのはいつものことであった。

 

 今回も、そんな宮廷舞踏会には多くの者が集まっている。

 

 時間は夕暮れ時。

 

 開催の場である大広間には既に多数の高位の人間達が集まり、待ちきれぬとばかりに談笑を始めていた。まだ端のテーブルには多くの料理も並んでおらず、楽器を演奏する者達も最後の手入れと言わんばかりに立ち位置を整え、息を潜めている。

 

 そんな毎年いつも見ているはずの光景──。それを……栄えある王家の一員であるランポッサはただただ落ち着かぬ様子で眺めていた。

 このひと時がまるで──嵐の前の静けさのように思えてならなかったからである。

 

「……今回の会、みなには楽しんでもらえたら良いがな」

 

 ランポッサが冷静さを取り戻そうとしている中、隣に立つウィリアムが主催者としてそう言葉を零していた。その視線の先は会場の中央を眺めてはいるが、どことなくこちらに向けられたものでもあるような気がした。

 ランポッサはただそれを静かに首肯する。そして、ウィリアムと共に改めて今回の参加者一人一人に目を向ける。

 

 先ほども述べたように、今回の舞踏会にはかなりの人数が参加しており、長さだけでも50mを優に超える壮大な空間を埋め尽くさんとするほどに、王国の貴族──その他にも周辺国の使節や著名な商人などが集まっている。いや、勿論それだけではない。

 

(あそこにいるのは……帝国の宰相殿。それに右上には聖王国の神官? そしてあれは……)

 

 挙げればキリがないが、招待客には珍しい存在もちらほら見られる。その中には当然、まだ直接外交に携わることの少ないランポッサの知らぬ者も幾ばくかいる。

 

「陛下、あの隅にいる奇抜な恰好の者達はどのような方でしょうか」

 

「そうか。ランポッサは見るのは初めてか。……あそこにいるのは法国の特殊部隊。我も詳しくはないが、相当な実力者であり、彼らの神の護衛……とのことらしい」

 

「なるほど。ありがとうございます!」

 

 すなわち、普段は表に出てこない彼らさえ今回は出てきているということである。

 そこでランポッサは思い出す。そういえば()()()()()()()()もいたはずだと。

 

「そういえば陛下。帝国、法国、竜王国、聖王国の方は見受けられたのですが、その……評議国の方は?」

 

 そう、評議国だ──。

 正式名称をアーグランド評議国という()の国は、周辺国家では珍しく亜人主体の国家であり、その最上位者として国を治めているのは竜だという。そんな国の使者が今回やってくるという話を又聞きしていたランポッサは、どのような者が現れるのかと半分警戒していたものである。しかし、どこの集団を見ても亜人らしき者は見当たらない。

 

「ふむ。……来るという話は、伺っていたのだがな。確かに見当たらぬ」

 

 ウィリアムもまた顎髭を撫でながら、威厳のある様子で場を見下ろしていた。君主である彼には当然、参加者の情報も王国兵士や騎士達から上がってきているはずなので、やはり居ないということなのだろう。

 

(まぁ、ある意味今回はそれどころではない、か……)

 

 そうこうしているうちに、ようやく会も始まろうとしているのか、宮廷勤めの司会が段に上がり挨拶を始めたので、ランポッサとウィリアムもまた広間の中央に近づいて行った。

 

 

 

 道を開けられつつ、部屋を横断する形で敷かれた豪華な朱色のカーペットの手前に二人が到着すると間もなく、ぱちぱちぱちと周りからの盛大な拍手が国王に向けられた。だが、本来なら玉座に座る彼も今だけは主賓たちを持て成す立場であった。

 

 

 そう、いよいよ、前代未聞の舞踏会が開幕するのだ。

 

 

「皆様。そして、既にお聞き及びのことと存じますが──今回の会には特別な来場者の方が多数お越しになっております。まずはその著名な方たちを拍手でお迎えいたしましょう」

 

 司会がそれを告げると、今まで雑談を交わしていたような者達の関心も一斉にそちらに集まる。

 

「帝国の若き皇帝、アルフリッド・ルーン・ファーロード・シル・エル=ニクス陛下の御入場です」

 

 瞬間、『おお』という観衆の声が漏れだすとともに、満開の拍手を受けながらアルフリッドとその近衛の護衛達──一名はあちら側の将軍だろうか──が大扉の先から現れてくる。衣装は帝国らしい洗練されたものであり、派手というよりは夜会によく馴染んでいるという印象を受ける。

 

 そして極めつけはやはり、アルフリッドの優雅さそのものだろう。

 

 アルフリッドは堂々と道の上を歩きながら、にこやかに周りを見渡し、手まで振っている。その姿は自信に満ち溢れており、見目麗しい若き皇帝の"ご尊顔"を見た女性たちからは黄色い悲鳴まで上がっている。中には王国側の声も含まれていそうで、ランポッサとしてもそれで良いのかと言いたい気分であった。

 

「続きまして御入場いただきます。竜王国の栄えある女王、ドラクシス・オーリウクルス陛下──遠路はるばるお越しいただいております!」

 

 そう男が言うや否や、扉より歩いてやってくる竜王国の女王。心落ち着く時間がないとはまさにこのことだが、これもまた凄いという他なかった。

 女王とその側近の者はどちらも女性であり、見た目の美しさは勿論のこと、その佇まいも上品この上ない。

 さらに言えば女王であるドラクシスから発せられる人ならざるような威厳が、周りの者──いや、実際に言うと王家の者であるランポッサさえも感嘆させたのは確かだった。

 

「流石に凄いですね」

 

「うむ、だが……お主もいつかあれに混じっていくのだぞ?」

 

「陛下」

 

 小声とは言え、まぁまぁ大胆な発言をする国王。それを諫めるランポッサであったが、次の瞬間にはウィリアムは顔をこちらに向けて、極めて真面目な顔で話しかけてきた。

 

「では、私もそろそろ彼らの元に行ってくるとしよう。……ランポッサ、次の入場はよく見ておきなさい。きっとそれはお前にとっても──今後の王国にとっても、()()()()()()()ものとなる」

 

 そう言い残すとウィリアムは向こう側へと去っていく。ランポッサが呼び止める間もなく。

 

(さて、司会も言っているが聖王国の王は諸事情により代理の出席、そして評議国の代表も不在か。となると残るのは──)

 

 そこまで考えが行き着くと、ようやく司会による最後の紹介が行われた。それはどの時の口上より重く、そして慣れた者であっても隠し切れない緊張感を孕んでいた。

 

「最後に──スレイン法国、最高神官長および六色神官長。そして……」

 

 

 

 

 先日人の世に舞い降りた神ご本人が、ご入場になります。

 

 

 

 

 司会もよくそれを言いきれたものだと、ランポッサはその時になって初めて思った。それほどまでに目の前に現れた光景が現実的でなく、形容し難いものだった。この時のことを、きっとランポッサは生涯忘れないだろう。

 

 歩いてくる()()は夜の全てを支配するような"漆黒の衣装"に身を包み、けれどこの世の全てを照らすような光輪を背負っていた。

 彼女が踏みしめる一歩一歩が、まるで小さな振動となってランポッサの足元に伝わってくるような──そんな奇妙な感覚さえ感じ、もはや場の雰囲気に押され感情がおかしくなっているのか、それとも何かの魔法が働いているのかそれさえ分からない。

 ただ、ランポッサは彼女の存在感に圧倒されるのみだった。

 

(あれが神、なのか)

 

 人知を超えた存在という言葉には──納得しかなかった。

 これを相手にウィリアムが普通に会って話してきただろう事実に、今更懐疑の念が浮かぶほどである。

 

 

 ……あまりにも凄すぎて誰も言葉を発せない。

 

 

「……」

 

 

 そうしている内に神はそのまま極めて長い白髪を揺らしながら、皆の間を優美に通り抜けていった。その間──不敬にも当たりそうな話だが──拍手する手すら動かせたものは殆どいなかった。

 

(私も甘かった……。ただ、この様子であれば万が一にも王国貴族から変な問題を起こすこともないだろう)

 

 ランポッサは堪えきれず息を吐くと、最後に対岸に並ぶ大貴族の一人、ボウロロープ候に目をやる。開催前まではかなりいきり立ち、神を過小評価していたボウロロープ候だが、今の彼はすっかり腰を抜かしそうになり、目を回している。隣にいる腰巾着の貴族達も同様だ。

 

 まぁ、あれを見せられれば仕方ないとさえ思える。

 

 ランポッサは改めて歴史上で神と呼ばれる存在の偉大さに感服し、そして、今後の立ち回りについて深く考え直すのだった。

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

(あ、あれ?)

 

 すたすたすたと、会場のど真ん中を足早に通り過ぎる者がいた。その者は白い髪を置き去りにするように、けれど湧き上がる大丈夫か? という感情を決して見せないように、全力で虚飾の神々しさを演出しつつ、その場を後にしていた。

 まぁそれもその筈である。何故なら、自分より前にここを通っていた帝国や竜王国の代表である二人組は皆堂々と入場していき、それでいて巨大とも思える拍手を貰っていたのだから。

 

 神と持て囃されているものの、中身はやはり一般のそれと変わらないツクヨミが不安に思うのも無理はない状況であった。

 

「知らずのうちに、なんか粗相でもしたかな……」

 

 小声でそんなことを漏らしつつも、結局リアルでも経験のない内容であったので、「ええい! もうなるようになれ!」という気持ちでツクヨミは目の前の首脳陣と合流する。ちなみに今回の舞踏会本番で最終的に着てきた装備はアベリオン丘陵に行ったときと同じ伝説級相当のドレスであり、夜会ということもあって先程神官長とも話しつつ、少し衣装を変えてみたのだ。

 

 

 まさか魔女っぽかったなんてことはないだろう。うん。

 

 

 丁度その時、後ろから着いてきていた最高神官長──な、泣いている? ──も合流し、場の緊張が解かれるように華やかな音楽も鳴り始めた。

 

 

「神よ。間近でこのような場に立ち会えたこと、光栄の極みにございます」

「まさに。世を照らす光そのものでした」

 

「あ、ありがとうございます……?」

 

 そのまま最高神官長は手拭いで涙を拭くと、「失礼」と言いつつ、各国の代表たちの前に歩み出た。

 

「ウィリアム殿。エル=ニクス殿。そしてオーリウクルス殿。一人感極まってしまい申し訳ない」

 

「いえいえ。私も神であらせられるツクヨミ殿の御姿には、改めて尊崇の念を抱きましたよ」

 

「私としても、本気モードはこれほど凄いのかとびっくりしたものだ」

 

 等とアルフリッドを初め、女王であるドラクシスも口々にこちらを賞賛してくる。それが社交辞令なのかは少々分からないが、王国の王であるウィリアムもまた、それに力強く頷いていた。

 

 そうしてその場に──更に聖王国からの使者である最高司祭──キャリスタ・カストディオも合流すると、その流れで少し立ち話が起こった。まぁ彼ら全員が一国の王や代理であるのだから、きっとこういった場で話したいことも多いのだろう。そんな中ツクヨミはどうかというと……正直内容的についていけないので、『ふんふん』と、とりあえず神っぽく突っ立っておくのみである。

 

(まぁ私も今回はあくまでシンボルというか。神官長のアシストが主な訳だし、変に出しゃばらないくらいが丁度いいかもしれない)

 

 そしてその方がツクヨミとしてもやりやすいのは事実だ。ツクヨミは絶妙な距離感に立っている給仕から、漆黒聖典隊長を挟んで行われた飲み物のようなものの提供を今の状況を鑑みてやんわり断ると、その流れで周りに並べられている料理の数々に目を向けてみた。

 

 匂いこそそれほど強くないものの、視界端のテーブルには赤身のかかった新鮮そうなステーキや、この世界ではかなり高級そうな部類のパンが並んでおり、良くないとはわかっていても強制的に気が逸らされた。だが、当然ながらがっつきに行ける訳もない。

 

(拷問か……)

 

 そんなこんなで密かに肩を落とすツクヨミだったが、主催者であるウィリアムがやんわりとこちらの状況を察してか、いよいよ本題に入った。

 

 

「さて最高神官長殿。今日は話があるとのことでしたが、長々と立ち話するのもあれですので、宜しければあちらの席で会話しますか? 勿論、食事等を楽しまれた後でもよいですが」

 

「神は──。いえ、問題ないとのことですので、ウィリアム殿の御言葉に甘え、そろそろ本題に移らせていただいても? 存外時間が掛かるやもしれませんので」

 

「承知いたしました。では、エル=ニクス殿。オーリウクルス殿、それにカストディオ殿も問題ないでしょうか」

 

「無論だよ」

「あぁ、問題ない」

「御話の旨、承知いたしました」

 

 ウィリアムは全員の返答を聞き頷くと、部屋の隅──巨大な階段の隣にあるラウンドテーブルまで皆を案内した。

 

 

「では、話し合いを始めましょう──」

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 大理石を用いて作られた円形の机、その周りの席には合計して6名の人間が座った。

 

 一人は当然リ・エスティーゼ王国の国王であるウィリアム。その右には順に、バハルス帝国の皇帝であるアルフリッド、スレイン法国の神であるツクヨミ、そしてウィリアムの対面となるように──同じくスレイン法国の最高神官長であるオルカー、聖王国の聖王代理である最高司祭・カストディオ、最後に竜王国の女王であるドラクシスである。

 

 これだけの面々が一つの場に集まることは、これまでの人類史を見ても初であろう。

 

 厳重に周りの警護が固められ、魔法さえ掛けられているこの空間に押し入ろうとする者はもはや王国貴族でさえもおらず、皆が口を噤んだこの場には、舞踏会広間に鳴り響く美しい音楽だけが流れていた。

 

「まずは、改めてこのような場を設けてくださったリ・エスティーゼ王国、国王陛下に感謝の意を表する。また、急であるにも関わらず集まってくれた各国の代表にも礼を言わせていただきたい」

 

 オルカーはそう言ってから、真剣な顔色で話し始めた。

 

「今回集まっていただいたのは、法国より事前にお伝えした通り、()()()()()を各国にも知っていただくため、というのがメインになります」

 

 皆頷きながら、真剣に周辺国家で最大の国主にあたる老人の言葉に耳を傾ける。勿論ツクヨミもそうである。

 

「結論から申し上げますと、人類は極めて危篤な状況()()()。知っているかもしれませんが、まず我々人類は大陸において端の領土に追いやられている状況であり、その周りには強大な力を持つ亜人──そして魔獣やドラゴンといった強大な存在が国家レベルで囲むように点在しております。そしてそれを最も実感していたのは竜王国でしょう」

 

「……うむ、正しくそうだ。竜王国は近年もビーストマンの被害が抑えきれぬほどに苛烈な攻めを受けていた。それを静止してくれていたのが法国だったのは私からも真実だと証言できるし、もし()()()()竜王国が倒れていれば、次に攻撃を受けるのは他の国家だったのは間違いないように思う」

 

「なるほど。女王陛下は一国家だけの問題ではない、と。そう言いたい訳だな?」

 

「まぁ実直に言えばそうだな。勿論竜王国の問題なのは重々承知しているが──と、話せば長くなるので、神官長殿にお返ししよう」

 

 オルカーは頷き、続ける。

 

「オーリウクルス殿が述べてくれたように、周りの亜人国家は強大そのもの。そしてそのために、スレイン法国は人類存続をかけ、500年に渡り尽力してきました。ただ、それでも限界というものはありました──」

 

「──我々は全てを背負って、更には全てを公にしないまま周辺国家の安寧を守り切るほどの力は無かったのです。そして当然綻びが生じ始めていた。そんな我らに力を貸してくださったのが、この場におわすツクヨミ様です」

 

 いきなり話を振られたツクヨミは、荘厳に目を瞑って会釈する。

 そこでオルカーは意を決したようにある言葉を口にする。

 

 

 

 

「皆様は 百年の揺り返し についてご存じでしょうか?」

 

 

 

 

「百年の、揺り返し?」

 

「申し訳ないですが、存じ上げませぬ」

 

 ウィリアム含め、多くの者が知らないという表情をする。当然だ。何故ならそれはスレイン法国が今まで、若い周辺国家を混乱させないために持ち出さなかった機密中の機密なのだから。それこそ辛うじて知っているのは竜王直系であるドラクシスくらいだろう。

 

「百年の揺り返し……それは100年ごとに神の力を持つ者がこの世界にやってくるという法則。それは500年前の六大神様に始まり、八欲王、ツクヨミ様と今でも続いております。勿論、明確に確認されていない時期もありますが──これが意味することが分かりますか?」

 

「ふむ、私はおおよそ分かったように思う。つまり、思った以上に我らの生存圏は不安定……そういうことだろうか? それこそ周辺国家でいがみ合っている暇がないほどに」

 

「聖王国の神殿祭司としましても、100年という周期は長いようで存外短い気もしますね。八欲王のような影響を考えると」

 

「まさにそういうことです。逆に言えば、我らが手を取り合えるタイミングは今しかございません。ツクヨミ様がいる──この時代でしか」

 

「……」

 

 皆、それを受けて口籠る。

 曲がりなりにも国家の代表たちだ。もはや内容と状況は概ね理解している状況で、あとは国主としてどういったスタンスで発言すべきか。その一点のみが彼らの頭を回転させている。

 それにぶっちゃけてみるとかなり先の長い話である。そのため「もう少し考えてからでもいいのでは?」といった後ろ向きな発言が出ることも全く不思議ではない。

 

 そんな中、最初に発言したのは若き皇帝であるアルフリッドだった。

 

「なるほど。状況は理解した。最初に言っていた人類の現状、そしてそのために協力すべきということ。まぁ多少は事前に聞いていたというのもあるが、帝国としては大いに賛成する内容だ。必要あらば法国への今後の支援も、帝国であれば可能だろう」

 

 アルフリッドは意外にも前向きな発言を繰り広げ、そのまま話を終える。その思惑としては勿論今後の揺り返しを見据えた部分もあるだろうが、それよりも成長途中の帝国が規模として明らかに上位にある法国と対等な関係を結べる良いきっかけ。そのようなところも間違いなくあるだろう。

 

 次に、話を静かに聞いていたウィリアムも口を開く。

 

「王国も同じ気持ちだ。近年の情勢は曲がりなりにも良くはない。このような時こそ大きな括りでの協力関係があるというのは双方にとって大きいだろう」

 

「私の答えは決まっている。竜王国は勿論──」

 

 話はいい方向にまとまりそうであった。

 

 法国やツクヨミといった面々が安堵の念を抱く。そしてドラクシスが口を開きかけた時その時。

 

 

 ────

 ──

 

 

「失礼、ちょっといいだろうか」

 

 

「!?」

 

「なっ!?」

 

 音もなく、いきなりその場に現れた者がいた。それは──欠けていた招待客の一人。

 明らかに場違いな白銀の鎧と全身ほどの長さのある4つの武器を身にまとい、頭部には竜を模した兜を被った評議国絶対の存在。

 

 竜王、ツァインドルクス=ヴァイシオンであった。

 

 

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