Moon Light   作:イカーナ

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先週に引き続きの投稿になります。
まだの方は前話(玉座での会話)からお読みいただければと思います。


64.頂上決戦

 劇的な身振りも、高揚した雄叫びも、武人の構えさえそこには無い。

 あるのは、ただ冷淡に相手を効率的に処理するためだけの、機械的な所作。しかし、その氷のような挙動とは裏腹に、目の前の男に纏わりつく感情は――数百年の憎悪を限界まで煮詰め、どす黒く焦げ付かせた窯のような熱量だ。

 

「――ゆくぞプレイヤー……いやこの世界の異物よ。――"光衣"」

 

 七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)は初めて目を見開き、そして、溜めていた全ての殺意を爆発させるように雪の上で跳躍した。

 

 その速度も尋常ではない。

 

 ツクヨミが呼吸し、白い息を吐き出すほんの数秒。更にそれを一万分の一に圧縮したような、途方もない一瞬。音さえ置き去りにしながら老人、いや老竜は、スレイン法国唯一の神の眼前へと既に移動を完了させていた。

 羽毛の生えた豪奢なローブの下に隠された剛腕が隆起し、プラズマを纏った刀身1mを超える巨大な虹の双剣が、限界を超えた遠心力と共に放たれる――

 

 

 ガキンッ!!

 

 バッッ!!ガァァァァァァァアアアン!!!!!!!

 

 

 そんな、聞いたこともないような衝突音が氷雪のど真ん中で鼓膜が破れんばかりに鳴り響く。

 吹き荒れるホワイトアウトを切り裂き、人間の首と胴を確実に切り離すための正確無比な二連撃が叩きこまれる。

 しかしそこに、血塗れの彼女は――やはりいない。

 

「魔法か」

 

「……いえ、これは違います」

 

 ツクヨミの左手がそれを受け止めるように雪の上で光り輝く。

 二人の間を分かつように発生したのは黄金透明色の盾――神聖の盾(セイント・プロテクター)。世界を破壊するほどの一撃を片手で受け止めながら、ツクヨミは静かに口を開く。

 

「御返ししましょう」

 

 即座にツクヨミの右手が完璧な弧を描きながら振り上げられる。

 握りしめられているのは彼女の持つ神器級(ゴッズ)の細剣コンフラクトゥス。

 

 空間を歪ませるほどの剣先が周囲の雪原を諸共破壊しつつ、正確に七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)の首へと向かう。

 

 当然七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)もそれを察知する。

 身を捩りながら強引にそれを避け、そして空中で体勢を変えながら、上下左右に及ぶ3連撃を放つ。相対するツクヨミはそれを右手の剣だけでいなし、攻撃を完全に受け流しきった後、左手の先に浮かぶ盾を変形させながら、更なるカウンターとなる刺突を行った――

 

虚空の聖針(ファンタム・ニードル)罰する十字架(パニッシュメント・クロス)

 

 その複合的な特殊技能(スキル)発動に、七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)は珍しく眉を顰める。ツクヨミのその"突き"に合わせて、無数の細い光の針が飛び出し、目前の老竜に容赦なく突き刺さったのだ。更に、追加で放たれた透明な光の十字架が、肉薄する彼の巨体を容赦なく吹き飛ばす。

 

 七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)が深い吹雪の中に吸い込まれる。

 無論、大きな負傷はない。

 だが、ツクヨミの狙いはそこではなかった。

 

天界の気(ヘブンリィ・オーラ)上位全能力強化(グレーターフルポテンシャル)上位硬化(グレーターハードニング)神域加護(サンクチュアリ・プロテクション)――」

 

 ノックバックの合間を縫ってか、ツクヨミがすかさず身体強化の(バフ)魔法を連続して発動していく。

 ただ、達人同士の戦いにおいて、こんなもの隙だらけの行動に他ならない。

 当然ながらそんな愚挙をまざまざと()()()()()()()()()()()()――七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)ともあろう存在がそれを咎めない訳がなかった。

 

 だからこそ、ツクヨミは敢えてこのタイミングでそれを発動し続ける――

 

「そうか。先ほどの。……それが貴様の持つ"策"か」

 

 再び走り出した七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)が目を細める。

 強烈な怒気に反し、その身体が空中で不自然なほどに失速する。

 胸を貫いていた虚空の聖針(ファンタム・ニードル)による不可視の時間差デバフにより、一瞬の硬直が生じ、今度こそ竜王の出足を完璧に挫いていたのだ。

 

「――付与(エンチャント):嵐天の神雷斬(ストーム・ライトニング)

 

 ツクヨミは既に、"七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)の背後"に回り込んでいる。

 暴風と雷を纏った神速の一閃が、無防備な老竜の背中を切り裂いた。

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

強烈な雷鳴により膨大な水蒸気が発生し、周囲を霧で白く濁らせる。

そしてすぐにそれが暴風で霧散した。

 

「なるほど、これが"ぷれいやー"による一撃。確かに危険なほど強く、洗練されている」

 

 ジ、ジジ……と、剣先から伝わる硬質な鱗のような感触。

 

「しかし、この程度で我のこの肉体を切り裂けると思ったのならば、それは完全な誤りだ」

 

「……」

 

 初期交戦を終え、おおよその相手の力量を確かめることが出来た。

 そのうえで、ツクヨミの表情は普段よりずっと冷徹だった。

 

(反応速度が思ったよりずっと速い。いや……これは読まれていたか)

 

 吹雪の先に立つ、身長2mを超える巨大な老人の壁。

 七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)は既に横を振り向き、そこに剣を差し入れていた。それでも一応虚をついたからか、ツクヨミの放った刀身の一部は七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)の横腹を微かに掠めており、雷光と真空波がバチバチと音を立てながら、相手の身体に今も襲い掛かっている。

 

 ダメージは間違いなく入っている。しかし、それでも決定的な手ごたえは無い。

 

(付与(エンチャント)は一応通用している? 何にせよ、()()な)

 

 端的に言うなら、今までの相手と比較にならないほど強い。それに尽きた。

 

 相手の反撃を避けるように、ツクヨミは雪の舞う空中へ飛び退きながら、その視界――先ほどから発動している探知魔法生命感知(ディテクト・ライフ)の状態を吟味する。

 やはり体力はほぼ減っていない。それどころか、微増している気さえする。

 

(まだまだ情報が必要そうだ)

 

 情報――。生粋の(ドラゴン)が人型形態に変わっているとドラクシスに城下で教えられた時から、そして交戦が確定した時から、ツクヨミの優先順位はそれだった。

 

『情報の収集』と『準備』である。

 

 戦闘開始前、七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)は明らかにこちらに時間を与えなかった。そのうえで、ツクヨミはせめて周囲の環境を見てから装備を入れ替えることを最優先とした。戦闘開始後も大忙しだ。周囲に他の伏兵が潜んでいないかや、奇襲用の罠が設置されていないかの探知、体力と魔力はどちらが多いのか、地形に妙なデバフがないかを確かめていた。

 

 ここまで1分弱。

 

 尤も、それらに意識の大半を割いてしまったことにより、事前に安全な状態でバフを発動する時間が取れなかったのは戦闘者として大きな隙だっただろう。

 

(今のところ、七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)も本気を出してきている感じはない。私も出し惜しみは出来ないが、手札を切るタイミングは考えないとな)

 

 特に気にしているのはツクヨミの背中に浮かぶWI(ワールドアイテム)光輪の善神(アフラマズダー)の存在だ。これは正直に言うと、攻撃の手札として使えるものではない。

 ゲームの性質上殺傷能力・効果範囲共に最強クラスだとはいえ、その実 使い切り。しかも最悪の場合は世界中の「カルマ値が負の人々」を巻き込んだ大虐殺を引き起こしかねない。カルマ値不明の相手にこれを切り、加えてWI(ワールドアイテム)と同質の防壁を持つという『真なる竜王』にこれが効かなかった場合、無駄に守りを失ったツクヨミの"死"が確定する。

 

 少なくとも情報が纏まらない中では絶対に使えない――見せかけの切り札だ。

 

 ツクヨミは目の前で突進し、自分の着地を狩ろうと動いてくる老竜に対し、技を発動する。

 

三位一体の聖刃(トリニティ・ディヴァインエッジ)、解放!」

 

 ドゴンッ!! と重厚な衝撃音と共に、雪の舞う足元の土壌――塔部分も含まれるかもしれない――が粉砕される。そこから突き出したのは、ただの光ではない。三つの光の渦を纏い、回転しながら天を突く一本の巨大な聖剣だ。それが地雷のように七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)を襲う。

 

「ふんっ」

 

 老竜は強引にフィジカルでそれをいなしてくる。

 これも能力による防御ではなく、明確に回避してくる。

 ツクヨミはそれを目視してから、敢えて貴重なMPを使用し、最適なタイミングで魔法を飛ばす。体勢の関係上これは避けられないだろう。

 

陽光球(シャイニング・スフィア)

 

 が、それは七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)に命中するや否や、透明な膜に吸収される。ルフスが書き残した通りの、想定通りの挙動だった。

 

(なんだ今のは? 熱の部分を吸収した? しかし、かなり厄介だ。私が魔法詠唱者(マジックキャスター)だったら絶対戦いたくない相手だろこれ……) 

 

ツクヨミが高まる緊張感から息を吐く間もなく、目前にはもう七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)が飛び込んできている。

相手の足を遅らせたため安全な着地はできている。ただ、勢いをつけた敵の斬撃はやはり重く、それをコンフラクトゥスで受け止めると再び、ツクヨミの肩に、まるで山が一つ乗っかって来たかのような重さがのしかかってくる。

 

「プレイヤー、貴様に我は倒せない。……数百年前のお前の同胞達と同じように、血の海に沈むがよい」

 

「っ!!」

 

 しかし、今回はそれだけではないようだ。七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)は人型の姿をしているが、その実やはり竜であった。

 老人は口を開き、その喉の奥から絶対零度のブレスを吐き出してくる。しかも、腰から突然生えてきたのか、長さ1mを超える巨大な虹の"尾"が、ツクヨミの足を狙って正確に飛び出してくる。

 

 ツクヨミはそれを即座にその場を飛び退くことで回避するも、左の掌を負傷する。純粋な痛みが指先まで走る。一瞬掠っただけだが、それだけで皮膚が凍りつき、"火傷"している感じがする。

 

飛行(フライ)

 

 ツクヨミが離脱用の魔法を発動する。しかし、相手の攻勢は留まるところを知らない。

 

「!?」

 

(何っ!!)

 

 ここで初めてツクヨミは未知の衝撃に表情を強張らせた。

 

 鎖だ。

 

 ツクヨミの右の足首に、氷原から生えてきた光り輝く鎖が巻き付き、空へ飛び立つことを徹底的に阻んでいた。これは完全な想定外だった。

 なぜなら、ツクヨミは移動阻害・拘束系に対する完全耐性を有している。そのユグドラシルの強固なシステムを無視し、貫通する性質が、これには付加されているということだ。

 

 そしてその隙を見逃さず、更に敵からの、踏み込んだ強烈な一閃が放たれる。上は無理だ。

 なら――

 

加速(ヘイスト)

 

 竜王(ドラゴンロード)の限界さえ超えるような速度で、ツクヨミは瞬時に体勢を回転させる。ぎりぎり剣を真下から潜るように避け、そして目前でもう片方の剣を使い追撃しようとしてくる相手に、今度はツクヨミが負傷した左手を突き出す。

 

「……それは舐め過ぎですよ? 神聖の盾(セイント・プロテクター)、そして戻ってこい。聖刃(ディヴァインエッジ)ッ!!」

 

「何!? ぐっ!!」

 

 ツクヨミはこう見えてこの戦闘中、常にリソース管理を徹底している。

 回転する神聖の盾(トワリング・セイント・プロテクター)よりも回数に余裕がきく神聖の盾(セイント・プロテクター)や、使い回しが効く三位一体の聖刃(トリニティ・ディヴァインエッジ)、燃費の良い高位階魔法の数々。そしてそれらを何度もサイクルさせることで、純粋な魔法職よりも遥かに許容量が少ない魔法戦士という職のMPを極力温存する。言わば、人間戦士職の膨大な特殊技能(スキル)とは、そのまま温存できる手数を意味している。

 

 ただ、先程WI(ワールドアイテム)を例に挙げた通り、先手を自分がいつ切り、相手に使わせるか……それを考えているのは相手も同じことだ。

 現に、七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)もこうやって技を絞り、"光衣"とかいう地味な魔法しか未だ発動してきていない。

 

(思えばあれが身体バフか、システムを無視する始原の魔法(ワイルド・マジック)の一つだった?)

 

 それを特定する術は、今のツクヨミにはない。

 なんにせよ相手も探り探りで戦ってきているという訳だ。

 手札の切り方一つ一つが命取りになる状況、ツクヨミは足元の鎖を、嵐天の神雷斬(ストーム・ライトニング)の余波が残った剣で無理やり引き千切りながら、体勢を崩した老竜を再び弾き飛ばす。

 

罰する十字架(パニッシュメント・クロス)。更に第十位階魔法、第十位階怪物召喚(サモン・モンスター・10th)

 

「――ならば、三色散乱。出でよ、蒼魂(アズール)藍魂(インディゴ)紫魂の神託(バイオレット=アニマ・オラクル)

 

ツクヨミがアイテムボックスから取り出した魔封じの水晶が砕け、その魔法の光の中から影の魔狼(シャドウ・フェンリル)が現れる。レベルは68、同格のケルベロス然り、この戦いには少々心許ない。対し、相手の召喚したそれらは、城で見たものと同じ、レベル80前後。それが三体。

 

 上空に吹き飛び、そこから三龍を召喚する七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)

 すぐに三色の巨大な龍が地上(こちら)側へ飛来する。

 

 ツクヨミが高位階の属性魔法をもう一度発動してやれば、三色の龍もその魔法を容赦なく吸い込んでいく。ツクヨミは体勢を整え、不可視化さえ巧みに操りながら時間差で殴りかかってくるそれらを剣の手捌きだけで迎撃、衝撃波によりまたもや地形が破砕する。

 そしてそれに追従するように影の魔狼(シャドウ・フェンリル)が背後から跳躍し、口から漏れ出る暗黒の吐息を闇の刃に変換しながら、破砕した氷雪を蹴りつつ飛び回った。

 それは三龍より格下であるにも関わらず、明確なダメージを彼らに与えていく。

 

 意識外の攻撃を受けた各色魂の神託(アニマ・オラクル)

 そしてその攻撃を意にも介さず、"周囲の原生生物を1撃で抹消するようなレベルのレーザー"を高速で乱射し、またもや別の属性魔法を無効化する姿を見て、ツクヨミはその守りの性質を完全に把握する。

 

(魔法を自動防御している訳じゃない。――飛来する属性を事前に察知し、可能な限り自身の耐性に合うようにリアルタイムで書き換えているんだ)

 

 本来、ユグドラシルのシステムにおいて耐性のスロットは固定されている。

 にもかかわらず、彼らは戦況に応じて自分の『無効』や『吸収』の属性になるよう飛んでくる魔法自体を書き換えている。

 自分に有利なパッチを都度当てるなど、それこそゲームの前提を揺るがすチートに他ならない。

 

 ツクヨミは、あの時ドラクシスに伝えられたことを思い出す。

 『七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)が得意とする魔法は"書き換えと変質"。色を操るように、魔法と姿かたちを変化させることができる』

 それを聞いた時から、何となく思い当たる力はあった。そのうえで――

 

 ルフスがあの玉座の間で書き残した一文――

『炎・冷気・電撃等の多種魔法耐性、神聖属性不明、闇貫通。位階魔法の行使』

 

 無法に見える竜王(ドラゴンロード)にも得意・不得意がある。

 加えて、ツクヨミの目には七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)自身がMPを持っていないように見えている。そのため、もしかするとこの老竜は、ユグドラシル由来の魔力を外部に蓄え、自身にとって使いやすい形に変更しているのかもしれない。

 

 無論、ただの憶測に過ぎないし、分かったところですぐに攻略できるわけではない。

 だが、それでもここまで情報が揃えば、その能力の答えが段々と見えてくる。

 

 雷鳴のように剣を構えて落ちてくる老竜の攻撃を身を捩ることで回避しながら、ツクヨミはその再三の剣戟をコンフラクトゥスで受けきる。

 

 そして――すかさず手元でカウンターを行うも、敵の予想外の行動に待ったをかけられる。

 

「――第十位階魔法、光輝赤(ボディ・オブ・イファルジェント)(・ヘリオドール)

 

「なるほど。……それもいけるのですね」

 

 ツクヨミの、相手の胸部を完璧に捉えたはずの斬撃がそれにより無効化される。

 もはや相手は防御さえしておらず、その分を攻撃に全振りしている。当然、七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)のテールアタックは寸分の狂いもなく繋がり、辛うじてそれを防いだツクヨミが、その衝撃でくの字に後方へ吹き飛ぶ。

 

 影の魔狼(シャドウ・フェンリル)を難なく空中で引き千切った三匹の龍の口から、そして地面からそれぞれ、先程の"鎖"が発生する。

 

 荒れ果てた雪原の上でツクヨミは低姿勢で着地する。コンフラクトゥスを握る右手が、頭上からの鎖に繋がれる。

 スカートが捲れたタイツ越しの太腿の先、右足首には地中から出現した鎖が繋がれ、そして左腕の肩部分、左足首にも光り輝く鎖が凄まじい強度で巻き付いていた。

 

(なるほど。これが七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)始原の魔法(ワイルド・マジック)。魔法を書き換え――世界を支配する。……もしこれの対となるWI(ワールドアイテム)があるとするならば、それはあれしかない)

 

 

 

 五行相剋だ。

 八欲王がかつて使用したとされる最強格のWI(ワールドアイテム)、二十の一つ。

 

 

 

 ツクヨミは息を呑む。無論、全てが同じではないかもしれない。

 ただ、竜王(ドラゴンロード)の力とツクヨミらの力――即ち始原の魔法(ワイルド・マジック)WI(ワールドアイテム)が拮抗したものであるとするならば、根源は同じだと考えられる。

 七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)は五行相剋のように木・火・土・金・水を操る能力に近いのだろう。恐らく人間形態と竜の形態を行き来しているのも、この力が働いている。ただ、ユグドラシルでの五行相剋は運営にお願いするアイテムだった反面、七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)はそれを自分の身体に取り込んで行使しているような状態。

 

 言わば『魔法の絶対的支配者』だ。

 

 ツクヨミは真横で固定された右腕を引くが、動かない。単純な移動阻害ではない。

 恐らく先ほどの状態異常耐性貫通による拘束効果がツクヨミの全身に発生している。

 

 目の前に鋭く視線を向けると、七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)が少し離れた位置から、即座に魔法を放ってくる。

 

「卑怯だとは言うまいな。……貴様らが変えた"この世界の魔法"だ」

 

 対個人において最も効率的に相手の命を削りとる炎系最強の攻撃魔法、朱の新星(ヴァーミリオンノヴァ)が目の前で放たれた。

 




七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)戦、思ったより法外な感じになりました(白目)

次回以降ですが今後は週一~二週に一回程度の、なるべく早い頻度での投稿を予定しています(以降金曜20:00頃に投稿すると思います)
そのため、少し文量がスリムになったり、多少の誤字が発生したり微妙なミスをしたりする可能性がありますが、なるべく完結に向けてテンポよく進めていく所存です。
引き続き感想などいただけますと励みになります。今年は一緒に新刊を待ちたいですね

2026/7/20 後書き:本話について一部台詞のニュアンスを若干変更いたしました。
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