「あーもう本当にどうすればいいのさ。夢想も1人で行っちゃったし」
まあ、正直なところそんなに心配はしてない。だってあの夢想だし。それよりも、デュエルだデュエル。さっきの変な人の話はよくわからなかったけど、とりあえずデュエルをすればいいことだけはよーくわかったしね。
『まあ、さすがはデュエル脳というべきか。それはこいつもだが、見知らぬ所に飛ばされてどうしようかってなってるわけで』
「だってしょうがないじゃん!」
『気持ちはわかるがな』
ほらみろ。それなのに僕ばっかりおかしな人みたいに言って。
「というわけで、出てきてサッカー!」
デッキに向かって声をかけ、シャーク・サッカーの精霊を呼び出す。すぐに出てきてくれたサッカーの頭をよしよしと撫でながら、一つ頼みごとをする。
「サッカー、悪いんだけど他のデュエリストを探すの手伝ってくれない?なかなか見つかんなくてさ………僕はあっちの方に行くから、サッカーはこっちの方お願いね。あんまり遠くに行っちゃだめだよ」
なかなか理不尽なお願いにもサッカーは嫌な顔一つせずにこくこくと頷くとシャーク、と一声鳴いて空中をゆったりと泳ぎ始めた。うーん、だけどやっぱり知らないところに一匹で行かせるのは不安かも。
「ブリザード・ファルコン召喚!ファルコン、悪いけどかくかくしかじかで、サッカーと一緒に行ってやってくれる?」
これまたコクリ、と力強く頷いて飛んでいくブリザード・ファルコンの後姿も見送る。よし、これで大丈夫だろう。
『お前なー……いや、もー何でもいいや。だけどまあ1つ言うなら、その必要はなかったみたいだぜ』
「へ?」
それはどういう意味か、と聞き返す暇もなく。
「おーい」
「!!」
僕のファーストコンタクトは、不意をつかれる形で行われた。
「い、いつから僕の後ろに!?」
「少し前から。…なるほど、精霊のカード持ちか」
「君は精霊を知ってるの?」
『ほう』
「ああ、色々特殊な事情持ちなものでね。近くで浮いているシャーク・サッカーの姿がよく視えたよ、アカデミアレッド生」
そんなとこから見てたんなら、サッカーとファルコンを行かせる前にひとこと声をかけてほしかったと思う今日この頃。とりあえずあの2匹が帰ってきたらクッキーでも焼いてねぎらってあげよう。
「アカデミアのことも?じゃあ君は…」
「ん?ああ、俺はアカデミア生じゃない。というより、デュエルアカデミアなど、俺の世界には存在しない。もちろんデュエルモンスターズはあるが」
「え?じゃあ…」
そこまで言ったところで彼がにやり、と笑みを浮かべる。ああ、つまりやっぱりそういうことか。うすうすそんな気はしてたけど、まだ実感がなかったよ。
「ああ、どうやらあの腹黒そうな眼鏡の言うことに半信半疑だったようだが、俺はそっちの世界の者ではなく、まぎれもなく別世界の住人だ」
「てことは他の世界からも人が来てるってのは、本当だったんだ」
「俺もあんたがこの世界で初めて会った人物だから、完全にはそうとは言えないが、真実と考えていいと思う。…何よりあんたも何か持っているのだろう?得体の知れないのが何となく感じる」
「っ…!」
得体のしれないものだってさ、チャクチャルさん。かわいそうに……。
『む、心外だな。それが私のことだとは言われていない、むしろ誰とは言わないが……』
『精霊やデュエルアカデミアのことも知っていて、ただ者じゃねぇようだが、俺の姿は視えてないようだな。姿が見えないんなら邪神のお前の方が瘴気が多いよな、チャクチャル?』
『私はデッキの中にいるが、そちらは外に出っぱなしなのでは?』
なんだかよくわからない言い合いを始めた1人と1柱?のことをほけーっと見つめていると、若干訝しむような声をかけられた。おっと、いけないいけない。
「そう警戒しないでくれ。別段取って食うほどの力なんざない。…それよりも会った以上、やることはあるだろう?」
その瞬間、何もなかったはずの彼の左腕に突然装着された状態で黒いデュエルディスクが現れる。おお、カッコいい!僕もあんなの欲しい!このデュエルディスク、地味に重くて邪魔だったりするからなぁ。とはいえ動作に関して不満はないし、そこにさえ目をつぶればこれもいいモノなんだけどね。
「積もる話はひとまず後回しに。デュエリストならば、デュエルでひとまず語り合おう」
「ちょっと混乱気味でよくわかんないとこもあるけど、要するにデュエルだってんでしょ?望むところ!」
『単純だなぁこいつも。まあ、あいつ自身が言っているように、本当に何か力を持っていなさそうだから、大丈夫か』
ほっといてちょーだい。さてと、デュエルを始めよう………と、その前に。
「と、名前を言ってなかったな。俺の名は黒崎仭。おそらくこの世界に呼ばれた者の中で、何ら特別な力を持たぬも普通ではない唯一のデュエリストだ」
「僕の名前は遊野清明。えっと……」
『無理に格好つけんでいい』
う、うるさいなあもう。こっちはこういうのが好きな年頃なんだよ!
「「デュエル!」」
さて、と。デュエルディスクに表示されたのは、僕の先攻。よしよし、幸先いいね。
「ドロー!オイスターマイスターを攻撃表示で召喚、カードを1枚伏せてターンエンド!」
オイスターマイスター 攻1600
どんな時でも変わらない、僕のデッキの大事なアタッカー………牡蠣の戦士、オイスターマイスターが往生する。さあ、どんな手で来るか見せてもらおうじゃないの!
「俺のターン、ドロー。ふむ、カードを3枚伏せる。そしてモンスターをセットし、ターンエンドだ」
清明 LP4000 手札:4
モンスター:オイスターマイスター(攻)
魔法・罠:1(伏せ)
仭 LP4000 手札:2
モンスター:???(セット)
魔法・罠:3(伏せ)
ふむ、伏せカード3枚か。ここは落ち着いてもうちょっと様子見もありだけど、一気に攻め込む方が気分いいね。
「僕のターン、オイスターマイスターをリリースしてジョーズマンをアドバンス召喚!さらにマイスターが戦闘以外の方法で場から墓地に送られたことによりその効果、オイスタートークンを守備表示で召喚!さらにさらに、ここでジョーズマンも効果を発動………僕の場には水属性のオイスタートークンが1体いるから、攻撃力300ポイントアップ!」
オイスタートークン 守0
ジョーズマン 攻2600→2900
「さあ、この変なトコでの初バトルと洒落込もうか!ジョーズマンで、セットモンスターを攻撃!」
「こうも伏せカードを恐れてこないとは…」
あ、やっぱなんかありましたかそうですか。ごめんジョーズマン。ほんっとごめん。
ジョーズマン 攻2900→??? 守400(破壊)
…………あれ?通った?
「破壊されたモンスターは、インフェルニティ・ナイト。このカードが破壊され墓地へ送られた時、手札を2枚捨てる事でこのカードを墓地から特殊召喚する」
ジョーズマンの無数の牙がセットモンスターをかみ砕いたと見えたのも一瞬、その灰色の全身鎧を着こんだ騎士は全く何事もなかったかのようにジョーズマンと向かい合うようにして直立の姿勢をとっていた。
インフェルニティ・ナイト 守400
それにしても、特にどうってことのないモンスターのためにわざわざ残りの手札を全部墓地に送るなんて、一体何を考えてるんだろう。よっぽど次のドローで1体リリースが必要な上級モンスターを引く自信があるんだろうか。ねえユーノ………ってあれ?
その時の『あーあ、俺もう知ーらね』とでも言いたげな顔を見て、なんだかものすごく嫌な予感がした。
「タ、ターンエンド」
「ドロー。…手札が0の時にドローされたインフェルニティ・デーモンの効果を発動。このカードを相手に見せることで、手札から特殊召喚する」
インフェルニティ・デーモン 攻1800
なるほど、十代がよく使う強欲な泡男ことバブルマンみたいなものか。そう思ったのもつかの間だった。言い換えると、この次の瞬間に余裕なんてものはぶっ飛んで行ったともいえる。
「デーモンの第2の効果。手札が0の時に特殊召喚に成功した場合、デッキからインフェルニティと名の付いたカードを手札に加えることができる。デッキからインフェルニティガンを手札に加える。そして発動。手札が0の時にこのカードを墓地に送ることで、インフェルニティを墓地から2体まで特殊召喚できる。蘇れインフェルニティ・ネクロマンサー、インフェルニティ・ビートル」
これまで見たことない昆虫と不気味な呪術師………そうか、さっきナイトを特殊召喚するときに使ってたカードか。
インフェルニティ・ネクロマンサー 守2000
インフェルニティ・ビートル 攻1200
「インフェルニティ・ビートルの効果発動。手札が0の時、このカードをリリースする事で、デッキから同名カードを2体まで特殊召喚する。インフェルニティ・ビートル2体を特殊召喚」
インフェルニティ・ビートル 攻1200
インフェルニティ・ビートル 攻1200
「モンスターゾーンが埋めつくせられた。けど、ジョーズマンは倒せないよ」
だって、今あっちの場の最大攻撃力はナイトの1400、守備力だってネクロマンサーの2000がやっとなんだ。それともあれだろうか、僕のシーラカンスで魚を呼び出すみたいに壁を作るつもりなんだろうか。
「…遊野、と言ったな。良いことを教えてやる」
「え?」
「そういうのは、フラグというんだ。行くぜ。レベル4のインフェルニティ・デーモンにレベル2のインフェルニティ・ビートルをチューニング」
「え?」
『ん?』
チューニング、という耳慣れない単語。だけど、僕の本能が全力で叫んでいた。これは危険だ、かなりやばい状況だって。
「シンクロ召喚、大地の騎士ガイアナイト!」
そしてビートルが2つの光る輪になり、その中をデーモンの体が潜り抜けていく。一瞬だけ光がさらにまぶしく輝くと、その後には1体のモンスターがそびえ立っていた。
☆4+☆2=☆6
大地の騎士ガイアナイト 攻2600
「ええええちょっとユーノ何アレなんか出たんだけどアレなにどーゆーこと!?」
ととととと、とりあえず困ったらこいつに聞いてみる!これまでだって何かしらの助け舟をくれたんだ、きっとあの珍妙なモンスターのことも何か知ってるはず!
『…………わかった、わかったから少しは落ち着け。うむ、おそらくあれはお前の知らない異世界で出回っているカードのようだな。チューナーモンスターをそれ以外のモンスターと一緒に墓地に送ることでそのレベル合計分のモンスターを特殊召喚する、ってとこだろ。いやー、他の世界ってのは面白いな』
と、そこまで無駄にきっぱりとした口調で言い切られたところでいきなりチャクチャルさんが会話に参加してきた。脳内テレパシーマジ便利。
『よくもまあそんなぬけぬけと。やはりお前の方が清明より我々の仲間、ダークシグナー向きの性格しているな』
『おっと、俺は別に嘘を吐いた覚えはないぜ?』
なんか嘘ついてたんだろうか。まあいいや、とりあえずあのカードのことはユーノも知らないらしい。
「さっきから何ゴチャゴチャ2人で話してるのさ、そんなことよりどうしようあのシンクロとかいうの!?」
「お前こそ何をそんなに騒いでいる?ターンを続けさせてもらうぞ、ネクロマンサーの効果発動。手札が0の時、墓地からインフェルニティを1体特殊召喚する。蘇れ、デーモン。特殊召喚されたデーモンの効果で、デッキからインフェルニティ・ブレイクを手札に。そしてセット。レベル3のナイトと、レベル3のネクロマンサーにレベル2のビートルをチューニング。シンクロ召喚、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン!」
せっかく呼び出したモンスターの周りを最後のカブトムシが光の輪になって取り囲み、さらに大きな何かへと姿を変えていく。
「2体目来たー!」
『やかましい!』
☆3+☆3+☆2=☆8
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン 攻3000
攻撃力3000、か。ジョーズマンの攻撃力を超えられたけど、このカードさえきっちり使えば……!
「バトル。デーモンで、トークンを攻撃。ヘルプレッシャー」
『来たか……わかってんだろうな、清明?』
「もちろん。その攻撃はそのまま通すよ」
インフェルニティ・デーモン 攻1800→オイスタートークン 守0(破壊)
ジョーズマン 攻2900→2600
デーモンが空に手を掲げると上空に巨大な魔方陣が出現し、そこから悪魔の手が伸びてただの牡蠣ゆえなすすべのないオイスタートークンを握りつぶした。これで攻撃力1800とかなんかの冗談でしょ、もう!
「次いで、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンで攻撃力の下がったジョーズマンに攻撃。インフィニティ・サイト・ストリーム!」
「使いどころはここしかないねっ!トラップ発動、ポセイドン・ウェーブ!獣戦士族のジョーズマンじゃバーンダメージはないけど、攻撃を止めるならこれで十分!これでその攻撃は無効さ」
「ほう……。ガイアナイトで相打ちさせてもいいが…ここはターンエンド」
よし、なんとかジョーズマンだけは守り抜いた。
清明 LP4000 手札:4
モンスター:ジョーズマン(攻)
魔法・罠:なし
仭 LP4000 手札:0
モンスター:ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン(攻)
大地の騎士ガイアナイト(攻)
インフェルニティ・デーモン(攻)
魔法・罠:4(伏せ)
「とはいえ、危なかった………大したもんだよ、すごいデュエリストだよ。だけどただやられるのは性に合わないし、僕もまだまだ負けないよっと!手札から爆征竜ータイダルの効果発動、このカードと手札の水属性モンスター1体、ハリマンボウを墓地に送ってデッキのモンスター1体を墓地に送る。そしてこの瞬間に落としたハリマンボウの効果発動、相手モンスター1体の攻撃力を500ポイント下げるよ。えーと、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンだっけ?その目玉の攻撃力をダウンさせるから」
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン 攻3000→2500
これでお膳立ては整った。展開力ならこっちだって負けるもんか!
「さらに死者蘇生を発動、これで墓地に送ったシーラカンスを……」
「トラップ発動、インフェルニティ・バリア。俺の場には攻撃表示のデーモンがいる。その死者蘇生は無効だ」
へ?し、死者蘇生ー!?まずい、これはまずい。こんなの計算外だった。シーラカンスからの大量展開が………。だけど、僕にはまだジョーズマンがいる!
「んなっ……。だったらバトルフェイズ!ジョーズマン、インフェルニティ・デーモンに攻撃!」
「インフェルニティ・ブレイク。俺の手札は0枚、よって墓地のインフェルニティ・ビートルを除外してフィールドのカード1枚を破壊する。俺が選ぶのはジョーズマンだ」
インフェルニティ・デーモンに向かって殴りかかっていったジョーズマンが、急に落ちてきた雷に打たれてあっさりと破壊される。
とはいえ、僕はまだ召喚権を使ってないわけで。
「ジョーズマーン!?えーいまだまだ、なんぼのもんじゃーい!モンスターをセットして、カードも伏せてターンエンドだよ」
「ドロー…ふむ、おろかな埋葬を発動し、デッキからインフェルニティ・ミラージュを墓地に。ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの効果発動。自分の墓地に存在するレベル6以下の闇属性の効果モンスター1体をゲームから除外。そしてエンドフェイズ時まで、このカードはゲームから除外した効果モンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を得る。俺が除外するのは先程墓地に送ったミラージュ」
ワンハンドレッドについた無数の閉じた目が急に開くとぎろりと紫色の光を放ち、地面に伸びたその影が本体とは似ても似つかない姿………どこかの民族衣装のような服を着た人のような形になる。今度はいったい、何を見せてくれるってのさ。
「ミラージュの効果は自分の手札が0の時、このカードをリリースすることで墓地のインフェルニティ2体を選択して特殊召喚できる。ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンをリリースし、ビートル2体を蘇生」
「わざわざ呼び出したってことは…シンクロ召喚だっけ?それをやり直す気かな」
「半分正解。レベル4のデーモンに、レベル2のビートルをチューニング。シンクロ召喚、吠えろ。天狼王 ブルー・セイリオス!」
☆4+☆2=☆6
天狼王 ブルー・セイリオス 攻2400
「次いでレベル6のブルー・セイリオスに、レベル2のビートルをチューニング。シンクロ召喚、その
百目の竜がさっきまでいた場所に降り立ったのは、より正統派な見た目をしたかんじの新しいドラゴン。まずいな、せっかく下げた攻撃力がリセットされちゃった。
☆6+☆2=☆8
煉獄龍 オーガ・ドラグーン 攻3000
「何かまた怖そうなのが来たよ…」
『しっかりしろ。ああいうのは俺達の世界でもいたろ』
「…ん?というより、何でわざわざレベル6のをシンクロ召喚してから、レベル8のをシンクロ召喚したんだろう」
『おそらく、素材に条件があるんだろ。チューナーは1体までとか』
「あ、なるほど」
さすがにこいつは頭の回転が速い。僕がちょっと考えてわからなかったことに、まるで最初からわかってるんじゃないかってぐらいのスピードで答えを出してくれた。
『うん、まあ……その純粋さは貴重なことだと私は思う』
『おーっとチャクチャル、口滑らしていらんこと言うなよ?』
「………?行くぞ?バトル。オーガ・ドラグーンで、セットモンスターを攻撃。
煉獄龍 オーガ・ドラグーン 攻3000→??? 守1800(破壊)
「セットモンスターは、ペンギン・ナイトメア。リバースした時の効果で、その怖そうなドラゴンをバウンスさせてもらうよ」
ありがとう、ペンギン・ナイトメア。攻撃力3000の大型モンスターと実質相打ちに持ち込んでくれるなんて。ブレス攻撃を受けてその体が消し飛ぶ一瞬前、シルクハットをこちらに向けて軽く振り、ドヤ顔して見せた顔がチラッと見えた気がした。
さあ、あとはあのガイアナイトだ。まさかこのカードをこんな序盤に使うのは予想外だったけど、2600ダイレクトは痛すぎる。
「…ちっ。ガイアナイトでダイレクトアタック」
「トラップ発動、リビングデッドの呼び声!今度こそシーラカンスを墓地から特殊召喚!」
超古深海王 シーラカンス 攻2800
「攻撃中断。くっ、うz…いや、しぶといな」
「今言い直したよね?今絶対うざいって言おうとしたよね?」
「ミスト・ウォームがあったら、2ターン前に勝ってたのに…あいつに貸さなければよかった」
「聞いてないし!」
まあいい。とりあえず今のは忘れよう。それよりも不穏なのは2番目のセリフの内容だ。2ターン前に勝つこともできた?ど、どーにもこーにも嫌な予感しかしない……。でもまあ、きっと何とかなるだろう。
『しかしやっと状況が逆転してきたか』
「うん、手札も0だし、伏せカードも前からセットしてあったのだけだし、やることは…」
「っと、現実逃避的になっていた。トラップ発動、闇次元の解放。ゲームから除外されている自分の闇属性モンスター1体を特殊召喚する。ネクロマンサーを特殊召喚」
「何だってー!?」
インフェルニティ・ネクロマンサー 守2000
「手札0。よってネクロマンサーの効果を発動し、デーモンを復活。デーモンの効果でデッキからインフェルニティ・セイジを手札に。そして召喚」
ま、まーーたお前かぁ………。このデーモンとかいう奴、かれこれこれで3回目の登場じゃなかろうか。
『ま、それするためのデッキでもあるからな、ある意味』
インフェルニティ・デーモン 守1200
インフェルニティ・セイジ 攻400
「レベル3のネクロマンサーに、レベル2のセイジをチューニング。シンクロ召喚、正義の名の元にすべてを破壊せよ
☆3+☆2=☆5
A・O・J カタストル 攻2200
さっきまでの黒一色だったインフェルニティモンスターとはうって変わって白を基調とした、まるで昆虫のような姿をした機械。それにしても、わざわざ攻撃力2200のモンスターをこの状況で攻撃表示?壁にしたいんならシンクロなんてしなければいいのに。あ、まさかこやつ。
「ターンエンド…ってああ!攻撃表示で召喚してしまった!!」
よっしゃ、やっぱりだ!
「やったね。プレイミスだ」
『『いや、騙されるな(ないでくれ)!!』』
あ、はい。違うんですかそうですか。
清明 LP4000 手札:0
モンスター:超古深海王シーラカンス(攻・リ)
魔法・罠:リビングデッドの呼び声 (シーラカンス)
仭 LP4000 手札:0
モンスター:A・O・J カタストル(攻)
大地の騎士ガイアナイト(攻)
インフェルニティ・デーモン(守)
魔法・罠:闇次元の解放(対象なし)
1(伏せ)
「僕のターン、墓地に眠る瀑征竜―タイダルの効果を発動、同じく墓地の水属性モンスターのジョーズマンとペンギン・ナイトメアを除外して、このカードを特殊召喚!」
墓地から飛び出してきて吠えるタイダル。シーラカンスでのリクルート数は減っちゃうけど、今は何より打点が欲しい。
爆征竜ータイダル 攻2600
「さらに今ドローしたカードを捨ててシーラカンスの効果発動、魚介王の咆哮。デッキからレベル4以下の魚族モンスターを、僕の場の空いてるモンスターゾーンの数のぶんだけ特殊召喚だ!来て、ハリマンボウにオイスターマイスター、フィッシュボーグ-アーチャー!」
ハリマンボウ 守100
オイスターマイスター 守200
フィッシュボーグ-アーチャー 守300
「さて………バトルフェイズ!タイダル、カタストルに攻撃!」
「何?まあいい、カタストルの効果が発動する。このカードの相手モンスターが闇属性以外だった場合、ダメージ計算すら行わずにその相手を破壊する」
無慈悲にカタストルの頭部から打ち出された白い熱線の前に、タイダルがなすすべなく倒れていく。な、なんてむちゃくちゃな効果なんだカタストル。
「え…………?」
『また無策で突っ込む、つくづくお前って奴はいつもこれだなぁ』
「まだバトルフェイズは終わってない、あのモンスターが倒せないなら他から倒してくさ!シーラカンス、ガイアナイトに攻撃!マリン・ポロロッカ!」
超古深海王シーラカンス 攻2800→大地の騎士ガイアナイト 攻2600(破壊)
仭 LP4000→3800
これだけの間ターンを重ね、やっと入った初ダメージ。さーて、ここから一気に反撃と洒落込もうか!とはいえ、もうやることないんだけどね。
「僕は、これでターンエンド」
「いやぁ…さすがに言わせてもらう」
「ん、ん?」
「あそこまで馬鹿正直に突っ込むとは思わなかった」
「うぐ…」
『あの演技の後でだからなぁ』
「うぐぐ…」
『私もさすがに黙認しきれない』
「うぐぐぐぐ…」
味方は!この世界に僕の味方はいないんですか!と、そこで急に何の脈絡もなくシリアスな空気になる仭。あれ、僕何かしたっけか。
「―――と、思わせて油断させたいのだろうが、そうはいかない」
………いきなり何言ってんだこの人。
『よかったな。あまりに無策な突撃に、何か策があってだと思われてるぞ』
「お願い。もうそれ以上言わないで」
あー、そゆこと。これがあれか、考えすぎてドツボにはまるってことのいい例か。貴重なものを見た、とりあえずあっちには黙っておこう。
「デーモンをリリースし、インフェルニティ・デストロイヤーをアドバンス召喚」
インフェルニティ・デストロイヤー 攻2300
「バトル。カタストルでシーラカンスを攻撃」
「墓地のキラー・ラブカの効果発動!自分フィールド上の魚族・海竜族・水族モンスターが攻撃対象に選択された時、墓地のこのカードをゲームから除外して、その攻撃を無効にし、次の自分のエンドフェイズ時まで500ポイントダウンするよ」
「シーラカンスの手札コストの時か」
A・O・J カタストル 攻2200→1700
「だが、まだ攻撃可能なモンスターはもう1体いる。デストロイヤーで、オイスターマイスターを攻撃」
インフェルニティ・デストロイヤー 攻2300→オイスターマイスター 守200
くっ、オイスターマイスターが戦闘破壊されたか。まあだけど、守備表示ならダメージも入らないし墓地に行くなら下手にバウンスや除外されるよりはずっとマシ………
清明 LP4000→2400
あ、あれぇ?
「デストロイヤーの効果。手札が0枚の時、戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った場合、相手ライフに1600ポイントのダメージを与える」
「嘘ぉ!?初期ライフの5分の2を削るとか、何て凶悪な…」
「ターンエンド」
清明 LP2400 手札:0
モンスター:超古深海王シーラカンス(攻・リ)
ハリマンボウ(守)
フィッシュボーグ-アーチャー(守)
魔法・罠:リビングデッドの呼び声(シーラ)
仭 LP3800 手札:0
モンスター:A・O・J カタストル(攻)
インフェルニティ・デストロイヤー(攻)
魔法・罠:闇次元の解放(対象なし)
1(伏せ)
うーん、どうしようか。デストロイヤーの効果は強力だし、あんなもん2回も3回も受けるわけにはいかない。何か仕掛けてきたら、その時にまた考えよう。
「僕のターン、ここは力技で押し切ってやる!シーラカンスでデストロイヤーを攻撃!マリン・ポロロッカ!」
超古深海王シーラカンス 攻2800→インフェルニティ・デストロイヤー 攻2300(破壊)
仭 LP3800→3300
「とりあえずこれも通った、か。カードをセットしてターンエンド」
「ドロー……ここでこれか。一時休戦を発動して、お互いに1枚ドロー。トラップ発動、便乗。相手がドローフェイズ以外でカードをドローした時に発動。以降、相手がドローフェイズ以外でカードをドローする度に、俺はデッキからカードを2枚ドローする」
えっと、便乗。あのカードは知ってるぞ、確か割と古いカードだったはず。
「とりあえず今回はドローしないんだよね?」
「その通り」
よし、間違えなかった。どやっ。
『というか、インフェルニティのデッキにドロー加速カードの便乗入れてるってのは、な~んか怪しいな』
「しかし便乗を入れといてよかった。こういう時に本当に役立つ」
「だって」
『だからお前は一々信用するんじゃねぇよ!!』
ふむ、まあユーノの言うことにも確かに一理ある。さっきから何かカードを発動するたびに呪文みたいに手札が0枚の時~、って言ってるのにその条件を自分からひっくり返すようなカードの投入か。ま、こればっかりは考えてもしょうがないか。とりあえずは自分の場のことだけでいっぱいいっぱいです。
「続けるぞ。カードを1枚伏せて、バトル。カタストルでシーラカンスを――」
「そうはさせないよ。トラップ発動、フィッシャーチャージ!自分フィールド上の魚族モンスター1体を墓地
に送って、フィールド上のカード1枚を選択して破壊。その後デッキからカードを1枚ドローするよ。まあ、便乗であっちもドローしちゃうけど。アーチャーを墓地に送って、破壊するのは当然カタストル!」
「ちっ」
アーチャーが連続で矢を放ちながらカタストルに特攻していき、見事壮絶な爆死を遂げる。よくやった、アーチャー。後で機会があればまた帰ってきてね。
「そしてカードをドロー!」
「便乗により2枚をドロー。メインフェイズ2に移行し、モンスターをセット。さらにカードを1枚伏せてターンエンドだ」
清明 LP2400 手札:1
モンスター:超古深海王シーラカンス(攻・リ)
ハリマンボウ(守)
魔法・罠:リビングデッドの呼び声(シーラ)
仭 LP3300 手札:0
モンスター:???(セット)
魔法・罠:闇次元の解放(対象なし)
便乗
1(伏せ)
「僕のターン!今引いたカードを使って魚介王の咆哮、第二陣!竜宮の白タウナギ、シャクトパス、ゼンマイシャーク召喚!」
竜宮の白タウナギ 守1200
シャクトパス 守800
ゼンマイシャーク 守1300
再び天に向かってシーラカンスが吠え、一気に3体のモンスターをフィールドに呼び出す。さあ、せっかくいいモンスターを引いたんだ。存分に使わせてもらおうか!
「そして白タウナギとゼンマイシャークをリリースして、と。来て、青氷の白夜龍!」
僕のデッキで最高の攻撃力の固定値を持つモンスター、白夜龍の攻撃力はあの有名なブルーアイズにも匹敵する。耐性もあるし、これでそう簡単に正面突破はされないだろう。
「さあ、反撃と洒落込ませてもらうよ!まずはシーラカンスでその伏せモンスターにマリン・ポロロッカ!」
超古深海王シーラカンス 攻2800→??? 守600(破壊)
「盛り上がっているところ悪いが、今破壊されたモンスターはメタモルポットだ。リバース効果によりお互いは手札をすべて捨てて、カードを5枚ドローする。もっとも、俺はさらに便乗の効果を使うからもう2枚ドローするがな」
『そもそも一時休戦の効果が生きてる今の状況でどうやって反撃と洒落込むつもりなのか俺に詳しく教えてくれ。なあ、それどうやってやるんだ?なあなあ、何か俺の知らん反撃手段でもあんの?』
あ。そ、そーいやさっきそんなカードがあったようななかったような。しょうがないのでそっと目をそらす。
「う。うるさいなあ、これから反撃するって意味だよ、うん。カードを2枚セットしてターンエンド!」
「ドロー。ダブル・サイクロンを発動。此方は闇次元の解放、そっちは…1番左を破壊だ」
延々と無意味に残り続けていた闇次元の開放と、こっちのセットカードがフィールドを駆ける2本の渦に巻き込まれて破壊される。ま、それならそれでいいだろう。さすがにこのダブル・サイクロンを止めるためにチェーン発動するのはもったいなさすぎる。
『魔宮の賄賂が破壊されたか』
「リビングデッドを破壊するかと思ったよ」
『何かしてくるんだろうな』
「モンスターをセット。さらにカードを1枚伏せてターンエンドだ」
「ってあれ、手札事故かな?」
『疑問形だったからまだ良しとしよう。やはりインフェルニティだからか?』
清明 LP2400 手札:3
モンスター:超古深海王シーラカンス(攻・リ)
ハリマンボウ(守)
シャクトパス(守)
青氷の白夜龍(攻)
魔法・罠:リビングデッドの呼び声(シーラ)
1(伏せ)
仭 LP3300 手札:5
モンスター:???(セット)
魔法・罠:便乗
2(伏せ)
「僕のターン、ドロー。よし決めた、このままバトル!マリン・ポロロッカ!」
今日何度目かもわからない、シーラカンスの突撃。だが、その攻撃が相手の壁を破壊することはなかった。
超古深海王シーラカンス 攻2800→??? 守200
「残念だったな。このセットモンスターは魂を削る死霊、つまりバトルでは破壊されない」
「むー……でも知ってるからね、そのモンスターは効果の対象になった瞬間自爆することは!メイン2に移ってハリマンボウをリリース、氷帝メビウスをアドバンス召喚!ふふふ、これでまずメビウスの効果を発動。その便乗と真ん中の伏せカードを破壊するよ、フリーズ・バースト!」
便乗を狙ったのは、さっきまでのメタモルポットとか一時休戦みたいにピンポイントにこっちがドローする効果もちのカードを出されたらたまらないから。さすがにあっちがデッキ切れ起こすまで耐え抜くなんてことやるつもりはないしね。さーて、もう一方は何が当たったかな?
「ほう、ダメージ・ダイエットを破壊したか………これくらいは教えておいてやるが、はっきり言って外れだな」
『だがそれだけじゃねえぜ、ハリマンボウの効果がこっちには控えてんだ』
「ハリマンボウは墓地に送られた時、相手のモンスター1体を対象にとってその攻撃力を下げる………魂を削る死霊、撃破ー!で、カードをセット。ターンエンドだよ」
「待て、ターンエンドだな?なら、ここでトラップ発動。ハンドレス・フェイクだ」
聞きなれないカードだけど、ユーノはやっぱり知ってるらしい。思いっきり舌打ちしたし。ただ残念なことに、この伏せカードはどっちもサイクロンじゃあない。
「ドロー…さて、少々長引きすぎたな。そろそろ決めにかかるとしよう」
「む、来るかな?」
「まずは死者蘇生発動。蘇れ、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン」
一度は墓地に逝った百の目を持つ龍が、再びそのひときわ大きな目で僕のことをにらみつける。怖い……。
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン 攻3000
「さらに魔界発現世行きデスガイドを召喚。召喚時効果により、手札またはデッキからレベル3の悪魔族モンスター1体を効果を無効にして特殊召喚する。デッキから2体目のネクロマンサーを特殊召喚」
赤髪のバスガイドが後ろに控えたバスに手を振ると、そこから行儀よくネクロマンサーが降りてくる。だけど、このバスガイドに召喚権は使ったんだ。またシンクロ召喚とかいうのをしてきてもせいぜい1体、まだいくらでもなんとかできる。
魔界発現世行きデスガイド 攻1000
インフェルニティ・ネクロマンサー 守2000
「効果を無効に召喚?」
『あ、何か面倒そうな予感』
「レベル3のデスガイドと、ネクロマンサーでオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚、虚空海竜リヴァイエール!」
2体のモンスターが紫色の光になり、絡まりあいながら空高くに昇っていく。そして2つの光がその向こう側に見える宇宙空間のようなところに飛び込むと、静かに爆発が起きた。
虚空海竜リヴァイエール 攻1800
「ちょっと今度は何かモンスターが光になって上にできた空間に飛び込んだら何か新しいのが出てきたんふぁんだけどどゆこと!?」
『じゃかわしい!てか、一気に言い過ぎて一部噛んでるじゃねぇか。…………あれもさっきのシンクロでのモンスターと同じように、異世界で出回っているカードのようだな。同じレベルのモンスターを素材としてモンスターを特殊召喚するってところだろ』
「リヴァイエールの効果発動。1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事で、ゲームから除外されている自分または相手のレベル4以下のモンスター1体を選択して自分フィールド上に特殊召喚する。ミラージュを特殊召喚する」
リヴァイエールの体の周りを衛星のように飛び回っていた2つの光のうち1つが体に吸い込まれると、除外されていたはずのミラージュが久しぶりにフィールドに帰ってくる。特殊召喚もちとはまた厄介な。だ、だけどあのモンスターもまた手札が0じゃないと何もできないはず。なのに守備力0じゃあ、ろくに壁にすらなりやしない。
インフェルニティ・ミラージュ 守0
「あれは?」
『さっき素材にしたのが、墓地とは別にあるってことだな。カウンターとでも思えばいいだろう』
「なるほど」
「カードを3枚伏せる。そしてハンドレス・フェイクの効果を発動して残りの手札1枚を除外。手札が0なことにより、ミラージュの効果発動。ミラージュをリリースして、デストロイヤーとビートルを蘇生」
え………?手札を除外?今自分の手札を除外とか言いやがりましたかあの人。そうか、最初からこれを狙って……!
インフェルニティ・デストロイヤー 攻2300
インフェルニティ・ビートル 攻1200
「レベル6のデストロイヤーに、レベル2のビートルをチューニング。シンクロ召喚、その
煉獄龍 オーガ・ドラグーン 攻3000
次に帰ってきたのは、ついさっきペンギン・ナイトメアが命を懸けてエクストラデッキに押し戻したはずの煉獄の竜。これで3000が2体、か。
「通常魔法シンクロ・チェンジ発動。ドラグーンを除外し、効果を無効にしてインフェルニティ・デス・ドラゴンを特殊召喚」
「あれ、せっかく召喚したのを?」
もったいない。なんてのんきなことを考える暇もなく、煉獄龍と入れ替わるように漆黒の竜が現れる。よく見るとその頭部には目が4つあり、頭のてっぺんからは脳のようなものがむき出しになっていた。
インフェルニティ・デス・ドラゴン 攻3000
「通常魔法成金ゴブリンを発動。相手のライフを1000回復させ、デッキからカードを1枚ドロー」
清明 LP2400→3400
「最後に装備魔法
「また来た!」
行ったり来たりで忙しい煉獄の竜が、またもやフィールドに舞い戻る。たった1ターンで攻撃力3000越えの高レベルドラゴン族を3体だなんて、もうふざけてるとしか言いようがないね。ま、まだ僕に負けるつもりはないけども。なんてったってこの伏せカードのうち1枚は守備力3000を誇る罠モンスター、メタル・リフレクト・スライムなんだから。
『おいおい、攻撃力3000のモンスターが3体かよ』
「それに海竜?が1体…」
「まだだ。ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの効果で、墓地のネクロマンサーを除外、コピー。そして効果により墓地からデストロイヤーを蘇生」
「さらに狂暴そうなのが…」
うげ、またお前か。さっき成金ゴブリンで回復した分のライフはもう諦めたほうがよさそうだ。
「バトル。デス・ドラゴンで白夜龍に攻撃。…相殺だがな」
インフェルニティ・デス・ドラゴン 攻3000(破壊)→青氷の白夜龍 攻3000(破壊)
「次にワンハンドレッド・アイ・ドラゴンで、シーラカンスを攻撃。インフィニティ・サイト・ストリーム!」
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン 攻3000→超古深海王シーラカンス 攻2800(破壊)
清明 LP3400→3200
さっきは白夜龍の攻撃力が3000だったからかろうじて相打ちに持ち込めたけど、2800のシーラカンスはそうもいかない。光の奔流に、魚の王は飲み込まれた。
「ああ、とうとうシーラカンスが…」
「続いてドラグーンで、メビウスを攻撃。
煉獄龍 オーガ・ドラグーン攻3000→氷帝メビウス 攻2400(破壊)
清明 LP3200→2600
一体、また一体とドラゴン軍団の前に僕の大事なモンスターたちが倒れていく。ついにメビウスが倒れた今、残るは守備表示のシャクトパスだけだ。
「デストロイヤーで、シャクトパスを攻撃」
「けど、シャクトパスを破壊したモンスターは――」
「装備されて、攻撃力が0になり、表示形式も変更できない。だろ?知っている。それと戦闘破壊により、1600のダメージだ」
「うぐっ…」
叩き潰されたシャクトパスが最後の抵抗と言わんばかりに無数の触手でデストロイヤーの体を締め上げる。だが敵もさるもの、その状態でなおこちらに向けて1600ダメージの光弾を放ってきた。
インフェルニティ・デストロイヤー 攻2300→シャクトパス 守800(破壊)
清明 LP2600→1000
インフェルニティ・デストロイヤー 攻2300→0
「まあ、そもそもこのターンで決着をつければそれは無意味!リヴァイエールで、ダイレクトアタック!これで終わりだ」
今だ!
「いいや、まだだね!まだ僕は負けないよ、トラップ発動!これが僕の最後の砦、メタル・リフレクト・スライム!」
『………ま、フラグ立てまくったお前の負けだわな』
「……ドラグーンの効果。手札が0の場合、1ターンに1度、相手が魔法・罠カードを発動した時に発動可能。その発動を無効にし破壊する」
「え?」
銀色のスライムが、煉獄の炎を浴びて一瞬にして溶けていく。腐ってやがる、早すぎたんだ……じゃなくて!
「攻撃続行」
虚空海竜リヴァイエール 攻1800→清明(直接攻撃)
清明 LP1000→0
あー、もう。負けた。完璧にボロッボロに負けた。確かにカードプールの差もものすごく開いてた。だけど、きっと敗因はそれだけじゃない。なんとなくだけど、十代や夢想とかだったら笑いながら大逆転して見せるんだろうなあ、という確信がある。
つまり、今回はまだまだ僕が弱いってことだ。
『………フン』
軽く鼻を鳴らしてそっぽを向くユーノ。励ましの言葉なんてハナっから期待しちゃいないし、そんなものかけられるつもりもない。だからむしろ、何もしてこないこの態度がありがたかった。
「よしっ、勝てた」
と、多少ブルーになる僕とは対照的に喜びの声を上げる仭君。喜びとモヤモヤが入り混じったような何とも複雑な表情でこちらの方を向い…………た瞬間、彼の表情が凍りついた。よく見るとその視線は僕ではなくてその隣、つまりユーノの方を向いている。
「…ああ、なるほど。そういうことか。おい、そこの遊野の隣にいる…幽霊?」
あ、これ間違いないですわ。僕の知り合いの幽霊なんてこれと稲石さんぐらいしかいないし。そういや大徳寺先生は幽霊って言っちゃっていいんだろうか。
「今までは視えていなかった。が、今ははっきりその存在が視える」
「えええええ!?」
『どういうことだ!?』
「それは俺の台詞だ」
憮然とした態度で答える仭君だったけど、僕としてはむしろサッカーが見えてたのにユーノが見えてなかったことが何よりも驚いた。デッキから出てこずに僕の心に直接語りかけてくるチャクチャルさんのことに気づかないならともかく、ユーノなんて精霊が見えるんなら普通に見えそうなもんなんだけど。
『ま、なんか色々あるんだろ。俺の体と精霊の違いとか。難しい話は俺もよーしらん』
「そんなんでいいのかな…………まあいっか」
「取り込み中悪いが、いくつか聞かせてもらっても構わないか?」
そしてしばらく、お互いのいた世界について話をしてみた。うーん、異世界ってすごい。どう考えても僕らの世界からしたらオーバーテクノロジーなんてもんじゃない。そんな世界だからあんな白黒のモンスターが生まれるんだな、きっと。
そう言ったらユーノが遠い目で、
『オーバーテクノロジーだからシンクロやエクシーズが生まれる、ねえ………まあ、ある意味間違っちゃいないかもな。デュエルのインフレ的な意味で』
なんてよくわからないことをつぶやいていたのが印象的だった。それにしても、そのシンクロとかエクシーズとかは向こうではよっぽど一般的なカードらしい。僕がそんなの初めて見たって言った時は驚いてたし。
「ひとまず悪かった」
「いや、いいよ。知らなかったんだし。それに…皆も君のように使ってくるかもしれないことを考えたら、君みたいな相手に出会えたことは運が良かったんだろうし…」
『ポジティブだな』
というより、とでも思ってないとやってられないんだけどね。これからの相手はメリット効果もちの攻撃力3000の最上級モンスターを1ターンで3体も展開してくるようなとんでもデュエリストばっかり出てくるんだなって。ははは。
『清明、目!目が死んでるぞー!』
「え、そんなに生気なかった?」
『ああいや、ダークシグナー的な意味で。まだまだやる気十分、心は折れてないみたいで安心したけどな』
慌ててダークシグナーを解除する僕を見てため息を一つつき、仭君がまた口を開く。
「まあ、シンクロやエクシーズだけでなく、その世界にしか存在しないカードや、同名でも違う効果のカードとかもあるだろうしな。自分でいうのもなんだが、多分俺はマシな方だったのだろう」
「え、そんなカードのがあるの?」
「かもしれないってことだ。しかし、俺が使ったデストロイヤーの効果とかはまず俺のような世界だけだと思うぞ」
「…確かにあれは強すぎるよ。何さ、初期ライフの5分の2を削るとか」
それともあれだろうか。他の世界ではモンスター破壊のたびに倍の3200ぐらいバーンで吹き飛ばしていくさらに凶悪なデストロイヤーがいたりするんだろうか。怖いわー異世界怖いわー。
『いや……さすがにそれはないと思うぞ?』
「言いたいことは分かるさ。だが、こっちでは初期ライフが8000なものでな」
「えぇ!?」
ライフ8000とか……そんなものどうやって削りきればいいんだろうか。ターン数すごいことになりそうだ。カウントダウンとかのライフ払う系が相対的に強くなるし。
『いやー、本当に他の世界は面白いなー』
あれ、何か違和感。なーんか今日、ユーノのセリフがちょいちょい棒読みくさいんだけどなぁ……気のせいかな?そうだ、気のせいと言えば1つ、あの時は気のせいにしてごまかしたけどどうしても聞いてみたいことがあったんだ。
「そういえば聞きたいことがあるんだけど」
「ん?」
「2ターン前に勝ってたのに…って、あれどういうこと?」
「あー、あれか。…ミスト・ウォームってシンクロモンスター…まあ、シンクロ召喚で召喚できるモンスターがいてな」
「ふむふむ」
「まあ、今は知人に取られていて、手元にないが…もしあったら4ターン目のシンクロはガイアナイトではなく、レベル4のデーモンとレベル3のネクロマンサー、それにレベル2のビートル使ってレベル9であるミスト・ウォームを召喚するつもりだった。ちなみに攻撃力は2500で、効果はシンクロ召喚に成功した時、相手フィールド上のカードを3枚まで選択して持ち主の手札に戻す」
「……え?」
日本語でしゃべってほしい。ペンギン・ナイトメアでさえ1枚が限度なのに。しかもリバースで。
「で、そっちにフィールドはちょうど3枚だったわけだから、丸裸になるわけだった」
「ちょっ、ちょっと待って。それだと確かにダイレクトアタック受けちゃうけども、その時フィールドにいるのはナイトとそのミスト・ウォームってのでしょ?ナイトの攻撃力は1400で、ミスト・ウォームも攻撃力2500なんだから、僕のライフはまだ100残るけど…」
『ま、確かにあの時手札は0で、伏せカードも蘇生系じゃなかったが、お前は1つ忘れてることがあるぞ』
「え?」
「デーモンの特殊召喚時効果。魔法・罠ではなく、モンスターを手札に加えていればいい。さすがに攻撃力100以上で召喚できるインフェルニティはデッキにあるしな」
「…そういえばあの時召喚権は…」
『ああ、まだ使ってなかった』
「…………」
拝啓、僕の世界の皆。さすがに、さすがに心が折れそうです。
『そんな顔をするな。結局の所、それは手元にはなかったんだ』
「その通りだ。…さて、お互いそろそろ、次の相手を探すとしないか?」
ふむ、確かにデュエルが終わってから随分長話をしてしまった。サッカーたちもなかなか帰ってこないし、様子を見に行くのもいいかもしれない。
「そうだね。せっかく強い人とデュエルするチャンスなんだし」
『まあ、そうだな』
「…ああ、正直いろいろ思うところはあるが、楽しまなければ損だろう」
思うところ、というのは多分僕をこの世界に引っ張り込んだあの眼鏡のことだろう。その気持ちはよくわかるけど、何せ僕の周りにはひねくれものといい、悪いヒトじゃないんだけど一応は邪神だったりするのがいるから正直胡散臭いのと性格悪いのには免疫ができてきてるような。
『『今回はスルーしていてやる(おこう)』』
…………てへ。
「デュエルは楽しめたぞ」
「僕の方こそ」
「だが、これから先は俺のようにシンクロやエクシーズを使ってくる奴が多くいることだろう。特殊召喚メタのカードをデッキに入れておくことを勧める」
「そうするよ」
『清明ー、できもしないことはあんまり口にしない方がいいぞ?』
「ん、どういう意味だ?」
そう尋ねる仭に、軽く肩をすくめてユーノが答える。
『こいつはそんなメタを組んで動けるほど器用な性格してないってことだ。多分、自分の好きなよーに組んだこれで戦い続けるだろ』
「……なるほどな。それも1つの戦い方だろう。じゃあな」
「また会えたら」
その言葉を最後に僕らはサッカーたちが消えた方向に、仭はまた別の方向に歩き始める。でも、歩きながら何となく感じた。多分、彼とはどこかでまた会うこともあるだろうって。
いかがでしょうか。ちなみに狂戦士さんの【交差する世界 騎士と暴君と五聖獣】では、オール仭視点でのこの話の別バージョンが収録されてますので、そちらと併せて読んでみるのもまた一興です。