催眠おじさんVS美少女勇者:地球最大の決戦!RtA 作:ルシエド
催眠感度1倍
かつて、滅びる世界があった。
母なる地球は人類を『星を蝕む病原体』と見限り、人類を裁くことを決定した。
星そのものが敵。
人類に逃げ場なし。
人類は滅びるしかない……かに、思われた。が。
「オラッ催眠!」
催眠おじさんによって地球は秒でメス堕ちし、人類は救われた。
Android・iOSによって配布された催眠アプリを使いし『催眠おじさんクルセイダーズ』も解散、世界は平穏を取り戻し、されど始まりの催眠の呼吸の使い手は人知れず姿を消さんとしていた。
世の全ての、性格が悪い・男嫌い・攻撃的・コミュ障などが理由の
だがこの世界にもはや催眠は必要ない。
勇者が必要な世界は勇者が要らない世界になるべきであり。
英雄が必要な世界は英雄が要らない世界になるべきである。
それは天地万物三千世界に通ずる理。
催眠で世界を救った果てに、全ての催眠を消し去り、この世界に催眠をもたらした催眠種付けおじさんはこの世界を去らんとしていた。
催眠種付けおじさんに世界救われて恥ずかしくないんですか? とかつて言った少年が、おじさんを送り出すべく、ただ一人見送りに来ていた。
「行くんですか、おじさん」
「ああ」
「ありがとうございました。でも、何故……?」
「この世界の女の子は全員催眠掛け終わってしまったからな―――」
「ババアも女の子なんです?」
「女の子は死ぬまで乙女だぞ」
「女はエッチじゃなくなったら乙女じゃないと思いますよ、おじさん」
「お前だいぶ失礼だな……
まあ今回のことは気の迷いだ。
催眠術師は正体がバレたら忌み嫌われる、人間の尊厳の敵でなくてはならないからな」
ただ一人見送ってくれた人間に別れを告げ、催眠おじさんは世界に催眠をかける。
まだ自分の催眠が誰にも掛けられていない、隣り合う別の世界へと渡るために。
専門家が語る『オリ主を投入したけど原作沿い以外の作品書けないよ……せや! 世界の意思と修正力で原作通りになっていくってことにしたろ!』理論によって、世界に意思があることは論理的に証明されている。
意思があるなら催眠はかかる。
世界をメス豚にすることなど催眠術師にとっては造作もない。
女の股を開かせるのと世界に股を開かせることに違いはあるのか?
いや、ない。
催眠で全身性感帯になった世界は撫でられるだけで絶頂し、おじさんが侵入できるだけの入り口の穴を大満開する。
世界というメスガキも、催眠の力の前ではブザマにアクメを晒すザコにすぎない。
「催眠かけられてあっさり股開くとか恥ずかしくないのかよ?」
そうしてぬるっと、彼は隣の世界に移動した。
"催眠異世界転移"である。
かつて起こったビッグバンが宇宙の催眠絶頂であったことは学会でも定説であるが、世界の催眠絶頂は人間の世界移動すら可能とする。
彼はかくして別の世界の街中に降り立ち、周りを見渡しつつ催眠音波を周囲に投射する。
なんてことのない町並みだった。
普通の青空。普通の山川草木。普通の住宅街。
そこかしこを歩いている人間にも、違和感はない。
だが催眠術師だからこそ分かる、異様な世界のズレがあった。
「バカな……テンバイヤーの気配を感じない……どれだけ善良な世界なんだ……?」
彼が足を踏み入れたその世界は、異様なまでに悪の気配が薄かった。
催眠術師にはライトサイドとダークサイドが存在する。
ジェダイはそのバランスを取る調律者である。
そしてライトサイドとダークサイドには傾向と嗜好の差がある。
特に善人を自分のものにする催眠術師と、悪人に罰を与える催眠術師の性的嗜好は正反対で、ゲスの暗黒卿がもたらす争乱の中戦う運命にある。
そのため、催眠術師は善人と悪人の見極めが非常に上手い。
彼のレベルの催眠おじさんともなれば、周辺一帯の善人悪人の総数くらいなら判定できる。
催眠音声があるのに催眠音波が存在しないわけがない。
そして、音波はレーダーとなる。催眠術師はそうして獲物を見つけるのだ。
『いい子を催眠でイチャラブ恋人にする薄い本ください』『クズが催眠で人生終わる薄い本ください』―――そんな犯罪者じみた人類の叫びを、形にするために。
「転売屋? が居ないとどうなるんですか?」
「催眠術はエスパータイプ。
催眠術師もエスパータイプ。
悪タイプとは相性が悪い。
悪が居ない世界の方が催眠術師は動きやすい……
催眠術師が狙うのは大体巨悪ではない小悪……
催眠術師は大体情けなくて本体クソザコの小物犯罪者だから本物の悪には弱いのだ」
「へー」
「……」
「……」
「君誰かね? 小生の知り合いだっけか?」
「いや突然目の前に現れたからビックリして……通報していいですか?」
「駄目に決まってんだろ」
「通報されて困るのは悪い人だけですね。通報します!」
「こらこらこら」
おじさんを真面目くさった顔で通報しようとするのは、綺麗な黒い長髪を後ろでまとめて折り畳んだ少女であった。
いや、少女であるかは分からない。
おじさんは背が伸びなかった女子大生か、発育のいい女子高生と推測した。
あと7、8cm身長が高ければ女子大生の平均身長くらいだろうか?
だが体の発育は、そんじょそこらの高校生と比べても優れているように見える。
女性は男性より身長が伸びにくく身長で年齢を断定しにくいため、おじさんはそちらで年齢を判断した。
顔つきは幼いが整っていて、可愛らしさと美人度が同居している。
人間の顔つきは加齢と共に変化するため、幼少期に可愛らしかった女性が大人になるにつれてブスになっていくことも珍しくなく、その逆も珍しくはない。
だがその顔つきは幼少期から大人まで、ともすれば老人になっても美しいと言われるようなタイプの顔つきであった。
幾多の美女を見てきたおじさんには、それが分かる。
優れた催眠術師の洞察力があれば、軽く体を見るだけでもその女の性格すら見通せる。
背筋はピンと張り、姿勢には一本筋が通って見える。
礼儀作法の仕込みが完璧ないいところのお嬢様や、普段から真面目な振る舞いを意識的にしている者は、こうなりやすい。
眉間に自然に皺が寄っているのは、普段こういう怒った顔や気難しい顔をする機会が多く、それに慣れているからだろう。
気難しさや真面目さが見て取れる。
表情筋も豊かなのは、彼女が表情豊かな人間であることを示している。
真面目なだけ、仏頂面なだけの人間はこうはならない。よく怒り、よく笑い、よく喜ぶ人間であることは見れば分かった。
首に付いている筋肉が左右で多寡・柔軟性に差があるのは、弓道か何かを習っているからだろうと推測できる。
弓道は左手で弓、右手で矢を持ち、普段生活していると動かさない範囲まで首を左側に曲げていくもの。慣れるまでは首を左にしっかり向けることもある程度難しいという。
そのため、首関節と肉に左右で僅かな差異が発生する。
右腕と左腕の筋肉の付き方もかなり違いが出る上に、"肘を入れる"という特殊な関節の固定法・筋肉の力の入れ方をするため、左右で腕の間接可動域にも違いが出る。
足回りの筋肉にも同じくらいの情報が詰まっている。
彼女が弓道や、走り込み必須の運動を何かしていることなどは、おじさんの目から見れば一目瞭然だった。
肌が白く、とても綺麗で、女性が誰もが憧れる容姿の良さを獲得できる"才能"が感じられる。
黒髪とのコントラストは、一種芸術作品のようだ。
異性であれば見ただけで目を惹かれ、惚れてしまいかねない。
肌が白いのはあまり外出しないから、つまり毎日長時間外出する習慣や外に一緒に出かける友人が居ないからであると推測できるが、ある程度以上の運動をしている肉体は、引きこもりのような不健康さを感じさせなかった。
この洞察力こそが催眠おじさんの真骨頂。
催眠抜きでも対象の趣味・性格・嗜好を見抜き、的確な催眠をかけることができるのだ。
相手に的確に会話を合わせ油断させ催眠をかけ、催眠に耐性がある者に初手から効果的な催眠を選び、催眠で自白させるまでもなく他人の心を読み取っていく。
"剣豪は剣を使わなくとも強い"と言われるように、催眠おじさんは催眠がなくとも強い。
とはいえこういう問答無用で通報してくる女には話術だけではどうにもならない。
「催眠ハッピーセット!」
「んっ」
おじさんは割と躊躇いなく彼女の正気を吹っ飛ばした。
『彼に対して明確に不都合になることはできない』。
『彼の言動行動を好意的に解釈・受け入れやすくなる』。
『彼を親しい者であると思い込む』。
『以後正気に戻っても催眠耐性が橘ありすレベルまで落ちる』。
の四セットを一息に叩き込む催眠プリセット。
マクドナルドのハッピーセットを参考に考案した、対象を頭ハッピーセットにし、シャカシャカチキンをシコシコチキンにすることすら可能な催眠アタックである。
意思は眠り、精神は掌握され、記憶は自在に改竄される。
これを受けたものは、催眠の効力が消えるまでずっとおじさんを家族同然の大切な人と『勘違いさせられた』ままになる。
それが事実であると信じ込んだままとなる。
催眠を受けたその目から光が消え、通報しようとしていた手がだらりと下がる。一瞬にして催眠おじさんの言うことをなんでも聞く状態に落とされたようだ。
「名前を聞いてもいいかな?」
「……
「じゃあまず、年齢を教えてくれるかな?」
「っと、11歳です」
「へー11……11!?」
背の低い大学生くらいかな、と予想していた催眠おじさんの息が一瞬止まった。
「11歳? じゃ小学生?」
「11歳、小学生です」
「小学生? あっ……ふ~ん……え、身長・体重はどれぐらいあんの?」
「え~、身長が151cmで……」
「うん」
「体重が■kgです」
「うわ軽っ……腰とか細そうだな……見た感じ筋肉無いわけでもないのに……」
小学生。小学生だという。恐るべし、鷲尾須美。
おじさんは催眠おじさんになってもう数年が経つが、それでもこのレベルに胸も尻も大きな小学生など見たことがなかった。
大学生や高校生を名乗ってきたらおそらく普通に信じていただろう。
催眠に嘘はない。
催眠おじさんはこの世で最も真実に近く、最も虚飾にまみれた存在である。
真と嘘を司る彼の前で嘘をつくことはできず、彼の前で開かれる高校卒業式は童貞処女を卒業した日のことを包み隠さず書く、童貞処女卒業文集の発表会となるだろう。
つまり彼女は本当に小学生であるということだ。
「うーん……小学生はないっすねえ……」
「何がないんですか?」
「小生はどっちかというとダークサイドの催眠術師だが、矜持はある」
「?」
「網にかかった小魚はリリースして成長を待つのだ。漁師のマナーだ」
「漁師なんですか?」
「愛の漁師だ」
「うわっ」
「……悪意ある"うわっ"は催眠では言えないから今のは素の"うわっ"だな……」
「そんな……思わず声が出ただけですよ! いいと思います!」
「フォロー入ったのに逆に腹立つパターンとか小生初めてだわこれ」
「何に腹が立ったんですか!? 言ってください!」
「クソ鬱陶しいなこの小学生!」
「ごめんなさい! でも言わないと伝わりませんよ! しっかりしてください!」
「悪意なく好意だけで説教してくる小学生……!」
催眠おじさんはかつて学生時代"一生話しかけてくんじゃねえ"と催眠をかけた眼鏡三編み爆乳お説教大好きウォーズマン委員長のことをついつい思い出していた。
この生真面目さ。
面倒臭さの極みである。
「これはあれだな……催眠に弱すぎて小生の催眠が効きすぎたやつだ……」
「あなたが望むなら……私の初めてを捧げても……きゃっ」
「処女の不法投棄はやめろ。くっ、時々居るんだこういう催眠にクソ弱い子」
「うっ……何か……私は、大事な何かを忘れてる……?」
「お、これは催眠への抵抗か。催眠に弱くても意志の力は強いか。この歳で立派な子だ」
「そうだ……宿題をしないと」
「真面目か?」
「思い出しました。私はあなたの言うことちゃんと聞いて、宿題もしないといけないんでした!」
「……」
「うちに来てください! おもてなしします!」
「……とりあえずゆっくり催眠弱めていくか。住むところも必要だったしな……」
おじさんはニコニコと笑う須美に手を引かれ、鷲尾家に連れて行かれる。
催眠という絶対の優位性があるのに、主導権は少女の方にあるように見えた。
それは警察に声をかけられても変わらない。
「あーちょっとそこの二人?
親子かな? でも似てないね? ちょっとお話聞いてもいいかな」
「あ、おまわりさんだ」
おじさんに警察の職質、飛天御剣流書類送剣が迫る。
「オラッ催眠色の覇気!」
「うっ」
「フン……小生と小学生には天と地ほどの差が……字面にはほぼ差がないなこれ」
そう、何者も、催眠おじさんを止められはしない。
ここは滅び行く世界。
神が怒り、世界の多くは滅ぼされ、ほんの数百万人の人間が、僅かな土地に逃げ込んだ世界。
四国を囲む結界の外には炎が燃え盛り、結界の外の尽くが燃え尽きている。
催眠をかけられたメスガキの人生くらいには、この世界は終わっている。
いじめられっ子が催眠を手に入れた後の巨乳美少女いじめっ子の人生くらいには終わっている。
催眠アプリを手に入れたクソ野郎に逆恨みされた美女の人生くらいには終わっている。
ただ緩やかに終わり行く世界の中で、彼と彼女は出会った。
wasiosumi
wasiosnmi
..asi nmi
saimin
催眠にかけられるために生まれてきたような女の子
・RtA
ロサンゼルス発のファッションブランドのこと。
転じてそこが作品で表現しているテーマのミームストリームのことを指すスラング。
RtAが表現している「正気と狂気」「処女と性欲」の対立表現のこと。