催眠おじさんVS美少女勇者:地球最大の決戦!RtA   作:ルシエド

10 / 40
催眠感度10倍

「おじさまはツンデレなのよ。

 素直になれないの。

 だからしょうがないの。

 私達が優しくしてあげないといけないのよ、須美ちゃん」

 

「え、分かりますけど、解釈違いです。

 おじさまは私達の優しさなんて必要ない人です。

 周りに優しくされなくてもおじさまはおじさまですよ。

 ずっと私に優しい人です。

 おじさまにしないといけないのは優しくされた後にちゃんとありがとうって言うことです」

 

「分かるわ。

 でもそうじゃないと思うの。

 おじさまは優しさが必要ない人じゃないわ。

 優しくされてないと生きていけない人なのよ。

 催眠で優しさを周りから受けるのが常態化してるだけ。

 おじさまに寄りかかりすぎないで、私達もおじさまを寄りかからせてあげないと」

 

「分かります。

 でもおじさまは求めてませんよね?

 おじさまは欲しい時に欲しいだけ催眠で優しさを摂取してると思います。

 欲しくない時にも優しさを求めてる人じゃないと思うんです。

 寄りかかりたい時にはそう言うはずです。

 求めてる人に求めてるものを与えないと、迷惑になることもあるはずです。

 おせっかいでおじさまに不快感を与えたくありません。

 ……私は特に、真面目すぎて融通が効かなくて、不快なおせっかいをしがちだから」

 

「分かるわ。

 でもね、おじさまは間違えない人じゃないと思うの。

 食生活なんて酷いものよ?

 健康なんて全然考えてないわ。

 食べたいもの食べてばっかり。

 部屋の掃除もサボリ気味。

 おじさまは周りが助けて初めて、まっとうに人間らしく生きていける人なのよ」

 

「分かります。だらしないところありますよね。

 でもそこを拡大解釈してもどうかと思います。

 おじさまは一人でも立派な方です。

 自分一人でも大丈夫な方です。

 だらしなさは本当にどうにかした方がいいとは思いますけど……

 だから私に手を差し伸べてくれるんです。

 私がそう思うその部分に関して、それは東郷さんも同じなんじゃないですか?」

 

「分かるわ。

 でもねそうじゃないの。

 手を差し伸べられてそこで終わりじゃないわ。

 私の方からも手を差し伸べていかないと。

 そのためには、おじさまが迷わず私の手を取れるようにしないといけない。

 自立しないといけないのよ。

 成長して、進学して、就職して……

 おじさまが迷わず私の手を取れるようにしないといけない。

 そうすることが最終的におじさまのためになるんじゃないかって、私は思うわ」

 

「分かります。

 でも、それはちょっと違うんじゃないでしょうか?

 視野が長期的すぎると思います。

 もっとすぐにおじさまの助けになることもできるはずです。

 ご飯作って、朝起こして、部屋を掃除して、労をねぎらって……

 毎日私にできることを、ちゃんと丁寧にしてあげるべきです。

 そうすることが最終的におじさまのためになるはずだと、私は思います」

 

「分かるわ、でもね―――」

 

「分かります、でも―――」

 

「同一人物で小生に微妙な解釈違い起こしてんじゃねえ!! 原辰徳!!」

 

 おじさんの目の前で、アニメのキャラ性格解釈を語るようにおじさんの性格解釈をし始めるみー子達に、おじさんはちょっとキレた。

 

「二人とも催眠かけて食券システムの店で絶対に食券の機械見落とすようにすんぞ」

 

「へ? それがどうかしたんですか?」

 

「ダメよ須美ちゃん!

 急いで謝って!

 あの催眠を受けたら食券を買わないでカウンターに座ることになるわ!

 それで『ボタンも無いから店員が聞きに来るのかしら』なんて思ったら終わり!

 何十分かカウンターで待った挙句『どうしたんですか?』って店員に言われるわ!

 そしてくすくすと周りから笑い声が上がるのよ!

 その時の羞恥心はもう二度と同じ店に行きたくなくなるほどよ! うぅ……」

 

「東郷さんその催眠受けたんですか!? 一体何したらそんな罰を受けることに……?」

 

「おじさまのえっちな本を燃やしただけなのに……」

 

「こ、この野郎……! 良いだろ別に小生がエロ本買ったってそのくらい!」

 

「ふ、不潔ですよおじさま!

 仮にも鷲尾家の人間を名乗るなら現実の人間に目を向けてください!

 それとおじさまはその性欲も抑えないと、いつか不埒なことを……」

「そうですそうです!」

 

「じゃかしいわ、お前ら二人共潜在的性欲強い方だからな、自覚ないだろうけど」

 

「「 !? 」」

 

「一見貞淑で清楚っぽく見えんのは自制心強くて真面目なだけだからなおうコラ」

 

 催眠おじさん(アンサートーカー)は心の答えを知る者。心の属性を見抜く者。催眠おじさんを前にして精神の性質を見抜かれない者はいない。性欲とか。

 愛が深く強いがゆえに性欲が強いタイプというものは存在する。

 同時に、そういう自分の性質をしれっと受け入れないタイプも存在する。

 

「東郷さん、私の性欲強いと思いますか?」

 

「いいえ、思わないわ。須美ちゃんはそういうのとは無縁な可愛い子よ」

 

「ありがとうございます」

 

「須美ちゃんは私の性欲強いと思いますか?」

 

「いいえ、思いません。

 おじさまの一番の理解者気取りは鼻につきますけど……

 ちゃらんぽらんっぽいところに目を瞑れば……理想の未来の私です」

 

「ありがとう。ふふっ」

 

「……みー子'sはさぁ」

 

「おじさま、多数決の原理に従って間違ってるのはおじさまということに決定しました」

「しました。おじさまが何を言っても二対一です」

 

「うっわズッル……2chで一人二役自演してる人かよ……

 ちょっと待ったお前ら最近催眠ちゃんと効いてる? 効いてるよな?」

 

「効いてますよね?」

「効いてるわね」

 

「こういうとこで

 『私に催眠なんて効くわけないじゃないですか』

 とか言ってくれると安心できるんだけどな……どっちだこれ。まあいいや重ねがけしとこ」

 

 催眠が半ば解けた人間が催眠が解けてないフリをしていたとしても、催眠の重ねがけを定期的にしておけば、催眠がいつの間にか解けていたとしても問題はない。

 リスクマネジメントである。

 催眠術師は催眠が解けた瞬間に被害者に通報されるというリスクが常にあるため、優秀な者は常にリスクマネジメントを心がけている。

 一流の催眠おじさんがリスクを考慮しないということはない。

 

 須美森のおじさんはかつて、『地雷踏みたくないからネタバレありでも作品の概要見てから作品見に行くわ。オチまで見てからじゃないと安心できないおじさん』に師事していた。

 リスクマネジメント技術は卓越したものがある。

 

「おじさまの催眠は強いですね……防げたことなんて一度もないです。流石ですね」

 

「まあほとんどの催眠はかけられた自覚与えないからねぇ。

 ハッハッハ、小生の強さを信じろ。

 仮に、前にダークサイド催眠おじさんの幹部クラスがやってた、

 『少子化対策に強姦が合法化されました。女性の方は拒否も逃げもダメです』

 とかいう全世界催眠が実行されたとしてもお前達が催眠にかかる前にぶっ殺してきてやる」

 

「状況が特定条件下すぎませんか……?」

 

「お茶が入りましたよ」

 

「褒めてつかわす、須美」

「ありがとう、須美ちゃん」

 

 美森はおじさんの正面で行儀良く飲み、須美はおじさんの隣で行儀良く飲み、おじさんはだらけた姿勢で行儀悪く美味しそうに飲んでいた。

 

「そうだ、おじさま。最近私、肩揉みのやり方を完璧に習得したんです」

 

「ほう……須美がなあ。

 鷲尾のお父さんとかにしてあげるのか?

 あの男も大分歳だからな。

 義娘のためか勇者関連の業務も進んでやって根を詰めている。やってやれば喜ぶだろう」

 

「はい、そのつもりです。なのでおじさま、練習に付き合っていただけませんか?」

 

「いいぞ」

 

「ありがとうございます! 実は、その……」

 

「須美ちゃんはおじさまの労もねぎらいたいんです、って言いたいんですよ」

 

「東郷さん! そういうことはちゃんと自分で言います!」

 

「あら」

 

「なんで先に言っちゃうんですか! 東郷さんはもう!」

 

「ごめんなさいね須美ちゃん。でも早く言って損はないと思うの。同じ私だから」

 

「小生ジャンプのネタバレ画像twitterに流して悪びれない人とキレる人の会話見てる気分」

 

 ぷんすかして、須美はおじさんの背後に周り、肩を揉み始めた。

 

「どうですかおじさま、痛くないですか」

 

「ああ、いいぞ、いい感じ。須美は肩揉みの達人だな」

 

「ふふん。インターネットでちゃんとやり方を調べてきたんですよ」

 

「あっ達人じゃねえなにわかだコレ。でもいい感じ、上手上手」

 

「おじさまに喜んでいただけたなら嬉しいです」

 

「たとえるなら就寝前にベッドに寝転がってスマホをいじってるような安らぎだ」

 

「それ安らぐんですか?」

 

「安らぎすぎて睡眠時間が減るくらい安らぐぞ」

 

「ちゃんと寝てください。健康に悪いですよ?」

 

 おじさんがヘタクソに微笑んで、須美が褒められたことに上機嫌に笑う。

 一方東郷は首を傾げ、何やら考え込み、須美の肩揉みの手付きをじっと見ていた。

 

「須美ちゃん、ちょっと代わってもらえる?」

 

「東郷さん? いいですけど……」

 

「おじさま、失礼します。違和感があったら言ってくださいね」

 

「おう……おうっ!? あ、おっ……あーっいいっすね……いい……」

 

「!? え、東郷さんがしただけで急に……?」

 

「私もこれでも、三年くらいおじさまに合わせて肩揉みを最適化した家族だから」

 

「たとえるなら真冬に帰宅してすぐ入った40度の風呂に肩まで浸かるような安らぎだ……」

 

「あっすごく安らいでる!」

 

 美森と須美の技術に差はあるが、そこまで極端な差はない。

 二人ともマニュアル的に独学で習得した技術でしかないからである。

 決定的な差は、"最適化"。

 おじさんに合わせた肩揉みの経験値が、おじさんに最適化した肩揉みを生む。

 修練によって極めていない卍解が龍紋鬼灯丸にしかならないように、三年分の年月の差が、そのまま美森と須美の差になっていた。

 

「いいぞ美森……将来の旦那にやってやれ……東郷の家の両親にもな……」

 

「もうしましたよ。おじさまはいつの時代も同じようなこと言いますね」

 

「……ああ、そっちの小生がもう言ってたのか」

 

「そうですよ。おじさまはいつもおじさまです」

 

 気持ちよさそうにしているおじさんと、自分より格上の美森を見て、須美は何か言いたそうにしながらも、何も言えないままじとっとした目つきで二人を見ていた。

 

「うう……」

 

 須美は意地っ張りだが、自分のダメなところをちゃんと見られる子でもある。

 自分の能力の低さを突きつけられれば、しっかりとそれを受け止められる。

 受け止められるが、悔しいものは悔しい。

 自分より上手い美森が肩を揉んでいれば、出しゃばろうと思うこともできず、ただただ悔しそうに臍を噬むのみ。

 

 そんな須美を、おじさんが横目に見ていた。

 

「美森、ちょっと代わってくれ」

 

「……もう、おじさまは『私』に甘いんですから」

 

「小生は須美に肩揉んでもらいたいんであって、上手い奴に揉んでもらいたいわけじゃない」

 

「!」

 

 須美が目を輝かせ、苦笑しておじさんの背後からどいた東郷とすれ違うようにして、小走りでおじさんの背後に回った。

 

「誠心誠意頑張ります!」

 

「おう頑張れ。あとで労働の給料として何かデザート作ってやるから」

 

「わぁ……楽しみに待ってます!」

 

「おっ、いい感じいい感じ、上手だぞ須美」

 

 須美がおじさんの肩を揉み始めたのを見て、美森が嬉しそうに呆れていた。

 

「知りませんよ。甘やかしすぎて須美ちゃんがダメになっても」

 

「お前がそんなことでダメになるわけがないだろ。少なくとも、中三までは立派に成長してる」

 

「……もう」

 

「第一甘やかしてないと言うに。

 お前たちは小生の催眠で奉仕させられてるだけだからなハッハッハ」

 

「奉仕させてるだけっていうなら上手い私だけに肩揉ませ続けてたんじゃないですか」

 

「……」

 

「そうですよね?」

 

「そこは、ほら、あれだな。

 あれだあれ。あれだ。

 お前には話さないが小生の深謀遠慮があるんだ」

 

「言い訳思いつかなかったんですね……」

 

「黙ってろ」

 

 美森が人差し指でおじさんの頬をつんつんつつき、おじさんがデコピンで美森の指を弾き、美森が笑った。

 

「もういいぞ須美、随分楽になった」

 

「喜んでいただけたなら幸いです。次回以降も頑張ります!」

 

「後ろ向け後ろ」

 

「え?」

 

「今度は小生が肩揉んでやる」

 

「え、そ、そんな悪いですよ!」

 

「『背中見せて黙って肩揉まれてろ』」

 

「うっ」

 

 子供の遠慮は、大人の催眠には勝てない。メスガキは催眠には勝てないのだ。

 

 須美の肩を揉みながら、おじさんは須美に語りかける。

 

「今日は金曜日だからな。みっちり訓練してきたんだろう、何をしたんだ?」

 

「走り込みして、戦闘訓練をしました。

 その後座学をしっかりして……

 体の疲労がある程度抜けたところでまた戦闘訓練です」

 

「お国のために、皆のために、だな。どのくらい頑張ってたんだ?」

 

「今日は短縮授業だったので昼から……六時間くらいだったと思います」

 

「ほう、随分頑張ったな。偉いぞ」

 

「えへへ。んっ、こほん。

 総合評価では今の世代の勇者で一番いいんですよ私。

 他二人の座学成績がそんなに良くないから、私が一番なんです」

 

「おお、それは凄いな。

 須美が頑張った証だ。

 だが調子に乗るなよメスガキ。

 催眠術師も戦士も、調子に乗ったやつから死ぬんだからな」

 

「はい。肝に銘じておきます。ちゃんと出撃しても、おじさんの下に帰ってきます」

 

「……」

 

「おじさま?」

 

 おじさんは少し無言になって、須美の肩を揉んでいた片方の手で、不器用に須美の頭を撫でてやった。

 

「小生は、歳を取ったら、情けなくなった。

 『頑張るのは格好悪い』

 だなどと普通に思うようになった。

 ……お前は立派だ。

 頑張ることを格好悪いことだなんて思ってもいない。

 それはな、それができない人間には、眩しく見えるんだ」

 

「おじさま、くすぐったいです」

 

「クックック、せいぜい努力して小生の良い手駒になるがいい」

 

「はい!」

 

「うわっ今日一で良い返事」

 

 須美の頑張りを褒めて肩を揉むおじさんの肩に、手の感触。

 

 振り向けばそこには、笑みを浮かべておじさんの肩を揉む美森がいた。

 

「おじさまが須美ちゃんの肩を揉むなら、私がおじさまの肩を揉みますね」

 

「おいおい」

 

「いいじゃないですか。労をねぎらわれる分にはただですよ?」

 

「お前な……」

 

 おじさんは呆れた様子であったが、拒みはしなかった。

 

「おじさま、褒めるのは須美ちゃんだけですか?

 私には同じこと言ってくださらないんですか?」

 

「お前も須美だった頃の熱意と前のめりなひたむきさが自分から無くなってる自覚はあるだろ」

 

「……そうですね。その通りです。

 私は来年高校生ですけど、確かに小学生の頃ほど前のめりではなくなったかな」

 

「それが悪いと言ってるんじゃない。

 むしろ安心したぞ? 随分安定感が増したな、美森。

 お前はちゃんと大人になっていってる。

 まあ、まだまだガキだけどな。

 須美より安心して見てられるようになった。

 "焦らなくていい"って、一人でもちゃんと思えるようになれたんだな」

 

「何年も経ってますから。

 おじさまの私を見る目が変わるように、私もおじさまを見る目がちょっと変わりましたよ」

 

「何がだ?」

 

「おじさまって、小学生の頃の私が思ってたより、子供っぽいところがあったんだなって」

 

「はっ倒すぞ」

 

「うふふ」

 

 美森が鈴を鳴らすような澄んだ声で笑う。

 

 その時、部屋の扉が開き、鷲尾夫婦が使用人を連れて入って来た。

 

「ちょっといいかい、大きな須美の泊まる部屋のことで……おや、三人で何をしてるのかね」

 

「催眠理解波!」

 

「うっ……」

「なるほど」

「三人で肩を揉み合ってると」

「揉み合ってると言うには一方向過ぎる気もしません?」

「理解しました!」

 

「おじさまの催眠ってできないことなさそうですよね……」

 

「できないことは全くできんぞ」

 

 催眠で"見て脳に入る情報に僅かな補正をかけられ状況を理解させられた"大人達が、三人を見て何かを思いついた様子を見せた。

 

 まず動いたのは鷲尾父。

 

「では私は、大きな須美の肩を揉んであげようかな」

 

「え、そ、そんな悪いですよ!」

 

「いいんだ。私はあまり須美に父親らしいことができてないからね」

 

「……お父様。そんなことはありませんよ」

 

「娘によく頑張ったと言ってやるくらいいいだろう? 父親なんだから」

 

「……はい。ありがとうございます、お父様」

 

 美森は何かをこらえてはにかみ、父は穏やかに微笑んだ。

 

 そんな父の肩を、母が揉み始める。

 

「いつもお仕事ご苦労さまです。あなたのおかげで、今日も鷲尾家は安泰ですよ」

 

「おお、ありがとう。お前が妻として支えてくれるおかげだ」

 

「大袈裟ですよ、もう」

 

 父の肩を揉む母の肩を、使用人のチーフリーダーが揉む。

 

「奥様もいつも頑張ってますよ!

 鷲尾家のお仕事も家庭の責任も両立してる立派な方です!

 お嬢様の好きなものを調べて初日から出してたの見て、あたし感動してました!」

 

「あらあら、ありがとう」

 

 チーフリーダーの肩を、新人の使用人が揉み始める。

 

「チーフ! いつもお仕事おつかれさまっす!

 チーフも中々ですよね!

 仕事もちゃんとしてるし須美お嬢様に可愛い私服こっそりあげてたり!」

 

「ありがとう! 明日もあたし達は仕事よ! しっかりね!」

 

「うす!」

 

 人の後ろに人が繋がり、その後ろにまた人が繋がっていく。

 やがて出来たのは、その場に居た全員が直列繋ぎにされた数珠繋ぎの集団だった。

 

 勇者?

 否。

 列車である。

 鷲尾須美は列車である。

 

 須美は戸惑いをそのまま声にして張り上げた。

 

「な……なんですかこれ!? なんで列車が出来てるんですか!?」

 

 須美の後ろで、おじさんが声を張り上げる。

 

「須美……この列車の先頭はお前だ! 行き先はお前が決めるんだ!」

 

「どこに行けって言うんですか!」

 

「未来へ」

 

「どうやって……!?」

 

「須美、お前が進む先が未来だ! お前の後ろで背中を押す小生を信じろ!」

 

「未来ってどっちですか!?」

 

「お前が選んだ道の先こそが未来だ! 好きに選べ! 肯定してやる!」

 

「曖昧で抽象的なこと言ってたらかっこよくなると思わないでください!

 じゃあなんですか! 私が壁と結界壊して世界滅ぼしても肯定するんですか!?」

 

「いいぞ! 肯定してやる!

 お前のおじさまはお前の味方だ! お前が世界を滅ぼしてもお前の味方だぞ!」

 

「もー! 絶対からかってる!」

 

「オラ進め! 笑って進め! カッカッカ!」

 

 列車フォームのまま全員で食堂に向かい、おじさんが冷蔵庫の中身で全員分のデザートを作り、各々好きなところに座り好きなように話しながら、おじさん作のデザートを絶賛していく。

 楽しい時間。

 和やかな時間。

 幸せな時間。

 

 須美は笑顔で舌鼓を打ち、美森は"懐かしいな"と微笑んでいた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。