催眠おじさんVS美少女勇者:地球最大の決戦!RtA 作:ルシエド
おじさんの懸念は、保護者会に出るついでにちょこっと神樹館で調べた時に判明した、須美の友達の少なさであった。
友人と言えなくもない存在もいたが、カウント次第では友人0と見ることができるくらい、周囲との繋がりが無かったのである。
原因は彼女の境遇だろう。
一年半ほど前の引っ越し、名前の変化、そして転校。
小学校というのは『六年かけて繋がりが出来ていく』巨大なコミュニティであるため、そこに横から入って来た存在は比較的馴染み辛い。
だからしょうがない、とおじさんは考える。
友人の欠乏は須美の不器用な性格も理由として大分強いのだが、おじさんは須美の責任を境遇に転嫁したがっていたのである。
何かあればすぐに友人は多くできるはず、とおじさんは思っていた。
そのきっかけとして用意したのがこのパーティーである。
仲良くなるきっかけさえあれば、とおじさんは思考する。
あの子は幸せになれる、とおじさんは考える。
美森が伝えたおじさんの死と、勇者の親族が見せた閉塞感に似た絶望が、おじさんに『焦り』を与えていることに、おじさんは自覚がない。
おじさんは安心したいのだ。
確証が欲しいのだ。
自分が居なくなっても、須美は絶対に幸せになれると、信じられる理由が欲しかった。
パーティー当日、おじさんは色々と考えていた。
須美と一緒に、鷲尾家の窓から、鷲尾家の広い庭に集まってがやがやと談笑している神樹館六年生組、そしてその親を見渡しながら、色々と考えていた。
考えた結果を、須美の前で口に出す。
「いいか須美、撮っとこハム太郎っていう奥義を覚えておくんだ」
「え……撮っとこハム太郎?」
「これは小生が学生時代にやられて覚えた技でな……
写真撮影を基点とした技術体系だ。
小生が居なくても使える。
昔小生の顔が撮影されてtwitterのアイコンにされて未成年飲酒喫煙ツイートされてた」
「うわぁ」
「須美……これを使えば催眠抜きでも冤罪で他人を陥れられるぞ……
困った時はこれを使って相手を退学させろ……弱みを活用しろ……」
「おじさまの捻じくれちゃった部分の原因は大体過去にある気がしてきました」
神の視点からならば『おじさんが自分が居なくなった後の須美が現実に負けないよう戦う手段を教えている』のだが、この世界の人間から見ると『邪悪がいたいけな少女を悪の道に誘っている』ようにしか見えない。
催眠の好意的解釈フィルターがなければ完全にアウトだった。
鷲尾家は大赦内でも相当に高い家格の家。
庭は大勢が集まっても問題ない広さがあり、大きなパーティーを開いても違和感がない家の格があり、ごく自然に人が集まるだけの家の地位がある。
一般家庭の誕生日パーティーのような『仲の良い友達の集まり』ではなく、『お誕生会を名目にした懇親会』の属性を帯びたのはおじさんの計算外だったが、まあ人が集まればいいか……と思うのがおじさんのケ・セラ・セラ思考であった。
使用人の一人が、おじさんと同じポーズで頬杖ついて外を眺めている須美に声をかける。
「お嬢様、お着替えの準備ができましたよ」
「あ、はい。今行きます!」
手を振って送り出すおじさんに頭を下げ、須美は別室に移動した。
名家のお嬢様が、自分の誕生日会に私服で出ていいわけもない。
一部の親御さん達は礼服で来ているため、それに対し失礼にならない服が必要となる。
ドレスにしろ着物にしろ、"鷲尾家は礼を忘れた"と言われないだけの服を着なければ……そう思って別室に移動した須美を待ち受けていたのは、鼻息荒くした美森だった。
「待ってたわ須美ちゃん。さあお着替えしましょう?」
「と、東郷さん……!」
「安心して。私はあなたに色々着せ替えさせたいだけの、未来のあなただから」
「未来の私なのに不安しかないのはなんで……?」
使用人達を差し置いて、ニコニコ笑顔の美森はどこにどんな服が置いてあるのか完璧に把握した振る舞いで、須美の服を入念に選んでいく。
「いいわよ須美ちゃん!
もっとこの服とかこの服とか着ましょう!
この服、あるのに気付いた時にはもう私には着れなくなっていたのよね……」
「腹に肉が付いたからですか?」
「いや肉が付いたのは腹じゃなくて胸と……こほん。そういう話はいいの」
「……おじさまは未来の私のそういうところ好きそうですよね」
「今はそういう話はいいの。着れなくなったのは身長が伸びたからでもあるわね」
「おじさまが言ってた女子大生の平均身長くらいありますからね、東郷さん」
「外見的には大人と変わらないって思うんだけど……おじさまからは子供扱いのままなのよね」
「東郷さんは真面目さが足りないんです。
不真面目な不良とは思いません。
でも、真面目さや真剣さが全然見えません。
外見だけ大人になっても、振る舞いに真面目さがなければ大人には見えませんよ」
「……ふふ、そうね。須美ちゃんの振る舞いは大人ね」
"これが理想の大人のはず"と真面目くさった振る舞いをして、背伸びをして、肩肘張って美森を「子供っぽい」と思う須美。
ごく自然に、ありのままの自分で居て、無理をせず柔らかに生き、背伸びをする須美に「大人ね」と微笑むことができる美森。
はてさて、どちらが本当に子供なのか。
カーテンが締め切られた窓の、換気のために少し開けられた隙間から、外で会話しているおじさんの声が聞こえる。
外でおじさんは須美のことを紹介したり、鷲尾家の人間として他の家の親御さん達と交流したりと、以前の彼ならするはずもないことをしていた。
"催眠で行えない細かい調整をしている"ということなのだろう。
催眠は万能だが全能ではない。
会話と併用することで、より丁寧な干渉を可能とするものなのである。
「おじさま、ああいうの面倒臭がる人だと思ってました」
須美がポツリと呟き――須美は認めないが――須美よりもおじさんのことを深く理解している美森が、解答を提示した。
「照れ屋なおじさまがあんなに前に出てるのは、
『姪が好き過ぎる叔父の暴走』
って皆に思わせたいから。
須美ちゃんを叔父の溺愛に巻き込まれた子ってことにしたいのよ。
須美ちゃんが誕生日パーティーに人を大勢呼ぶ目立ちたがりにしたくないのね。
実際皆、おじさまを見て苦笑してるわ。
……ほら、これなら、須美ちゃんが学校でバカにされる度合いは低くなりそうじゃない?」
「……あ」
「それにしたっておじさまらしくないと思うけどね。
須美ちゃんがおじさんのことでからかわれることもあるでしょうし。
んー……私もこの時期のおじさまの動向全部は知らないから分からないわ」
美森は須美よりもおじさんのことを理解しているというだけで、おじさんの全てを理解しているというわけではない。
「はい、着替え終わったわよ、須美ちゃん」
「あ、あれ!? いつの間にかドレス着せられてる!? 和服じゃなくて!?」
「いいわ須美ちゃん。似合ってるわ!」
「似合ってるわじゃなくて! 同じ私ならこんな非国民な格好嫌いでしょう!?」
「このドレス、いい服なのに存在に気付いた時にはもう着れなくなっていて悔しかったの」
「私で心残りを解消しないでください!」
「あなたもいずれ気付くわ。どんな服でも褒められたら嬉しい、ってね」
「大日本の心意気を忘れたあなたみたいな人には私絶対なりませんから!」
「ほら予定表を見るともう時間が無いわ。他の服に着替えてる時間はないわよ?」
「むむむ……!」
須美は憤慨し、美森に連れられ外に出る。
美森はふらっとどこかに行ってしまい、須美は一人でその場に残された。
周囲からの視線が突き刺さる。
(私大丈夫かな、周りに変に思われてないかな、あ、なんかやだ、この空気、嫌だ)
周囲からの視線が須美に焦燥感と自己卑下のループを生む。
周りは須美を変だなどと思っておらず、むしろ可憐な少女に好感と好奇の視線だけを向けていたが、この歳の少女に視線の種類だけを見分けられるわけがない。
竜胆色のグラデーションを、要所を白色で引き締めることで幼さと美しさのバランスを取っているドレスは、須美が着ると白い肌や黒い髪によく映える。
まだ幼さがある整った顔つきと大人すぎないドレスはよく合い、ピンと筋が通った背筋はドレスの造形を引き立てる。
行儀良く胸を張って歩く須美の歩行姿は、幼いだけでファッションモデルのそれだ。
須美のクラスメイトの男子の何人かはこの日須美で初恋を迎え、親御さん達は須美が将来美人になることを確信し、おじさんはノータイムで須美をスマホで撮影した。
物凄い勢いでおじさんの方を向いた須美を、おじさんはもう一度撮影した。
「なんでノータイムで撮っとこハム太郎するんですか!?」
「みー子をスマホの待受にしようかなって……あーいいねこれ」
「やめてください!」
「しょうがねえな。あ、似合ってるし美人さんだぞ、須美」
「……もう!」
須美は顔を赤くして、ぷいっと顔を逸らす。
そして『ああ、今の周囲へのアピールだ』、と須美は気付く。
美森に言われないと気付けなかったことが、少しだけ悔しかった。
周囲の空気が、『姪を過剰に溺愛する叔父と、姪』を見る空気になっている。
周りがおじさんを見て『困った人なんだな』と苦笑している。
誰も彼もが須美を見ていたのに、その視線の多くがおじさんに引きつけられている。
空気が緩んで、先程まで須美が感じていた居心地の悪さが七割ほど消えている。
須美は、今だけは、おじさんが何を考えているのか分かる気がした。
「おじさま、来賓の方々に何かスピーチした方がいいんじゃないでしょうか」
「Hey Siri! 面白い話をしてくれ」
「おじさま! 即座に十割スマホに頼らないでください!」
周囲の苦笑に、微笑ましいものを見る暖かさが、少しずつ混ざっていく。
「挨拶回りに行きますか?」
「いや、乃木三ノ輪に呼ばれてる。先に勇者三人での顔合わせから始めた方がいいってよ」
「なるほど……でも私、乃木さんとも三ノ輪さんともほとんど話したことないですよ?」
「頑張れ」
「ざ、雑……!」
「ガハハ! 頑張って小生に信頼される、友達いっぱいの優等生になってくれ」
「くっ……が、頑張ります!」
「そうそう、その調子」
「『無人島に何か一つ持っていけるとしたら?』
と聞かれたおじさまが迷いなく『鷲尾須美』と言えるくらいになります!」
「それはなんか違うな」
「おじさまが『ドラえもんより須美を持っていきたい』と思える私になります!」
「向上心たっかいな!」
おじさんが探し始めると、乃木と三ノ輪はだいぶ早く見つかった。
両家の両親が四人で会話を弾ませており、そこからだいぶ離れたところで、両家の娘……三ノ輪銀と乃木園子が楽しそうに話していた。
おじさんが見る限り、銀と園子はもうだいぶ仲の良い友人になっているようだ。
「親同士・子同士で盛り上がってるのか。まず子供達の方に行くか?」
「は、はい」
「落ち着け。
小生が母から教わった心を落ち着かせる方法を伝授しよう。
まず職場の気に入らないおっさん上司に催眠をかけるのを想像しろ。
おっさん上司は自分が女だと思い込み、翌日から女装して通勤を始める……」
「『まず』からおかしくないですか?」
歩きながら話し、おじさんと話すことに気が向いて緊張するのを須美が忘れた頃、ちょうどよく話していた園子が須美に気付き、朗らかに楽しそうに声をかけてきた。
「あ、鷲尾さんだ~。お誕生日、おめでとうございます~!」
「え、マジ? ホントだ! お誕生日おめでとう、鷲尾さん!」
「あ、ありがとうございます」
園子と銀が満面の笑みで、ストレートな感情を乗せ、須美の誕生日を祝う。
"小生はここまで真っ直ぐにはなれないな"と思い、おじさんはヘタクソに微笑んだ。
微笑み、須美の肩をぽんぽんと叩いて、二人の少女に須美の今後を頼む。
「乃木のお嬢、三ノ輪のお嬢。うちの姪を今後ともよろしく」
「あ、さっきから面白いこと言いながら練り歩いてる鷲尾さんのおじさん!」
「わしおじさんだ~」
「わしおじさん! 三ノ輪銀です! 知ってるかもしれないけどよろしく!」
「私は乃木園子。ぬいぐるみのこの子はサンチョ。よろしくお願いします~」
「よろしく。小生のことは好きに呼んでく……ぬいぐるみの紹介までしたか今?」
おじさんはどこからか取り出した箱を開け、そこからケーキを二つ取り出した。
「厨房からこっそりくすねてきたケーキ食べるか? 一番高そうなやつ」
「おおっ!」
「食べる~!」
「ケーキ一個分くらいは、須美が何かキツいこと言っても許してくれると嬉しい」
「おじさま!」
「須美、大丈夫だ、言いたいことは分かってる」
「分かってるならいいですけど……」
「ケーキは三個取ってきたから三人で食べなさい」
「分かってない!!」
怒りつつ、ケーキは受け取った。
高いケーキ二つは銀と園子の下に。須美の好きなケーキは須美の下に。
おじさんはこのパーティーに参加している人間全員にも大なり小なり催眠をかけており、銀や園子もある程度催眠の影響下にある。
おじさんに関する違和感などを非常に覚えにくい。
だがその状態ですら、『何か』を感じ、催眠の強制をごく自然にレジストする、『天才』と呼ばれる人間が存在する。
「インチキおじさんは鷲尾さんに優しいんだね~」
「インチキおじさん……?」
「インチキおじさん!?」
「小生ちびまる子ちゃんに出た覚えはないぞ」
乃木園子はふわふわと笑み、独特のセンスでおじさんに変なあだ名を付けていく。
そのあだ名に『真実』があったから、おじさんが園子を見る目が細まった。
髪を下ろした須美よりも長い、金糸のような滑らかな金髪。
水色のリボン。
まったりとした間延びする話し方。
ふわふわとした表情に雰囲気、礼儀作法に真っ向から逆らいながらもどこか品を感じさせる、『自由なお嬢様』といった風の所作。
須美とは別ベクトルで、お嬢様であることを感じさせる少女だった。
その在り方は天衣無縫。
どこまでも自由で、何にも縛られない。
誰よりも自由であるがために、支配を主とする催眠術師が最も苦手とするタイプの人間だ。
催眠をかけ損ねた時、乃木園子のようなタイプが最も怖いため、おじさんは少し園子への警戒度を上げた。
「インチキおじさんは鷲尾さんのおじさんなんだね~」
「そうだぞ~」
「おじさま感染ってます感染ってます」
園子がふわふわと微笑む。
園子は三人の勇者の中で一番笑顔が上手く、おじさんはこのパーティーで一番笑顔がヘタクソな人間だった。
園子の笑みは、周囲を穏やかな気持ちにし、ごく自然に周囲を笑顔にしていく。
「こんなのんびりとした子供でも"生まれ持ちの資質"で勇者にされてしまうのか……」
「美味い餅と脂質? お肉とおもちが一緒のお汁物美味しいよね~」
「おお、分かる。鶏肉が入った雑煮が小生は好きだな。食いたくなってきたぞ~」
「おじさま流されてます流されてます」
「わしおじさんは愉快な人だなあ……
こんなおじさんがいて鷲尾さんみたいな性格になったことがアタシ今日一のびっくりだよ」
「三ノ輪さんにも乃木さん命名のあだ名がしっかり感染ってるわね……」
須美はおじさんが園子色に染められないようにと、園子とおじさんの間に割って入り、楽しげに笑っている銀とおじさんの目が合った。
「君は三人の中で一番元気そうだな。うちの姪をよろしく、三ノ輪のお嬢」
「任されました!」
「うむ、良い返事だ。
三人で力を合わせて戦うといい。
一人より三人。数が多いのはいいことだ。
世の中は大体数字の大きさで決まる。
身長と預金残高は多いほうがモテるし、小説は文字数が多い方が偉い」
「それなんか違くないっすか?」
銀は首を傾げ、すぐにハッとし、力強く頷く。
「……でもバストサイズの数字は大きければ大きいほど偉くて強いですよね!」
「なるほど……一理ある」
「ないです! おじさましっかり!」
「何がないですだ鷲尾さんの胸はあるだろ! この銀様の目はごまかせない!」
「こっちに話を振らないで!」
腕を組んだ銀と腕を組んだおじさんがうんうんと頷き合い、途中から巻き込まれた須美がドレスの胸元を腕で隠して二人に背を向けた。
銀はくすんだやや短めの髪を後ろでまとめている。
勇者の中で一番動きやすそうな髪型で、体に付いている筋肉を見ても、須美や園子とは比べ物にならない運動量を普段からこなしていることが分かる。
健康的に少し日に焼けた肌を見るに、須美や園子とは違う、アクティブなアウトドアタイプの体育会系だとおじさんは推測する。
こういう前向きで陽キャで運動をしっかりこなせる人間が一人いると、それだけで戦闘チームがワンランク上の強さになることを、おじさんはよく知っている。
「三ノ輪さん、おじさまはそういう視点で私を見てないの。
おじさまの慧眼はいつだって私の内面を見ているのよ。
人の価値は外見じゃなくて内面にこそ宿るものなのだから」
「へー、おじさん、鷲尾さんの内面ちゃんと見てる人なんだ」
「ああ、そうだな。
須美の内面をちゃんと見てるぞ。
鷲尾家で小生に輸血できる血液型は須美だけだからな。ありがたい」
「あっ、体内を流れる血液が内面ってそういう……」
「おじさま!」
真面目な須美。元気な銀。そこにふわふわとした園子も入ってくる。
「インチキおじさんは鷲尾さんのことが心配だから構ってきてるんだね~」
「む。乃木のお嬢は勘がいいな……
その通り。
小生ちょっと心配。
できれば今日ここで須美が友達作るところ見たいですね……
『おかず一品作って?』って言うと速攻で上手くやる子なんだ。
でも『友達一人作って?』って言っても同じようにやってくれないのだよ」
「おじさま!」
「その二つ並べるのがそもそも酷だと思うんすけど」
園子がふわふわとして、おじさんがふざけて、須美が怒って、銀がたははと笑ってツッコミを入れる。
須美はそこに不思議な居心地の良さを感じていたが、ふと気付き、おじさんの袖を控え目に引っ張って、二人で内緒話を始めた。
「おじさまちょっと」
「なんだね須美」
「これ、気のせいだったらいいんですけど……」
「なんだね、言ってみ」
「私とあの二人が友達になれるように気を使ってくれてます……?」
「うん」
「じゃあなんで私より先にあの二人とおじさまが仲良くなってる感じなんですか?」
「……」
「おじさま?」
「やっぱ催眠使わないと小生ダメだな。強制親友化催眠叩き込んでくるわ」
「い、いいです! おじさまにここまでお膳立てされたんですから一人で頑張ります!」
居心地の良さはおじさんが先に銀と園子と会話を合わせ、須美が会話を合わせやすいように会話の間に入ったからだと気付いた須美は、小さく可愛い手を握ってみせる。
「頑張れ」
おじさんはヘタクソに微笑み、須美の拳に己の拳をくっつけ、その場を去った。
去ろうとした、のだが。
近くの建物の陰から感涙しそうな様子で覗き、須美を見守っている美森を見つけ、半目になって彼女の下へ向かった。
「ううっ……
頑張るのよ須美ちゃん……
大丈夫、二人はとっても優しいから……
私がどもっても次の言葉をちゃんと待っててくれるから……!」
「おい美森」
「あ、おじさま。
後で一緒に居てくれませんか?
私一人で居ると片親のお父様がたに声をかけられてろくに動けなくて……」
「親世代もメロメロにしてんの凄いなお前」
「最近話題のマッサージ店の無料券とかいただきましたよ。おじさま一緒に行きますか?」
「それ完璧にエロマッサージ本の導入じゃないか……絶対行くなよ」
「ええ……」
「快楽マッサージおじさんは拠点の中でなら最強クラスの存在だからな。
拠点構築型相手だと流石に小生もお前を守りきれん可能性が高い……」
「快楽マッサージおじさんってなんですか」
そんなものこの世界にいるんですか? と美森は思ったが、「いるぞ」と言われるのがちょっと怖くなったので、聞くのをやめた。